夢のまた夢と言われても   作:地球の星

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Quest.31 ふたりに残された時間

 アモス、ドランゴ、テリー、チャモロのパーティーがモンスターを退治して以降、世の中はしばらく平和な状態が続いた。

 その間、ドランゴはパーティーから離れ、ドラグーンの世話に専念していた。

 リベラ、ハッサン、ミレーユ、バーバラのパーティーは相変わらず活動を休止しており、各自で行動をしていた。

 

 リベラはレイドック城で兵士達との稽古に励み、モンスターとの戦闘でけがをした兵士が城に戻ってくると、自らホイミタンクの役割を買って出た。

 そんな中、彼はバーバラが夢の世界に帰る時に彼女と一緒に行くことが出来ないものか、思い切って両親に打ち明けてみた。

 しかし案の定、猛反対をされてしまい、これが決定打となって2人が離れ離れになることが確定してしまった。

 

 ハッサンはコブレとサリイの鍛冶屋が老朽化したため、新しい場所に引っ越しをしたいという要望を受けて、サンマリーノの空き家を改装することにした。

 人手が足りない時にはリベラにも声をかけ、手伝ってもらうこともあった。

 

 ミレーユは連日マーズの館で過ごしており、通常の仕事をしながら、異世界からやってくるモンスターのアジトを探していた。

 その合間には、どうすればバーバラの代償を解除出来るのかについても調べていた。

 

 バーバラは治療のかたわら、チャモロから返却してもらった炎のツメでメラミが打てるように練習をしていた。

 それと並行して彼女は足で呪文を唱える練習を行った。

 その結果、威力はついに手で唱えていた時と同程度になり、さらには自分に唱える時に限り、足でベホマを発動出来るようになった。

 

 ある日、ライフコッドにやってきたリベラはバーバラを誘い、自身の左手と彼女の右手をつなぎながらルーラで空を飛びまわった。

 月鏡の塔の降り立つと彼らはスミスやホイミンに会い、トルッカではエリザや彼女の父親に再会した。

 アークボルトではブラスト達に加えてターニアにも会い、色々な会話をした。

 次に降り立ったのはゲントの村で、リベラはすっかり元気を取り戻したクィントとクァドの親子に会い、ここでも会話に花を咲かせた。

 

 一通り行きたい場所を訪れた後、2人は雄大な景色の見られるところにやってきた。

 その景色を見ながら、リベラはそれまでつないでいた手を離した。

「バーバラ。今日は本当に楽しかったね。」

「そうね。戦いも、けがも、代償のことも忘れて過ごすことが出来たし、本当に楽しかったわ。これで、このままずっと一緒にいられたらいいんだけれどな…。」

「うん。それは僕も同じだよ。」

 リベラがバーバラの横顔を見つめると、その表情には寂しさが漂っていた。

 その理由は彼自身もよく分かっており、バーバラに命の宝玉がどうなっているのかを問いかけた。

「実はね…。」

 彼女がそれを取り出すと、光は以前よりも弱くなっていた。

「それだと、残された時間もそんなに長くはないだろうね。」

「うん…。だからあたし、時が流れるのが怖いの…。リベラと、そしてみんなとずっと一緒にいたい…。」

「僕だってそうさ。君がここにいられる間に何とかして代償を解除してあげたい。でも…。」

 リベラは手掛かりを何も見つけてあげられないことが悔しくてたまらなかった。

「あたしだって、来る時に覚悟していたとはいえ、こんな代償に付きまとわれるのは嫌。ただでさえHPが減っていく上に、けがにも悩まされて…。」

「でも、それって、夢の世界に帰ったら解除されるんだよね。」

「うん。もし帰ればHPの減少も止まるし、この体もきっと元通りになるはずよ。それに、向こうに帰ったらゼニス王さんにお願いして、水晶玉か何かでお互いの世界をつないでもらうつもりだけれど…。」

「本当にそうなったらいいよね。たとえ直接会えなくなっても、会話は出来るようになるから。」

「うん、でも…。」

「でも、何?」

「会話だけじゃ嫌なの。やっぱり直接会いたい。一人ぼっちになりたくない…。」

「僕だってそうさ。もし君がいなくなったら、僕の幸せはきっと無くなってしまうと思う。だから、君を離したくはない。どこにも行かせたくはない。僕達の物語は決して終わらせたくはないよ。」

「あたしだって終わりにはしたくない。でも、あたしは実体がないから、たとえリベラと一緒にいられることになったとしても、そこから先のゴールにはたどり着けないと思うけれど…。」

「それでもいい。たとえ世界中の人達からかなわぬ恋と言われたって、僕はあきらめない。絶対に解決策を見つけてみせる。たとえそれが今すぐじゃなくてもいい。10年先になってもきっとかなえてみせるからね。」

「ありがとう。この世界に来て本当に良かった…。」

 バーバラは泣きたい気持ちをじっとこらえながら笑顔を作った。

 その後、2人は何も言わずに夕日を浴びながら地面に座って、寄り添い続けていた。

 

 一方、マーズの館にいるミレーユとハッサンは水晶玉で彼らの後ろ姿を眺めており、思わずもらい泣きしそうになってしまった。

「本当に2人はお似合いのカップルだよな。心の底から応援したくなるぜ。」

「そうね。もし代償を解除させることが出来たら、どれだけ喜ぶかしらね。」

「ところでよ、そのための手掛かりは見つかったのか?」

「……。」

 ミレーユは何も言わず、ただうつむくばかりだった。

(そう考えると、俺達は本当に幸せだよな。同じ世界の人で、住んでいるところも近いから、会いたくなったらいつでも会えるし。こんな幸せ過ぎるほどの状況を、リベラとバーバラにも分けてやりたいぜ。もしお前達がこのまま引き離されて、俺達だけが幸せになっても、素直に喜べねえからよ…。)

 ハッサンは自分の置かれた状況が申し訳なく思えていた。

 それはミレーユも同じで、彼女は心の中で(ごめんね。何もしてあげられなくて…。)と謝りながら、水晶玉の映像を消した。

 

 しばらくすると、グランマーズが館の中に入ってきた。

「おお、お2人さん。そんな暗い顔をしてどうしたんじゃ?まあ、隠したところでわしにはお見通しじゃがのう。」

「おばあちゃん!」

「知っていたのかよ!」

 ミレーユとハッサンは思わず顔を赤らめながらあたふたしていた。

「まあ、このままではリベラとバーバラには間違いなく悲しい未来が待っているからのう。何とかしてやりたいのはわしも同じじゃ。」

「じゃあ、何かいいアイテムを手に入れてきたのかよ、ばあさん。」

「まあ、いいアイテムと言えばそうかもしれんのう。」

「おばあちゃん、何を持ってきたの?」

「これじゃよ。」

 グランマーズは袋を開けると、中から布に包まれたあるものを取り出した。

「この度、ついに超・キメラの翼の完全版が出来上がったんじゃ。これでバーバラはいつでも夢の世界に帰れるぞい。」

「ばあさん、そっちかよ!俺達はバーバラの代償を解除出来るものを期待していたのに!」

「そう言われてものう…。」

「とにかく、何か手掛かりは手に入れたの?おばあちゃん。」

「それは…、企業秘密じゃ。」

「何よそれ。教えてくれたっていいじゃない。」

「時が来たら伝えるつもりじゃ。それまでは知らない方がいいとわしは思っておる。とにかく、このアイテムをミレーユに渡すことにする。バーバラが来たら彼女に渡してあげるがよい。」

「分かりました。」

 ミレーユは超・キメラの翼を受け取った。

(これを使ったら、バーバラはこの世界からいなくなってしまう…。出来ることなら使わせずに済む方法を考えたいけれど…。でも、たとえ夢の世界に帰ってしまっても、元気でいればきっとチャンスは来るはずだから、それまで我慢してね。私達も決してあきらめないわ。きっとあなた達を幸せにしてあげるからね。たとえそれが10年先でも…。)

 そのアイテムを両手に抱えながら、ミレーユは心に誓った。

 

 その後、グランマーズとミレーユはついに敵のアジトらしき場所を突き止めた。

 その情報を聞きつけたテリーは、早速姉から話を聞いた。

「なるほど。この場所からモンスターが現れているわけか。」

「そうなのよ。多分アジトで間違いない気がするから、ここを抑えてしまえば今より世の中は平和になると思うわ。だから、お願いしてもいいかしら?」

「姉さんがそう言うのなら行ってやるよ。どうせ姉さん達のパーティーはまだ活動休止中なんだろ?」

「まあ、そうなんだけれど、私達にだってそれなりの理由があるのよ。」

 ミレーユはバーバラがもうこの世界に長くはいられないこと。リベラは彼女を励ましながら、少しでも長く一緒にいたいと思っていること。

 そして、ハッサンが大工の仕事に専念していることを話した。

「分かったぜ。今回は俺達のパーティーで何とかしてやる。だが、姉さん達もいずれ戦う時は来るだろうから、その時に備えて準備はしておいてくれよ。」

「もちろんそのつもりよ。でもどうか今は、私達のことをそっとしておいてほしいのよ。」

 ミレーユの申し訳なさそうな表情を見て、テリーはさすがにそれ以上のことは言わず、素直に依頼を引き受けた。

 そして、彼女からせめて役に立てばと、ベギラゴンが使える状態の破邪の剣を渡された。

 

 テリーは館から外に出ていくと風のアミュレットを使い、風の精霊を召喚した。

「ご指名、ありがとーーっ!」

 彼女は相変わらずノリノリの性格を見せながら、要件について問いかけた。

「実はこれからモンスターのアジトにのり込もうと思っている。姉さんの話ではかなりの強敵だろうから、お前の力を貸してほしい。お願い出来るか?」

「全っ然オッケーよ。今デュランの子達は他の精霊と一緒に行動しているから、アタシはちょうど時間があるのよねえ。」

「それならありがたい。パーティーに加わってくれ。」

「ガッテン承知の助よ。その時になったら召喚してねっ。」

「分かった。」

 風の精霊は喜んで依頼を引き受けると、アミュレットに戻っていった。

 

 テリーは次に月鏡の塔に向かっていった。

 塔の周辺ではすでに難民だったモンスター達が地面を耕して作物の種をまいたり、食べられる野草や木の実を探しに行く光景が見られた。

(そうか。すでに彼ら自身で生活しようとしているわけか。これは喜ばしいものだな。)

 彼が感心しながら塔の中に入っていくと、ドランゴがドラゴン系の女性モンスターと会話をしていた。

 言葉自体はテリーに理解出来ないものだったが、どうやらドランゴは「私の子、ドラグーンの面倒を見てもらえますか?」と言っているようだった。

 相手のドラゴンは最初こそどうしようか考えこんでいたが、すでにドラグーンと女性ドラゴンの子が楽しそうに駆け回っているのを見て、最終的には同意してくれた。

 そしてドランゴが頭を下げながら「ギルルルン。(どうもありがとう。)」とお礼を言った。

 テリーはその様子を物陰からじっと見つめていたが、やがてドランゴが気付き、ここにやってきた理由について問いかけてきた。

 彼はこれからモンスターのアジトに乗り込んでいくことを伝えた。

「そう…。これから…大きな…戦い…、ありそう…。ギルルルン…。」

「ああ。だからこそ、俺はお前の力を借りたい。一緒に来てもらえるか?」

「分かった…。これから…準備する…。」

 ドランゴはテリーの頼みを受け入れると、自分の子供に出かけていくことを伝えた。

「ギル、ギルルルン。(ママ、きっと帰ってきてね。)」

「ギルン。ギルルン。ギルギルルルルルン。(大丈夫。心配しないで。あなたはみんなと仲良く過ごしてね。)」

「ギル…。(うん…。)」

 彼女はそう言うとテリーのリレミトとルーラで旅人の洞くつに向かい、グラコスの槍とまじんの鎧を手に入れた。

 そしてテリーと一緒に飛び立っていき、チャモロとアモスのもとに向かっていった。

 

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