リベラ達との戦闘に敗れたカンダタ一味はこの世界から撤退するために下の階に降りていった。
すると「ご苦労だったな。お前達はもう必要ない!」という声が聞こえてきて、「ぐわあああっ!」という、カンダタの悲鳴が聞こえてきた。
ハッサン「何だ?下の階に誰かいるのか?」
ミレーユ「そのようね。つまり、もう一度戦闘になりそうね。」
リベラ「じゃあみんな、MPをしっかり回復させておこう。」
彼らはカンダタを超えるボスとの戦闘に備えて準備を整えた。
しかし、かたわらにいるバーバラは痛がりながらうずくまっていた。
それを見て、みんなの表情は一気に変わった。
「バーバラ…。大丈夫?」
リベラは言葉ではそう問いかけてみたものの、大丈夫でないことは誰の目にも明らかだった。
「お前、こんな状態になるまで頑張っていたのかよ。」
「あなたはもう限界みたいね。これ以上戦わないで。」
ハッサンとミレーユも彼女のことが心配でたまらなかった。
「あたし…、最後まで戦いたい…。みんなの役に立ちたい…。」
バーバラは痛がりながらも、懸命に戦力になろうとしていた。
リベラ「でもここで無理をしたら、動けなくなっちゃうよ。」
「夢の世界に帰ればこんなけがも治っていくんだから、大丈夫よ。だから一緒にいさせて…。」
「……。」
「ミレーユ、お願い…。きっと役に立つから…。」
「…分かったわ。じゃあ私が『痛いの痛いの飛んでいけ』って、おまじないをしてあげるわね。」
「それで本当に痛いの飛んでいくの?」
「ええ。それじゃみんな。彼女から離れて。」
「うん、分かった。」
「お前を信じるぜ。」
「ではお願いします。」
リベラ、ハッサン、ホイミンは後ろに下がっていき、バーバラから距離を置いた。
「それじゃ、バーバラ。肩の力を抜いて。」
「分かったわ。」
バーバラは深呼吸をしておまじないに備えた。
するとミレーユがラリホーを唱えてきたため、バーバラは「えっ?どうして…?」と言いながら眠りに落ちていってしまった。
「ちょっと!言っていることと違うじゃないか!」
リベラは攻めるような口調で問い詰めた。
「私だって本当は唱えたくなかった。正直、こんな悲しい気持ちでラリホーを唱えたのは生まれて初めてよ…。でも、これ以上バーバラを痛い目にあわせるわけにはいかないわ…。」
「でも、夢の世界に行けば、その痛みも消えていくんだよ。」
「たとえそうだとしても、私としては彼女を少しでも元気な状態で夢の世界に送り届けたかったの。彼女が目覚めたら、きっと私は怒られると思うけれど、これが今の私の出来る最善の策だと思ったから…。ごめんね、バーバラ…。」
ミレーユは両手を震わせながら謝った。
そして彼女が夢の世界でどんなに元気な体になったとしても、再びこの世界に戻ってきたら、たとえ姿が見えない状態であったとしても、またボロボロの体になってしまうことを打ち明けた。
ホイミン「それなら、確かに無理をさせるわけにはいきませんね。」
それを聞いて、リベラとハッサンもミレーユの気持ちを理解した。
そして彼らはぐったりと眠っているバーバラのそばにやってきた。
「バーバラ。お前はこの世界に来てから、強力なベギラマやベギラゴンといった攻撃呪文で活躍してくれただけでなく、ベホマで頼もしい回復役にもなってくれたよな。もしあのマダンテによるけがが無かったら、お前は間違いなく俺達の誰よりも大活躍していたはずだったのに…。どんなに悔しかったろうな…。」
「君は代償を背負ってまで僕達に会いに来てくれた。自分の武器と引き換えにしてまで僕に炎の剣を買わせてくれた。僕達をメガンテから救ってくれた。呪文の先生になってくれた。ホイミタンクにもなってくれた。君がこの世界で残してくれた功績は絶対に忘れないよ。本当にありがとう。もう頑張らなくていいからね。大好きだよ。」
ハッサンとリベラは泣きそうになりながら彼女をねぎらった。
そしてリベラは彼女を抱え上げると壁のところまで歩いていき、彼女を床におろして、背中を壁にもたれさせた。
ミレーユはバーバラの身に付けているはやてのリングを外して自分が装備し、ホイミンは炎のツメを受け取った。
そしてリベラはラミアスの剣を振りかざしてバリアを作り、彼女を包み込んだ。
3人と1匹は全員のHPを全回復させた後に祈りの指輪でMPを回復させて、バーバラを見送るように下の階に降りていった。
地下7階。階段からすぐの場所は大広間となっており、そこには石像になったカンダタと子分達の姿があった。
リベラ「敵だったとはいえ、こんな姿になるとなんだかかわいそうだな。」
ハッサン「でも言い換えれば、さらに強い敵がこの先にいるってことだよな。」
ミレーユ「そうね。どうやらこの先に大ボスがいるってことになるわね。」
ホイミン「ということは、そのボスを倒せばまた平和になりそうですね。」
彼らは気合を入れて、広間の壁にある扉に向かっていった。
扉の近くでは、石像にされたモンスター達が何匹もいた。
「ここ、気味が悪い。悪趣味なボスなんだな、きっと。」
リベラをはじめ、パーティー一行は不安げな表情をしながら扉を開いて中に進んでいくと、そこには誰かが待ち伏せをするように立っていた。
「うひょひょひょー!!お前達、よくここまで来られたな。」
そう言ってあざ笑う男は、ドグマだった。
彼のかたわらにはゾゾゲルがいた。
この2人は以前のリベラ達の旅の中で唯一勝つことが出来ず、倒せないまま姿をくらましていた相手だった。
そのため、リベラにとってはその後、どうしてしまったんだろうという疑問があった。
話によると彼らはあれから別世界に逃げていき、そこでひそかにカンダタやあくまのきし、キラーマジンガ、デススタッフなどに協力をしてもらい、そしてひそかに2ヶ所のアジトを作って機会をじっと伺っていたということだった。
リベラ「お前達、せっかく世の中が平和になったのに、なぜこんなことをしたんだ?」
ドグマ「大魔王デスタムーアがいなくなって、今度は自分達がこの世界を支配するチャンスだと思ったからよ。そしていいところまでその計画が進んだが、テリー率いるパーティーが別アジトをつぶしていったせいでそのプランがかなり遅れてしまった。そこでゴーレムやジャミを連れてきたが、そいつらにも勝てるとはな。」
「お前達の思い通りにはさせないぞ!せっかく訪れた平和を乱されてたまるか!」
「ほう。そう言うのであれば、かかってくるがよい。どうせお前達は以前のように返り討ちにされるのだからな。」
「2度も同じ手は食わないぞ。絶対に勝ってやる!」
リベラの表情は怒りに満ちていた。
戦闘になると、ドグマは自分の周りにバリアを張った。
(こいつもジャミやカンダタと同じ手を使うのか。だったら、そのバリアを剥がしてやる!)
リベラは自分にバイキルトをかけた。
ミレーユはスクルトを唱え、ホイミンは氷のやいばの通常攻撃でゾゾゲルにダメージを与えた。
ゾゾゲルは五月雨ぎりで全員にダメージを与えてきた。
そしてハッサンは大きく息を吸い込み、気合ためをした。
次のターンでミレーユは再度スクルトを唱え、リベラは力いっぱいの通常攻撃を叩き込み、バリアを剥がした。
「ほう。お前さんの剣にはそんな効果があるのか。気に入ったぞ。」
ドグマは全く動揺することもなく、不気味な笑みを浮かべながら様子を見ていた。
ゾゾゲルはまわし蹴りでリベラ達全員にダメージを与えた。
そのタイミングを見計らった上でホイミンはベホマラーを唱え、HPを回復させた。
ハッサンは強力な一撃をゾゾゲルに叩き込んだ。
その頃、マーズの館では、ターニアがリベラ達の帰りを待ち続けていた。
「グランマーズさん、お兄ちゃん達の様子を見せてもらってもいいですか?」
「どうしたんじゃ?何か不安でもあるのか?」
「はい…。何だか嫌な予感がするんです。本当に無事に帰って来られるのかどうか…。」
「そうか。実はな、わしも同じ気持ちがするんじゃ。最後に待ち受けているボスは、正々堂々とは到底言い難いやり方をするからのう。」
「そうなんですか?じゃあ、お兄ちゃん達は本当に勝てるんでしょうか?」
「やり方次第では勝てるかもしれん。じゃが、その後に待ち受ける現実を彼らが受け入れられるかどうかの方が心配じゃがの…。」
「それはお姉ちゃんと会えなくなることですか?」
「まあそうじゃが…。」
重い表情でうつむいてしまったグランマーズを見て、ターニアは何か嫌な予感を感じ取った。
「あの…、この後お兄ちゃんがどうなるのかを教えてもらえますか?」
「そんなことをしたら運命を変えてしまうことになる。未来のことは話すわけにはいかん。」
「お願いします!どうか教えてください!」
「お前さんの人生にも影響を及ぼすじゃろうし、未来を狂わせることになるかもしれんぞい。」
「構いません!お願いします!!」
ターニアの気持ちは本気だった。
「…分かった。では、お前さんには特別に見せることにしよう。」
グランマーズは渋々と言った感じで水晶玉に手をかざし、リベラ達を映し出してくれた。
そしてひと足早く未来の光景を見届けたターニアはいてもたってもいられなくなった。
「おばあさん!あのアジトの入口まで私を連れていってください!お願いします!」
「…そうか。よかろう…。じゃあ、今から瞬間移動をしていくぞい。しっかりとわしにつかまるんじゃ。」
「分かりました。」
グランマーズの了解を得て、ターニアはアジトへと向かっていくことになった。
リベラ達が戦っているさなか、バリアが解除されたのとほぼ同時に目を覚ましたバーバラは、痛みをこらえながら立ち上がり、みんなを探し始めた。
「イタタタ…。みんな、どこ?あたしを置いていくなんて…、ひどい…。」
すでに両手にはかなりの痛みが走っており、特に左手は握力がほとんどない状態の中で、彼女は時々表情をゆがませながら階段を下りていき、扉の前までやってきた。
すると、中からかすかに声が聞こえてきた。
「ここね。ここでみんなが…。」
微力でもいいから何か力になるために扉を開けようとすると、ふと『うひょひょひょ。お前達、よくここまで戦ったな。だが、ここまでだ。あの時と同じようにムラサキの瞳の洗礼を受けるがよい!』という不気味な声が聞こえてきた。
すると、続けざまに『か、体が…。』というリベラの声が聞こえ、ハッサン、ミレーユ、ホイミンの苦しそうな声も聞こえてきた。
『さあ、苦しめ!身動きが取れない恐怖を味わえ!そして勇者よ。お前のその剣の効果を頂くぞ。これでバイキルトも、バリア剥がしの効果もこちらのものだ。そしてこちらでバイキルトを使い、お前達を滅多切りにしてやる!うひょひょひょ…。』
ドグマの不気味な声が聞こえ、バーバラはじっとしていられなくなった。
「早く何とかしないと、みんなやられてしまうわ…。」
彼女はリベラ達を助けたい一心で体に力を込めた。
「あたしはどうなってもいい…。みんな絶対に生き延びて…、平和に過ごしてちょうだい…。ハッサン、ミレーユ。あなた達だけでも、どうか幸せになってね…。リベラのこと、頼んだわよ…。」
バーバラの声は、本人達の心にも届いていた。
(お前、まさか、あれを使う気か。頼むからそれだけはやめてくれ!)
(そんなことをしたら、あなたは間違いなく夢の世界に帰れなくなるわ!)
(俺達はよ、お前とリベラと一緒に幸せになりたいと考えているんだ。)
(あなた達を不幸にしたまま、私達だけが幸せにはなれないわ。)
ハッサンとミレーユは最も恐れていたことが現実になることを感じ取った。
その予感はリベラも感じ取っていた。
(よせバーバラ!僕は君を守るって決めたんだ!君を代償から解放させて、幸せにするって決めたんだ!)
(リベラ…。再びあなたに会えてうれしかった…。たくさんの思い出を、ありがとう…。ひとつ心残りがあるとしたら、あたしのドレス姿を…、あなたに見せてあげたかった…。)
(そんな言い方するのはやめてくれ!絶対に君の夢を叶えてあげるから!)
(ごめんね…。)
すでに覚悟を決めているバーバラを、リベラは懸命に止めに行こうとした。
「頼む!この体、動いてくれ!動いてくれ!」
しかし、彼がいくらもがいたところで、体はしびれたまま動かなかった。
「さあお前達、もう言い残すことは無くなったかね?よろしい。では今からその最強の剣そのものを頂くとしよう。お前達の命もあとわずかだ。せめて苦しまないように一瞬でカタを付けてやるぞ。」
ドグマはムラサキの瞳を解除すると、勝ち誇ったよう笑みを浮かべながらリベラに近寄ってきた。
するとその時、扉をメラミで壊す形でバーバラが部屋に入ってきた。
「よくもあたしの大切な仲間達を!」
「何だ、まだ一人いたのか?」
「くらえーーーっ!」
バーバラは驚くドグマを鬼のような形相でにらみつけながら魔力を一気に暴走させていった。
「やめろーーーーっ!!」
リベラは動けない状態のまま、大声で叫んだ。
(さよなら…。)
バーバラの心の声がみんなに届いた次の瞬間…。
「マダンテーーーーーッ!!!」