「正直に言うわね。彼女の実体は…。」
「実体は?」
「この世界には無いわ…。」
「えっ…?」
ミレーユの発言に、リベラは固まってしまった。
「それじゃ、リベラとバーバラが俺達と一緒に祝福してもらう姿は、夢のまた夢ってことなのか?」
「……。」
ミレーユは何も言わず、ハッサンの顔を見つめていた。
「なあ、本当にバーバラの実体は無いって言い切れるのかよ!本当にこの世界の隅々まで探したのかよ!」
「もう、探す必要は無いわ。」
「それじゃ、隅々まで探しもせずに捜索を打ち切りにするのかよ!」
「……。」
ミレーユは再び何も言わなくなってしまった。
すると、リベラはスクッと立ち上がった。
「分かった。この世界に無いのなら、別の世界に行く。」
「お前、何を言ってんだよ!本気で言ってんのか!」
「本気だ。きっとどこかの世界にある。僕はそう信じる。」
「お前なあ。言葉の裏をかいてどうすんだよ!」
「フン。確かにリベラの考え方は一理あるな。」
ハッサンがムキになっていると、ふとテリーが会話に割り込んできた。
「お前まで何を言ってんだよ。」
「確かにバーバラの実体は『この世界には』存在しないだろうな。」
「じゃあ、カルベローナが攻撃された時に実体が消滅したと見せかけて、実は別世界に飛ばされたとでもいうんじゃないだろうな!」
「そういうわけだ。」
テリーは冷静に言い放った。
そして彼は異世界に行ったデュナンとデュアナのその後について話してくれた。
風の精霊によると、その世界でデュランに関する情報は聞けなかったが、彼の妻、つまり彼らの母親に関する情報をつかみ、2人は最終的に再会を果たしたそうだ。
ハッサン「そうか。それは良かったな。」
「だが、その時点で彼女はすでに重い病を患っていて、余命いくばくもなかったそうだ。それで、彼らは母親を救おうと懸命に看病をしたよ。」
リベラ「それで、彼らの母さんはどうなったの?」
「最終的に『お母さんは立派に成長したお前達に会えて、本当に幸せだったよ。』と言い残し、幸せそうな顔をしながら召されていったよ。そしてデュナンとデュアナは泣いて泣いて泣き続けた末に、形見の品を持ってこの世界に戻ってきたぜ。」
テリーは彼らが深い悲しみを抱えながらも、母親に会えたことで、新たな強さを身に付けたことを実感していた。
「そうか。死んだんじゃなくて、異世界に飛ばされたんだね。だったら、きっとバーバラの実体もそうなったんだよ。僕はそう信じる。ミレーユ、どうか僕を異世界に送ってくれ。」
リベラの表情には強い決意がみなぎっていた。
「本当に行く気なの?」
「うん、ミレーユ。」
「そこにはね、この世界には存在しないものがいくつもあるわ。」
「例えばどんな?」
「呪文で言うなら、メラゾーマ、ベギラゴン、イオナズン、マヒャド、バギクロスを上回るものがあるし、アイテムなら特やくそう、超・命の木の実や幸せのくつなどが存在するわ。」
ハッサン「それはすげえな。ぜひその世界に行ってみたいぜ。」
「でもね、敵も強いの。少なくとも、今のあなた達では到底勝ち目はないわ。それに、私達の前で敵を召喚してきて、今は月鏡の塔に住んでいる難民モンスター達も言っていたけれど、その世界には魔王もいるし、治安も決して良くはないの。それでも行く覚悟がある?」
「うっ、それは…。」
「僕は行く。バーバラのためなら、どんな危険な場所だって行ってやる。」
ミレーユの忠告を聞いて、ハッサンは思わず怖気付いてしまったが、リベラの決意は揺るがなかった。
「その言葉に二言は無い?」
「うん!」
「分かったわ。じゃあ、その世界に行ったら、まずウォルロ村で宿屋を営んでいるリッカという少女に会って、話を聞いてみて。多分そこで記憶も言葉も名前も忘れてしまい、会話も出来ず、字も書けない少女に関する情報が聞けると思うわ。」
ミレーユはリベラが行こうと思っている世界に関する情報を色々話してくれた。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。お前、何でそこまで知っているんだよ!?」
ハッサンは思いもよらない発言に思わず驚いていた。
「実は、少し前におばあちゃんと一緒にその世界に行ってきたの。そして、そこでおばあちゃんが水晶玉で占った結果、『アシュリン』という名前をつけてもらって、保護されている少女の姿が映ったのよ。」
「その段階ですでにそこまで知っていたのなら、何で教えてくれなかったんだよ!」
「教えたところで、カンダタのアジトに向かうことになっていたし、それに時間が無かったの。たとえその世界に行ったとしても、すぐに行ける場所ではないし、バーバラが帰らなければならない時が来てしまうから。」
ミレーユは情報をつかみながら、今まで黙っていたことを謝った。
「僕は平気だよ。バーバラの代償を解除する方法を教えてくれてありがとう。きっと僕が彼女を見つけてみせる。」
「ありがとう。そう言ってもらえて、良かったわ。じゃあ、準備が整ったらあなたがその世界に行けるようにしてあげるからね。それまでに、あなたは月鏡の塔に住んでいるモンスターに会って、その世界についての情報を集めておいてね。」
「分かった。早速行ってくるよ。」
「だったらよ、俺も行くぜ。」
「ハッサン、いいの?」
「ああ。俺もこの命を救ってくれた彼女のために役に立ちたいし、お前とならどこまでもついていくぜ。」
「ありがとう。」
こうして、リベラとハッサンは一緒に異世界に行くことになった。
そして2人は外に出るとすぐにルーラを唱え、情報集めのために塔へと向かっていった。
その後、グランマーズがゴレムス、オークス、ピエールがこの世界にやってきたことを突き止めた。
それを受けて、リベラ、ハッサン、ミレーユ、テリーは彼らに会いに行った。
以前は人間の言葉をうまく話せなかったゴレムスは、その後熱心に言葉の勉強をしたようで、ある程度人間の言葉を覚え、通訳なしでも会話が出来るようになっていた。
ゴレムス達はお世話になった人達との再会を喜びながらも、ホイミンとバーバラがどうしているのかを聞いてきたため、リベラ達は彼らの近況について話した。
オークス「そうか。ホイミンは月鏡の塔で元気に過ごしている一方で、バーバラがそんなことに…。」
ピエール「何とか命を取り留めてくれたのはうれしいですが、このままではもう直接会えないんですね。」
ゴレムス「オレタチ…、ナニカ…、キョーリョク…スル…アゲタイ…。」
彼らはリベラ達に協力を申し出てきた。
「どうもありがとう。実は私達、これから2つの世界に出かけようとしているところなのよ。」
ミレーユは自分がテリーとホイミンと一緒に、かつてグランマーズの住んでいた世界に行くつもりで、リベラとハッサンがアシュリンという名の少女を探すために、別の世界に行くつもりであることを伝えた。
「でもよ、わざわざ二手に分かれなくてもいいんじゃねえか?」
「そうですよ。みんなで行けば心強いのに。」
オークスとピエールの質問に対し、リベラ達は一度に行ける人数が4人までに限られていることを挙げた。
そしてリベラとハッサンは帰りの人数が行きよりも一人増えるという理由で、3人までしか行けないこと。
ミレーユはホイミンを助手に迎えた上でグランマーズ自身が超・キメラの翼の完成版を作り出す時に利用した錬金の技術を学び、自分でそのアイテムを複数作り出すつもりであること。
同じ世界にはデュランがいるという情報をつかんだため、テリーが単身で彼のもとに向かおうとしていることを話した。
ピエール「でも、リベラさん達が行く世界には錬金が無いのですか?」
「あるにはあるそうだけれど、場所も、同じ技術なのかも分からないから、ミレーユはグランマーズさんのいた世界に行くことにしたんだ。」
ハッサン「それに、俺とミレーユも、一度離れ離れになってリベラとバーバラと同じ試練を乗り越えたいと思ったからよ。」
テリー「さらに言うとな、最初はデュナンとデュアナも一緒に行きたいと言い出したことを受けて、姉さんは自分と俺を加えた4人で行くことを提案したんだが、俺は反対したんだ。」
「ナゼ…、ハンタイ…スル…?」
「単にそのガキども2人では実力不足で足手まといになると思ったからな。相当修行を積まなければ同行させるわけにはいかねえと思ったんだ。」
テリーは続けざまに、ホイミンがどうしても行かせてほしいと申し出たため、ミレーユと一緒に錬金を学び、アイテムを集める時には氷のやいばを装備して彼女と出かけるつもりであることを伝えた。
オークス「それならよ。それぞれあと一人ずつ行けるってことだよな?」
ハッサン「ああ、そうだぜ。」
ピエール「それなら僕達を連れて行ってくれませんか?」
リベラ「えっ?いいの?」
「オレタチ…、ツヨイ…。チカラ…、ナレル…。」
ゴレムス達はアジトでお世話になったお礼として、仲間に加わってくれることになった。
「それはありがたいわね。ただ、各パーティーに一人ずつしか行くことが出来ないから、残りの一人はこの世界に残留することになるわね。」
テリー「だったらよ。残留となる一人はチャモロとセリーナと一緒に慈善活動の旅でもしながらデュナンとデュアナを鍛えてやってくれ。」
「そうか、分かったぜ。」
「じゃあ、協力させていただきます。」
「オレタチ…、ヤクニタツ…。」
オークス、ピエール、ゴレムスが話し合いでリベラ達のパーティー、ミレーユ達のパーティー、チャモロ達のパーティーに一人ずつ加わることになった。
そして、ゴレムス達は月鏡の塔に行ってデュナン、デュアナに会い、自己紹介をした後、修行の相手をすることを申し出た。
デュナンとデュアナは喜んでその依頼を引き受けてくれた。
その後、リベラ、ハッサン、ミレーユ、チャモロ、テリーはこれからのことをバーバラに伝えるためにマーズの館に集まった。
水晶玉で映像を映し出すと、彼女は相変わらず両肩から両手にかけてはおびただしいほどの包帯が巻かれている上に、左腕を三角巾で吊り上げている状態のままだった。
しかし目隠しも取れた上に、一人で立ち上がってゆっくりと歩けるまでに回復しており、ゼニス王の部屋の前にやってくると、足で扉をノックした。
ゼニス王はバーバラを部屋に入れると鏡でこちらの世界をつないでくれたため、お互い会話が出来る状態になった。
リベラ「バーバラ。本当にそこまで元気になってくれたんだね。」
『うん。あれからエリーゼがパデキアの根っことさえずりの蜜を手に入れた上でここに戻ってきて、あたしに飲ませてくれたの。そのおかげで病気も治ったし、声もはっきりと出るようになったの。本当にエリーゼには感謝しているわ。』
チャモロ「でも、その手で食事は大丈夫なんでしょうか?」
『痛み止めが効いていれば、右手でものをつかんでゆっくりと手を動かし、口に運ぶことが出来るようになったわ。それまでは誰かに食べさせてもらってばかりだったけれど、パンならどうにか自分で食べられるようになったわよ。』
彼女はもう少し右手が治って痛み止めが必要無くなれば、ゼニスの城からカルベローナの自分の部屋に移り、そこで療養生活を送るつもりであることを伝えた。
ミレーユ「でも、今そこにはターニアとエリーゼがいないようだけれど、彼女達はどうしたの?」
『2人は今、ダーマ神殿に行っているわ。そしてターニアはあたしと同様にまず魔法使いに転職して、エリーゼと稽古をしてメラミを覚え、それから僧侶に転職して最終的にベホマまで覚えるつもりでいるわ。』
テリー「ベホマってことは、長い道のりになるな。」
『そうよ。だからターニアはエリーゼの世界に行って、色々修行を積むつもりでいるわ。』
ハッサン「ちょっと待てよ。それじゃ、お前が一人で過ごすのかよ。」
『大丈夫。エリーゼが未来の世界から戻ってくる時に、シンシアとアリーナを連れてきてくれたの。そして交代で一人があたしの面倒を見て、もう一人がこの世界をまわりながら修行を積むことになったの。』
バーバラはさらに、自分のHPがわずかしかない上に病弱な体になってしまったため、これからも命の木の実やパデキアの根っこが必要であること。
そして、リベラがまどうしのローブを持っているのを見て、それを使っていいことを話してくれた。
「本当に、僕にこのローブをくれるの?」
『うん。あたしの思い出の品だけれど、役に立つのならあげるわ。』
「ありがとう。じゃあ、これから縫い直してもらって、僕にも装備出来るようにしておくよ。」
『出来上がったら、その姿をあたしにも見せてくれる?』
「うん、いいよ。」
その後、彼女は右手が少しずつ動くようになってきたので、左手もきっとよくなると信じていることを話してくれた。
(そうか。左手の自由を失ったことを、バーバラは知らないんだ。でも、きっと僕達が夢の世界に行って、その手を治してあげるからね。待っててね。)
リベラは心の中でそっと誓った。
数日後。彼らが異世界にいく準備が整ったため、リベラはその前にもう一度バーバラに会って話をすることにした。
「バーバラ。僕がまどうしのローブを着ている姿、どう?」
『似合っているわよ。大事に使ってね。』
「うん。君のおかげで手に入った炎の剣と、回復呪文を込められることを教えてくれた力の盾ともども、大事に使うからね。」
『ありがとう。あたしのこと、忘れないでね。』
「うん。一日として忘れないよ。バーバラ。僕達、しばらく離れ離れになるけれど、心はいつも一緒だからね。そして、出かける前に、一つ約束して欲しいことがあるんだ。」
『何?約束って。』
「あのね。僕、君を守るって言っておいて、不幸にしてしまったけれど…。」
『そんなことないわ。あたしは幸せだったわよ。あたし、下の世界に行ったこと、1ミリも後悔なんてしてないからね。』
「本当に?」
『うん。』
リベラはバーバラのやさしさに、思わず涙ぐみそうになった。
「ありがとう。そのお礼ってわけじゃないんだけれど、僕、アシュリンと呼ばれている少女を連れて、たくさんの命の木の実を持って、超・キメラの翼で夢の世界に行くよ。そして君の代償を解除して、どこにでも自由に行けるようにしてみせる。それがかなったら、もう君を離さない。今までつらい思いをさせた分、今度は君を絶対に幸せにする。だから…。」
『だから?』
「あの…、僕の…。」
『何?ねえ、照れてないで話してよ。』
「僕の…、婚約者になってくださいっ!」
リベラは顔を真っ赤にしながら告白をした。
『うん、いいよ。』
「えっ?本当に?」
『あたしもそうなれたらいいなって思っていたの。頑張ってね。待っているから。』
バーバラがにっこりと微笑んでいると、突然ハッサン、ミレーユ、チャモロ、テリー、アモスが押し掛けてきて、リベラをもみくちゃにしながら祝福をしてくれた。
さらに水晶玉の向こうではターニアとエリーゼがやってきて、バーバラを祝福をしてくれた。
リベラとバーバラは顔を真っ赤にしながらも、満面の笑みで喜んでいた。
さあ、これから2人が交わした約束を果たすための旅が始まる。
リベラはまずこの世界に残留し、旅に出かけるチャモロ、セリーナ、デュナン、デュアナ、そして一人の仲間の後ろ姿を見つめた。
そしてミレーユ、テリー、ホイミンが別の仲間を加えて異世界に向かっていくのを見届けた後、自身もハッサンと残りの一人を連れて、異世界へと向かっていった。
バーバラ…。しばらく会えなくなるけれど、待っていてね。
必ずアシュリンという名の少女を連れて、君のもとに行くから。
(終わり)
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
なお、各パーティーがゴレムス、オークス、ピエールの誰を連れていったのかについては、読者の想像にお任せします。
リベラとバーバラのその後については直接書きませんが、僕自身が書いた詞で想像していただければ幸いです。
この詞は元々この作品を書き始める前にすでに出来上がっていました。
作中ではQuest.33でバーバラとターニアが書いたという設定になっており、この作品のタイトルと、Quest.12、38のタイトルはこの詞に由来しています。
タイトルはありますが、あえて伏せておくことにします。
We have our wings to fly away
Here we go
We can go everywhere beyond the blue sky
Believing in the Promised Land
Now is the time to fly away
Here we go
Even if someone says it's a dream of dreams
Let's make our dream come true
On the way of our journey
Anger, sadness, pain, hate, anxiety
Negative ones possess us
There'd be even hopeless days
Even if so
Nothing to fear
We can do it when we believe
We are always together
We have our wings to fly away
Here we go
We can do anything as long as you're here
Believing in our hopeful days
Now is the time to fly away
Here we go
I am never alone, lonely or sad
Together till the end of our lives
Even when someone says it's a dream of dreams
Let's make our dream come true