夢のまた夢と言われても   作:地球の星

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Quest.6 テリー外伝 デュランの子供達(前編)

 一緒に宿屋に泊ったアモスとテリーは、朝、ほとんど同時にベッドから起き上がった。

「おはようございます、テリーさん。夕べはよくお休みでしたね。」

「ああ、よく寝た。って、あんたは起きていたのか?」

「そういうわけではないんですが、ちょっと寝つきが悪くて。たまにはこんな日もあります。まあ、もしテリーさんが女の人と一緒に泊まっていたら、違うセリフを用意したかもしれませんが。」

「何だそれは。変なことを言うな。」

「あっ、失礼しました。」

 彼らは朝食をとった後、宿をチェックアウトした。

 そしてお店で薬草や聖水、さらにはお弁当を買った。

「アモっさん、わりいな。あんたのお金でここまで買ってもらって。」

「気にしないでください。昨日の盗賊からもらったアイテムやお金で買ったまでですから。」

「俺から何かお返し出来ればいいんだがな。」

「お返しなんていいです。ここから先はお互い別行動になりますから、準備はしっかりとしておきましょう。」

「まあな。でも俺は強いから別にいいけどな。」

 テリーはキザな笑いを浮かべ、髪をかき上げた。

「あの、テリーさん。いくらあなたが戦士、武闘家、僧侶、魔法使いを極めているからって、油断は禁物ですよ。第一あなたを引換券とディスられないように、こういう能力にしてくれた人に感謝しなければ。」

「……。」

 テリーはアモスのメタな発言に何も言い返せず、額に汗をかいていた。

「では、私はキメラの翼でモンストルの町に戻ります。テリーさん、お元気で。またお会いましょう。」

「ああ、じゃあな。」

 彼らは会話を終えると、ルーラの呪文とキメラの翼で町を後にしていった。

 

 アークボルトに降り立ったテリーは、徒歩で旅人の洞くつへと向かっていった。

 ここにはかつてリベラ達と一緒に冒険の旅をしたドランゴがおり、自らが産んだ卵を見守りながら過ごしていた。

 以前、彼女がここにいた時には、トンネルの工事を遅らせる原因となり、人々に嫌がられる存在であったものの、現在は人間達とすっかり和解し、定住を許された。

 毎日卵を温めるばかりの退屈な日々ではあったが、人々が時々食べ物を差し入れてくれていたため、生活にはそれ程困ることはなかった。

 

 今日も卵を見守りながらじっとしていると、ふと誰かが洞くつにやってくる気配を感じた。

「ギルルン…。誰…かしら?」

 それまで眠気まなこだった彼女はそうつぶやくと、しっかりと目を開いて辺りを見渡した。

 すると「また会えたな。」と言いながら、テリーが姿を現した。

「テリー…。会えてうれしい…。ギルル…ン。」

「あれからまた卵を産んだんだな。」

「そう…。」

「それを見て思い出したんだが、以前、それをつぶしてしまってすまなかったな。」

「ギルル…ン。もう…、過去…のこと…。」

「そうか。俺は今でもあの時の行動を悔やんでいるが、そう言ってくれるのなら、少しは救われた気分だ。正直、到底償いきれるようなものではないが、出来る限りで償いをしたい。もう絶対にひどいことはしないし、ほしいものがあるなら何でも用意してやる。」

「じゃあ、私…、うさみみ…ほしい…。」

「そうか、ちょうどいい。実はそれを今日持ってきたんだ。」

 テリーはそう言うと、袋からうさみみバンドを取り出した。

「うさみみ…、うさみみ…、ギルル…ン。」

 ドランゴは頭をあげ、うれしそうにつぶやいた。

「じゃあ、着けさせてやるよ。」

 テリーは彼女のところに歩みよると、それを頭に装備させた。

「うさみみ…、うれしい…。」

 ドランゴは自分の願いがかなったことを素直に喜んでいた。

 彼女はさらに、お腹がすいてきたから何か食べる物が欲しいというお願いをしてきた。

「何が食べたいんだ?」

「ギルル…ン。町の人…、聞くと…分かる…。」

「分かった。お金はある程度あるから、色々買ってきてやる。」

「うれしい…。やさしい…。」

 ドランゴはそう言うと、洞くつから出ていくテリーを優しい目で見守った。

 

 30分後、テリーはたくさんの食べ物を持って戻ってくると、ドランゴの前にそれを置いた。

 それを見て、彼女は「ありがとう…。」と言って、おいしそうに食べ始めた。

 その様子をテリーは何も言わずにじっと見つめていた。

 ドランゴは食事を終えると、再び卵を温めることに専念し始めた。

「それじゃ、俺はまたすぐに旅に出る。短い時間だったが、じゃあな。」

「ギルル…ン。テリー…、もっと…一緒に…いたい…。」

「わりい。俺も忙しいんだ。」

 テリーはそう言い放つと、ドランゴに背を向けて、早足で立ち去って行った。

「もっと…、一緒に…、いたかった…。」

 彼女の表情はどこか寂しげだった。

 

 洞くつから出てきたテリーは、次の目的地に向かってひたすら歩き続けていた。

 そうしているうちに、ふと見たことのある実のついた木を見つけた。

「あの実は何だ?」

 彼はその木に登っていき、試しに1個取ってみた。

「おおっ!これは命の木の実じゃねえか!でもまだちょっと未熟だな。まあいい。せっかく取ったんだから、とりあえず食べてみよう。」

 食べた結果、渋みがあったが、どうにか飲み込むことはできた。

「とりあえず、次はしっかりと熟したものを取ろう。」

 彼はそう言って、さらに高く登っていき、熟した実がないか探した。

 そして最終的に6個を取り、その場で2個を食べ、残りをカバンの中に入れた。

 

 それから彼は数時間歩き続けた。

 そろそろお弁当を食べようとしていた頃、森の中を歩いていると、ふと誰かがいるような気配を感じた。

「ん?何だ?誰かいるのか?」

 彼はとっさに剣を抜いて身構えた。 

 すると、木の陰から幼い男の子と女の子が現れた。

(子供が2人?そう言えば、こいつら誰かと似ているな。)

 テリーはそう思いながらとりあえず様子を見ることにした。

 すると幼い2人は

「僕達お腹すいた!」

「あたし達に食べ物ちょうだい!」

 と言いながら、いきなり襲いかかってきた。

(ちっ、子供とはいえ、襲いかかって来ては仕方ない。戦うしかないか。)

 結果、テリー対モンスターの2人との戦闘になった。

 しかし、まだ戦い方を教えてもらってないせいか、彼らの動きは大ざっぱで、隙だらけだった。

 そのため、テリーは相手の攻撃をひょいひょいかわし続けた。

 そうしていると、男の子のお腹から「グウゥゥッ。」という音が聞こえてきた。

「食べ物おぉっ!」

 彼はそう言いながら、しきりにカバンに手を伸ばしてきた。

(どうやら俺を倒すわけじゃねえようだな。だが、攻撃をかわしてばかりでは戦闘が終わらねえ。何とかしなければ…。)

 何かいい方法がないか考えていると、ふと自分のカバンをグイッと引っ張られる感覚を覚えた。

 とっさに視線を移すと、そこには女の子がいて、カバンの口を開けて中に手を入れていた。

「お兄ちゃん、食べ物よ!」

 女の子はそう言うと、入っていた薬草をわしづかみにしていた。

「どけ!この野郎!」

 テリーはカッとなって女の子に蹴りを入れた。

「きゃあっ!」

 女の子は突き飛ばされるように後ろ向きに倒れこんだ。それと同時に手に持っていた薬草が辺りに散らばった。

「デュアナ!よくもデュアナを!」

 男の子はムキになって襲いかかってきた。

 しかし、テリーは攻撃をかわすと彼にも蹴りをくらわせた。

「ぎゃああっ!」

 男の子はデュアナと呼ばれた女の子同様に倒れこんでしまった。

 戦闘はあっけなく終わった。

 モンスターの2人はおびえるように立ち上がると、一目散に逃げようとしたが、テリーが大声で「待て!」と叫んだことで、ビクッとして立ち止まった。

「お前達、デュランの子か?」

「えっ?父ちゃんを知ってるのか?」

「人間があたしのパパと知り合い?」

 2人は驚きながらテリーの方を向いた。

「やはりデュランの子供か。俺の名はテリー。お前達の父デュランと一緒に過ごしたことがある人間だ。お前達、確か女の子の名前はデュアナだよな?」

「そう。そして、お兄ちゃんの名前はデュナン。」

「そうか。ではデュナン、そしてデュアナ。まずはお腹がすいているだろう。俺の持っている食べ物を分けてやるから、まずは食事でもしよう。」

「本当?僕達に食べ物くれるの?」

「毒入ってないよね?」

「安心しろ。第一、それだったら俺自身が食えねえだろ!」

 テリーはそう言うと、散らばった薬草を集め、さらにお弁当を2人に与えた。

 彼らはよほど空腹だったのか、次々と食べ物を口の中に放り込んでいった。

 しかしそれでもお腹がいっぱいにならなかったため、ついには命の木の実までも与えてしまった。

 

 食事が終わった後、テリーは2人がどうして空腹状態で森の中にいたのかを問いかけた。

 彼らの話によると、大魔王が倒されてから住み家を失い、あてもなくさまよい歩く日々を送っていたそうだ。

 空腹になった時には人間の住む町に立ち寄り、なけなしのお金をはたいて店で買い物をしようとしたが、「モンスターに物は売れませんわ。お引き取りあそばせ。」と言われて追い返されてしまう有様だった。

 さらには誰もいない民家でタンスやツボの中を調べ、食べられそうなものがあれば何でも口に入れていたそうだ。

 しかし後でお腹を壊したり、人に見つかって殴られたりしたこともあった。

 お金も食べ物も住むところもない。

 そんな日々に耐えながら、2人で肩を寄せ合って生き延びてきたということだった。

(そうか。世界が平和になった一方で、こんなかわいそうな子供達を生み出してしまうことになるとは…。)

 テリーは思いもよらない現実を突き付けられ、動揺を隠せなかった。

 そして、敵対関係の種族でありながら、彼らを見捨てておけなくなってきた。

「分かった。じゃあ、一緒に近くの店に行こう。俺がそこで食べ物を手に入れてくる。」

「テリーお兄ちゃん、本当に?」

「あたし達のために?」

「ああ。ただ、お前達はどこかに隠れていろ。そこから動くんじゃないぞ。」

デュナン「はあい。」

デュアナ「うん…。」

 テリーしか頼れる相手のいない2人は、彼に同意するしか選択肢はなかった。

 それから3人は森から草原に出ると、近くの小さな集落に向かって歩いていった。

 そして彼らは言われたとおり、遠目から集落へと入っていくテリーの姿を見つめていた。

 

 食べ物を目の前にしたデュナンとデュアナは、取り合うようにそれらを手につかんでは、次々と口に運んでいった。

 そして久しぶりの満腹感を感じることが出来たことで、ようやく安堵の表情が見られた。

「お兄ちゃん、ありがとう。」

「あたしからもありがとう。」

「礼はいい。当然のことをしたまでだ。だがお前達、母親はどうしたんだ?」

 テリーは2人の気持ちが落ち着いた時をぬって、気になっていたことを問いかけてみた。

「母ちゃん?母ちゃんは…、その…。」

「ママ…、ママ…。会いたいよお…。」

 デュナンとデュアナはそうつぶやくと、表情が途端に曇り、こらえ切れなくなりそうになってきた。

(そうか。デュランだけでなく母親もいないとなれば、相当寂しくて辛い日々を過ごしてきたようだな。)

 テリー自身も長い間寂しい思いをしてきただけに、2人の気持ちは分かるような気がしていた。

(とにかく、今は俺しか頼れる人はいないようだな。しかもこいつらにとって姉さん達は父親のかたきを討つ相手になってしまうから、行くことも出来ない。そうなると、ドランゴに親代わりになってもらうしかないな。)

 彼は思い切ってそのアイデアを打ち明けてみた。

デュナン「ドランゴ?それってモンスター?」

「ああ。だが、モンスターにも人間にも慕われている。

デュアナ「じゃあ、面倒もみてくれるの?」

「分からない。でも俺の知る限り、頼れるのは彼女しかいない。だから今から向かおうと思うんだ。一緒に行くか?」

「分かった。行く。」

「お兄ちゃん、敵である人間よ。ワナかもしれないわよ!」

「行くしかないだろ!でなきゃ、ボク達は飢え死にしちゃうよ!」

「でも…。」

「父ちゃんと一緒に過ごしたことのある人間だぞ!ワナなもんか!」

「……。」

 デュナンが同意した一方、デュアナはまだ同意出来ずにいた。

「俺はお前達をだましたりはしない。信じてくれ。」

「…分かった。」

 デュアナは渋々ながらも同意をしてくれた。

「よし。では、ドランゴのところに行くぞ。」

2人「はい。」

 彼らの返事を聞いて、テリーはスクッと立ち上がり、ルーラで一緒にアークボルトに飛んでいった。

 3人はそこから徒歩で移動して山に入り、それを超えれば旅人の洞くつというところまでやってきた。

 そして、あと少しで洞くつにたどり着けるという時に、彼らはモンスターの気配を感じ取った。

「誰かいるな。それも、かなり強そうだ。」

 テリーはただならぬ表情で辺りを見渡した。

「強いの?お兄ちゃん。」

「ああ、デュナン。少なくともお前達では勝てない相手だ。俺から離れるなよ。」

「分かった。」

 モンスターの2人は、テリーの背中に隠れて辺りを見渡した。

 すると、左右両側から図体の大きなモンスターが1匹ずつ姿を現した。

「ゲヘヘヘ坊や達。運が悪かったな。」

「おとなしく俺達のエサになってくれ。」

 現れたのは、どちらもボストロールだった。

(くっ、これは強敵だ。よりによって痛恨の一撃を繰り出す奴に出くわすとは。しかもこいつらを守りながら戦わねばならないし、攻撃を避けることは出来ないな…。)

 厄介なモンスターと戦うことになり、テリーは焦りを隠せずにいた。

 一方のデュナンとデュアナの2人はおびえるばかりだったため、テリーだけで相手をすることになってしまった。

 

 ボストロールAがあらわれた!

 ボストロールBがあらわれた!

 

 1ターン目

 テリー:イオラ(両者にヒット)

 ボストロールA:通常攻撃(成功)

 ボストロールB:通常攻撃(成功)

(くっ、この2人さえいなければ攻撃をかわすなどたやすいことなのに、まずいな。)

 

 2ターン目

 テリー:ばくれつけん(Aに1回、Bに3回ヒット)

 ボストロールB:痛恨の一撃(成功)

 ボストロールA:通常攻撃(成功)

(痛恨はこたえるぜ…。くそっ、攻撃は1回お休みだ。)

 

 3ターン目

 テリー:ベホマ

 ボストロールA:通常攻撃(成功)

 ボストロールB:通常攻撃(成功)

 

「テリーお兄ちゃん、怖いよお…。」

「あたし達も殺されちゃうよお…。」

「うるせえぞ、お前ら!黙ってろ!」

A「ゲヘヘヘ…。お前らもエサにしてやるな。」

B「その前に、その人間を始末してやるからな。」

 

 ボストロールの力任せの攻撃に、さすがのテリーも苦戦していた。

(後編に続く)

 




名前の由来
デュナン(Dhunan)、デュアナ(Dhuana)
 デュランの子供ということで、デュナンはデュラン(Dhuran)のrをnに変えて命名しました。
 そしてnとaを入れ替えて、デュアナにしました。


 今回のエピソードは、元々はデュランが再登場し、主人公と再度戦闘をして分かり合うというような形を考えていました。
 しかし、サイトを色々見たところ、デュランは戦闘で死亡したことになっており、さらに僕はたとえフィクション作品であっても死んだキャラを生き返らせないことにしているため、結局登場を断念しました。
(※僕は子供の頃、人は死んでも生き返ると真面目に信じてしまった時があり、一度だけですが、一線を越えそうになったことがありました。幸い未遂に終わりましたが、後ですごく反省をしました。僕が「生き返らせる」をNGにしているのには、2度とあんな考え方をしないようにという思いが込められています。)
 そしてデュラン本人がだめなら子供を出してみようというアイデアを思いつき、ダイの大冒険のヒュンケルと、育ての父バルトスのエピソードを参考にしてこれを書きました。
 その際、デュランの子供達がリベラ達に会ってしまうと、改心前のヒュンケルのようにかたき討ちのような展開になってしまうため、執筆をした2022年3月時点におけるウクライナ情勢を考えると、とても書けませんでした。
 その展開を回避出来るのはテリーしかいないと思ったため、外伝という形で彼を主人公にし、このような形にしてみました。
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