(リベラ…、バーバラに会いたいのね。やっぱり彼女が忘れられないのね。分かったわ。じゃあ私、頑張って、夢の世界を映し出してみせるわね。もしそうなったら、必ず彼女の姿をあなたに見せてあげるわ。そして彼女の声も聞かせてあげるから。待っていてね。)
空を見上げて寂しそうな表情を見せるリベラを見ながら、ミレーユはそう心に誓った。
その日の午後、グランマーズが館に戻ってくると、ミレーユは早速その気持ちを伝えた。
「そうか、お前さんもそういう気持ちになったのか。まあ、いつかはそんな日が来ると思っておったがのう。」
「おばあちゃん、分かっていたの?」
「わしを誰だと思っておる。全てお見通しじゃ。じゃが、決して悪いことに使うでないぞ!」
「はい、約束します。」
「では、これから修行の日々を送ることになるぞい。占い師としての仕事と両立となれば忙しくなるが、良いな。」
「はい、分かりました。おばあちゃん、お願いします。」
その日以来、ミレーユはグランマーズの下で、さらなる修行に励む日々を送ることになった。
彼女はその合間に占い師としての仕事もこなし、人探しの依頼があれば積極的に占った。
良いこともある一方、時には恐れていた事態になってしまったこともあったが、それでもしっかりと現実を受け入れ、役目をしっかりと果たしていた。
ある日、ミレーユは水晶玉越しに、レイドック城の入口近くにいるリベラとハッサンの姿を映し出した。
2人はレイドックとシェーラと城壁の建て替え工事について話し合っていた。
『じゃあ僕とハッサンはこれから手伝ってくれる人を探しに行きます。』
『よし、行ってきなさい。私はこれから働く人達に作業の流れについて伝えておく。』
『私は予算を考慮しながら、彼らに支払う日当などについて考えておきますね。』
『父さん、母さん、ありがとうございます。じゃあ、僕は出かけてきます。』
リベラは両親に頭を下げると、ハッサンを連れてルーラで飛び立っていった。
(現実世界の相手の声を聞くのは失敗せずに出来るようになったわね。あとは夢の世界も映し出せれば。でも、その前にちょっと2人のその後を見てみようかしらね。)
ミレーユはリベラとハッサンの姿を映し続けた。
彼らはライフコッドに降り立つとターニアに会い、手を貸してくれないかお願いをした。
すると彼女は『お兄ちゃんのためなら喜んでやるわ!』と言って、笑顔で引き受けてくれた。
リベラ『良かった、引き受けてくれて。』
『それで、私はどこから通うの?』
『レイドック城に寝泊まりしながら働けるんだ。だから、ここから通う必要はないよ。』
『ええっ?じゃあ私、お城に住めるの?』
『うん、父さんがそう言っていた。』
『きゃーっ、うれしいっ!お兄ちゃんと一緒の場所に住めるなんて、私、幸せっ!』
『じゃあ、明日の朝迎えに来るから。待っていてね。』
『うんっ!』
その後、別の場所に移動した彼らが草原をブラブラ歩いていると、メタルスライムとおどる宝石が姿を現した。
『ぬおおおっ!経験値とお金がガッポリ稼げるじゃねえか!』
モンスターを見るなり、ハッサンの目の色が変わった。
『でも、ここはおどる宝石に集中しよう。』
『ええっ?お前だってメタルスライムを見た時、目の色を変えていたじゃねえか!』
『以前はね。でも今は違う。経験値よりもお金の方が大事だから。』
『ああ、そうだな。資金が増えればお前の両親も喜ぶからな。俺達の給料も増えるし。』
『そういうこと。』
2人は攻撃を全ておどる宝石に向けることにした。
1ターン目
メタルスライム:メラ(ハッサンにヒット)
リベラ:ルカニ(成功)
ハッサン:通常攻撃(成功)
おどる宝石:マホトーン(2人とも成功。ただしハッサンに効いても意味無し。)
2ターン目
メタルスライム:メラ(リベラにヒット)
リベラ:通常攻撃(成功)
おどる宝石:ギラ(2人にヒット)
ハッサン:せいけん突き(失敗)
3ターン目
ハッサン:捨て身(成功)
メタルスライムは逃げ出した!
おどる宝石:ルカナン(リベラには成功。ハッサンには失敗)
リベラ:通常攻撃(成功)
『それじゃ、あと一撃で倒せそうなので、ここでミレーユの真似をしてみたいと思います!』
『ハッサン、何をするつもりなんだ?』
リベラが問いかけると、ハッサンは突如『オーッ、ホッホッホッ!私は女王様よ。誰も私には逆らえなくてよ!』と言いながら持っていたこん棒でビシバシ叩き、おどる宝石を倒した。
『やったぜ!…って、リベラどうしたんだ?』
『いやあ、おもしろ過ぎて笑いが止まらなくなっちゃった。』
『そうか、そんなにウケたのか!そいつは良かったぜ!』
『うん。でもそれ、ミレーユの前ではやらないでね。』
『やるわけねえだろ!そんなことしたら俺が相手にされちまうぞ。』
『でも、ハッサンのことだから、叩かれる姿を一度見てみたいけれど。』
『やめてくれ!いくら彼女のことが好きになったとしても、そんな趣味はねえぞ!』
周りには誰もいないのをいいことに、言いたい放題の2人を見て、彼女は「本来なら『君達、後でちょっと話あるからね。』と言いたいところだけれど、それだと私がのぞき見していたことがバレておばあちゃんに怒られるから、ここは見逃すことにするわ…。」と言いながら、顔を引きつらせていた。
気を取り直したミレーユは、一旦映像を消すと再び水晶玉に手をかざし、力を込めた。
するとついにカルベローナの景色を映し出すことに成功した。
これまで何度も失敗を重ねてきただけに、喜びもひとしおだったが、現地の人々の声までは聞くことが出来なかった。
(うーーん、姿が見えたのはいいけれど、これではまだリベラに見せるわけにはいかないわね。もっとも彼は明日から城の工事に取り掛かってしまうから、それからになりそうだけれど…。)
彼女が笑顔を見せたのはほんの一瞬だけで、その表情はすぐに引き締まったものになった。
そして声は聞こえなくても、せめてバーバラの姿だけは映し出そうとしたが、いくら探しても彼女を見つけ出すことは出来なかった。
(どこにいるのかしら。もしかして、本当に姿が見えなくなってしまったの?)
次第に彼女の心には焦りがつのった。
そして、水晶玉を持って外出しているグランマーズに相談を持ちかけることにした。
『ミレーユはゼニスの城を探してみたかの?』
「ゼニスの城ですか?でも彼女はカルベローナの人ですよ。」
『バーバラはルーラでそこに行っている可能性もある。とにかく調べてみるがよい。』
「分かりました。では早速調べてみます。」
そのアドバイスを受けて、ミレーユはゼニスの城に照準を合わせた。
すると、ゼニス王と一緒に歩いている赤毛の少女を映し出すことに成功した。
「この子、間違いない!バーバラだわ!やっと見つけたわ!良かった。元気そうね。」
ミレーユは満面の笑みを浮かべた。
しかも2人が会話をしている声も聞こえていたため、彼女はビックリしてしまった。
「えっ?どうして?カルベローナでは声が聞こえなかったのに。」
状況を理解出来ない彼女は、理由をグランマーズに聞いてみた。
『多分、ゼニスの城は姿が見えないだけで、現実世界の上空を飛び続けているからなのかもしれんな。』
「そういう理由ですか?」
『あくまでもわしの勘じゃがのう。でも姿だけでなく、声も聞くことが出来てよかったのう。』
「そうね。これでリベラの願いをかなえてあげることが出来るわ。」
『じゃが、お前さんの今の実力では、彼女がカルベローナに帰ってしまえば、声が聞けなくなることになる。じゃから、ゼニスの城にいる間に見せてあげねばのう。』
「あっ、そうだったわね。じゃあ私、早速リベラを呼んでみるわね。」
いてもたってもいられなくなったミレーユは、映像を再度リベラとハッサンに切り替えた。
すると、偶然にも彼らがチャモロとテリーに会って話をしていたため、彼女はチャンスとばかりにキメラの翼を使って飛び立っていった。
4人は忙しい中、ミレーユの呼びかけに応えてマーズの館にやって来た。
「みんなそろったわね。それじゃ、私は今から水晶玉で、ある光景を映し出してあげるわね。」
彼女は椅子に座り、水晶玉に手をかざした。
「いい?それじゃ、始めるわよ。」
リベラ「ミレーユ、これから何をするの?何を僕達に見せてくれるの?」
ハッサン「何だよ、何が始まるってんだよ。わざわざ呼びつけてさ。」
チャモロ「シッ、静かに…。」
テリー「……。」
ミレーユが水晶玉に力を込めると、少しずつそこにある光景が映し出された。
そして彼らが見たものは…。
『どんなのかしら…あたし達の未来は…。あ!生まれるよ!』
ハッサン「うおおおっ!バーバラだ!夢じゃねえ!本当にバーバラだ!」
チャモロ「住む世界は違うけれど、彼女は元気に生きているんですね!」
テリー「まさか再び彼女の姿を見られるとはな。しかも声まで聞けるなんて。」
リベラ「バーバラ…。」
それまで誰もがもう2度と見ることが出来ないと思っていた大切な仲間の姿を、水晶玉越しではあるが見ることが出来、彼らは驚きながらも、心の底から喜んでいた。
「良かった。みんなに彼女を見せてあげることが出来て。頑張っておばあちゃんのもとで修業した甲斐があったわ。」
ハッサン「ところで、バーバラと会話することは出来ないのか?」
チャモロ「そうですね。そうなったらもっとうれしいのですが。」
「残念だけれど、それは無理よ。向こうの人達はこれを知らないわけだから。」
チャモロ「そうですか。さすがにそこまでは高望みでしたね。」
テリー「フン!とはいえ、見られただけでも幸せじゃねえか。」
ハッサン「まあ、そうだな。せっかくミレーユがこうやって彼女を見せてくれたのに、文句言うわけにはいかないよな。そうだろ、リベラ。」
「うん…。」
彼は両手で鼻と口を押さえており、その表情はすでに泣きそうな状態だった。
「予想はしていたけれど、リベラは食い入るように見つめているわね。そこまであなたにとって彼女は大切な存在だったのね。」
「そうですね。旅している時は気が付きませんでしたが、心の中ではゾッコンだったんですね。」
「もしかして、ルイーダねえさんはそれに気付いていたから、お前とバーバラを引き離さなかったのかもな。」
チャモロとハッサンはそろってリベラをイジり出した。
一方の彼は顔を赤らめながら何も言わず、バーバラの姿をじっと見つめ、その声を一言たりとも聞き逃すまいと耳を傾けていた。
みんなが見ていることを知る由もないバーバラは、ゼニス王との会話が終わると、お辞儀をしながら『ゼニス王さん!どうもありがとう。この子が生まれるシーンを見ることが出来たし、あたしはこれでカルベローナに戻ります。』と言いだした。
『こちらこそ。そちらの用事もあるのに、時間を割いてもらってすまなかったね。』
『あたしは大丈夫よ。楽しかったわ。じゃあね、バーイ!』
バーバラは駆け足でその場を後にしていった。
ミレーユはそれを見届けると、ここで水晶玉の映像を終わらせると言い出した。
「ええっ?これで終わり?」
「リベラ、気持ちは分かるけれどここまでよ。」
彼女は続けざまに、自分の実力ではカルベローナにいる人の声を聞かせてあげられないことを伝えた。
チャモロ「それでは仕方ないですね。まあ、リベラさんは姿だけでも見たいかもしれませんけれどね。」
テリー「いずれにしても、今日のところはもういいだろ。これで解散だ。」
「そうね。あなた達が忙しい中、わざわざ時間を割いてもらったわけだから、今日はこれで良しにするわ。もしこれからまたバーバラを見たくなったら、60ゴールドで見せてあげるからね。」
ハッサン「ええっ?有料なのかよ!」
「今回は特例よ。私だって仕事でやっているんだから。」
リベラ「それなら、工事が終わって時間が出来たら、お金を持ってここに来るよ。」
「分かったわ。じゃあ、今日はここまでよ。」
ミレーユはそう言って、映像を消した。
その後、テリーは元々いた場所に戻っていき、ハッサンはアークボルトでの格闘大会に参加するため、チャモロに現地まで送ってもらった。
チャモロはハッサンと別れると、再度移動してテリーに合流した。
一方、リベラは他の3人が出ていった後も、その場を離れようとしなかった。
そんな彼が気になったミレーユは、感想を聞いてみることにした。
「リベラ、バーバラを見ることが出来て、どうだった?」
「ありがとう、ミレーユ。涙が出る程うれしかった。もう2度と会うどころか、姿すら見られないと思っていたから。」
「でも私の実力ではこれが限界なの。せめて彼女と会話が出来ればいいんだけれど…。」
「そんなのはいいよ。もう吹っ切れたから。今までは必死にバーバラを忘れようとしていたけれど、これからは彼女のことを思い出しながら頑張るよ。お金をしっかりと稼いだら、またここに来る。そうしたら、またバーバラを見せてくれ。今日は本当にありがとう。」
彼はミレーユに感謝をすると、立ち上がって深々とお辞儀をし、館を後にしていった。
(リベラ…、水晶玉越しだけれど、バーバラに会えて良かったわね。だけどこれで終わりじゃないわ。私、これからもっと修業を積んで、彼女がカルベローナにいる時にも声が聞こえるようにしてあげるから、待っていてね。)
このバーバラ再登場のエピソードは、僕自身非常に重要な部分と考えていたため、かなり書き直しをしながら、時間をかけて仕上げました。
また、発表するタイミングについても、早過ぎると別れの意味が薄れてしまう、遅過ぎると読者が待ちきれなくなってしまうということを考え、Quest.8で固定しました。
その結果、それまでに入りきらない部分が生じ、アークボルトでブラスト達と戦うエピソードをカットしたため、ハッサンの戦うシーンがないという事態になりました。
これではまずいと思い、このQuest.8に後付けで彼がリベラと一緒に戦うシーンを入れましたが、それでも納得出来なかったため、ボツになっていたアイデアを大幅に書き換えた上で次のQuest.9に掲載します。