殺人を強要されている内に快感を覚えてしまう清純乙女『風』   作:乙女竜

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ちゃお〜。
活動報告書きました。助けてください。


廃墟で笑う清純乙女

オッスオッス……!!!闇のオタク、フィリアだぜ……!!今は夜中の任務につき、小声で失礼させてもらうぜ……!!!

 

それにしても、12歳にして初めてのお仕事……緊張して心臓がばくばくよ!!これが恋……?

 

そして初任務のお相手は愛しのボコ姉!!!いつからか俺に優しくなった可愛らしいおなごよ!!やっと今まで培ってきたものを披露できる……ふははは!!!

 

俺がどういう流れで良い顔を見せて貰おうかと考えていたら、ボコ姉が声を掛けてくれたぜ!!!

 

「おい、お前また眠れてないだろ。そんなんで仕事ができるのかよ」

 

これは完全に心配の言葉ですねぇ〜。いつからこんなに良い子になっちゃったのよ!!

 

「良いんです。これが、私への罰ですから。それに、私はもう眠らなくても平気です」

 

不幸スマイルでとりあえずジャブを打っておく。実際に俺は既に睡眠を超越しているので、嘘は言っていないが──

 

ぁあ!!!!今、眉を顰めて下唇を噛んだよこの人!!!可愛すぎか???そうだよねぇ!!!こんな幼い子供が不眠とか可哀想だよねぇ!!!

 

何か言いたいけど今までの関係性から言うに言えなくて、顔を無理やり逸らして歩き出しちゃうの可愛いなぁ〜!!

 

で、ターゲットは遠くの廃墟にいっぱいいるっぽい。また人を殺すのは気が引けるけど、顔焼きの件辺りから光堕ちしたボコ姉の前で若干躊躇いがちに闘ったり、謝りながら殺したらどんな顔するのかな。栄養が摂取できそう。

 

いつもはリーダーのお姉さんが痕跡を消すらしいけど、今日はいないから恐らく気を遣って殺さなきゃいけないのか……?ボコ姉の泣き顔のために躊躇う動作や顔を見せつつ、仕事は慎重に一刺しで決めるって、これめちゃくちゃ大変だな!!!

 

目的地について様子を窺っているボコ姉が合図を出さないまま俺の方をちらちら見てきたので、これはきっと集団戦での俺の実力を疑っているな……?

 

良かろう!!抵抗があるように見せて今のうちに『罪悪感で動けない子』の布石をうたせてもらおう!!!

 

「……あんなに沢山の人を殺すんですね」

 

こういう時、上目遣いが大事だ。

 

「そうだ。それよりもお前……大丈夫なのか?」

「…はい。もう、人を殺すのには慣れましたから」

 

──ここで目の焦点をぼかす!!!遠くを見て呟くように言えばそれはもうそういう美少女!!!フィリアちゃん最高!!

 

そして見事俺のトラップにかかったボコ姉は、静かに目を伏せて俺に合図を出す指をちょっと震わせた!!いま躊躇ってくれたな貴様!!俺はこういう微細な動きも見逃しません。ありがとうございます。

 

 

そして──

 

パチン。

 

合図が出た。音に合わせて、体が勝手に飛び出した。銀の装飾が綺麗な短剣を抜く。

一体なんのスイッチが入ったかは分からないが、当初のボコ姉曇らせ計画は完全におじゃん。俺はどうやって目の前の貴族達を殺すかしか考えていなかった。

 

効率的に、慎重に、残酷に、非情に。何十通りもの殺し方を瞬時に考えて、それを気分で選定し実践する俺を、俺は外側から見ているような気分だった。

 

五人殺して、五人分の経験値が入ってくる。喉元に引っかかった剣を、力任せに引き抜く。背筋を虫のように這うそれは、明確に罪悪感だった。

 

剣が高熱の炎で融かされた。すぐに投げ捨てて近くの奴を拳でぶん殴った。皮膚や肉越しに伝わる骨の感覚。二人殺して、二人分の経験値が入ってくる。尾骨の辺りから入り込んでうなじを駆け巡るそれは、罪悪感だった。

 

炎を使う奴がいた。何となくその炎でそいつ自身の顔を焼きたくなった。焼け落ちた顔面。俺の顔は一時期こんな風になっていたのかと思った。四人殺して、四人分の経験値が入ってくる。胸の奥で疼いて、ゾクゾクと全身に流れるそれは、罪悪感かもしれなかった。

 

思いつく限りの殺し方で、過去に経験したユニークな痛めつけ方で、一人を残して全員殺した。経験値が入ってくる。

 

残った一人の恐怖する顔。昔の俺の顔なのかもしれない顔。それを見て脳の奥からじわじわと染み出るこれは、罪悪感ではなかった。

 

それが何か分からなかったが、俺は分からないままその感覚に溺れ、震えて立っていられなくなった。自分の体を抱きしめた時、涙が流れているのが分かった。温まって恐らく紅潮した顔。引き攣った頬。身体全体の震え。俺は手に取るように俺の状態を自覚した。

 

 

気持ちが良かった、のかもしれない。

 

両親が死んだ時も。孤児院で形見を潰された時も。やっと得られた居場所で理不尽に受けた暴力も。何もしていない人々を端から殺め続けた日々も。思い出を犯されてまで組織に縛り付けられた時も。

 

俺は、震えていた。顔が赤くなっていた。目が潤んでいたかもしれない。顔が歪んでいたかもしれない。

 

その経験した痛みのすべてが、同じように理不尽に痛みを与える行為のすべてが。

 

 

気持ちが良かったのかもしれない。

 

──俺は、笑っていた。

 

笑いながら残った一人を殴った。過去の俺、可哀想な子供を蹴飛ばした。こんなにか弱くて、可愛らしい。もっと可愛がってあげたかった。ガラスが必要だった。本当はこんなことしたくないと思えば思うほど、背筋を虫が這った。

 

鼠がいた。運が良かった。鼠はとても良い。食べる子の髪を掴んでやると尚良い。だからそうした。俺はこんな感じだったのか。フィリアはとても可愛いな。懐かしい孤児院での日々を思い出す。ヴィーア君は元気にしているだろうか。また誰かを殴っているのかな。それとも殴られているのかな。俺は今もしかしたらヴィーア君なのかもしれない。

 

そう考えると気分が良かった。小さな子供が、強くなれた気がした。嬉しくて蹴る足に力も入るというもの。蹴ると言えば、ボコ姉は蹴りが得意だった。ネルさんやめてと何度言ったか覚えていない。教会の暗部らしく、情け容赦のない蹴りだった。殺す気だったかもしれない。だとしたらもっと蹴って欲しかった。まだ俺は彼女の蹴りを学んでいない。でも蹴るうちに思い出してきた。腹の痣が蘇った気がする。

 

皆との思い出が次々に思い浮かぶ。お父さんは欲しかったドールを買ってくれた。お母さんは褒める時にいつも頭を撫でてくれた。芋虫は潰された俺に昔の話をしてくれた。ヴィーア君はカビたパンと死んだ鼠を食べるのが大好きな子だった。顔が焼けた女の子はガラス片が刺さりそうな俺を心配して見ていてくれた。ネルさんは許しを乞う俺を前に土下座しながら笑っていた。白い月が頭上で回る。

 

気持ちが良くて、面白かった。夜通し笑ってしまったかもしれない。

 

 

 

 




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