[艦長、クレリアが目を覚ましました]
(そうか、様子はどうだ?)
[随分と戸惑っていますね]
(そうだろうな。自分が知らないはずのことが次々と頭の中に浮かんでくるのだからな。
それで、リアのチャンネルはオープン状態か?)
[はい、初期状態ですのでフルオープンです]
(なら、リアと話すか)
(リア、聞こえるかい?)
(えっ、なに。アラン、アランなの?
ねえ、頭の中にアランの声がするのだけど?)
(ああ、俺が呼びかけてるんだ。
目が覚めたようだからね)
(ええ、ちょうど今起きたところよ)
(そうか、急かすようで悪いんだけど、支度が済んだら俺の執務室に来てくれないか)
(分かったわ。私も色々とアランに聞きたいことがあるのよ)
リアはそれから30分も掛からずに執務室に入ってくる。
セリーナとシャロンは既に執務室に来ている。
「リア、調子はどうだい」
「調子?
正直に言えば混乱しているわ。
それに怖いの。昨日までの自分じゃ無いみたい。
私が私で無いようよ」
「それは大げさかな。
昨日までのリアはそのままだよ。
そこに新たな知識が加わっただけだ。
ただ、多くの新しい知識を得たからね。
一度に理解しようとすると混乱するかもね。
ゆっくりと新たに得た知識を確認してゆくのが良いと思うよ」
「そう、でもゆっくりって言われてもどうすれば良いのかしら?
それになにも考えないでいるといきなり今まで知らなかった事が頭に浮かんでくるの。」
「まずは、俺がリアに知ってほしいことを少し話したいのだけ良いかな?
そうすれば、俺が話したことを中心に頭の中にある知識を確認できると思うからね」
「ええ、お願いするわ」
さてと、それでは俺たちの正体をリアに説明することにしよう。
(イーリス、部屋をブリーフィングルームの見た目に切り替えてくれ)
「えっ、アラン、なに、なにが起こってるの。
部屋が変な風に変わったわ」
変な風?
リアにはそう見えるのか。
「リア、本当に部屋が変わったわけじゃ無いんだ。
実際に見ているものと仮想の内容が合成されているんだ」
「ゴメンなさい。分かるけど分からない。
変な感じね。頭の中に答えは浮かぶけど、それが現実の物とは思えないの」
「知識を実感できないんだね。
その溝は慣れながら埋めてゆくしか無いんだ。
理屈はともかく、まずは慣れてくれ」
「アランですものね。理解できないけどまずは受け入れるわ」
「ありがとう。それではこれをまずは見てくれ」
(イーリス、スクリーンへの投影を始めてくれ)
イーリスとは前もって進め方を話していたのでうしろの壁のスクリーンに映像が投影される。
「リア、この映像に見覚えは無いかい?」
「映像って、急に現れた絵のことかしら。
凄く精緻ね。
それに、あ〜、グローリアに乗って見下ろした景色と一緒だわ」
「そうだね。グローリアと高いところから見た景色と同じだよ。
これからこの景色を徐々に高いところに移りながら見て行くよ」
そしてスクリーンに映る映像が動きだす。
最初は領都を中心とする大樹海が映っていたが、写る範囲が広がり始めガンツが端に見え出す。
「動き出したわ。
本当にグローリアが高く上がっていくときと同じように見えるのね。
魔の大樹海が小さくなってゆくのね。
ねえ、あの端に見えるのはガンツでしょう」
「ああ、そうだよ」
そう言っているうちに魔の大樹海が中心の小さな緑に過ぎなくなる。
ベルタ王国の全体が映し出される。
それも一瞬で、大陸全体が一望出来るようになる。
ここまでくると大陸が球体の一部であることが嫌でもわかる。
「ねえ、アラン、これってもしかして……」
「ああ、俺たちがいる大陸の全体が写っている。
周りの青いのは全て海だよ」
「そんな、嘘でしょう!」
いや、これぐらいで驚かれても困るんだけどね。
大陸が小さくなり海の面積が広がる。
隣の大陸が見え始めて、惑星の半球が見渡せるようになる。
「リア、これがこの星だよ」
「星?
本当に球形なのね」
「では、この星系の全体像を見てみようか」
ここからは、デフォルメしたCGでの表示となる。
イメージをつかむのが大事だからね。
「これが、星系図だよ。
もう、リアは知っているはずではあるけどね」
「ええ、昨日までは知らなかったけど起きたら知っているみたいね。
中心にある動かない明るい星が太陽よね。
恒星っていうのよね。
その周りを回っているのが惑星ね。
中心から3個目の惑星が私たちが居るところでしょう」
「その通りだよ」
最後に人類銀河帝国の版図を見せる。
「これが人類銀河帝国の領地だ。
3000以上の星系からなっている。
俺たちはこの人類銀河帝国からこの星に来たんだ」
「アランの乗っていた船って海に浮かぶ船とは違うのね。
あ〜、宇宙船っていうのか。
私には想像もつかないけどアランの住んでいた惑星からここまでは数百光年も離れているのね。
宇宙船、惑星、数百光年?
私、なにを話しているの。
知らないのに、でも知ってるわ」
「リア、落ち着いて。
一気に話したから少しびっくりしてるよね。
でも、まずは俺たちが何者か知ってもらう必要があるんだ。
だから、驚くとは思ったけどこの話をしたんだ」
「えっ、ええ、驚いたわ。とても驚いたわ。
アラン達はとても遠いところから来たのね。
とても信じられないくらいに遠くよね。
セリーナが前にこの大陸の王国なんてって言ってた意味もわかるわ。
私たちは本当に小さな存在なのね」
リアは意外と適応力が高いようだ。
ここまでの説明を冷静に受け止めている。
これなら、バグズのことを話しても平気そうだな。
あまり怯えないと良いんだけどね。