リアにどうバグズのことを話そうかと考えているとリアの表情が変わる。
「ねえ、アラン、使徒様なんだけど?」
「使徒がどうしたの?」
「使徒様って偵察用ドローンなのかしら?」
どうしてリアは使徒がドローンて気づいたんだろう?
ちゃんと聞かないとまずいな。
「なんでそう思ったんだい?」
「空から地上を写す映像を見ていたら頭に偵察用ドローンの映像ねって急に浮かんだの。
偵察用ドローンってなんだろうって思ったら王都で見た使徒様の姿と同じものが浮かんだわ」
ふ〜ん、リアの記憶とダウンロードした情報の融合が進んでいるようだな。
でも、使徒様の件がこんなに早くバレるとは思わなかったな。
「リアはやっぱり優秀だね。ダウンロードした情報を上手く使いこなせているみたいだ」
優秀だねといった俺の言葉でリアの顔が得意げに変わる。
「アランに優秀って言われるのは嬉しいわね」
「いや、本当に優種だから。普通はこれほど今までの常識と異なる知識を与えられると混乱するからね。
なかなか使いこなせはしないんだ」
「私、使いこなせてるのね。ならやっぱり使徒様は偵察用ドローン、DR-3020なのね!」
凄いな。型式番号まで覚えてるんだ。
「そうだね。リアは十分に使いこなせてるよ。
それじゃ、次にバグズの話をしようか。」
「バグズ。あ〜、虫のことよね。
そう言えばアランは前に変なことを言ってたわよね。
ええっと……虫は見つけたら全て踏みつぶせって」
「ああ、言ったな。リアはあの時はピンとこなかったみたいでけどこれから話すことを聞いた後なら俺と同じ気持ちになるさ」
(イーリス、スクリーンへ投影してくれ)
[はい、艦長]
そしてスクリーンに人類銀河帝国とバグズの戦いが映し出される。
スクリーンに映し出されたのはバグズによって壊滅状態に陥った惑星の救出作成だ。
惑星のある恒星系へ突入する人類銀河帝国の艦隊とバグズ艦隊の戦いの映像が映し出される。
漆黒の空間がレーザーの眩い光の渦で染め上げられる。
レーザの光が収まり再び漆黒の空間となった宇宙に幾つもの光球が現れる。
バグズの船が爆散しているのだ。
一方で、人類銀河帝国の旗艦の艦橋も何度も光の渦に飲み込まれる。
寮監の爆散した光が防御シールドを突き抜けて艦橋のスクリーンを発光させているのだ。
漆黒の宇宙がバグズと人類銀河帝国の爆散する船の光球で飽和する。
両艦隊の邂逅で千を超える船が光球へと還元されてゆく。
そして激しい爆発音が響き旗艦の艦橋が崩壊する。
急速な減圧で人が弾ける。
後には飛び散る肉片と血。
それもすぐに艦橋に開いた穴から吹き出る空気とともに吐き出されてゆく。
艦の幾つものセクションで同じ光景が生まれている。
そして一際大きな爆発音がしてスクリーンは光の渦に包まれ映像が途絶える。
旗艦が爆散したのだ。
一つの光球で数百、数千の命が失われることを映像が生々しく伝える。
やがて、宇宙に静寂が戻る。
バグズ艦隊の最後の一隻が爆散しバグズ艦隊が全滅したのだ。
だが、戦いは終わらない。
各艦から強襲揚陸艇が射出される。
宙兵隊による地上戦が始まるのだ。
強襲揚陸艇が大気圏へ突入する。
超高速の強襲揚陸艇を包むシールドがプラズマで包まれ、揺らめく赤い光が強襲揚陸艇を包み込む。
電波はブラックアウトし通信が途絶する。
揺らめく赤い光が消え通信が回復すると眼下に都市が現れる。
いや、それは都市の残滓としか言いようのない廃墟だ。
その廃墟に強襲揚陸艇から射出されたパワードスーツに身を包む宙兵が降下する。
パワードスーツの背中から炎がキラめき降下速度が緩やかになる。
その宙兵に向けて地上からレーザーやミサイルが降り注ぎ宙兵を屍に変えてゆく。
空中で激戦が続く中、地上に降り立った宙兵とバグズの白兵戦が開始される。
バグズの兵士と宙兵の激しい銃撃戦が始まる。
互いに譲らない戦いは、戦車等の重兵器の投入と、上空の強襲揚陸艇からの支援射撃により宙兵が優勢となりバグズを制圧してゆく。
だが、宙兵たちに喜びの表情はない。
この都市の住民であったであろう食い散らかされ散乱する死体の山を見ることになるからだ。
男も女も、年寄りも子供も関係なくバグズの餌となり食い散らかされた死体。
バグズと人類が決して歩み寄れないことをそれが示している。
そして映像が終わる。
部屋にあるのは沈黙。
「ねえ、アラン、これって」
振り絞るようなリアの声。
衝撃が強すぎたかな。
でも、リアは知る必要がある。
「リア、これが人類銀河帝国とバグズの間で続けられている戦いの姿なんだ。
我々はバグズを滅ぼすか、バグズに滅ぼされるか、二者選択の戦いを強いられているんだ。
この戦いに寛容はないんだ。
どちらかが滅ぶまで戦い続けるしかないんだ」
「こんな戦いが行われているのね」
「そうだ、戦いは千年にも渡って行われていてまだ決着は付いていない。
延々と戦いは続いているんだ」
「ねえアラン。この星にもバグズが襲ってくるのかしら?」
「イーリスの計算ではこれから千年の間にかなりの確率でバグズにこの星は襲われる」
残酷な話だが事実として伝える必要がある。
「そう、私たちはバグズの餌になるわけね」
やはりリアは頭が良いな。
今の自分たちがバグズと邂逅すれば餌になるしかないとこの一瞬で理解している。
「そうだな。剣と魔法ではバグズには勝てない。
負ければこの惑星の住民は全てバグズの餌にされるんだ」
「私たちに救いはないのかしら?」
「あるとも。俺がこの大陸に覇を唱えて、この星を人類銀河帝国に併合する。
そうすれば人類銀河帝国の庇護化に入るからバグズがきても守ってもらえるんだ」
「だからアランは頑張るのかしら?」
「そうだよ。俺はこの宙域における人類銀河帝国の最高司令官としてこの宙域を併合する権限を持っているんだ。
そして、この星の人類の文明を発展を加速して人類銀河帝国と連絡を取ってこの宙域が人類銀河帝国に併合されていると伝えるんだ。
そうすれば助かるんだ」
「アラン達は神様なのかしら?
そしてバグズは悪魔ね。
高位の世界ではハルマゲドンがずっと行われていたのね。
ねえ、アラン。アランは私たち子羊を導き庇護してくれるのね」
なんだろう。俺は自分を神だなんて思わせるような言い方はしてないぞ。
この星の宗教観がリアにそう言わせているのだろうか?
リアの俺を見る目が妙な熱を帯びているようで少し怖いな。
なんだ、何をしている。
リアが突然跪く。
「偉大なる神の御前にて伏してお願い申しあげます。
どうぞ、私たちをお救いください」
いや、リアどうしたんだ?
止めてくれ。
俺は神なんかじゃない。
そんな目で見ないでくれ。
(イーリス、どうしよう)
[今は、クレリアの人生の大勢を占めた価値観が私たちが伝える情報を上回っています。
ですから艦長は神とまで思われていますね。
でも、クレリアは私たちの与えた情報を理解して自分の知識と適応させる能力も持っています。
神の使徒が偵察用ドローンであると看破しています。
ですから根気よく説明を続けてください]
根気よく説明か。
確かにね。
リアは正しい知識は持っているんだ。
それをちゃんと自覚させるしかないな。
こんな狂信者のような目で俺はリアから崇め立てられたくはないんだ。
はにかみながら俺を見たこの間のリアに戻ってもらわないとな。
そう思い俺はリアに対する説明を再開するのだった。