時間は少し逆戻って領民達が領都に着いた日の夕方。
場所は公衆浴場。
ザザザザー
私たちが入ったせいで湯船からお湯が溢れて流れてゆく。
「お姉ちゃんどうしよう、お湯があんなに溢れてるよ。
これって私たちが入ったせいだよね。
怒られないかな?」
四女のマリーが困った顔で私に尋ねてくる。
そうよね、お湯を沸かす薪代にも事欠いていた私たちにはお湯は貴重だったわね。
六人家族の体を拭くのにタライ一杯のお湯しか使えない生活をしていた私たちからするとお湯を溢れさせて捨ててしまうなんて考えられないことよね。
前に次女のカーヤがタライをひっくり返してしまった時にはお母さんに酷く怒られていたしね。
「マリー、お湯が溢れたのはわざとじゃ無いでしょう」
「う、うん、わざとじゃ無いよ。そんなことしないよ」
「そう、なら誰も怒ったりしないわよ。
それにね、アラン様が言ってたでしょう。
ここのお湯は地面の下から井戸の水と同じように湧いてくるんだって。
お金の掛かる薪を使って水をお湯にしてるんじゃ無いのよ」
「お湯が地面の下川から出てくるの?」
マリーはお湯が地面の下から湧き出てくることがよく分からないみたいね。
まあ、私も良く分かってる訳じゃ無いけど一度に何十人も入れそうな大きな湯船がお湯で一杯なのを見ればアラン様の言葉を信じるしか無いわよ。
「ほら、マリー体を洗うわよ」
まだ体が小さなマリーはちょっとお湯に浸かるだけでのぼせてしまうようで顔が赤くなっている。
そんなマリーをカーヤが気遣って湯船から上げて体を洗い始める。
体を洗われているマリーも体を洗っているカーヤも肉付きが増して前は浮き出ていた肋骨が今は見えなくなっている。
これも毎日3食ご飯を頂けているからね。
たった、1ヶ月。
でも私たちにとっては夢のような1ヶ月だった。
本当なら私は今頃娼館で娼婦になって男に体を売っていたはずだった。
男に体を売ることがどんなことかは話には聞いている。
もう、普通の女としての幸せな暮らしが手に入らないことぐらいは分かっていた。
だから、綺麗な女が二人だけで歩いている姿を見て襲うことにした。
あの二人はカモだ。
神様が私たちにくれたチャンスなんだ。
そう思ったから。
強盗は犯罪者ってことぐらいは知っていた。
だから、私は神様の名前を出して自分を正当化した。
バカな私。
ふたりはあのシャイニングスターの隊長だった。
そんな二人に私たちが何か出来るわけもなかった。
普通なら捕まって罪人になって終わりのはず。
なのにふたりは私たちを助けてくれた。
神様が私たちにくれたチャンスだと言う私の直感は全然間違っていたけど凄く正しかった。
だから、私たちは今笑顔でお風呂に入れている。
グニュ
「ひゃん」
私のおっぱいが誰かの手で握りしめられる。
なに、なんなの??
「ねえ、ユーミ姉のおっぱいがまた大きくなってるんだけど」
「こらユッタ何をしてるのよ」
「何って、お姉ちゃんのおっぱいの大きさを確かめてるの。
お姉ちゃんだってカーヤ姉とマリーの裸を確かめて肋骨が見えなくなったって呟いてたじゃ無い。
私も同じよ。
ユーミ姉のおっぱいでセリーナ様とシャロン様への感謝の大きさを確認してるの」
私のおっぱいの大きさが感謝の大きさ??
「もう、ユッタふざけるのもいい加減にしなさい」
「え〜、ふざけて無いし。
毎日3度ご飯が食べられるようなったからユーミ姉のおっぱいだって大きくなったんだよ。
それに見て、私もちょっとおっぱいが膨らんだよ」
そうか、ユッタも感謝してるよね。
こんなおバカな話が出来るほど心に余裕ができたのもセリーナ様とシャロン様、そしてアラン様のおかげよね。
「バーカ、ユッタなんてぺったんこでおっぱいなんて気づけ無いぞ」
「やっ、カーヤ姉酷いよ」
何時の間にかカーヤはマリーの体を洗い終えてユッタにちょっかいを出している。
「醜いって、ユッタがユーミ姉にしたことと同じことをしただけだよ」
「同じじゃ無いもん、ユッタはユーミ姉のおっぱいが大きくなってるって褒めたもん。
おっぱいが解らないなんて言ってないもん。
だいたいカーヤ姉は無駄におっぱいが大きいのよ」
「そうよね。無駄におっぱいが大きくて肩が凝って困るのよ。
ユッタはこんな悩みがなくて良いわよね」
「こら、カーヤ良い加減にしなさい。
それにユッタもよ。
ユッタが最初に私の胸を触るからいけないのよ」
「「は〜い」」
「ふたりとも聞き分けが良い良い子ね。
ユッタはマリーと湯船でしっかりと温まったら出てマリーの体を拭いてね」
「は〜い」
ユッタはマリーを抱きかかえるようにして湯船で温まり始める。
そして顔が赤くなり始めたところで湯船を出ていった。
ふたりになった所でカーヤが真面目な顔になる。
「ユーミ姉、今の生活って夢じゃ無いよね。
私、今でも信じられ無いんだ。
本当なら私もユーミ姉も男におっぱいを揉まれてたよね。
おっぱいだけじゃ無い。全て奪われていたはずよ」
そう、カーヤもちゃんと考えてるんだ。
「そうね、私たちは返しきれ無いくらいの恩をセリーナ様やシャロン様に頂いたわ。
いえ、今も頂いてるわ。
それなのに私たちは少しもお返しできて無いわね」
「ええ、頂くばかりね。
どうしたら少しでもお返しできるようになるのかしら?」
「今は分からないわね。
でも、おふたりへの感謝の気持ちを忘れなければいつかは少しなりともお返しできるはずよ」
「そうね、その時が来たら私頑張って返すわ」
そんな風に力説するカーヤの顔を見ながら私も早くその時が来ないかと考えるのでした。