アランとクレリアの帝国創世記   作:m.t54

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聖女伝説に向けて

「リア、セリフは覚えたかい?」

 

「ええ、覚えたけど本当にこの格好でこのセリフを言うのかしら?」

 

少しの戸惑いと恥じらいと躊躇がリアの顔に浮かぶ。

 

「もちろんさ。こちらへ向かっているリアに忠実な者達を救うためだからね。

リアだって彼らが襲われて傷付けられるのは嫌だろう」

 

そう、これは襲撃犯達を叩き潰す為に必要なことなんだ。

そして、二度と同じ企てを起こさせないためにも必要なことなんだ。

そのために俺はリアに聖女になってもらい、聖女の力で襲撃犯達からリアの家臣や民達を救うというシナリオを作ったんだ。

 

「それはそうだけど……」

 

王女として責務だという思いで言葉の語尾が小声になる。

よし、押しきろう。

 

「なら、始めようか」

 

リア、眉間にしわがよってるぞ。

聖女様にふさわしく無いから止めるんだ。

悪いけどリアの聖女化計画を止めるつもりは無いからね。

 

そう考えながらリアの眉間を指で揉みほぐしてやる。

 

「きゃっ、アラン何するの!」

 

「リアの緊張をほぐしたのさ」

 

実際、眉間のしわは消えたしね。

 

そして俺は、撮影用のマイクロドローンのコントローラーのスイッチを入れる。

簡単に3Dフォログラムの動画が撮れる優れものだ。

なんでも、人類が母なる星、地球だけに生息していた頃のテクノロジーのレプリカらしい。

モダンレトロとか言って結構流行っていて色んな動画が星域ネットワークにアップされていたのが妙に懐かしい。

 

値段もそんなに高くなくて面白がって買う人間が多かったからイーリスの居住区を少し探すだけで見つけることができたんだ。

かさ張らないものだからこの間の荷物に紛らせてイーリスから降下させたのだ。

 

合わせて、良い感じの小道具も手に入った。

どうやら、このマイクロドローンの持ち主は自分のコスプレ姿を星域ネットワークに投稿する趣味があったらしい。

おかげで、この世界では見ることができない神々しい衣装を纏う聖女姿のリアがいる。

 

ブーン

 

鈍い音を立てて3機の撮影用のマイクロドローンが浮かび上がり、リアの周りを囲む。

 

リアはマイクロドローンを胡散臭げに眺めた後、姿勢を正す。

気さくなリアの雰囲気が消え、支配者の気配を纏う。

その姿は俺の知っているリアではない。

王族の一員としてのカリスマ性を身にまとったリアだ。

 

そのリアの視線が見えない賊達を射殺すように冷たく見据える。

その姿は他者を圧倒する、まさに王女だな。

そんなリアの口が開き、美しくも神秘的な言葉が紡がれ始める。

 

自らの民のため、賊達を糾弾するリアの言葉。

その言葉は徐々に人を支配し平伏させてゆく。

 

言葉と共にリアの腕が上がり見えない賊達に指先が向く。

 

そして、リアの口から賊達への仕置きが告げられる。

言葉に圧が乗り、その声が賊達に突き刺さる。

 

「凄いわね」

 

ポツリとセリーナが呟く。

 

「ああ、鳥肌ものだな」

 

俺がうなずく。

 

「アランもそう感じたのね」

 

「セリーナもか」

 

「ええ、彼女は辺境の一地方の王族に過ぎないのにね。

ここまでカリスマ性があるとは思わなかったわ」

 

「そうだな。これにエフェクトを付ければ完璧だな」

 

「聖女どころか女神様でも通るわよ。

 女神様と結婚するなんてアランも大変ね」

 

セリーナが楽しそうに笑う。

 

「そうだな、俺は一般市民だからな。

 王配でも身にあまるのに女神様の夫なんて務まるかな?」

 

正直、俺にカリスマ性なんて微塵も無いしな。

 

[艦長、艦長はただの市民ではありませんよ。

この星域における人類銀河帝国の最高権力者です]

 

(そう言えばそうだったな)

 

[そうですよ。艦長はお立場を気にしさなすぎです]

 

 

(ああ、気をつけるよ)

 

「ねえ、アラン、どうだった」

 

頬を上気させ神々しさをぺいっと捨て去ったリアが小走りに寄ってくる。

 

始める前の嫌がってたけリアの姿はどこに行ったんだか?

もちろん、そんなことは言わないけどね。

 

「良い感じだったよ。リアが生まれながらの王女だって再度気づかされたよ」

 

いや、本当に王族の血は侮っちゃダメだって感じたよ。

 

[編集は完了しました。再生しますか]

 

(そうだな。頼むよ)

 

イーリスが加工したホログラムが再生される。

おう、ますます神々しいな。

リアの衣装は薄く発光しているし、リアの周りに見えない風が巻き上がり服や髪が風にたなびいている。

その見えない風に巻き上がる髪も発光していて見る者に畏怖を与える。

 

そんなリアの背景には赤く渦巻く光が吹き上げていて、リアを人ならざるものとさえ思わせる。

そこに紡がれるリアの声。

聞けば確かにリアの声なんだが、普段のリアの声には含まれない格がにじみ出ている。

 

「ねえ、これ本当に私なの?」

 

本人でさえ信じられないのだから俺が驚くのは当たり前か。

 

「そうだよ。これはリアだよ。神に愛されし聖女のリアが怒っている姿さ」

 

おせいじじゃなくそう思うよ。

 

「わたし、聖女なんかじゃ無いのに」

 

恥ずかしそうなリアの声。

 

「無理ね。この姿で賊達を叩き潰すんだもの。

クレリアが聖女認定されるのは確定よね」

 

「ええ〜、セリーナひどいわ」

 

「ひどくなんか無いわよ。絶対そうなるから覚悟しとくことね」

 

「む〜、アラン、本当にこれが最良な計画なのかしら?」

 

「もちろんだよ。リアが聖女になってくれることで誰も死なずに済むんだから。

これが最良さ」

 

そう、聖女が旗印になれば、この先の大陸統一も血で血を洗うような戦いを防げるかもしれないしね。

だから俺は自分の中に渦巻くモヤっとした感情を抑えてリアの美しさと神々しさを大勢の男達の視線に晒すことを良しとする。

なんだろう。いつの間にかリアに執着する自分がいることが驚きだ。

 

そんなことを考えながら俺はリアを見つめるのだった。

 

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