ガンダムビルドダイバーズ Vivid Re:cord   作:麻婆炒飯

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リメイクなので初投稿です。




[第0話] はじまり

『俺、貴方に憧れてガンプラバトルを始めました。』

 

 

夜、たった1人の薄暗い部屋。

作業机の上をスタンドライトで照らして、その中少女は1人で黙々とガンプラの製作に勤しむ。

 

 

『ガンプラが、ガンプラバトルが大好きです。』

 

 

塗装や諸々の作業を全て終えて、乾燥の為に立てていたパーツを取り外して一つ一つ組み立てる。

塗料等の嗅ぎ慣れた匂いに包まれた作業場には、所謂作業用BGMのように一本の動画が流れている。

 

 

『ガンプラとの繋がり、楽しむ気持ち、諦めない事、前を向いて進む事。ガンプラを…大好きだって事。』

 

 

パーツとパーツが組み合わさり、次第に一つの形を成していく。ソレは少女にとって、「最初の憧れ」であり「大切なモノ」と同じ名を冠するある人物を意識して選んだガンプラを素体にしたものだった。

 

 

『自分達の好きを、自分達で否定したくないから…!だから、俺達は…!俺達の好きを、諦めない!!』

 

 

完成したガンプラをその場に立たせる。

「人型の兵器」にそぐわない三対六枚の白銀の翼を湛えるその姿は、複数の色調の蒼を備え少女の静かな執念に見合った出来映えを見せている。

 

 

……どうやら、動画の方も決着がついたようだ。

とはいえこの戦いはアーカイブに保存された、何度か見返した映像。その結末はもう知っている。

 

 

「自分達の好きを諦めない、ね。…一度は力づくでGPDを……他者の「好き」を否定した癖に。」

 

 

少女は知らない。かつての第一次有志連合戦の後、彼自身がGPDに触れ、それを肯定した事を。

その上で戦った相手の行為を否定した事を。

 

 

「それなら…GBNに、私の好きを否定するだけの価値があるのか…急進派に反対した母さんが命を落とすだけの価値があったのか…私が見極める。」

 

 

少女は作業場から立ち上がり、薄暗い部屋を出て行く。静かに燃える妄念を理性で抑え込みながら。

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

時は少し流れて数日後────、

少女は自宅のリビングで、一体のガンプラ…全身を黄金色に染め上げたHGスケールのガンプラと、その横に立てられた一枚の写真を眺めていた。

写真に写っているのは、少女と全く同じプラチナブロンドの長髪が美しく映える女性。まだ幼さを残した少女もあと数年もすれば、きっとこんな風に美しく成長するのだろうと思えてしまう程よく似ている。

 

それもその筈、この女性は少女の母であり…今は亡き、少女にとって「一番最初の憧れ」なのだから。

 

 

「母さん、行ってきます。」

 

 

そう言って少女は母の写真から視線を外すと、足早に2階へ登り自室に入って、扉の鍵を施錠する。

 

そうして振り返った先に置かれているのは、つい数日前に完成させたガンプラ。少女が今後愛機として用いるこのガンプラに与えた名は…

「XXXG-00W0-Vウイングゼロ・ヴィヴィッド」

 

鮮烈の意を持つ名は、原典機よりも鮮やかに塗られている…訳では無く、群青、蒼、白の三色を基調に空をイメージして合わせられ、敢えて脚先を赤色のままにしておく事でコントラストを強めている。

 

名の意にそぐわない色調のこの機体に「鮮烈」の名を与えたのは、一重に少女の願い故であった。

 

かつての輝かしい日常を。

色鮮やかな「普通」を取り戻したい。

それが最早叶う事の無い願いだと解っていても、願わずにはいられない。だからこそ…少女は自身の愛機に、己の叶わぬ願いを託したのだ。

 

少女は机の上に置かれた家庭用GBN筐体を起動し、身体に負担が掛かりにくいゲーミングチェアに身を預ける。筐体の機械音を横耳に聞きながら少女は愛機を読み込み台に安置し、専用のコントローラーを両手でしっかりと握りしめた。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

静かな部屋に機械の駆動音が鳴り……意識が電子の海へと蕩けていく。これはGBNに限らず、昨今流行っているフルダイブ型VRゲーム全般に言える感覚だ。

フルダイブに不慣れだったり、俗にVR適正と呼ばれる能力が乏しかったりするとこの感覚に酔ってしまう事がままあるそうで、そうして手が出なかったりする人も少なくは無いだろう。尤もここ最近ではGBNに限ってこの技術面での改修が目覚しく、段々とフルダイブVRの敷居も低くなってきているのだが……

 

何はともあれ、問題無く電子の海へと意識を沈ませた少女(わたし)は目を開き、初回のログインに伴う基本的な初期設定を初めとした諸々を淡々と済ませていく。

 

基礎アバターはリアルから投影する。

 

髪色は黒に、少し白過ぎる肌は微調整を入れる。

 

身体付きはそのままに……

 

いや、少しだけ見栄を張って身長を伸ばしてしまおう。

 

胸もほんの少しだけ…

 

いや、ちょっと盛り過ぎたかな…もう少し……

 

 

─────────────、

 

 

───────、

 

 

───、

 

 

「………ん…?…あっ…」

 

 

…あれやこれやと試行錯誤している内に、いつの間にか電子時計が夕暮れ時を示している。どうやらアバターの微調整だけで随分と時間を掛けてしまったようだ。

 

かなり細かく設定が出来るから、何処か一つ決めると他の箇所が気になってしまう。ネットで偶に見掛ける、最初のキャラクリエイトだけで一日を終えてしまう人の気持ちが少しだけ解った気がした。

 

閑 話 休 題(それはともかく)

 

完成したアバターに満足し、他の設定に手を出し始める。さしあたってはダイバーネームだ。

……とはいえ、実を言うとこういったニックネームを考えるというのはあまり得意ではない。

 

本名を堂々と使うのは論外だし、かと言って凝った名前に変えすぎると、何かあって名前を名乗る時にこの上なく恥ずかしい思いをしてしまう。

 

となるとこういう時に無難なのは、本名から原型が少し残る程度にもじった名前なのだが……

 

「うん…これが良い。」

 

そう1人で誰に言うでも無く呟いて、電子コンソールに一文字だけ打ち込んで入力を確定させる。

 

入れた文字は……「μ(みゅー)」。

私の名前であるミユと、母さんの旧姓のファミリーネームの頭文字であるMを借りて、ギリシャ文字に対応させたμに掛けている名前だ。

 

我ながら悪くないセンスをしていると思う。

 

「………あっ、もうこんな時間…!」

 

結局初期設定だけで一日潰してしまった。

今日はログインを諦めて設定を保存しアカウントを完成だけさせて、アプリケーションを終了する。

 

急いで現実世界に意識を引き戻すと、私は足早に部屋を出て1階へと駆け足で降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「よし……今日こそはっ…!」

 

 

先日の密かな失敗を挽回するように自分に言い聞かせ、私は再び自室に籠ると施錠してゲーミングチェアに腰掛け、GBNの筐体を起動する。

 

 

『Please. set You're Ganpura.』

 

 

機械的な駆動音と案内音声を聞きながらヘッドセットを身に付けると、膝上に抱いていた愛機ウイングゼロヴィヴィッドを読み込み台に安置する。

 

再び意識を電子の海へと溶かし込んで私は漸く、GBNという新しい世界へと、踏み出した。

 

……願わくば、私の懸念が全て杞憂で、ただ気楽に楽しめる場所でありますようにと、祈りながら。

 

『OK.Welcome to GBN !』

 

 




機体紹介

[ウイングガンダムゼロ:ヴィヴィッド]

HGACウイングガンダムゼロ[EW版]をベースに半分近くをスクラッチビルドで最早別物となったガンプラ。基本的なフォルムはそのままに、両肩にウイングガンダムフェニーチェから転用されたビームマントを装備し、背部ウイングバインダーをEW版ウイングガンダムの物に変更されている。全体的な白に蒼と群青色をあしらったカラーリングに仕上げられており、翼は白銀一色でありながら線が走っている部分に蒼色の淡い発光色が見られる。
基本的な武装はそのまま、盾の裏側にマシンキャノンとガンダムXのシールドバスターライフルの一部が仕込まれた攻撃的な構成になっている。
どうやらまだ他にも隠された要素があるようだが…?
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