ガンダムビルドダイバーズ Vivid Re:cord   作:麻婆炒飯

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少しずつ内容やうちの子の心境がリメイク前と変わってくる2本目なので初投稿です。



[第1話]初めてのログイン / 出撃

「よっと…成程、これがGBN…確かにフルダイブVRのリアリティとしてはトップクラスなのかもね。」

 

 

特徴的な案内音声に続けて開けた視界は、ネット配信や街頭広告等の告知で何度も見た光景だった。

 

明るい壁色に若干近未来的なロビー。

確か名前はセントラル・ディメンションだったかな。ログインするサーバーごとにある程度の違いはあれ、アカウントを作成した全てのダイバーが必ず最初に通されるようになっているディメンションだ。

 

広告で見たロビーも沢山の人が描かれていたけど、実際に見てみるとその密度は広告の比では無い。

 

オンラインゲームの性質上GBNも複数のサーバーで分けられ、スムーズに入れるサーバーへと自動的に接続されるようになっているはずだ。

 

それでもこれ程人が多いのだから、以前何処かの雑誌で見かけたアクティブユーザー1億人も間近、なんてのもあながち言い過ぎでは無いのだろう。

 

そんな思考を頭の片隅に起きながら、都会の街並みに勝るとも劣らない人口密度をどうにか掻き分けて総合受付カウンターへと歩みを進めていく。

 

十数秒掛けて人混みを抜け、ようやく見つけたロビー中央の受付に辿り着くと、そこにはAIで制御されていると思しき受付NPD…他のゲーム用語で言うところのNPC、通称ノンプレイヤーダイバーが朗らかな笑顔を浮かべて受け答えしてくれた。

 

 

「GBNにようこそ!こちらではミッション等の総合受付を行っております!初めてのお客様は───、」

 

 

うん、事前説明が長い。

流石に初めてGBNをやると言っても、このあからさまなロビーの中央に設置された受付なのだから、総合受付になるのは当然なのではないだろうか。

いや、けどGBNは今やアクティブ2000万なんてとんでもない規模のゲームだ。そう言った「当たり前」にすら疎い人も少なくは無いのかも知れない。その辺に配慮した説明なら、まぁおかしい事では無いのかな。

 

未だに続いている説明を聞き流しながらそんな事を考えていると、視界の端の方に此方へ笑顔で向かってくるダイバーの姿がチラリと見えた。

 

 

「へい彼女、キミもしかしてGBN初めてじゃない?良かったら俺がこの話の長い受付さんに代わって解り易くチュートリアルのレクチャーしようか?」

 

 

あぁ、親切な人だ…なんて言うとでも思ったか。

 

この手の連中は基本的に、初心者を狙った悪質プレイヤーの類だ。機械的で困惑し易い初心者の性質につけ込んで、親切なフリしてカモにするつもりだろう。

 

それに何より……あまりにも判りやす過ぎる。

まずその服装、肩に棘がついた黒の革ジャンに黒光りする革製ジーパン、極めつけは紫のモヒカン。

 

どこをどう見ても悪党のソレである。勿論このナリをしてただ親切な人…なんて可能性もゼロでは無いが、こんな格好で典型的な初心者狩りムーヴをしていれば、それを疑うなと言う方が無茶な話だろう。

 

ここでついて行けば、おそらくはネットでもそこそこ有名な無法地帯、ヴァルガ辺りに連れて行かれて袋叩きにでもされてしまうのだろう。……尤もそれは、私がただの初心者である事を大前提にした話だが。

 

 

「……うん、お願いしても良いかな?」

 

「よーしよし、それじゃ早速こっちに───、」

 

 

私は敢えてモヒカンの誘いに乗ってみる事にした。これでもバトルは一昔前のバトルシュミレータ…父が不思議なツテで貰ってきた筐体でそれなりにやり込んでいたのだ。対人戦にはそこそこ自信がある。

 

モヒカンに誘われるがまま隣の受付に移動して、クリエイトミッション……ダイバー達が各々自由に作って投稿できるミッションを受け取り受注する。

 

その内容は「水晶高原に咲く一輪の花」の入手と簡単なように見えるが…思ったとおり、スタート地点が「ハードコアディメンション・ヴァルガ」に設定されていた。確かに、本当に初心者なら親切心モドキに絆されて問題点に気付けない事もあるだろう。

 

そんなミッションを私は敢えて受け、そして紫モヒカンの男の案内に従って格納庫へと移動した。

 

……これは完全に蛇足だけど、総合受付カウンターのNPDは私が背を向けてもまだ定型文での解説を続けていた。流石に長過ぎないかなこの説明、運営班はこの辺ちょっとどうにかした方が良いと思うな。

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「この辺は素直なんだ。…まぁ連中の目的は誘い出しだから、その辺は正直に教えとくものなのかな。」

 

 

格納庫の景色と、目の前に聳える約18mの鉄の巨人……実物サイズとして再現された自身のガンプラを見上げながら1人呟く。開かれたコックピットハッチ、そこから伸びるロープ式の昇降装置に近寄り手繰り寄せて、さながら実際に機体へ搭乗するように昇降装置の足場に片脚を掛けスイッチを操作して登っていく。

 

どうやらこのGBNで主流なのは転送によるコックピットへの直接移動らしいが、折角なら格納庫から出撃する時ぐらいはこういう演出は大事にしたい。

 

もちろん外ですぐ様バトルになるような時は相手を待たせる訳にも行かないし、直接移動の方が便利だろう。それでも…と思うのは、私が少しでもこのGBNに期待を寄せる事が出来ている証なのだろう。

 

 

「……よし、行こうかな。あんまり待たせて、勘づかれて逃げられたなんて思われるのも癪だし。」

 

 

コックピットにたどり着いて中に入り、シートに座って機械類を起動する動作……とはいえこの辺りは全て演出で、操縦桿さえ握れば起動するのだが、それ等を全て完了させハッチが閉じて、一度暗くなったコックピット内に照明が灯るのを確認しながら呟く。

 

眼前のコンソールは何度も見たウイングゼロのソレだ。決して言葉には出さないが、これ程再現のレベルが高いと、人々がGPDを放り出してこっちにのめり込んでしまうのも全く解らない話では無い。

 

オタクという生き物は自分の慣れ親しんだモノに固執するタイプと、新しく精度の高いモノに惹かれるタイプに別れるものだし、私だって今の経緯が無ければきっと後者で、GBNにのめり込んでいただろう。

 

 

「ゼロ…初陣ですぐ実戦で、きっと慣らす暇も無いだろうけど、許してね。さぁ、行こう」

 

 

起動するコンソールと、外から聞こえる排気音。

ああ、これからゼロは飛び立つのだと、心の奥底が震えている。私は、彼の力に応えられるだろうか。それだけの操縦が出来るだろうか。そんなほんの少しの不安が過ぎり、すぐに消えていく。そうだ、何も問題は無い、私は「黄金の不死鳥」の一人娘だ。

 

 

「ウイングゼロ・ヴィヴィッド、出撃()るッ!」

 

 

己を奮い立たせる掛け声と同時に、操縦桿を一気に引く。直後、身体に強い負荷が掛かったように感じて……視界が開けた。それは、一面の青い空だった。

 

少しだけ、呆けてしまった気がした。

景色を楽しむのは後で良い、今は…あのモヒカン連中をぶっ潰す。ただそれだけを考えていよう。

 

そうして私は、モヒカンに教えられた転移ゲートへと機首を向けて再び操縦桿を動かした。

 

すぐに見えてくる円環は、その上部にしっかりと

「ハードコアディメンション・ヴァルガ行き」という電子の文字が表示されている。

 

……こんなにハッキリ「ハードコア」なんて書かれてるなら、少しくらい不自然に思ってもいいハズだが。

 

…いや、きっと初心者は本来そんな細かいところにまで目は行かないのだろう。そんな事を考えながら、私とウイングゼロヴィヴィッドはゲートを潜って転移した。

 

こうして私はGBNで初めての実戦、分かりきった罠の中へと飛び込んたのだった────。

 

 




[ちょっとだけ用語紹介]

[黄金の不死鳥]

GPDブームの末期に世界大会ベスト4まで名を残したとある女性ファイターの異名。RX-0ユニコーンガンダム3号機フェネクスをベースにしたガンプラを好んで用いていた事からこの異名で呼ばれている。数度大会に出場した後、引退を宣言した後は運営に関わる仕事をしていたようだ。


次話、初戦闘です。
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