ガンダムビルドダイバーズ Vivid Re:cord   作:麻婆炒飯

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8ヶ月ぶりの更新なので初投稿です。




[第5話]幕間・其ノ壱 / 世界が彩られた日(前編)

 

「じーびーえぬ…?」

 

放課後の教室、その片隅。

いつものように帰り支度を整え終えて帰ろうとしていた私を1人の少女が呼び止めた。

 

「はい…!榊原さんが何か新しい事を始めたがっているって噂で聞きまして、何か力になれればと思ったんですけど…その、もしかしたらGBNはまだやっていないんじゃないか、と思って…!」

 

GBN、ガンプラバトル・ネクサスオンライン。

 

いま流行りのフルダイブ式VRゲームだ。

思いつく粗方の事全てに挑戦して来たが手応えや挑み甲斐を見出せず、半ば諦めていたが…なるほど、確かにそっちの方面は手付かずだった。

 

今までの経験則からあまり過度に期待し過ぎるつもりも無いが、確かに一度、軽く手を出してみるだけの価値はあるのかも知れない。

 

「だめ、ですか…?」

 

「……構いませんよ。やってみましょうか」

 

答えた瞬間、様子を伺うようにしていた目の前の少女…ムトウ・ハヅキの顔が見るからに明るくなった。

そんなに嬉しかったのだろうか…?

 

「ありがとうございます!早速行きましょう…!」

 

「行く、とは?」

 

「ガンダムベースです!ガンプラが無いと、GBN始まりませんから!あっ、いや勿論ガンプラそのものが無くてもログインだけは出来るんですけども。」

 

張り切り顔から、ちょっとだけ焦った顔に。まるで百面相のような変わりようで、少しだけ面白い。

 

「ふふっ…それじゃあ案内、お願いしますね?」

 

「はいっ!」

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

ガンダムベースシーサイド店。世界中に数多あるガンプラショップの中でも、そこは上から数えた方が早いぐらいに大規模な店だ。そこで買ったガンプラは併設された組み立てスペースで作る事が出来るし、必要な道具も一通り店で借りる事ができる。

 

「榊原さん、決まりました?」

 

「夢藤さん。…いえ、幾つか候補は見出しましたけど、とても数が多いのですぐ絞り込むのは…」

 

「あはは…そうですよね…今見ていたのは?」

 

彼女にそう聞かれたので、私は今見ていた次の候補を指差した。箱に描かれているのは、赤黒い色調のガンダムだ。右手の剣と、左腕から伸びる尻尾のような…鞭?がよく映える見た目をしている。だがそれを見た彼女の顔は、少しばかり驚いているようだった。

 

「ガ、ガンダムエピオン…ですか…」

 

「…?何か問題でもありましたか…?」

 

「あぁいえ!悪い訳じゃ無いんです!何を選ぶかは自由ですから!ただその…エピオンには、遠距離武器が一つも装備されていないんです。なので慣れない内から扱うのは、後で苦労しないかと思いまして…」

 

遠距離武器が無い。なるほどガンダムと言えば戦争モノだ、銃火器がメインとなるのは当然だろう。

 

だがこのエピオンはそういった中遠距離射撃系の兵器類を何一つ装備しておらず、高出力のビームソードと精々が中距離程度のリーチを持つヒートロッドというサブウェポンが主体なのだという。

 

「ふむ……ではこれにします。」

 

そう言って私は、ガンダムエピオンの箱を手に取る。

 

「ですよね、やっぱり…えぇっ!?」

 

「超近距離特化、良いじゃないですか。これでも武術格闘術には自信があるんです。」

 

幼い時分に有段者の大人達を伸して周る程度には。

 

「はわ…わかりました…!それじゃ、榊原さんが届かない距離は私がカバーしますね…!」

 

「ありがとうございます、頼りにしていますね。」

 

はりきる彼女に微笑みを向けると、私達は揃って手に取った箱をレジカウンターへと持って行った。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

翌日。

いくら何でも放課後に店に行き、ガンプラを選び購入して、組み立てを終えてその日のうちにログインは叶わなかった為、次の日の放課後に示し合わせて同じ場所で待ち合わせる。

 

「お待たせしました榊原さん!」

 

「差程待たされてませんから、大丈夫ですよ。」

 

時間不足ついでに帰宅してから自室でバリ取り…パーツを切り取った際の細かい切り残しをヤスリで削る作業等、比較的簡単に出来る作業のみを済ませてタッパーに入れて持って来ていたガンダムエピオンを手に、追いついたムトウ・ハヅキに微笑みを返してから連れ立って店内に入っていく。

 

入ってすぐに昨日は居なかった手のひらサイズの少女…物理的な意味合いで小さい少女に遭遇し、烈火のごとくガンプラをオススメされたが…今日のところはログインがメインの目的なので丁重に断りを入れておいた。少女が誰にも気付かれないように零した舌打ちが聞こえたのはきっと私だけだろう。

 

「これで準備完了ですね!」

 

「はい、事前知識はある程度勉強して来ましたが、セントラルロビーに集合、で良いんですね?」

 

「はい!まずはチュートリアルを済ませてから、やってみたい事を決めれば良いと思います!」

 

続けて購入したダイバーギアを手に、貸し個室のログインスペース…とても未来チックで凝った見た目のゲーミングチェアに腰掛けて最後の確認を済ませる。

 

併設されたゴーグルを被り、背もたれに身を預けて…電源を入れると五感が未知の感覚を伝えてきた。

 

おそらく、これがフルダイブVRと呼ばれるシステムの特徴なのだろう。甘んじて未知を受け入れ、私は意識が切り替わる新鮮な感覚に身を委ねた。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「これが、GBN…」

 

眩しさを感じて目を開ける。

するとそこには近未来的な景色…と言っても建築物内だが、現代の景観からは見られない特徴を持った情景が視界いっぱいに広がっていた。

とはいえ多くの人が行き来する様は、さながら大都会にありがちな光景だと言えるだろう。

 

あまり得意では無い人混みに少し嫌悪感を覚えつつも、同時にログインした同級生を探す。すると視界の左端から駆け寄る少女の姿があった。普段の黒髪とは打って変わってオレンジ色のショートカット。服は…数多あるガンダムの内の何れかの作品の軍服なのだろうか?赤と黒の配色が施された服にピンクのミニスカートを穿いた衣装を身にまとって現れる。

 

「お待たせしました榊原さん。」

 

「…ネットゲームで本名を顕にするのはあまり良くないのでしょう?ここではナナと呼んでください。」

 

「おっとと…そうでした。それじゃあ私の事はノーン呼びでお願いしますっ。夢藤、無糖で…ノンシュガー、からもじってノーン、ですっ!」

 

ネーミングセンスも案外凝ったものを披露してきた彼女に、少しばかり自分の安直なセンスに疑問を持ったりしたが…周囲を見渡せばどう見ても本名そのままな人も一定数いるようなので、まぁ良しとしよう。

 

「なら、よろしくお願いしますねノーンさん。」

 

「はい、ナナさんよろしくお願いしますっ!」

 

お互いに今更な挨拶を交わすと、最初に決めた通りにチュートリアルミッションを受ける為に中央のカウンターへと足を運ぶ事にした。

これは余談だが、なんでもノーンさん自身は既にDランクなのだという。彼女の時間を使ってしまう事に少し忌避感を感じたが当人が気にしないで下さいと繰り返し言うので、そのまま受け入れる事にした。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「す、凄いですナナさん!射撃を想定していない機体のはずなのに、百発百中なんて…!」

 

「正確には四発四中ですから、それは少し大袈裟な評価じゃありませんか…?」

 

言葉の片手間に5機目のチュートリアルNPDを撃ち抜いて、初心者向けミッションをまた1つ攻略する。

戦闘チュートリアルの中には近接武器での撃破は勿論、射撃での撃破や物理属性武器での撃破も含まれていた為、エピオンに組み込まれていない装備はパーツレンタルスペースで借りて使用している。今使っているのは、RX78-2ガンダムのビームライフルだ。

 

「そんな事無いです!射撃チュートリアルはたくさんの初心者さんが最初は当てづらくて最初何発かは苦労するって有名なんですよ!初めての操作…それも格闘特化MSでこの精度は凄いと思います!」

 

そこまで諸手を挙げて褒められると、気恥ずかしくなる…が、不思議と悪い気はしない。ミッションクリアの通知を処理しつつ、次のパネルを開いていた。

 

「これで武装別の撃破チュートリアルは終了ですね。あとは…最後のひとつ、ですか。」

 

「チュートリアル最終戦は自由に戦って倒す、ですね!ナナさんならぜったい大丈夫だと思いますけど、NPDも制限無しで避けますし防ぎますし積極的に攻撃もしてきますから、お気をつけて!」

 

明るい少女の信頼を受け止める。他の大人達が向ける「コイツは負けはしないだろう」という信用とはまた少し違った形の視線を受け止めるのは、大人達のソレと比べると幾許か心地良かった。彼女には見えないコックピットの中から、微笑みを向けて向き直る。

 

 

そうして私は、「チュートリアルミッションRTA初挑戦ダイバーランキング」という非公式ランキングページの中でしばらくの間、不動の1位を保持するという結果を残す事になったのだった。

 

 




榊原七香 [サカキバラ・ナナカ] /ナナ
(アイデア元/青いカンテラ様)

つい最近GBNを始めたばかりの少女、17歳。
始めて間も無く転生の素質を同行者に披露し、非公式ランキングサイトで幾つかの記録を打ち立てている。
使用ガンプラは素組みに最低限の塗装や調整を施したのみのHGAC ガンダムエピオン。

夢藤 華月 [ムトウ・ハヅキ] / ノーン

Dランクのエンジョイ勢ダイバー。時折ミッションに手を出すぐらいで基本的にはのんびりしている。現在はその暇を活かして誘ったナナに同行し、GBNの面白さを伝えている。
使用ガンプラは改造によって狙撃武装とハイパージャマーを追加したHGACガンダムヘビーアームズ改

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