ガンダムビルドダイバーズ Vivid Re:cord   作:麻婆炒飯

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前後編のつもりが中編が生えてきたので初投稿です。




[第6話] 幕間・其ノ壱 / 世界が彩られた日(中編)

 

私は生まれつき、神童と呼ばれる類の子供だった。

 

大抵の事は一度見てしまえば完璧に熟す事が出来たし、勉強も家庭の事情で飛び級制度を利用出来なかっただけで、進級から4ヶ月もあればその学年で学ぶ事のできる内容の内ほとんどを学び終えてしまう。

 

何か無いかと始めてみた趣味も似たような結果だった。制作物は数ヶ月もあればコツを掴みその辺の品評会に出しても恥ずかしないモノを作り上げる事が出来たし、技術面に関しても誰かの教えを乞う事無く、指導者になる程の実力者達を易々と上回る精度を見せつけるようになった。なってしまった。

 

たったの数ヶ月でこうなってしまえば、幼く好奇心のあった私にはすぐに「つまらない」、「退屈だ」と思えてしまう。そしてそんな態度を隠そうともしなかった私はやがて、あらゆる分野を収める人々から妬み嫉みを受ける対象となってしまった。

 

ただ、既に飽きた事柄の経験者に疎まれるのは少しも苦では無かった。そこに手をつけるつもりがもう無かったから。けれど……やがて両親からも同じ視線を感じるようになると、ソレは途端に苦痛へと変わる。

 

その頃から私はどんな事にも本気で取り組む事を止め、勉強も常に総合3位か4位辺りの優秀で有りながら他者からの嫉妬を受けにくい順位を狙い、趣味も読書だとかの絶対に人と比べられる事の無いようなモノばかりを行うようになっていった。

 

結果として妬み嫉みの視線を浴びる事は少なくなったが、その代わりに私の生活からは彩り、一定以上の楽しさというモノが失われてしまったように思える。

 

そんな日々を過ごしていたある日に、彼女…すばしっこくて明るい雰囲気を醸し出すクラスメイト、武藤 華月(ムトウ ハヅキ)が、猛烈なアプローチを仕掛けて来たのだった。

 

「新しい趣味を探してる」なんていったい何処から聞きつけてきたのか。未だ僅かに残った妬みを募らせる誰かの嫌がらせか、等と思ったのだが、実際新しい趣味を始められるのなら気紛れにほんの少しぐらいは手を出してみても良いか、とも思った。

 

詳しくは知らずともGBNがとても評判の良いゲームである事は知っていたし、詳細は省くがその気になれば学費を全て1人で賄うだけの私財を持っている。そこから一部使う程度で趣味を試せるなら安い買い物だ。

 

そんなありふれているようで何処か奇妙な経緯から、私は1人のダイバーとしてGBNに足を踏み入れた。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「チィッ!またかよ!自治厨かテメェはッ!」

 

「失礼な!自治厨じゃなくてもアンタ達みたいなの見掛けたら放っとく訳無いでしょ!?」

 

私のチュートリアルを終えて数週間、この日はノーンさんの要望もあってバトルエリア巡りをしていた。

 

GBNには比較的黎明期の頃から、何でもありの完全フリーバトルエリアである「ハードコア・ディメンション・ヴァルガ」という場所が存在するが、GBNの度重なるアップデートと規模拡大に伴って、ヴァルガ程無法地帯では無いものの常時フリーのPVP対戦が行えるディメンションが増えているのだという。

 

フリーバトル非対象のディメンションをのんびりと散策するのも良いが、こうした戦場を巡り歩いてみるのもまた一興…なんだとか。

 

今日はそんな最中、フリーバトルエリアで害悪行為…初心者狩りを行う無法者達との遭遇戦になっていた。

 

どうやら連中とノーンさんには、浅からぬ因縁(?)があるらしい。私は彼女の促したままに被害に遭っていた初心者…時期的には同輩だろう。ダイバー2人をセントラルディメンションに送って戻ったところだ。

 

「そーゆー事は、せめてヴァルガでやんなさいよね!いや何処でも初心者狩りはダメなんだけど!」

 

「ガキが講釈垂れてんじゃァねェ!!」

 

おっといけない。

いつまでも観戦に徹しているのはよろしくない。3人がかりでやっと優位を取れてるならず者達には悪いが、そろそろ加勢に入らせて貰う事にしよう。

 

「まず……!」

 

「その首貰っ……チッ、またガキが増えやがる」

 

「遅くなりました。後は任せて下さいますか?」

 

「テメェ…素組みの分際でナメてんじゃねェぞ!」

 

通信コンソールに写ったノーンさんの声がならず者の啖呵に掻き消される。うるさい。

声は聞こえなかったが幸いにも頷く仕草は見えたし、乗機のヘビーアームズも後退させてくれたので私の意図は問題無く彼女に伝わったと見て良いだろう。

 

「シカト決めてんじゃねェぞオラァ!!」

 

ならず者のリーダーらしき男のキレる声を合図に、他2人のモビルスーツが左右へと散開する。

 

方や黒色の重装機体。事前に学んだ中には無かった機体だが…あの特徴的な顔は見た事がある。ディランザ、とかいうやつだ。少し見た目が記憶と異なる気もするが、そこはそれ。改造を施したか、バリエーション機体のどちらかだろう。

 

もう片方はすぐに分かった、ドムだ。

こちらも大元よりも黒の配色が多めになっている。リーダー機も黒いし、彼等は黒が好きなのだろう。

 

ドムが胸から閃光…ではなく拡散メガ粒子砲を放ち、ディランザが肩に搭載したミサイルランチャーを発射する。だがどちらもそれぞれ、ソレで決めようという意思は感じられない。

おそらくは牽制目的、或いは…

 

「本命の為の注意逸らし、ですか。」

 

リーダーに良いところを譲る小粋なアシスト。そんなつもりなんだろう。だが…直撃しないと解っている攻撃に必要以上の気を割くのは非効率的だ。

加えてリーダー機は両手にサーベル2本を構えた格闘偏重の黒いトールギス。

 

これらの要素から、相手が突っ込んで来る事は明白。それならば下手に機体を避けさせず…むしろ、突っ込んで来る相手の懐に潜り込んでしまえば良い。

 

「な、あァ…!?」

 

「安易ですね、つまらない。」

 

私はエピオンにろくに武器を構えさせる事もせず、左腕に装備させているシールドの先端、ヒートロッドに通電、赤熱化させて、一突きでその胴体にほど良い感じの風穴を開けてやる。

 

「んなッ、その貫手…まさかテメェは…!」

 

「さようなら、退屈な違反者。」

 

耐久限界か敵が呆けていたのか、挙動をほぼ停止したトールギスにエピオンの脚を押し付け、一息に踏み落としてヒートロッドを引き抜く。間際に何かを言っていた気がしたが、まぁ大した事ではないだろう。

 

断末魔と爆発音に紛れて聞こえる、ガンプラが電子の海へと還っていく音を確認して、残る2機へと視線を向けた。…どうやらその必要は無かったようだが。

 

「1人にかまけてもう1人を無視とか、不注意以前に失礼じゃないかなぁ?っと、おしまい!」

 

呆れ混じりの台詞と共に放たれた弾幕が残る2機を蜂の巣にして片付ける。当初の2対3の構図を忘れて私1人にかまけるのは、愚策だとか以前の問題だろう。

 

……それにしても、推定で私以上のダイバー歴を持つ相手でもこの有様となると、いよいよこの遊びで(ガンプラバトル)もその辺の有象無象では相手にならなくなってきたのだろうか。いつもならこの辺で潮時と辞めてしまうところだが……今回は彼女のメンツもある。惰性でもう少し続けてみるのも悪くは無いだろう。

 

「変なのに時間を取られて結構いい時間になっちゃったね。わたしそろそろ帰るけど、ナナさんどうする?」

 

「そうですね…今日はまだ少し猶予があるので、たまには1人で見て回ってみようと思います。」

 

ディスプレイを開いて隅に備え付けられた現実時間を示す時計を確認しつつ、今夜の予定とそれに付随する必要時間を擦り合わせて、まだ1時間程の余裕が残っているのを確認すると彼女へ告げる。待ち合わせの時間までの10分とか20分程度を1人で過ごす事はあったが、自らの意思でGBNに残り時間を潰すというのは初めての事であった。

 

「わかった!じゃあまた明日…から三連休だった!ナナさんはお休みの間に空いてる日ってある?」

 

「明後日…日曜日でしたら、一日中空いてますよ。ノーンさんさえ良ければ、待ち合わせしましょうか。」

 

直後、ノーンさんの顔がぱぁっと明るくなる。彼女の生来の明るさは喜びの感情によってまるで陽の光のように眩しく輝くのだ。それはとても綺麗で……ここまで来てもまだ、色褪せた世界を見ている私には、余りにも眩し過ぎる笑顔だった。

 

「やっったぁ!ありがとうナナさん大好き!それじゃあまた明後日、セントラルで!お疲れ様っ!!」

 

喜色満面、とはあんな様子のことを言うのだろう。大袈裟な感情表現に苦笑を隠しきれていなかった事を自覚しつつも軽く手を振って見送り、彼女がログアウト操作を行って姿を消したのを確認してから背を向けて、あてもなく歩き始めた。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

場所は変わってリアルの某所、やさぐれた連中がたむろしたりしなかったりする、治安の良くない倉庫街。両手をズボンのポケットに突っ込んだ男が、ポイ捨てさてれ転がっていた空き缶を怒りをぶつけるかのように蹴り飛ばして怒鳴り散らしていた。

 

「あぁクソッ!あンのメスガキ共がッ!ぜってェ泣かす!泣いて土下座するまで許さねェ!!」

 

「そうですよ兄貴ぃ!あんなメスガキ共にナメられたままじゃ、大人の威厳が無ぇってもんだ!」

 

それに呼応するのは2人の男。1人は完全同意といった雰囲気で言葉を連ね、もう1人は相槌を打つように頷き追随する。彼等は数時間前、不正ギリギリの初心者狩り行為を咎めた2人組の少女達によって返り討ちにあった、黒いガンプラの使い手達であった。当然ながらソレは謂れの無い逆恨みであり、徹頭徹尾この男達3人に全ての非があることなのだが。

 

そんな3人組に……ひとつの影が迫っていた。

 

「イイねぇ君達。醜悪で強烈な、恨みの色だ。」

 

「…あァ?何だテメェ。初対面で生意気な奴だな。」

 

3人組の横、廃倉庫の横に積まれた木箱に座る、黒パーカーを目深に被って顔を隠した1人の男。男達は向かい合って対峙し、片や格下の相手を低く見下すように、 片や偉そうな相手を見上げて皮肉るかのように視線を交わす。フードで顔を格下男の顔は、絶妙な角度を保っているのか顔がはっきりと見える事はない。

 

「おっと、そうイキりたつなよ。俺はあくまでもキミ達の助けになる情報を売りに来ただけなんだ。」

 

「んだテメェ礼儀のなってねェ奴だな!まずはそのナメたフードを外してツラ見せんのが…」

 

「止めとけ馬鹿。…で、何を売りつけようってんだよ。これでくだらねェ内容ならタダじゃおかねェぞ。」

 

前に出てフードの男にガンを飛ばす舎弟の首根を掴んで引っ込ませ、兄貴と呼ばれた男が前に出る。話を聞く態度を見せつつも、決して警戒を止めない姿勢にフードの男は口角を歪めて笑みを見せ、拍手で相手の目敏さを賞賛した。

 

「お、そっちのお兄さんは話が解るようで助かったよ。そうだな……キミ達がよく知ってる2人組のリアルについて、なんてどうだい?」

 

ポツリ、ポツリと雨が降り始める。

 

フードの男と、彼の一言にただでさえ強面な顔を更に険しくした男の対話は、やがて始まる雨の音に掻き消されていく。

 

その間際、男のフードから微かに覗く双眸が、不穏な空気を彩るように紅く、妖しく、揺らめいた。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「……幾らなんでも速過ぎましたね。午後だと言われたのに、2時間も速くログインしてしまうなんて。」

 

日曜日。私らしくないと自嘲気味に独り言をもらしながらディスプレイを開き、フレンドリストに載った数少ない人物…最初の1人である彼女の名前を指でなぞった。表示はOff Lineであり、最終ログイン日時は一昨日の夕方、今日の約束をして別れたその日だ。

 

「ふふっ、本当に…私らしくない。ノーンさんと遊ぶのがこんなに楽しみになってしまうなんて。」

 

考えてみれば、マトモな友人なんて物心がついてこの方できた事が無かった。自分についてこれない友人は不要、なんて馬鹿げた考えを持っていたせいだろう。それをこの歳まで拗らせて、あんなにも退屈な日々を送っていた。

 

もう少しGBNに出会えていれば……と考えて、首を左右に振りながらディスプレイを閉じる。

 

「我ながら馬鹿なことを考えますね、彼女がいなければGBNをやっても長続きしなかったでしょうに」

 

今は一旦帰ろう、まだ約束の時間までは随分と間があるのだから……そんな事を考えて再度ディスプレイを開き、ログアウト操作をしようとした瞬間…唐突に開いた通知ディスプレイと共にそれは訪れた。

 

「新しく始めて、ここまで負け無し連戦連勝の好戦績を重ねてる「エピオン使いのナナ」って貴女?」

 

「これは…プライベートメッセージ…?」

 

プライベートメッセージ。ボイスチャットと個人チャットのハイブリッドのようなもので、指定した対象のダイバーだけに声を届ける便利機能の1つだ。

 

当然、送り主の座標も同時に表示される。

 

私は座標の指定に従って視線を動かし……白と黒のツートンカラーデザインのパーカーを被った、初対面の少女を視界に捉えた。

 

この日この瞬間、彼女の……μお姉様との出会いをキッカケに、私の運命の歯車は大きく動き出した。

 

 




悪党3人組

残念ながら名前は無い。何故ならナナカちゃんが覚える気が無かったモブ共だから。
「兄貴」と呼ばれる頭領と、チンピラ2人で構成された問題行動が目立つ小悪党3人組。
黒をパーソナルカラーに設定しており、兄貴がトールギスII、他2人がそれぞれディランザソルとリック・ドムをベースに軽く改造を施したガンプラを使用している。
ナナカによってボコボコにされた後、ログアウトして外で八つ当たりをしていたところを何やら怪しいフードの男に声を掛けられたようだが…?

武藤 華月 / ノーン
ランク圏外のごくありふれたダイバーをやってる女子高生。特別な事は何もなく、ただただGBNをエンジョイしている。困っている人を放っておけない性格で、その性格も相まって時折トラブルに首を突っ込んでいる。
愛機はガンダムヘビーアームズ改(EW)をカスタマイズして更に火力を引き上げた「ガンダムHA/BB」(ヘビーアームズ/ビターバレット)。
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