ようこそ凡人がいく実力至上主義の教室へ   作:神威 

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 大変お待たせしました。


第13話 審議

 審議の当日である火曜日を迎え、Cクラスの教室内は朝から重苦しい緊張感に包まれていた。

 窓際の席から石崎たちの様子をさりげなく窺ってみれば、本番直前のプレッシャーからくるものなのか、3人とも一様に表情が硬く、どこか落ち着かない様子で貧乏揺すりを繰り返している。

 そして、運命の放課後を告げるチャイムが校内に鳴り響いた瞬間、俺は迷わず席を立ち、石崎たちの席へと歩み寄った。

 

「おい、柊……! なぁ、早く俺たちに対策を教えてくれよ!」

 

 席につくなり、石崎がすがるような目付きで小声で急かしてきた。隣の小宮も近藤も、生唾を飲み込みながら俺の言葉を待っている。

 

「そう慌てるな。これから生徒指導室へ向かう廊下で順を追って説明する。荷物をまとめて立ってくれ」

 

 実は、俺はあえて審議の直前である今日のこの瞬間まで、彼らに具体的な対処法や注意事項を一切伝えていなかった。ギリギリまで張り巡らせておいた網によって、Dクラスおよび彼らに与するBクラスの動向を完全に探りきり、相手が用意しているであろう手札のすべてを把握するためだ。すでに手の内は読めている。こちらの対策も完璧だ。

 

「じゃあ、歩きながら話すから聞き漏らさないようにな」

 

 周囲の生徒に会話を拾われないよう、静まり返った廊下を一定の距離を保って歩きながら、俺は冷徹に指示を出し始めた。

 

「はっきり言って、俺の事前の助言がなかったとしても、今回の審議は本来ならお前たちが圧倒的に有利に進められるはずのゲームだ。学校側はすでに、お前たちの怪我の事実を最大の証拠として見ているからな。だが、完璧に勝利を収めるためには、これから言う2つのポイントを徹底的に守ってもらう必要がある」

 

 俺は歩調を緩めず、人差し指と中指を立てて彼らに見せた。

 

 「石崎たちが本番で気を付けるべき点は2つ。まず1つ目は、審議中に相手がどんな揺さぶりをかけてこようとも、『何があっても絶対に感情的になって取り乱さないこと』だ。もしお前たちが冷静さを失って大声を上げたりすれば、判断を誤ってボロを出す。勝てるはずの審議でも自滅する可能性が出てくるんだ。俺とて、何でも知っているわけではないからな。審議室の中で起こるすべてのイレギュラーを外から把握できるわけじゃない」

 

 3人は緊張した面持ちで、ゴクリと息を飲んで頷いた。

 

「そして2つ目。『言葉遣いと態度を徹底的に弁えろ』。学校の教師や生徒会を前にして、言葉遣いや態度が荒い人間と、殊勝で丁寧な人間、どちらの言い分を大人が信用したくなるか? 聞くまでもないだろ。大抵の人間は後者の味方をする。この2点さえ完璧に抑えて演じきれば、それだけで審議官たちの印象は劇的に良くなり、お前たちの意見が通りやすくなる」

「なるほど……その2つを頭に叩き込んで臨めばいいんだなっ!」

 

 石崎が拳を握りしめ、自分に言い聞かせるように熱く頷く。

 

「ああ、指導室まであまり時間がないから、次に具体的な対処法を言うぞ」

 

 注意事項の次は、実際の議論における切り返しの方策だ。

 

「Dクラスは必死の調査の末に目撃者を発見したようだが、その正体は彼らの身内であるDクラスの女子生徒だ。正直なところ、そんな身内の証言など学校側からすれば『クラスのポイント減点を防ぐために、口裏を合わせて用意した偽りの目撃証言ではないか』と疑うのが自然だ。相手がどれだけ真実を訴えようと、審議の場では身内を庇うための身勝手な主張として突っぱねろ。ただ、相手も馬鹿じゃない。その発言の信憑性を担保するために、何らかの目撃証拠を提示してくるはずだ」

 

 俺は一瞬言葉を切り、3人の目を覗き込んだ。

 

「その時は、相手が提示してきた証拠がどちらが先に手を出したかを明確に立証できているかどうかに集中しろ。もしその部分の描写が曖昧だった場合は、お互いに喧嘩両成敗で罰則を受ける流れになる……そこですかさずお前たちが突くんだ。自分たちの怪我の重さをアピールし、須藤の行いは正当防衛の範疇を遥かに超えた過剰防衛だと主張して、彼に厳重な処分を下すよう生徒会側に強く提案すること」

 

 石崎たちの身体に残された打撲や青あざの数々は、明らかに素人の喧嘩の域を超えている。とてもじゃないが、須藤側の正当防衛という言い訳が丸ごと通るはずがないのだ。

 

「流石だぜ、柊……! お前が裏で付いててくれれば、これで本当に須藤の奴を――」

「もし万が一、相手がお前たちが先に殴りかかった最初の一歩から、須藤が殴り返すまでの一部始終を収めた確実なデジタル証拠を出してきたら、その時点でこちらの負けだがな」

「なっ……!? じ、じゃあ、もしそんな決定的な証拠を出されたら、俺たちはどうすれば良いんだよ!?」

 

 石崎が途端に顔を青くして狼狽する。俺はそんな彼を冷たく見据えた。

 

「どうしようもない。その時は大人しく腹を括って、学校からの処分を受け入れるんだな」

 

 そうこうしている内に、俺たちは重厚な扉の置かれた生徒指導室の前へと辿り着いた。

 話すべき戦略はすべて話し終えた。俺は事前に用意しておいた須藤の過去の素行不良に関する経歴が詳細に書かれた紙切れを石崎のポケットにねじ込み、最後に緊張をほぐし冷静さを保つための深呼吸の手順を教えた。

 あとは、彼ら自身の演技力と踏ん張り次第だ。

 

「じゃあな。俺はここまでだ」

 

 俺は背を向け、緊張でガチガチになっている3人と別れてそのまま一人で帰路についた。

 石崎たちも須藤も、共に過去の経歴から喧嘩慣れしている問題児であることはDクラス側もすでに調べ上げているはずだ。ここから先は、どちらの出方次第で勝負の天秤が大きく傾くか分からない心理戦になる。

 

 俺は石崎達と別れ、帰宅した。

 

 石崎達と須藤のお互いは喧嘩慣れをしているとDクラスも調べ上げられており、どちらかの出方次第で勝負の行方が決まる。

 もし万が一石崎たちが無様に負けて真相が露呈したら、裏で糸を引いていた龍園だけでなく、作戦をサポートしていた俺にも何らかの制裁が下される可能性があるが、相手が持っているカードがこちらの勝勢を覆すほどの確証たる証拠ではないことを祈るばかりだな。

 

 

 その日の夜。静まり返った自室で過ごしていると、突然携帯端末が激しく震え、画面に石崎の名が表示された。即座に通話ボタンを押す。

 

「どうだった」

『あ、あのよ、柊……! とんでもねえことになった……!』

「何? 審議の結果はどうなったんだ」

『それがよ……結論が出ずに、明日の放課後に再審議って形で延長されたんだよ!』

「……何だと?」

 

 石崎からの焦燥しきった連絡を受け、俺は想定外の展開に一瞬だけ眉をひそめた。予定通りにいけば、今日で須藤の処分が確定するはずだったのだ。何故そのような不可解な結果に至ったのか、詳しく室内の事情を聞き出す。

 

『最初のうちはさ、本当に柊の言う通りの展開になったんだよ! 相手の目撃者の証言があやふやだったから、学校側は俺たちに1週間の停学、須藤には2週間の停学処分ってことで話がまとまりかけたんだ。……なのに、同席してたDクラスの代表の奴らが「この処分は絶対に受け入れられない! 須藤は完全無実だ!」って激しく食い下がってよ……それで結局、明日にもう一度話し合うってことで延長にされちまったんだ……』

「なるほどな……Dクラスの連中は、具体的に他にどのような発言をしていた?」

「え、ええと……確か、正当防衛による完全無罪以外は認めないって一点張りだったぞ。それ以外の処分なら徹底抗戦するって……」

 

 電話越しに聞こえる石崎の声を分析しながら、俺は思考を急速に回転させる。

 要するに、最後は理屈の通らない泥仕合に持ち込まれたということか。

 だが――何かが強烈に引っかかる。

 冷静に考えてみれば、Dクラスにとって須藤の2週間の停学処分という着地点は、決して悪い話ではないはずだ。

 もし客観的な目撃者や証拠が一切提示できなければ、須藤には最悪退学や1ヶ月以上の長期停学という破滅的な処分が下されることくらい、少し頭が回る奴なら予測がつくはず。にもかかわらず、何故彼らはわざわざリスクを背負ってまで、そんな無茶な引き延ばし工作を謀ったのだ?

 まさか、な。

 ある一つの可能性が、脳裏をよぎった。

 

「石崎、その審議の最中、あるいは終わった後でもいい。他に何か不審な挙動を見せた奴はいなかったか? どんな些細なことでもいい、少し変だなと感じた違和感はなかったか?」

『変なこと……? あ、そういえば……審議が終わって部屋を出る時、Dクラスの一緒に来てた綾小路って奴がボソッと不気味なことを呟いてたな。「話し合いなんて最初からしなければよかったくらいだ」……とか何とか、そんな意味不明な意味深なセリフをよ』

 

「……そうか。分かった」

 

 その一言で、ジグソーパズルの最後のピースがカチリと嵌まった。

 大方、Dクラスの本当の狙いは審議そのものの解消、つまりこの事件自体を最初から『なかったこと』にすることだ。

 彼らの掲げる真の勝利とは、須藤の完全無罪。しかし、証拠不十分の現状に加え、須藤の過剰防衛の事実がある以上、正面から戦って完全無罪を勝ち取るのは法的に不可能な話だ。

 じゃあ、その不可能な状況を覆すためにどうするべきか。答えは簡単だ。この暴力事件の訴え自体を、俺たちCクラス側の手によって自主的に取り下げさせればいいのだ。

 世の中、自分たちにとって都合の悪いスキャンダルを脅迫や圧力によって揉み消す話など、いくらでも転がっている。

 間違いなく、明日の再審議が始まる前のどこかのタイミングで、Dクラスは石崎たちに対して訴えを取り下げるように何らかの手を仕掛けてくるはずだ

 

「石崎。今から俺が言うことを、一言も聞き漏らさずにしっかりと聞いてくれ」

『お、おう。なんだよ、急に真剣な声出しやがって……』

「明日、Dクラスはお前たちに対し、間違いなく何らかの『脅迫』に近い手段を用いて、学校への被害届を取り下げるよう迫ってくる」

『き、脅迫!? なんでそんなこと……普通に「お願いだから取り下げて」って頭下げてくるんじゃねえのか?』

「馬鹿を言うな。そんな愚直な懇願に対して、お前たちが『はい、分かりました』と素直に取り下げるわけがないことくらい、向こうも百も承知だ。相手が仕掛けてくる選択肢は取引か脅迫の二択しかない。だが、Dクラスには俺たちと対等に交渉できるだけの強力な材料がないし、何より明日までという時間が圧倒的に足りない。となれば、消去法で彼らが選ぶのは脅迫の一手のみだ」

 

 受話器の向こうで、石崎がヒッと息を呑むのが分かった。

 

「明日、具体的にどういった形で奴らがアプローチしてくるか、現時点ではまだ完全には読み切れていない。だから、明日の再審議が始まるまでの間、俺は独自に校内の調査に回る。お前たちは明日学校に来たら、とにかくDクラスの連中の動向に最大限の警戒を払っておいてくれ」

『おう、分かった! 小宮と近藤にも厳重に伝えておくよ!』

「頼む。念のため、彼らに知恵を貸している可能性のあるBクラスの動きにも目を光らせておけよ」

『了解だ!』

 

 手短に用件を済ませて石崎との通話を切ると、俺は深く息を吐き出しながら、携帯端末をゴトッと机の上に置いた。

 

 

 翌日の朝。俺はいつもより30分以上早く家を出て、静まり返った通学路を登校していた。

 学校へと続く美しい並木道には当然、この時間帯は自分以外に登校している生徒の姿はほとんど見られない。木々の隙間から差し込んでくる朝の太陽の光が容赦なく肌を焦がし、歩いているだけでじんわりと汗をかきそうになる。幸い、早朝の空気にはまだ微かに夜の涼しさが残っているものの、やはり夏特有の不快な暑さであることに変わりはなかった。

 歩きながら、ふと思う。ここ最近忙しいせいかあまり図書館に通えてない気がする。

 借りていた本はすでに全て読み終えてしまっている。今回の泥仕合が無事に収まったら、今日の放課後にでも久しぶりに図書室へ足を運ぶとしよう。そういえば、この前の週末はひよりと一緒に図書館に行く予定が変わってしまったから、今度はひよりを誘って一緒に行くのも悪くないな。

 そんな他愛のない平和な思考に身を委ねながら校舎へと入り、俺は最初の目的地へと到着した。

 目的地と言っても、もちろん自分の教室ではない。用があるのは、すべての発端となったあの事件の現場、特別棟だ。

 俺の憶測が正しければ、Dクラスは何かしら戦況をひっくり返すための物理的な策を用意して動いている。どうやって石崎たちを脅迫してくるのかは未だ不透明だが、彼らが事件を帳消しにしたいと考えていることだけは確かだ。おそらく、そのための仕掛けがこの場所にある。

 

「さてと……」

 

 誰もいない薄暗い特別棟の廊下に立ち、天井付近の構造を隅々まで注意深く注視する。

 

 

「……ん?」

 

 じっと目を凝らしていたその時、俺の視線はある一点でピタリと止まった。明確な『違和感』がそこにあった。

 俺は即座にポケットから携帯端末を取り出し、写真フォルダのアプリを起動した。画面に映し出したのは、先日この場所を現場検証した際に撮影した天井のコンセントの写真だ。

 そこには、何もない壁面に不自然に独立した空のコンセントが写っている。

 そして俺は携帯の画面から視線を外し、現実のその場所を見上げてみた。すると、数日前には影も形もなかったはずの最新式の監視カメラが、まるで最初からそこにあったかのような澄ました顔で、コンセントに接続されて設置されていたのだ。

 

「なるほど……そういうことか」

 

 俺は静かに口元を歪めると、周囲に誰もいないことを確認し、しなやかな動作で勢いよく壁を蹴り上げた。その跳躍の勢いのまま、天井付近に設置されていた監視カメラをベリッと強引に剥ぎ取る。剥ぎ取られた壁の跡からは、やはり見覚えのある例のコンセントが剥き出しになって現れた。

 カメラの裏側や構造を手の中でじっくりと観察する。配線はされておらず、単にそれらしく見せるためだけに設置されたダミー、あるいは簡易的な録画機能のみの市販品だ。

 

「よくもまぁ、こんな短時間で大掛かりなハッタリを思いついたものだな」

 

 手に持った偽の監視カメラを見つめながら、この大胆極まりないブラフの手口を考案したDクラスの謎の人物に対し、俺は素直に深い感心すら覚えていた。

 これでDクラスの狙いも、石崎たちをどうやって脅迫するつもりだったのかも、すべてが完全に繋がった。

 俺は手際よく監視カメラを元の位置へと寸分の狂いもなく戻すと、満足げに踵を返した。

 正直、朝一番の調査でここまでの確実な成果が得られるとはそこまで期待していなかったのだが、思いがけない大収穫だ。やはり可能性が低くても、違和感があれば即座に行動に移すという俺の行動理念は正解だったようだ。

 あとは昼休みにでも、あいつらにDクラスが仕掛けたこの偽の監視カメラのトリックについて説明してやるだけだな。

 午前の退屈な授業がすべて終わり、待ちに待った昼休みを迎えた頃。俺は周囲の目を盗み、早々に教室の後方にいる石崎の席へと直行した。

 

「石崎、ちょっと来てくれ」

「なんだ柊、改まって。……もしかして、何か分かったのか?」

「今朝、特別棟に足を運んできて、面白いことが分かった……小宮と近藤も今すぐここに呼んでくれ」

 

 石崎が慌てて小宮と近藤の2人を呼びに行っている短い間、俺は携帯端末の写真フォルダを開き、今朝撮影してきた決定的な証拠の画面を表示させて待機した。

 

「おい、2人も連れてきたぞ、柊!」

 

 息を切らせて戻ってきた3人を確認し、俺は周囲に他の生徒がいないことを確かめてから声を落とした。

 

「よし。今から俺が言うことは、あくまで俺の推測も交じっているが、ほぼ間違いなく真実だ。心して聞いてくれ」

 

 3人が固唾を飲んで力強く頷くのを見届け、俺は携帯端末の画面を彼らの目の前へと突き出した。

 

「まずは、これを見てくれ」

「これは……前に特別棟で撮った、天井のコンセントの写真だろ?」

「そうだ。じゃあ、次の写真にスワイプするぞ」

 

 俺が画面を横にスワイプすると、今朝の早朝に撮影した、全く同じアングルの写真が表示された。そこには、コンセントを覆い隠すように設置された監視カメラの姿がはっきりと写っている。目を凝らして画面を見つめる3人の耳元で、俺は淡々と解説を続けた。

 

「見ての通りだ。この監視カメラは、昨日の夜から今朝にかけて、お前たちをハメるためにDクラスの人間が後付けで勝手に用意した偽物の罠だ。おそらく今日の放課後の再審議の直前、Dクラスの連中はお前たちをあの場所に呼び出し、このカメラを見せてこう脅してくるはずだ。『あの場所には実は最初から監視カメラがあった。これにはお前たちが先に仕掛けた証拠が写っている。公沙汰にしたくなければ、今すぐ訴えを取り下げろ』……とな」

 

 俺は一度言葉を区切り、3人の顔色を窺った。彼らはあまりの衝撃展開に完全に脳の処理が追いついていないようで、ポカーンと口を開けたマヌケな表情でこちらを凝視していた。

 

「おい、聞いてるのか?」

「お、おう……! 聞いてる、めちゃくちゃ聞いてるぞ! ……なんつーかさ、本当に、柊が俺たちと同じCクラスで良かったって、今心の底から実感させられたわ……」

「マジでそれな……。もし柊が敵に回ってたらと思うと、ゾッとするぜ……」

 

 小宮も近藤も、信じられないものを見るような目で俺を見つめ、うんうんと何度も深く首を縦に振っている。

 一体何を阿呆なことを言っているんだ、こいつらは。

 

「これはあくまで俺の憶測と状況証拠に過ぎない。あのカメラをDクラスの者が設置したという明確な現場の根拠もなければ、学校側に突きつけられる証拠があるわけでもないからな」

「じゃ、じゃあ、もしかして一之瀬とかいうBクラスの奴らも裏で協力してたりするのか?」

「ああ、その可能性は極めて高い。だから、もし放課後に呼び出されたとしても、そこにDクラスの人間だけがいると思わないことだ……必勝の手順を教えるぞ。奴らがどんなにもっともらしい嘘や証拠をチラつかせて脅してこようとも、『一切の言葉に耳を貸さず、完全無視して予定通り再審議の場に臨め』。それだけで、こちらの勝利だ」

 

 俺がそう力強く告げると、石崎たちの顔にはさっきまでの不安など微塵もなくなり、勝利を確信した男の笑みが浮かんでいた。

 

「本当に助かったよ、柊……! この件が無事に終わったら、絶対に高いジュース奢らせてくれや!」

「期待して待っておく。くれぐれも本番で相手の口車に乗せられるなよ?」

「おう! 任せとけ!」

 

 これで俺の裏方としての仕事は終了だ。あとは、このお膳立てされた勝利の切符を、こいつらが自分たちの手でしっかりと掴み取れるかどうか、その判断にすべてを委ねるとしよう。





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