ようこそ凡人がいく実力至上主義の教室へ   作:神威 

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 大変お待たせしました。


第13話 審議

 

 審議当日の火曜日を迎え、教室内は空気が重く緊張感に包まれていた。石崎達を窺えば緊張感からくるものなのか表情が硬い。

 

 そして放課後を告げるチャイムが鳴り、俺は石崎達の席に向かう。

 

 

「なあ、早く教えてくれよ」

 

「職員室に行く際に説明するからそう慌てるなよ」

 

 

 まだ審議での対処法と注意事項について石崎達に教えていない。ギリギリの今日までD、Bクラスの動向を探り、相手の手札は把握済みであり対策は考えている。

 

 

「じゃあ話すぞ」

 

 

 廊下を歩きながら説明する。

 

 

「はっきり言えば俺の助言なしでも今回の審議はお前達が有利に進めるはずだ。だが勝つため徹底的にした方がいい」

 

 石崎達が気をつける点としては二つある。

 

 一つ目は何があっても取り乱さないことだ。冷静さを失えば誤った判断をしてしまい、勝てるはずの審議でも負ける可能性だってある。全部を把握している訳ではないからな。

 

 二つ目は言葉遣いと態度に気をつけること。言葉遣いや態度が悪い人間と良い人間、どっちが印象が良いと聞かれたら大抵は後者を選ぶ。

 

 この二つさえおさえておけば、僅かでも意見は通しやすくなる。

 

 

「その二つを気を付ければいいんだなっ」

 

「あぁ、職員室まであまり時間がないから次言うぞ」

 

 

 注意事項の次は対処法だ。Dクラスは目撃者を発見はしたのだが、その発見者はDクラスの生徒であること。

 

 正直なところ身内の証言は口裏を合わせ嘘の目撃証言をさせているようにと周りは思い、それが真実だろうと庇っていると言うだろう。そこで目撃した証拠を提示してくるはずだ。

 

 その証拠が誰から手を出したかをしっかりと見て、それが曖昧の場合はお互い罰則を受けるが、怪我の具合から須藤の行いは過剰防衛だと厳重な処分を下すように生徒会に提案すること。

 

 明らかに石崎達の怪我は酷い、とてもじゃないが正当防衛は通らない。

 

 

「流石だぜ、柊。これでーー」

 

「まぁ、一部始終の確証の証拠を出されたらこちらの負けだがな」

 

「なっ!! じ、じゃあどうすれば良いんだよ!?」

 

「どうしようもない。その時は腹を括ってくれ」

 

 

 そうこうしている内に職員室にたどり着いた。

 

 話す事は全部話し、俺があげた須藤の経歴が書かれた紙切れと、冷静を保つ方法を教えた。あとは彼ら次第だ。

 

 俺は石崎達と別れ、帰宅した。

 

 石崎達と須藤のお互いは喧嘩慣れをしているとDクラスも調べ上げられており、どちらかの出方次第で勝負の行方が決まる。

 

 あ、石崎達が負けたら俺にも制裁を与えられてしまうな。確証の証拠じゃないといいんだがな。

 

 

 

 

 

 

 

「なに? 明日に延長された?」

 

 

 石崎の連絡に想定外のことに戸惑う。何故そのような結果に至ったのか詳しく事情を聞き出す。

 

 

『柊の言う通りになって俺たちに1週間の停学と須藤の2週間の停学の処罰で終わりかけたんだけど、Dクラスの奴らは無実だと言って延長にされたんだよ……』

 

「そうか……Dクラスは具体的にどのような事を言っていた?」

 

「え、確か……停学処分は受け入れられない、完全無罪と言ってたぞ」

 

 

 要するに最後は泥仕合になったってことか。

 

 なんか引っかかるな。

 

 Dクラスにとって須藤の2週間の停学処分はそんなに悪くない話のはず。目撃者と証拠が無かったら約1ヶ月の停学処分の予測はつくぞ。

 

 何故態々そのようなことを…………まさかな。

 

 

「石崎、他に不審なことは見つけられなかったか? 何でもいい、少し変だなと思ったところなかったか?」

 

「あっなんかDクラスの綾小路って奴が『話し合いなんて最初からしなければよかったくらいだ』って意味不明なことを言ってたような気がするぞ」

 

「!? ……そうか」

 

 大方、Dクラスの狙いは審議の解消だろうか。Dクラスの勝利は須藤の完全無罪だと思う。つまり、お互い罰を受ける結果だとしてもDクラスにとっては敗北も同然。

 

 証拠不十分に加え須藤の過剰防衛の為、完全無罪は無理な話だ。じゃあ、どうするべきか、簡単だ。最初から無かった事にすればいい。

 

 こういう手口はないこともない。自分にとって都合の悪いことを揉み消す話はよく聞く。

 

 明日の審議の前に必ずDクラスは訴えを取り下げるように仕掛けてくるはずだ。

 

 

「石崎、今から言うことをしっかりと聞いてくれ」

 

「お、おう」

 

 

 明日Dクラスは必ずといってよいほど脅迫するような手で訴えを取り下げるように仕掛けてくる。

 

 「訴えを取り下げて下さい。お願いします」と、「懇願してもはい、分かりました」と、素直に取り下げる愚直な真似をする訳ないだろ。

 

 脅迫か取引の2択の選択肢はあるが、取引な必要なモノはないし、なにより時間が無いから消去法で脅迫になる。

 

 

「明日何かしらDクラスが仕掛けてくる筈だが、まだDクラスの思惑が検討つかないでいる。だから審議までに俺は調査に回るからお前はDクラスの動向を警戒してくれ」

 

「おう、あいつらにもだよな?」

 

「あぁ。念の為、他のクラスも警戒しておくようにな」

 

「わかった」

 

 

 そこで俺は石田と連絡を切り、携帯端末を机に置いた。

 

 

 

 

 

 翌日の朝、俺はいつもより30分早く登校していた。学校までの並木道には当然、自分以外に登校している生徒はあまり見られない。

 

 並木道から差し込む日光が眩しくて暑く、汗をかきそうだ。まぁ幸い朝だから少しは涼しいはずなんだろうけど、暑いことには変わりはない。

 

 思えばなんだろ。ここ最近忙しいせいかあまり図書館に通えてない気がする。

 

 そうだ。借りていた本も読み終えたことだし、事が収まったら放課後行くとしよう。この前、ひよりと一緒に図書館へと行けなかったからひよりも誘うとするか。

 

 そんなことを考えながら登校していると、目的地に到着した。

 

 目的地と言ったものの教室ではなく、事件現場である特別棟に用がある。

 

 俺の憶測が正しければ何かしら策があってDクラスは動いている。どのように仕掛けてくるかは未だに分からないが事件を帳消しにしたいことは分かっている。多分。

 

 

「さてと」

 

 

 特別棟の辺りを注視する。

 

 

「ん?」

 

 

 注視していると早速、異変に気がついた俺は携帯端末を取り出し写真フォルダのアプリを開く。

 

 俺が見ていた写真は先日撮影したものだ。その写真に写るのは天井付近にコンセントが設置されている。

 

 そして携帯端末から視線を外し、見上げてみればそこにはあるはずがない監視カメラが設置されていた。

 

 

「なるほど」

 

 

 勢いよく壁に蹴り上げ天井に設置している監視カメラを剥ぎ取る。すると剥ぎ取られたところはコンセントがあらわになる。

 

 

「よくこんなこと思いついたな」

 

 

 手に取る監視カメラを見ながら、この手を思いついた謎の人物に感心する。

 

 Dクラスの狙いも分かったことだし、俺は監視カメラを元の位置に戻した後踵を返す。

 

 しかし、あまり期待はしていなかったが、思いがけない収穫を獲た。やはり可能性が低くても行動に移して正解だったようだ。

 

 あとはあいつらにDクラスが設置したであろう監視カメラについて説明するだけだな。

 

 

 

 

 

 午前の授業が終わり昼休みを迎えた頃、俺は早々に石崎の席に向かう。

 

 

「石崎」

 

「なんだ柊」

 

「今朝、特別棟に足を運んできて分かったことがある。小宮と近藤を呼んでくれ」

 

 石崎が小宮と近藤を呼んでいる間に携帯端末の写真フォルダを開く。

 

「呼んできたぞ柊」

 

「さて、今から俺が言うことは絶対に正しいとは限らないが聞いてほしい」

 

 

 3人が頷くのを確認する。

 

 

「まずはこれを見てくれ」

 

 

 俺は携帯端末の画面を見せる。

 

 

「まずこれは暴力事件の後日に撮影した特別棟の天井付近にあるコンセントの写真だ」

 

 

 3人が訝しげに写真を見るが、俺は画面をスワイプし次の写真が写り出す。

 

 

「次はこれだ。これは今朝、撮ってきたものだ」

 

 

 見せるのは特別棟のあるはずがないコンセントに監視カメラが設置されている写真。目を凝らし写真を見る3人の横に俺は言葉を続ける。

 

 

「見ての通り、この監視カメラはお前たちを嵌めようとDクラスの者が用意したと思われ、放課後の再審議の前に訴訟を撤回するようにと促してくると思う。

 あたかも初めっからあったかのように言ってくるだろうから相手の口車に乗せれないよう気を付ければ、Dクラスの策略にはまることはない」

 

 

 一度言葉を止め3人の顔を見れば、ポカーンとした顔でこちらを見ている。

 

 

「おい、聞いてるのか?」

 

「お、おう。聞いてる聞いてる。なんつーか、柊がCクラスで良かったと実感させられたわ」

 

「マジでよ」

 

「うんうん」

 

 

 何阿呆なことを言ってるんだこいつら。

 

 

「はぁ、あくまで俺の憶測に過ぎないからな。Dクラスの者が設置したという根拠もなければ証拠もない」

 

「Bクラスが協力してるかもだろ?」

 

「ああ、だからその時はDクラスだけがいるとは思わないことだ……最後にアイツらの話に聞く耳をもたずに再審議に臨めばこちらの勝利だ」

 

「助かった柊。終わったらジュース奢らせてくれや」

 

「ああ、くれぐれも気をつけてくれよ」

 

「おう」

 

 俺の仕事はここまでだ。あとはこいつらの判断に任せるとしよう。

 

 

 





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