ようこそ凡人がいく実力至上主義の教室へ   作:神威 

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第17話 無人島試験1

 その一言にほぼ全クラスがざわめき、疑問の声の嵐が舞う。

 夏休みのバカンスと思った矢先、実は特別試験だったと天国から地獄に落とされた錯覚を覚える。そんな空気感が漂い、とても受け入れがたいような感じだ。

 そんな生徒たちを無視するかのように、真嶋先生は特別試験について説明を始める。

 

 簡潔に言えば、これから1週間はこの無人島で集団生活を行えとのこと。

 学校側からスタート時点で、クラスごとにテントを二つ、懐中電灯を二つ、マッチを一箱を支給される。また日焼け止めは無制限で歯ブラシは各自一つずつ配布するとのこと。その他は女性の場合に限り生理用品は無制限なんだと。

 

 個人的には十分すぎるほどの支給品だ。

 俺が14歳の時、あの人たちに何処かわからない無人島に放り込まれ支給品と所持品は無しで三週間程過ごしたサバイバル生活と比べれば易しいほうだ。

 

 あの時は本気で死ぬかと思ったぞ冗談抜きで、いやマジで。なんで無人島に虎がいるんだよ。おかげで引っ搔かけられた胸の傷跡がまだ残ってるんだぞ。

 まあでも、なんやかんやあってあの虎と仲良くなったんだよな。撫でてみたら意外とモフモフしてたし。

 

 軽く思い出に浸る……もとい現実逃避してると、大きな声に現実へと呼び起こされる。声の出所からしてDクラスの生徒のようで当然のように文句を言っている。

 

「美輝くんそんな遠くを見るような目をしてどうされましたか?」

「ん、何でもない。ただ過去に似たようなことを体験してな」

「? あー無人島で生活された経験があるのですね」

「ああ、その時の知識がここで活かせるようだ」

「ふふっその時はよろしくお願いしますね」

「大船に乗った気持ちでいてくれ」

 

 サバイバル生活に必要な知識に加え、客船で無人島を周回した際に地形は把握している。川が流れてそうな所や、生活する上で最適な拠点などの地点は予測できる。食料は島を探索していればいいとして、幸い火はマッチが支給される。わざわざ、火起こしする必要はない。

 さて、問題は特別試験だ。特別試験というからはクラスポイントが絡んでくると思われる。

 

「――この無人島における特別試験では大前提として、まず各クラスに試験専用のポイントを300支給することが決まっている。このポイントを上手く使うことで一週間の特別試験を旅行のように楽しむことが可能だ。そのためのマニュアルも用意している」

 

 あのマニュアルにはポイントで入手できる物のリストが全て載っているようで、バカンスのように過ごせることも可能。しかし、肝心はその試験専用のポイント。遊戯部の先輩から賭け事で見せてもらったクラスポイント変動データからそのポイントは差異はあれどその300ポイントがクラスポイントに加算されるとデータの辻褄が合う。

 

「この特別試験終了時には、各クラスに残っているポイント、その全てをクラスポイントに加算した上で、夏休み明けに反映する」

 

 思ったよりも面白くなりそうだ。この特別試験のテーマは自由。ポイントを使うも使うまいも自由。

 そして真嶋先生の話が終わる。拡声器を持った別の教師が各クラス担任の先生から補足説明を受けるよう通達するとCクラスは坂上先生の元に集まった。

 

「皆さんに腕時計を配布します。これは特別試験が終了するまで許可なく外してはなりません。当然、許可なく外した場合ペナルティが課せられます。この腕時計は時刻の他、体温や脈拍、人の動きを探知するセンサー、GPSといった機能も搭載されています。万が一の非常事態はそのボタンを押してください」

 

 それから坂上先生の話が続き簡易トイレやスポットの説明を終えた後、坂上先生はマニュアルを龍園に渡した。龍園はパラパラとマニュアルを読むと、俺のところに来てマニュアルを渡してきた。

 

「最後に質問のある人はいますか」

「仮に300ポイントを全て使い果たし、リタイアしたやつが現れたらどうなるんだ先生」

「この試験でマイナスに陥ることはありません」

 

 龍園の質問に坂上先生はそう答える。龍園は何の意図でその質問をしたかはまだ分からない。だが如何にも悪そうな面を浮かべていることから、ろくでもないことを企てているだろうな。

 

「質問は以上ですね。では、今日の点呼までにリーダーが決まりましたら私に報告してください。その際にリーダーの名前を刻印したキーカードを支給します。もし報告がない場合は、こちらでリーダーを決めることになります。以上です」

 

 坂上先生の説明が終え、俺はマニュアルの開きページをめくる。

 

 スポットは島内に幾つか点在し、一度の占有につき1ポイントを得る。占有したスポットは八時間自由に使用でき、他が占有しているスポットを許可無く使用した場合50ポイントのペナルティを受ける。キーカードを使用することが出来るのはリーダーとなった人物に限定され、リーダーは正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない。

 

 そして特別試験の最終日、点呼のタイミングで他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。他クラスのリーダーを的中させることが出来れば、的中させたクラス一つに付き50ポイントを得る。逆に的中された場合は、ペナルティとして50ポイントを失い、スポットを占有したポイントも失うことになる。

 

 もし的中させることに失敗した場合は50ポイントの損失だ。

 

 マニュアルを隅々まで読み、注目するルールはこれで以上となる。

 

「ひよりも読むか?」

「はい、ありがとうございます」

 

 読み終えたマニュアルをひよりに渡し、ザッザッと砂浜を歩く足音が近づく。

 

「おい読み終わったか」

「まあな、龍園はこの特別試験をどうするつもりだ」

 

 一応龍園の意見を聞く。誰にも聞かれたくないことなのか龍園は俺を森の中へと誘導し、するとどうだろう悪巧みを共有するかのような笑みで淡々と話すではないか。

 龍園としては試験専用の300ポイントをバカンスで消費し、龍園を除くCクラスの生徒は仮病などの理由でリタイアさせ、残った龍園は試験最終日の点呼まで無人島に潜伏しリーダー当てでポイントを獲るつもりのようだ。Cクラスからスパイとして各クラスに送ることでリーダーを特定し、ポイントを使い果たしてもマイナスになることはないから悪くない策と言えるし奇抜な発想だ。

 しかし、これは決定的な弱点がある。

 

「確かにこれでいけばCクラスは勝つことは可能だ。だが龍園、お前はリーダーを当てられるリスクを考慮してあるのか」

「……どういうことだ」

「スパイ役をリーダーに任せる愚直な真似はしないし、基本的に龍園はクラスメイトを信用していない。他クラスはCクラスがリタイアしたことにすぐ気付くだろうな。スパイとして送り込んだ生徒がリーダーだと思わないし、必然にリーダーは島に残っていることが分かる。加えてお前は既に他クラスから警戒されている。可能性としてリーダーは龍園だと候補に挙げられ、スポットを占有したところを見られたらアウトだ」

「はっ流石ってところか――まぁおまえのことだ。何か案があるんだろ?」

 

 あるにはある。マニュアルを読んだときルールには抜け道があった。そこを突けば勝算は充分。

 俺は龍園に戦略を話す。

 

「――――――とまあ、これが俺の考えられる案だ」

「――――くくくっハハハハハっ!! そんなことまで思いついていたなんてなぁ。だが、オレがそれを採用するとでも?」

「好きにするといい。その慢心で敗北してもいいのならな」

 

 龍園は少し考える素振りを見せニヤリと笑ってみせる。

 

「――いいだろう。今回はおまえに乗ってやる。失敗はしたら、分かっているよなぁ?」

「分かっているさ」

 

 

 

 

「おい、おまえら黙れ」

 

 たったその一言にCクラスは噓のように静かになる。言わずもがな恐怖と暴力の支配されているCクラスは龍園には逆らえない。

 

「いいか、聞け。誰も質問するな逆らうな黙って、オレに従え」

 

 そんな暴虐に誰も反論しようとする者はいない。山田は龍園に従順そうに石崎は恐れているのか驚いているのか分からない形相で俺を見てる。龍園の隣に俺がいるのは意外か。

 

「キーカードのリーダーはこいつにする。そしてこの特別試験の指揮とポイントの使用権もこいつに与える。今回オレは何もしないが、オレと思ってこいつに従え」

 

 龍園の発言に対して僅かにCクラスは困惑と疑問が浮かび上がる。龍園らしさではないやり方に戸惑っており理解が追いつかない。そんな様子がひしひしと伝わってくる。

 龍園を見れば顎でくいっとCクラスの生徒たちに向け、発言を催促する。

 

「そういうわけでリーダー兼ポイントの使用は俺が決めることなった。――そうだな。まずは仮設トイレを男女別で二つ購入するとしよう」

 

 その言葉に女子たちは嬉しそうに安堵し、男子たちも少なからず安堵し文句はないようだ。

 これが災害時なら簡易トイレくらいは文句は言えないが、今回は違う。衛生的に男子たちは耐えられたとしても女子は我慢はできないだろう。女子は思ったよりもデリケートだと聞いたことがある。それでストレスが原因で体調を崩しリタイアされたら困る。

 

「次はスポットの占有だ。山田、その一つのテントを頼めるか?」

「yes, joker」

 

 山田は軽々とテントを抱えた。

 いや、待て。ジョーカーって何。俺は山田にジョーカーと呼ばれてるのか。

 訳を聞きたいのは山々であるが、今はスポットの占有が優先だ。時間に余裕が出来たときに聞くとしよう。

 

「スポットの目処はついてる。ついてきてくれ」

 

 俺もテントを持ち上げ、森の中に入っていく。

 

 テントを肩に抱えながら森の中歩いていると、少々息を上げながらひよりが追いつき横に並んできた。俺はひよりの歩幅に合わせペースを落とす。

 

「美輝くん、やっと追いつきました」

「ひよりか。後方の方でゆっくりとついて来てもよかったんだぞ」

「いえ、美輝くんと話したかったので」

「そ、そうか」

 

 続いて石崎も俺の横に並び困惑が拭えない様子を見せながら俺に声をかける。

 

「な、なあ柊。お前龍園さんに何かしたろ。いくらお前でも龍園さんがあそこまですんなりと指揮とかを任せる

とは思えないんだよな……」

「何もしてないぞ。ただ龍園の案よりも俺の案の方が合理的で勝算が高いから一時的に任されてるだけだ」

 

 使えるものは使い、利用できるものも惜しまなく利用する。そこに利用される側の気持ちは一切考えてない。それが今のところ俺が知る龍園のやり方。龍園にとって俺は都合よく使える駒程度しか思っていないだろう。

 

「この先に美輝くんが目指しているスポットがあるのですね」

「ああ、そうだ。もう少し歩けばこの先スポットがあるはずだ」

「何でそんなことが分かるんだよ柊。スポットの位置なんて誰にも分からないはずだろ」

「いえ、スポットに関するヒントは島を周回していたときにありましたよ」

「ひよりの言う通り俺はその時、島を観察し地形などを把握してた。そして今そのヒントを元に水源のスポットに向かっているってわけだ」

 

 サバイバル生活で最優先事項は水の確保だ。だから他クラスよりも水源のスポットを占有する必要がある。

 特に水源として川がいい。川を選ぶ理由として、流れている水は比較的病原菌や細菌の繁殖を防ぎやすいため、安全度が高いとされている。一方で、静止した水、例えば池や沼は、特に温暖な気候であれば病原菌や寄生虫が繁殖しやすく、感染症のリスクが高くなる可能性がある。川や流れる水は、通常その水流が汚染物質を洗い流してくれるため、比較的安全とされている。

 

 そうしない内に俺たちは川が流れているスポットを発見した。




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