ようこそ凡人がいく実力至上主義の教室へ   作:神威 

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第6話 Cクラスの王

 坂上先生が教室から出て行き注目を浴びている中、金田といつもの石崎達が近寄ってきた。

 

「柊氏、先ほどのことは本当ですか」

 

 金田が食い気味にそう聞いて来た。その食い気味さに若干引いていたが、どう答えたらいいか悩んでいた。ここで虚言しても小テスト用紙の返却の時に白日の下に晒されるだろう。

 

「本当だと思いますよ」

 

 金田の言い難い問いに困っていると、隣の席である椎名がそう答えた。

 

「何故そう言い切れますか。椎名氏」

「確かに今回の小テストで柊くんは赤点を取ってしまいました。ですが赤点を取っていたにも関わらず全く動じていませんでした」

「それが如何したって言うんだよ」

 

 椎名の言っていることに理解が追いつかない石崎達だが、金田の方は理解したような顔ぶりだ。

 

「坂上先生の退学の話を聞いて、勉強が苦手の方は当然戸惑いや焦りが生まれます」

 

 確かに石崎、小宮、近藤といった小テストの点数が低かった生徒は坂上先生が言っていた退学という言葉に酷く反応していたな。

 

「しかし、赤点で最下位である柊くんからはそれが見当たらなかったんです。極め付けは柊くんの15点という点数です。小テストは各5点の配当で最後の3問のみを解いたとすれば15点になります。最後は坂上先生が教室から退出される時の発言から確信に変わりました。もし、間違っていたらごめんなさい」

 

 椎名の洞察力に素直に感心する。石崎達の方を一瞥すると椎名の洞察力に舌を巻いていて愕然とした様子だ。

 

「……椎名の言うとおりだ。俺はあの3問だけを解いた。でも安心してくれ、次回以降は赤点を取らないよう善処する」

「何故このような真似を……?」

「特にこれといった理由はないな……あぁ、そろそろ1限目の授業のチャイムが鳴るから席に着いた方がいい」

 

 納得がいかないようだが、すまないな金田。

 金田、石崎達は教室内に設置されている掛け時計を確認し自分の席につく。やがて1限目の先生が入って来て授業開始のチャイムが鳴った。

 殆どの生徒は落ち着いていないまま授業をうけ、そして放課後を迎えた。

 授業が終わり放課後を迎え、椎名と会話に花を咲かせながら図書館に向かおうと教室から出て行く矢先、

 ダンっ! 

 と、机を叩く音が教室内に響き渡った。音の正体は龍園だ。突然の事に教室は静まり返るが、龍園はそれを気にも留めず教卓に座る。

 

「おい、お前ら。全員席につけ」

 

 俺と椎名を含む教室から出ようとした生徒に向けて指示をする。

 龍園の行動に不審に思いつつも、ここは彼に従うべきと直感的に判断し席に座り直した。

 

「今日から俺がこのクラスの王となりお前らを仕切る。俺に従え」

 

 堂々と宣言する。その言葉に絶対的な自信を持ち力強い宣言だと感じられた。が、当然、彼をよく思わない生徒は存在する。

 

「は? いきなり出てきて認めるわけぇねぇだろ!」

 

 真っ先に反発したのは石崎だ。続けて小宮、近藤が便乗した。

 

「はっ、おもしれぇ。他に不満な奴はいるか? いねぇ奴は帰って良いぜ。だが俺が王になったら従ってもらうからな」

 

 言質を取ったので俺と椎名は席から立ち上げる。

 彼の独裁的な発言は快く思わないのだが、彼がこのクラスを纏めることに関して不満はない。これから激しくなるであろうクラスの抗争でリーダーは必要不可欠であり、1ヶ月間このクラスを観察した結果、リーダーは龍園が最適と見れる。

 椎名と一緒に教室から出ようとする中、彼に不満を持つと思われる数人の生徒が残ったままだ。

 一つ心配事があるとすれば、教室内での暴力沙汰は遠慮してほしい。監視カメラがあるからな。これ以上クラスポイントが減らされるのは極力避けたい。

 

「柊くんは争いに参加されないんですか」

「俺は争い事が苦手なんだ」

「私もです。ところで柊くんは今朝の坂上先生がおっしゃっていた進学と就職の恩恵について不満とか無いんですか?」

 

 それについてはここに来る以前に疑っていたことであり、進学・就職の恩恵を目的に入学したわけでは無いからその点は不満はないし興味はない。

 

「進学先を悩んでいた際に、とある人達から物凄く薦められた理由で入学したからな。不満はない。椎名は興味なさそうな感じだったが、不満はないのか?」

「私はそこまで欲しいと思ってませんので」

「そうか」

「柊くんはもし龍園くんがリーダーとして動く時、彼に従うんですか?」

「必要な場面に応じて協力はするが、積極的に動くつもりはないな」

 

 個人としては勝手にやってろと考えているし、消極的に動くつもりである。

 

「そうですね。それは同意しますし……」

 

 椎名は一度足を止めたと思えば、こちらを向いて見惚れるほどの笑顔を浮かべる。

 

「柊くんと過ごすのが何よりも1番楽しくて、私は柊くんといる時間の方が大切です」

 

 …………なるほど。何も恥じらうこともなく、それを言われる身としては非常に照れてしまうものだ。徐々に顔が熱くなっていくのを感じる。

 

「そ、そうか」

「柊くんは私と過ごしてどう思われますか」

 

 心配そうに顔を覗き込んで来る椎名。必然と背の高さで見上げる形でその行為は上目遣いになり、異性の耐性がない俺としてはどうしても狼狽えてしまう。

 

「お、俺も椎名と過ごす時間は気に入ってるぞ」

「それは良かったです。これからもよろしくお願いしますね」

「……こちらこそよろしくな」

 

 その言葉を聞いて幸せそうに微笑む椎名。

 参ったな。

 椎名の天然的な発言と笑顔にやられる未来はそう遠くないかも知れない。いや、もう俺は既に彼女に魅入られているのかもな。

 

 

 

「なぁ、柊。ここの問題なんだけどさ、これをここに代入して求めていけばいいんだよな?」

「……あぁ、その通りに求めていけばxが求められ、xの値をこの式に当てはまると……」

「おお! そういうことなんだな! 助かったぜ。サンキューな」

「あぁ。また分からないところがあったら遠慮なく聞いてくれ」

「おう!」

 

 あの龍園の宣言から1週間が経った。中間テストまで残り2週間を切った頃、俺は石崎、小宮、近藤の中間テストに向けての勉強を見ていた。

 リーダーの件は、結論から言うと龍園になった。経緯はあまり把握していないが、龍園に不満を持ったクラスメイトは勝負に敗れ、彼に従うことになる。事実、目の前の現在進行形で勉強に励んでいるこの3人は龍園に対し敬語を使い始め、この場にいないが山田は彼に服従しているのだ。

 そして龍園がリーダーに決まった翌日の朝、俺に接触してきた時の事だ。

 いつも通りに登校し、自分の席に着いた時に龍園が近づいて来た。その龍園の背後には石崎、小宮、近藤が付いており浮かない様子だ。

 

「くくっ、そう警戒すんなよ」

「要件はなんだ」

「仕事だ。この馬鹿共に勉強を教えろ」

 

 馬鹿共というのは背後にいる彼らのことだろう。しかし、何故俺に頼むんだ? 俺以外にもこのクラスで勉強が出来る生徒はいるはずだ。金田にでも頼んでもいいだろうに……

 あぁ、そういうことか。石崎達は不良みたいな容姿であり皆から見れば関わりづらいと思う。あまり関わりがない金田に任せるよりも関わりがある俺に任せた方が良いと判断したと、思われる。それに、赤点だったけど小テストの最後の3問を解いたとクラスの皆に知られたことで勉強出来る奴と認識し俺に頼んで来たのか。

 ……おのれ、坂上先生。当分の間は恨みますからね。

 

「……はぁ。了解だ」

「理解が早くて助かるぜ。もしこいつらを赤点回避させたら報酬として9000ptやるよ」

 

 にわかに信じ難いな。

 

「本当か?」

「何なら契約結んでやってもいいぜ」

「いや、いい」

「それじゃあ、期待してるぜ」

 

 そう言い、龍園は自分の席に戻って行った。

 これはもう完全に目を付けられた感じだな。まぁ、ポイントはともかく勉強を教えることには復習にもなるし、問題ないか。

 

「すまねぇ、柊。世話になる」

「別にいいよ……よし、今日の放課後から図書館で勉強しようか」

 

 それから一週間が経ち、今に至る。

 最初の一週間の勉強会は順調に進んでいたが、先週の金曜日に中間テストの範囲が変わったのだ。

 そのことがあって勉強のペースを上げたいところ。だが如何せん、この3人は中学の勉学をまともにして来なかったツケが回り、ペースを上げるにも上げれないのだ。

 どうしたものかと、思考を巡らせているとふと、坂上先生が口にした言葉が脳裏に蘇る。俺はすぐにメモ帳を取り出した。

 

・今回の小テストは今後の参考用になる

・赤点を取らずにすむ方法があり確信している

 

 今後の参考用、か。あの最後の3問が重要なキーだな。思い出したらアレは高校二年、三年で習う範囲の問題だった筈だ。そんな難問な問題が大半の高校一年生が解けるかと聞かれたら? 答えは否。学校側がそんな解けない問題をわざわざ出すわけがない。赤点回避の方法があると確信しているとすれば、学力以外で乗り越える方法があるのかも知れん。ではその方法とは何だ。

 ふむ、何だろうな。毎年やっている事だと思うんだが……ん? 毎年? もしや毎年同じ問題が出題されてる可能性があるな。過去問があれば石崎達の学力でも赤点回避が出来る。

 

「石崎、小宮、近藤。今日はこの辺で終わろうか」

「え、良いのか」

「あぁ、今日は早く帰ってゆっくりと休むといい」

「柊がそう言うなら……」

「じゃ、明日も頼む」

「任せろ」 

 

 石崎達は勉強道具を鞄に入れ、図書館から出る。

 

「俺はこの後、用事があるから。じゃあな」

「おう、じゃあな」

「明日もよろしくな、柊」

「またな」

 

 そう石崎達と別れ、俺はある目的地へと向かった。

 

 

 

 




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