「そこのお姉さん、ちょっといいかな?」
丁度仕事を終わらせ表には決して出さないが、意気揚々と帰る途中に他の男なら滑稽に見えるであろう胸元を開けたシャツと日焼けした肌に金のごつい指輪を嵌めた大柄なフォーティの男とその取り巻きであろうヤンチャな格好の2人組のループスが意気揚々と話しかけてくる。
「うん?なんだい、私はこれでも急いでるから要件なら早めに済ませて欲しいのだけど」
家で待っている妹の事が頭をよぎり、苛立ちが少々漏れてしまったが受け答える。
「俺たち最近この移動都市に来て酒と美味い飯の店さがしてるんだけど、おねーさんはそんな感じの店知らない?」
「うーん。私もこの移動都市に来てからそんなに長い訳じゃないからわからないかな。じゃあ失礼するよ」
そう言ってさっさと通り過ぎようとしたカーネリアンをもう1人のループスが体を前に出し、立ち止まらせる。
「じゃあさ、お姉さんが俺たちと一緒に行かない?ご馳走するよ?」
「聞こえなかったのかな。私は急いでいるんだよ」
「そう言わないでって、ね?」
ループス2人組の軽い態度がカーネリアンの苛立ちを加速させる。
するとなんと彼らはカーネリアンの手首を掴もうとした。
が、カーネリアンはその手を払い除け、次はその苛立ちを包み隠さず言い放つ。
「うるさい。聞こえなかったのか。邪魔だ」
カーネリアンの気迫にループス2人組は少々気圧されたが、それよりも兄貴分の前で体面を傷つけられた方が屈辱だったようで2人は判断を誤る。
「ちょっと美人だからってきどりやがってよぉ!」
「舐めんじゃねぇぞ!!」
(あぁ、またコレか)とカーネリアンはげんなりし、辺りを見渡す。
それなりに2人組が騒いだせいか辺りには人だかりが出来つつある。
2人は力ではカーネリアンのことを完全に自分より下だと見下しており、ニヤニヤしながら距離を詰める。
「仕方ないね。どうしてもと言うのなら相手になってあげようか」
そう言うと、カーネリアンは普段は「敵」にしか見せない力を解放しようと構えをとる。
「へぇ、おもしれぇじゃねぇか」
と始まりそうなところで、今まで全く口を開かなかった後ろのフォーティーの男が声を発する。
「もういいお前ら、やめろ」
「けど兄貴!」
だがループス2人組はやめろと言われても引き下がりたくはない。挑発に乗り、一触即発のところまで行き、人通りの多い通りなので周りには人集りが出来ている。引くに引けなくなっていた。
「もうやめにしろ。離れるんだ」
「兄貴!」
「ソイツは腕が立つ。お前達じゃ無理だ」
「はァ?」「えぇ?」
「言うことを聞け、馬鹿共」
フォーティーの男が凄み、やっとループス2人組は引き下がる。
すると男は
「悪かった。初めて来た場所でちょっとはしゃいだだけだ。許してやってくれ」
とカーネリアンに声をかけて2人組を引きずりながら歩いていく。
事態の場は収まり、周りに出来ていた人集りは霧散していく。
やっと面倒ごとから解放されたカーネリアンは溜息を吐くと、気持ちを切り替えて可愛い妹の待つ家へと急ぎ足で帰る。