自己紹介で魔術と科学を組み合わせた兵器を作りたいって言ったらクラスから孤立しましたけど、私は元気です(ウソ)   作:三流二式

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第3話 レッツワーキング!後編

 今日も今日とてレッツワーキング!

 

 

 僕は『放逐の街』と言われている、『魔獣』の出現により無人となった東京の一区画にやって来ていまぁ~す!

 

 

『魔獣』が現れた事により、ここに住んでいた人は全て退避。その後国による封鎖が為された。

 

 

 そうして無人となり、宙ぶらりんになったこの土地の所有権を魔科高が買い取り、定期的に湧く『魔獣』の討伐及び調査を僕ら学生やらなんやらにアルバイトめいて任せているのだ。

 

 

 当然それ相応の報酬も出るから、僕の様に金に困っているロクデナシ共は毎日飽きもせず己の命をベットして金を目指して無人の廃墟を駆けずり回っている。

 

 

 研究してぇ!開発してぇ!でも金が無ぇ!だから今日も今日とて、僕はやりたくも無い肉体労働に身を費やしている。よよよ……。(泣)

 

 

 さて『魔獣』とは呼んで字の通り、魔力の影響を受けて変異した生物及び、物体の全般を示す。

 

 

 そう魔力の影響を受けたもの「全般」なんだ。だから定義が物凄くあいまいで、学界でもひっきりなしに議題に上がってはどれが魔獣でこれは魔獣じゃないと、専門家たちが血みどろの殴り合いを繰り返している。

 

 

 変異する過程は主に2種類。少量の魔力を取り込み続けて段々と魔獣化していくケースと、濃い魔力を受けて突然変異するパターンで、後者の方が強い魔獣が生まれやすい。

 

 

 近年ではさっき倒したフェラルドックを筆頭に、街中にいる動物の魔獣化が深刻な社会問題になっている。(この前なんか歩いていた男性が魔獣化した鳩に突かれて怪我をしたというニュースが流れていたが、全く恐ろしい話である)

 

 

 魔獣が現れ始めたのは新暦10年、力を持つ国が過去の魔法の記録を何とかして読み取る事に成功し、大規模な魔法の検証があちこちで行われる様になった頃だ。

 

 

 もっとも初期の魔物との邂逅が記録されたのは新暦10年の3月8日、アメリカのとある魔術実験場でのことである。

 

 

 記録によれば、そこに現れたものは大型のワニであったそうだ。大型のワニと言われると代表的なのはイリエワニだろうね。でもここはアメリカだから、現れたのはアメリカワニだった。

 

 

 通常のアメリカワニの最大全長6.5mなのに対し、この時に現れたの個体のサイズは何と20メートル!体高は5メートルにもなるというから、当時の人たちは度肝を抜かしたことだろう。

 

 

 実際、音声記録での慌てぶりときたら、まさにB級糞モンスターパニック映画で糞モンスターを初めて見た時の登場人物のそれだった。

 

 

「ホーリーシット!?」

「サノバビッチ!?」

「ホワットザファック!?」

「アハン!?」

「ウフン!?」

 

 

 てな感じ。(もちろん違う)

 

 

 今でこそ魔獣の定義がある程度形になり、共有されている知識ではあるのだけれど、当時はそんな発想すらなかったものだから、もう大パニックである。

 

 

「なにっ!?アメリカの○○実験場でモンスター・糞・クロコダイルが出てきたって!?」

「おいみんな見てみろ、○○実験場に糞クロコダイルが出たぞ!」

「何だと殺す!」

「しゃあ!クロコ・ダイル!」

 

 

 てな具合。(もちろん違う)

 

 

 まあ紆余曲折あったものの、その超大型アメリカワニ(現在ではレックス・ダイルという名の魔物)はそこで研究されていた魔法で実験場ごと吹き飛ばすことで討伐されている。(やりすぎじゃねぇかなって思うけど、要はこれゴキブリにどれ位かければ死ぬか分からんから殺虫剤丸ごと吹きかけるようなもんである)

 

 

 これが切っ掛けとなったのか、この手の怪生物が世界中のあちこちで見られる事になった。

 

 

 同月の11日に中国の辺境の村に体長3メートル弱の鶏が出現。(現在ではダー・ジーという魔獣。ダー・ジーとは中国語で大きな鶏の意。まんまである)その時偶々居合わせた流浪の剣士に真っ二つに叩き割られて討伐された。(この人が何でここに居て、なぜこれだけ強かったのかは今でも分かっていない)

 

 

 13日にはインドの首都に全長20メートルを超すニシキヘビが出現。(現在ではナーガという魔獣)出動した機動魔法隊との5時間に及ぶ死闘の末に討伐された。

 

 

 無論ここ新日本帝国も例外ではなく、同年の4月20日に国内初の魔獣が出現している。

 

 

 しかし本国に現れた魔獣は世界で確認されてきた、いわゆる魔力が影響して巨大化しただけの動物とは訳が違う、全く未知の怪物であった。

 

 

 それはゴリラとクジラが混ざったような奇妙奇天烈摩訶不思議な生物だったという。身長50メートル、推定重量2万トンの2足歩行の大怪獣。それが東京湾から突如として現れたのだ。

 

 

 怪獣(彼に名は無い。映像資料も無い。その理由は「あれは忘れ去らなければならない」とのこと。うぅ~む気になる……)は東京を横断しながら破壊の限りを尽くし、そして現れた時と同じように唐突に東京湾へと去って行った。

 

 

 最後は人魚の末裔と言われている青年が決死の覚悟で放った自爆魔法で、東京湾に存在するあらゆる生物を巻き込みながら泡そのものに変えられて消滅したという。(破壊された東京は魔法の助けにより急速に再生。「真東京」として蘇った。またその影響でますます魔法というものへの信仰が強まっていくのだが、ここで話す事ではないので割愛)

 

 

 東京に出現した魔獣は(現代でも)例外として、その年を境にどんどん魔獣の報告例は増えてゆき、次第に魔獣の出現に人は適応していった。

 

 

 当時の人々は感じたのだろう。変わりゆく人類《われわれ》と同じように、世界もまた姿を変えつつあるという事に。

 

 

 人々は新たに生まれたこの未知の怪物を恐れ、怖れ、そして畏れた。

 

 

 それはかつて文明がまだ発展していないころ、天災に神を見出していた僕らの祖先と同じものであった。

 

 

 しかしそれから半世紀以上の時が過ぎた現代では研究も進み、彼らの正体がかつて怖れていた空想の産物でなくただの一生物に過ぎない事に人類は気付いてしまった。

 

 

 気付いてしまうと、もう駄目だった。

 

 

 彼らにかつて抱いていた恐れも、畏敬も、吹きすさぶ暴風を前にした砂山みたいに吹き飛んでしまった。

 

 

 人は彼らを獣と嘲り、神から賜ったこの魔法《ちから》を持つ我らはまさしく霊長類だったのだ、と自己正当化に全力疾走の真っ最中である。

 

 

 怖れは侮りに、畏敬は嘲笑へと。

 

 

 嘗ては一体現れるだけで国が丸ごとパニックに陥っていた程だったのに、今じゃ僕ら学生の小遣い稼ぎの対象でしかない。慣れって怖いなぁ~。

 

 

 まあ侮っているだのなんだのかんだのと言ったが、それでもやはり魔獣は脅威であるという認識は人々に根付いているのもまた事実なのだ。

 

 

 僕だって魔獣を恐れる一市民の一人だし、どうすれば魔獣の脅威を軽減できるか、無い知恵捻ってあれこれ考えたりしている。

 

 

 その結果出た結論は

 

 

〝いっぱい迎撃兵器作って配備しようぜ!〟

 

 

 だった。

 

 

 皮算用ここに極まれり、である。

 

 

 だってそんなこと金が無きゃ出来ない事だし、もっと言えばスポンサーがいるし、さらに言えば施設が無きゃそんなものは作れない。

 

 

 企業にスカウトされるにしたって、僕の作る物は魔法と科学を合わせた全く新しい兵器系統だから、それを受け入れてくれるところから探さなくちゃいけない。

 

 

 作れる物に関しては自信がある。確信といってもいい。絶対絶対後悔させません。僕を受け入れてくれればもしかしたら時代の転換期になれますぜ?だから予算と設備ちょ~だい♡ダメ?(ダメ)

 

 

 あ゛ぁ゛~お金欲しい~予算~設備~。どこかにそれ全部貸してくれる素敵な企業はいらっしゃらないかしらん?

 

 

 なんてことを考えながら廃墟の中を彷徨っていると、デバイスから通知音が。

 

 

 取り出して確認すると、本日の討伐対象「ビッグ・フット」の反応がここからそう遠くない地点に表示されているではありませんか。

 

 

 しめた!

 

 

 僕はすかさず空模様を確認した。黒い雲は先ほどよりもこちらに迫ってはいたが、ここら一体を覆いつくすにはまだ十分に距離があった。

 

 

 よしよし、これなら雨が降る前に依頼が終わるだろう。手筈通りに事が運べば雨が降るより前に寮に帰ることが出来るかもしれないぞ!

 

 

「なら急がなきゃ!」

 

 

 僕は足に装着している『ニンチ・シテーネ社』の子会社『オロシ・テーネ社』製アーマー『ゲイル・グリーブ』を改造して取り付けたブースターと、付与した加速魔法を起動して一直線に駆け出した。

 

 

 ブースターと加速魔法の欠け合わせは凄まじい機動力を発揮し、倒壊した建物や依頼の対象外の魔獣も何のその。僕はあっという間に反応のある地点まで辿り着いた。

 

 

 辿り着いた僕は即座に建物の影に身を隠した。そして『ニンチ・シテーネ社』と対立している『ウム・カラーラ社』製のフード付き迷彩服のフードを目深にかぶり、改造して取り付けたステルス機構と気配遮断結界の術式を起動させた。

 

 

 自分の姿を完全に透明化させた僕はバックから再び突撃銃を取り出し、『ニンチ・シテーネ社』の出しているグレネードランチャー『GD-91』を突撃銃に取り付けた。

 

 

 グレネードランチャーに付与してある火魔法の術式と、グレネード弾が装填されていることを確認したら、僕は意を決して建物の影から身を乗り出し、その向こう側にいる討伐対象である『ビッグ・フット』の姿を改めた。

 

 

 僕が身を隠している建物の向こう側にある開けた場所に、『ビッグ・フット』はいた。

 

 

 見かけは茶色い毛皮のゴリラそのままだが、ビッグ・フットの名の通り、足が異常発達しており、あれで蹴られたら僕の体なんて木端微塵になってしまうだろう。

 

 

 体長は6メートル前後。体重はおそらく2トンはあるだろう。

 

 

 そんな怪物が、屈み込んでしきりに何かを食んでいるようだった。

 

 

 何だろうと思って、僕は好奇心の赴くままにかけていた改造サングラスのサーチモードを起動してズーム機能を作動させた。

 

 

「うえっ!?」

 

 

 そして心底後悔した。

 

 

 ビッグ・フットが食んでいたのは、おそらく僕と同じくビッグフットの討伐依頼を受けたであろう人のなれの果てであった。

 

 

 どうやら食事を始めてから結構時間が経っていたようで、体の大半がすでに失われていた。残っている部位は下半身のみで、それも酷く損傷していた。

 

 

 よく見るとビッグフットも負傷していて、周囲の建物や地面も随分派手にぶっ壊されていることから鑑みるに、両者はよほど激しく争っていたらしい。

 

 

(うえぇ~……いやなモン見ちゃったなぁ~……)

 

 

 僕は辟易とした気分になるのを止められなかった。人死には(あまり遭遇したことないけど)いつだって見ていて気持ちのいいもんじゃない。

 

 

 ……このまま眺めている訳にもいかない。あの人とて志し半場で力尽きて悔しかろうて。敵討ち、何て言うほど大層な事ではないが、やり残した仕事の片づけくらいはしてあげよう。

 

 

 僕はビッグフットの奴が屈み込んでいる事を良い事に、大胆に近づいて行き、ある程度まで近づくと片膝立ちで銃を構えた。

 

 

 的がデカい事と、夢中になって食っていたから、僕は狙いをつける必要すらなく、その無防備な背中に向かってグレネードランチャーの引き金を引いた。

 

 

 シュポン!

 

 

 心地よい音と共に、グレネード弾は放物線を描いて発射された。

 

 

「ガア?」

 

 

 ビッグフットは発射音に気が付き、食事を中断して訝しく思いながらも後ろを振り向いたのだけど、その時には全てが遅かった。

 

 

 彼が後ろを向いた時と、グレネード弾が彼の胸に着弾したのはほぼ同時だった。

 

 

 ビッグフットの呆けた顔が、一瞬だけ閃光に照らされてくっきりと浮かび上がり、次の瞬間、ずんっと腹に響く音と共に、彼の上半身は今まさに食んでいた人と同じように粉々になって吹き飛んだ。

 

 

「おぉ…!」

 

 

 僕は爆発の衝撃にあおられて、ちょっとふらついた。思っていた以上に衝撃が強かった。グレネードランチャーに刻印した魔法は火魔法だけだったが、元の威力も旧時代の戦車砲並みにあったから、少々過剰火力だったらしい。

 

 

「……ま、威力が低くて殺し切れないよりましかな」

 

 

 僕は自分を正当化させると、ビッグフットの死骸の横にある死体の残骸にツカツカと近寄り、デバイスで写真を撮って学園に任務完了の報告と共に送った。

 

 

 これで彼の死体は回収され、後日遺族に報告がいくであろう。

 

 

 自己満足かもしれないけど、やらないよりはマシでしょ?

 

 

「何はともあれ、これでやっとパーツが買える。ここまで長かったぜ……」

 

 

 僕の意識は早くも今回の依頼の報酬に移っていた。薄情かもしれないが、これがこの世界の価値観で、僕もその考えにどっぷりとつかっている。

 

 

 チクリと痛む心に蓋をして、僕はその場を後にした。討伐報酬で買ったパーツで完成する新しい武器に思いを馳せて。

 

 

 その時侘しい風がびゅうと吹き、敗者たちの躯を撫ぜた。その死体には早くも埃や塵が付着し始めている。しかし、顧みる者は誰もいない。誰も。僕ですら……。

 

 

いつの間にか黒い雲が天を覆いつくし、パラパラとだが雨が降り始めていた。

 

 

……どうやら天だけは、敗者たちを顧みてくれたようだった。

 

 

僕はその事に、なんだか救われたような気がしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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