ようこそしないで魔法使い君   作:ゆう31

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ながくなっちゃったー。


中間テストが終わったぜ

 

 

 当然と言えば当然だが、無事中間テストを乗り越え六月を迎えた。

 

 星之宮先生に全教科100点満点取ったらプライベートポイントを要求しようとも思ったが現状ppに余裕が無いわけではないので、まぁいいかと放置した。というのも全教科100点満点となると少し自信がなかったりする。

 

 上級生から貰った一年生の時のテスト用紙もあるとはいえ、どれか一つぐらいミスしそうだし、特に歴史の人名とか。

 

 そんな貰ったテスト用紙も綾小路に渡す以外に活用性が無かったのは残念だ、コピーしてBクラス全体に渡してもよかったのだが、その必要性も無さそうだったのでやめた。

 

 全体を観察してみて、まず間違いなく赤点を取るような生徒は居なかったし。

 

 俺が余計な事をするより、結束力を高める流れの方が良さそうだ、入学から二ヶ月、Bクラスになってから今日までBクラスの中心にいる一之瀬を観察した結果、Bクラスの中では他の者よりリーダーには向いているだろう。

 

 リーダーの資質が備わっている……わけではないのだが、Bクラスのほぼ全ての生徒と相性が良い、本人の善性と特有の求心力を考えると、Cクラスの王らしい龍園と引けは取らないと見ていいだろう。

 

 それ故の弱点はあるが、これは今は置いといて良い。

 

 

 他クラスの話で言えばやはりDクラスか、綾小路に後から聞いてみた所、渡したものは大いに役に立ってくれたようで、肝心の退学者もゼロに済んだとの事だ。

 

 意外だったのは赤点を取る生徒が居なかった事、ぎりぎりな生徒は多かったらしいが、なんとか赤点のボーダーよりは上に乗れたとの事だ。

 

 これは少し予想外だったりする、Dクラスの生徒を一人一人知っているわけではないが、誰か一人ぐらいは赤点を取ってもおかしくないんじゃないかとは予想していたからだ。

 

 ……わざと点数を落としたか?クラス全体の点数を予想して、赤点のボーダーを下げた?だとしたらまあ、理解は出来るが。

 

 魔法も無しにそんな芸当をできるのだとしたらとんでもないな、尚更Dクラスにいる理由が分からなくなったがはてさて。

 

 Dクラスで知ってるのはこれぐらいだ、Cクラスは興味ないので除外。Aクラスのことも少し知りたかったが機会が無かったので知りようが無かった。

 

 ただ全体的に90点前後の生徒が多かったようなので、確実に今回の中間テストの絡繰に幾つか気付いてると言っていい、個人的に気になってるのはギャンブルをしに行った時に聞いた、ボドゲ部の部長をチェスで倒した人物だ。

 

 当てはまる人物像に最も近いのがAクラスの内の、名前も知らない誰かである事まではわかった、その内会える日が来るだろうか。

 

 とまあ、中間テストが終われば次は何か?と思うかもしれないが、しばらくは特に何もないらしい。学校側からの何かしらの試練は無いというのなら、まぁ俺は気楽に姫野を遊びに誘ってまだ行った所のない場所に行こうと思いますが。

 

 いやあ広いな高等学校、全部の娯楽を一通り楽しむまで半年ぐらいはかかりそうだぜ。

 

「姫野、カフェに行こうそうしよう」

 

「やだ」

 

「なら夕飯を一緒に食べよう、ほら。オムライスとかどうだ」

 

「いや」

 

「なるほどならば探検だ、気になってる建物があるんだ」

 

「いかない、一人でいけば」

 

「姫野と行く方が楽しいだろ」

 

「……私はたのしくないから」

 

 放課後、先程から寮に帰ろうと早歩きで歩く姫野の隣に並走して放課後の誘いをしているのだがどうにも上手くいかない、むむっ。どうしたものか、うんともすんとも言わないので魔法を使うことも視野に入れるべきか。

 

 オーロラ出すとか、季節外れすぎる雪降らすとか出来ますけど、いやそもそも誘いに乗ってくれないと意味ないな、うーんでもなあ、好きな女の子に精神魔法とか使って誘導するのは恋愛に失礼だよなあ。

 

 それに魔法無しでどこまでやれるかって事で魔法を使うのを制限しているんだし、六月早々ここで折れるのはなぁ。

 

 どうやって誘おうかと思考しながら歩いていると、ふと姫野の足が止まった。ん?どうしたんだ、視線を姫野の方から前に戻してみる。

 

「よぉ、倉上」

 

「こんにちは、はいさようなら」

 

「させねぇよ、待てや」

 

 Cクラスの王を名乗っているロン毛こと龍園だ、ついでに黒人……この前一人で食事してた時に興味本位で話した時にアルベルトって名前だっつってたな。

 

 そいつとそれからいつものヤンキーみたいなやつ、こいつは知らん。それに加えて変なのが三人いんな、いつにも増して多い。

 

「うーん。姫野、また後で誘いに行くわ」

 

「おい女、てめぇもそこにいろ」

 

「……は?あんたに命令される筋合いないんだけど、どいて」

 

「くくっ、言うじゃねえかよテメェ、姫野っつったか?」

 

「きもいんだけど、消えて」

 

「あ?」

 

 お、おお……姫野さん?今日機嫌悪いのかな?毒舌ですね、しかし龍園おまえ女の子に少し辛く当てられたからってそんな怒んない方がいいぞ、モテないぞ、いいのかそれで。

 

 女の子にモテないのはつらいぞ、まぁ確かにその凶悪犯みたいな風貌じゃあ第一印象は悪いけど、恋愛は長く続けて相手に自分のことを知ってもらうのがコツなんだぜ。

 

 他人の受け売りだけどな、しかもバツ2の女関係以外は尊敬できる俺の社会人時代の先輩。

 

「そういうわけで、そこ退いてくれ龍園」

 

「……なァ倉上、てめぇは確かに優秀らしいが、この状況で立ち回れると思うか?」

 

「何お前、ここでやる気?監視カメラ幾つあると思ってんだよ、やめときな」

 

「動揺一つしねえか、俺がマジでやらねぇって思ってるってか?」

 

「早く退いてくれ、俺はこの後姫野とカフェ行ってスポット巡って飯一緒に食うんだよ」

 

「……は?!しないし、何言ってんの」

 

「ふざけてやがるなアホ面」

 

 ……いや本当に邪魔だな、何が狙いだ。

 

 魔法で退かしても良いがせっかく俺に何か期待しているみたいだし、少し真面目に考えてやるか。

 

 龍園がBクラスにちょっかいを掛けていた理由は恐らくだが、どこからどこまでがセーフでアウトなのか、その天秤を測っていたと思われる。

 

 俺がやるならやり方は変えると思うけど、クラスポイントの上げ下げの仕組みを知るなら、まぁ無くはない方法だと思う。

 

 上に立つ以上優秀だろうしその天秤は粗方わかった筈だ。

 

 ……成る程。

 

 

「俺を測ろうとするならもう少し考えな龍園」

 

「あ?何言ってんだ」

 

「挑発や脅迫、暴力的行動は楽で良いが、だからって雑すぎる。ものの試しでやってるんだろうが、それを見抜かれたら意味がないぞ」

 

「……くくっ、おもしれェ……結論が出たぜ倉上、一之瀬の後に潰すのはテメェだ」

 

 しかしまぁ、こいつアレだな、良く頑張れるな、そんなにAクラスなりたいか?うーんどちらかというと相手を下に支配したいとかいう厨二病拗らせたようなアレっぽいけど。

 

 そういうのは高校生で辞めとけよな……あっ現役高校生か、まあ三年続くだろう青春の中で矯正していこうな、アレだったら俺も手伝ってやろう。

 

 悪ぶってるヤンキーを真人間に戻す……うーん三年A組!これは青春判定が高いですねとても高い、まじでありだな。

 

 

 俺の問いに満足したようで龍園は腕を上げて道を開けた、はーめんどくさかった、図書館の時といい血の気が多すぎるぜCクラス。

 

 よし、気を取り直して姫野をデートに誘おうそうしよう、まずはそうだな_____

 

 

 瞬間、全神経に警告が走る。

 

 

 

 正直、半分ぐらいはしてきそうだと思ったが。

 

 

 

「_____っ」

 

 

 そうか、龍園。足りないか。

 

 

 パンっ!と、衝動。

 

 何かと何かがぶつかり合った音が放課後の登下校の道に響く、龍園以外の周りを囲んでいたCクラスの生徒達ははやや驚いた様子に見えた、この状況をか、それとも龍園の行動をか。

 

 姫野も目を見開いている、それもそうか。俺ぐらいに姫野と関わってないとわからないが微細に体も震わせているから、恐らく恐怖も感じたはずだ。

 

 しかし、あれだな。そこそこ手のひらが痛いな、魔法で耐性を上げた時はアサルトライフル程度の銃弾ならかすり傷すら付かない体になっていたんだけど、まぁ生身ならこんなもんか。

 

 ……来るな、左ジャブ……いやフェイントか。回し蹴りを繰り出してくるか、あくまで狙うのは姫野か。

 

 ここまでするならクラスポイントを重視している訳じゃないな、今はそれはいいか。

 

 姫野の腕を掴んで引き寄せた後に、迫る回し蹴りに片腕で対応する、やや逸らすように受け流せばそれ程腕に痛みは残らない。

 

 魔法で上げた身体能力だけではどうにもならなかった海外生活中に得た、格闘術、経験則だ。

 

 いいよオマエ。懐かしいよ、アメリカやサウジアラビアにいた時と比べれば余りに程度が低いが、悪くない。

 

 半月前ぐらいに軽く脅しても怯まずに来る、来れる。お前が俺を知らないように、俺もお前を測り兼ねてたな。それは認めよう。

 

「掴んで悪い、姫野」

 

「……大丈夫」

 

 そうは言うがな姫野、目の奥は揺れているぞ……はぁ、失敗したな、今日は遊びに誘えなさそうだ。

 

「龍園!ここで仕掛けるなんて聞いてない」

 

「言ってねぇしな、これはこの前の腹の借りだぜ倉上、次は更に仕掛けるぜ、お前に平穏は無え、常に俺の影を気にする事になる」

 

 ……誰かが来るな、騒ぎを聞いたか?横目で確認すると見知ったBクラスのリーダーの姿、一之瀬か、それに白波と神崎もその後ろにいるな、あの三人の組み合わせとはなかなか珍しい。

 

 

「倉上くん!姫野さんっ、何があったの?」

 

「よォ一之瀬、一足遅かったなァ?」

 

「___!龍園くん……ねえ姫野さん、何があったの?」

 

「……龍園が襲ってきた、私は何ともない、けど」

 

「そっか。なるほどね……龍園くん、これは立派な犯罪未遂だよ、この事を学校に報告しても構わないのかな、停学、若しくは退学も考えないといけなくなるよ」

 

「はっ、言ってろよ。ここに目撃者は居ねえ、Cクラス以外はな」

 

「だとしてもカメラで撮った映像はあるよね、物証がある以上どれだけ言い訳をしても物証以上の証言は出来ないよ」

 

「いつにも増して怒ってんなァ一之瀬?愉快だぜその顔」

 

「怒るよ。私の友達に酷いことをしようとしたんだもん、許せない。今後Bクラスは貴方達Cクラスを敵と見做します。徹底的に戦うよ」

 

「くくっ……怖い怖い……聞いたかお前ら?Bクラスのリーダーサマが宣戦布告だ」

 

「この件について、学校に報告するからね」

 

「やってみろよ、それまで証拠が残ってると良いな?一之瀬」

 

「……そっか。なら私は____」

 

「いい、辞めとけ一之瀬」

 

 

 口論がこれ以上ヒートアップする前に一之瀬の言葉を遮る、徹底的にやるなら恐らく此方が後手に回ってる事を考えた方がいい、それに少し冷静さが欠けているぞ一之瀬。

 

「なんで?倉上くん、私は許せないよ」

 

「監視カメラの映像をppで買うつもりだ、証拠は残らない」

 

「……!そうか、だが倉上、それでお前は良いのか?仮に証拠が残らないとしてもBクラスはこの件に全面的に支援するぞ」

 

「それは嬉しいな神崎。だけど抑えてくれ、何れ不利になる」

 

「……お前が良いなら、俺からはこれ以上何も言わない」

 

「おいおい随分逃げ腰だな倉上?せっかく整えてやった舞台だぜ、乗ってこいよ」

 

「……っ!さっきから黙って聞いていれば、いい加減にしてよ」

 

「あ?おい、姫野だったか?てめえには話してねぇんだよ、モブは引っ込んでろ」

 

 

 ……これ以上はダメだな。年下に噛みつかれた程度だと思い続けているが、これ以上はダメだ。

 

 感情を抑えられなくなってきた、前以て溢れる魔力の放出先を決めていてよかった。

 

 俺はまだこの遊びを続けたい、せっかくの三年間、魔法使いとしての30年間で初めての高校生活、遅咲きの青春。

 

 友達も出来た、好きになっていると、そう思っている女の子にも出会えた。

 

 30年の人生の中でこれ程、自分が有頂天になっているのは、5年間研究を重ねた大魔法を扱えるようになった時と、尊敬している先輩との一年半のドバイ生活時。

 

 そして確信がある、その二つを超える楽しさを、ここでは味わえる筈だと。

 

 俺はここに遊びに来た、勝ってもいいし負けてもいい、三年間楽しんで卒業出来たら最高だ。そう思ってここにいる。

 

 だから、これ以上はダメだ。

 

 

 遊びじゃなくなる。

 

 

 

「龍園」

 

「……っと、くくっ、やっと喋ったか倉上、今になってビビったか?聞かせろよ、テメェの言葉をよ」

 

「どうすればお前は今、ここから黙って居なくなる?」

 

「あ?ハハッ、おいおい頼み事か?マジにビビったかよ」

 

「ああ、頼み事だな。それでどうすればいい?」

 

「おいおい、ガッカリさせんなよ倉上。どうしてもって言うなら……ァ?」

 

 

 聞いてられねぇよ、お前の声。

 

 俺は龍園に近づいて軽く片手で体を押した、魔法も何もない、それほど力も入れてない、だが急だったから、少し龍園がふらついた。

 

 目が合う、龍園の恐怖を知らない目と合う。

 

 良い目つきだ、自分の土俵に絶対の自信がある、それを根から崩さない限り、龍園は折れないだろう。

 

 魔法も使わない俺じゃあ心を折るには、それ相応の準備を整えた上でも半々か、三割程度の成功率か。現役の高校一年生、16歳でこの精神力は褒め称えよう、未来がある青年だ。

 

「それで、どうすれば良い?お前の声で、言葉で、今ここで選択しろ」

 

「……テメェ」

 

「決めろ龍園、その答え次第で俺はこの遊びを終わらせても良い」

 

 仕事上、何回かやってきた、だがプライベートではそれはしないと自分に枷をかけた事。

 

 いつでも出来る、魔法はそれこそ、一瞬だ。

 

 

 抹消魔法。

 

 俺以外の全てから忘れられ、そしてその対象もまた世界から消える、泡のように呆気なく終わらせられる。

 

 お前とはまだ遊んでも良いと思っている、俺はお前を気に入っている、だがそれは大前提、俺の本望を邪魔しない事前提だ、姫野に触れない前提の話。

 

 俺が心の底から嫌うことは、俺が心から最も望んている事を邪魔される事だ、それ以外はどうでもいい、興味もない、やるならやれ。遊んでやるよ。

 

 

 それが出来ないなら残念だが消えてくれ、龍園。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くの沈黙、静寂。

 

 いつまでそうしていたか、それを崩したのは俺でも龍園でもない、Cクラスのショートカットの女子生徒だった。

 

「いくよ龍園、もう良いでしょ」

 

「……伊吹、てめぇ」

 

「こんな所でやり合うのは予定に無い、Bクラスとやり合う前にやる事があるって言ったのはあんたでしょ」

 

「……チッ。おいお前ら、帰るぞ!……覚えておけ倉上、テメェはメインディッシュだ」

 

 

 そう言って龍園はCクラスを纏めて、ここから離れていく事を決断した。横槍を刺されて少し冷静になったか。

 

 勘が良いなあの女子生徒、魔力を保持してるようには思えないから魔法使いではないが、一瞬俺を見た視線は俺の周りを見ていたように思えた、俺の溢れていた魔力が見えたか?

 

 ……まあいいや。

 

 俺も落ち着こう、少し大人げない。そして今、先人を生きる者として未来ある者をどうしようもなく終わらせかけた。

 

 遊び心が消えていた。

 

 反省だ。

 

 

 Cクラスが帰った後、静まり返った空間を変える為か、一之瀬が場を切り替えるように少し大袈裟に声を出した。

 

「……っはー!もう、中間テストが終わったから安心してたのに、嫌になっちゃうね!」

 

「そ、そうだね一之瀬ちゃん……私怖くて何も話せなかったよう」

 

「にゃはは、私も強気に出たけど、少し冷静じゃなかったかも。もうCクラス……龍園くんとは仲良く出来ないね」

 

「しなくて良いだろう、今日のような事がないように、俺からBクラス全体に話しておくぞ」

 

「うんっ、よろしくね神崎くん!……んっ〜!なんか疲れちゃった、喫茶店行こっかなぁ」

 

「あ、なら私も行くよっ一之瀬ちゃん!」

 

「ほんとっ?それなら神崎くんも来る?」

 

「えっ、一之瀬ちゃん?」

 

「行かせてもらおう」

 

「……神崎くん!」

 

「ん?どうした白波」

 

「う……な、何でもないけど、何でもないけど!」

 

「そうか」

 

「それならっ、姫野さんに倉上くん、二人もどうかな?」

 

 明るく聞いてきた一之瀬の声の方向に振り返って、表情を観察する。

 

 底抜けの本心、善性だな。初めて見たかもしれない、ここまで欠点が見えないとなると本格的に過去に何かしらある事でしかBクラスに来た理由がわからない。

 

 過去を見るか?一之瀬帆波という人物を完璧に知った上で……それでどうするんだ、それをして何になるよ、俺。

 

 まずいな、思考が魔法使い寄りに行き過ぎている、精神年齢も若返った弊害だな、あの程度の事で取り乱したのも然り。どうにもやはり、魔法というものは難しい。

 

 せっかくの誘いだが断ろう、この思考で人と接する訳には行かない、まず間違いなくボロが出る。

 

「せっかくだが、またの機会にしよう一之瀬」

 

「そ、そっか……姫野さんは?」

 

「悪いけど行かない」

 

「ううん!また誘うねっ……それじゃあ行こっか、神崎くん、白波ちゃん」

 

「あ、うん。ええっと、二人ともまた明日〜!」

 

「じゃあな、倉上。姫野」

 

 一之瀬達が移動して行く、夕日が照らす中、ここにいるのは俺と姫野だけになった。

 

 計らずしも俺と姫野は互いに同じ方向、歩幅で寮に戻る。しかしそうか、姫野はこのまま寮に戻るか。

 

 なら寮に戻るのは時間を置いてからにしよう、姫野としても俺の問題に巻き込まれたのだから、俺に対する印象は好意的ではない筈だ。

 

 それ自体は、まぁ……明日考えてどうにか元に戻せば良いか、今日の俺はダメだ、思考が完全に切り替わってしまっている、誰とも話さない方が良いし、関わらない方が良い。

 

 ……そうだな、一人になるならどこが良いか。

 

 

「ねぇ」

 

 

 寮から別の道に移動しようとした時に、姫野に声をかけられて反射的に振り向いた。

 

 ……やっぱかわいいな、俺を見つめるその目が特に、俺を擽る。

 

「悪い姫野、巻き込んだ」

 

「べつに。あんたのせいじゃないでしょ、なんで謝るの」

 

「いや、俺のせいだ。龍園が俺に少なからず執着するのは気付いていた、その段階で姫野と極力会話をしなければ、今日の事は起きなかった」

 

「……それがなんであんたのせいになるの?」

 

「……え、いや。そうだろ、俺が__」

 

「ああもう……っ!私が許してるんだから、それで良いでしょ!」

 

 

 え、あっ。はい。

 

 お、怒られてしまった、思ってる方とは全然違う感じで、そ、そうなの?俺のせいじゃないの?いや、いやいやそれはおかしくね?

 

 えー……?わ、わかんないな姫野、魔法使い寄りの思考関係なくちょっとわかんない、困った。

 

「……ありがと」

 

 ……?

 

 なんで感謝されてんだ?

 

「なにその顔、言わないとわかんない?」

 

「え、うん」

 

「〜〜っ!守ってくれたでしょ、だから!」

 

「うん?それは当然だ、感謝はしなくていい」

 

「うるさい!」

 

「お、おー……」

 

 えぇ……?好きな人は守って当然では、それに感謝されても、なあ?いやそもそも好きな人を差し引いても、姫野だし、女の子が殴られるの黙って見れないです俺。

 

 しかしまあ、うん。心が穏やかになってきた、思考にも余裕が出てきた気がする、この勢いで遊びに!っとまでは回復してないけど。

 

 姫野すごいな、魔法使いか?魔法使いだろ、俺でさえ感情のブレは魔法を使っても完全に回復させられないのに、姫野の感謝の言葉だけでめちゃくちゃクリーンになってるぞ思考。

 

「じゃ、じゃあ俺はこれで」

 

「なに、付いてこないの?」

 

「え?いや、ああうん、いきます」

 

「ふん……」

 

 ちょっと待って何が起きている?嫌われた訳じゃないのか?だとしたら何で?んん?

 

 俺の魔法使い的思考が完全に機能してない、こっちの方が体感知的になってるんだけど、気のせいでした?まぁ確かに母親には「あんたはあほ!」って正面から言われてますけど。

 

 酷いよな母、でもまあ事実なのかもしれない、認めなければならないのか?屈辱なんだけど。

 

「なんか喋って」

 

「お、おう。そうだな、今日の夕飯揚げ物にしようと思うんだけど一緒に食べる?」

 

「……食べる」

 

「まじか、本当に?嬉しい、え?良いのか?」

 

「うっさい」

 

「ごめん」

 

 

 ……よくわからんが進展している、気がするじゃなく確実に仲が良くなったように感じる。

 

 まじか、わかんねぇ高校生、俺どこで好感度稼いだんだろ、意図せず無自覚系なアレをしているんだけど本当にわからないから困るな、女性経験が無い事がここに来て弊害を生んでいる気がする。

 

 魔法使いしてると彼女なんて作らないんだもん仕方ないじゃん。

 

 まーでもいっか、姫野が可愛いのは事実だし。

 

 えーそれじゃあめちゃくちゃ気合い入れて作っちゃおうかな、揚げ物。

 

 

 胃袋掴んでやるからな〜!




原作一巻分しゅーりょー。まんぞくしました。

次は綾小路くんと姫野ちゃん視点のをだして、暫く休憩。

1、2週間ぐらいしたら再開しようかな。ほな感想まってます
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