ようこそしないで魔法使い君   作:ゆう31

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前半がきよぽん、後半が姫野ちゃん。


綾小路清隆の初めてのトモダチ\姫野ユキの憂鬱

  

 綾小路清隆の初めてのトモダチ

 

 

 

 オレにとって、その出会いは正しく幸運だったと言えるだろう。

 

 

 ホワイトルームから解放され、これから始まるであろう学園生活の初日、ぼーっとしていると背後から衝撃があった。

 

「悪い、よそ見してて」

 

 平均的な身長、白い髪が特徴的な、少し容姿の整っている顔立ちをした学生服をきた青年。

 

 どこか浮世離れしたような雰囲気を漂わせる彼は、オレに似た、だけども決定的に何かが違う無表情でオレを見ていた。

 

 その視線にオレは測られているような感覚を覚えた、ただそれは一瞬、直ぐに彼は言葉を続けた。

 

 

 倉上(くらかみ)直哉(なおや)と彼は名乗った。オレの初めての……友達だ。

 

 

 それからの四月は、放課後に倉上と遊ぶ事が多くなった、Dクラスに馴染めなかったオレにそれはある種助かった。池や山内などといったDクラスの生徒と関わりを持っては居たが、正直に言って彼らと関わるより、倉上と関わる方が楽しいと思えたのは事実だ。

 

 ある意味では気が合うのだろう、性格的な所に似通ったものを感じる、それは俺がホワイトルームで培われた、他人を駒として見る時の気持ちとはまた別な、自分でも気付いていない無意識の所での感情でだ。

 

 ことある毎に「青春をするぞ」と言って先導してくれるのも助かった、基本受け身なオレに対して、積極的に倉上の方から行動をしてくれるのは、その娯楽を知識でしか知らないオレにとって都合が良かった。

 

 何より、倉上の前では必要以上に自分の実力を隠す必要が無かったのもあるのかもしれない。目立ちたくないのは変わらない、ホワイトルームの過去も露見したくはない。

 

 だが、それを知ってか知らずか倉上はオレを「その気」にさせるのが得意だった、それが意図的か無意識かの判断をオレは決めかねたが、この際どちらでもいい。

 

 倉上自身が優秀な部類にいる人物なのも相まって、クラスも違うのなら、ある程度は見せても良いのかもしれないと思ったのもあった。

 

 倉上を通じて得られる情報は多い、人生にはこんなものがあるんだぞと、奇妙な話だがまるで自分よりも年が上の人物と関わっている気分になる。

 

 四月の半ば、その日は確か、Dクラスの水泳授業があった日、放課後に倉上と二人でダーツという、射的競技の一種をやっている時だ。

 

「上手いな綾小路、経験者か?外さないじゃないか」

 

「いや、たまたまだろう」

 

「たまたまでど真ん中に何度も当たるならプロはいらないんだぜ」

 

 そういうものなのか。中心に何度も当てるのは不自然なのか、なら次は____

 

 

「綾小路、遊びは全力でやるものだ」

 

「……どういう意味だ?」

 

「本気を出す、出さないって話じゃないぞ。全力でやるんだ」

 

 倉上のこうした言葉遊びはオレの知的好奇心に響く、こういう時の倉上は一見、大した事を言っていないように見えて、その言葉の裏に隠れているメッセージはオレを以ってして驚く時がある。

 

 ホワイトルームの最高傑作と謳われたオレが思いも付かない思考の外からの、なんらかの経験則か、或いは別の何かか。

 

「良くわからないな、どう違うんだ?」

 

「例えば今俺がダーツで本気を出したとしたら綾小路には、というより誰にも俺に勝てる奴が居なくなる」

 

「随分な自信だな」

 

「事実だしな、それと例えばの話だ」

 

 倉上の恐ろしいのがこの言葉に何一つ嘘偽りがないと言う事だ、オレの心理学、人間観察術などのどの術を使ってもそうなのだから、本当に本気を出したらオレに勝てるのか。

 

 試してみたい、本当にオレを負かせられるのか。

 

「話を戻して、誰にも負けなくなる。綾小路はこれをどう思う?」

 

「良い事なんじゃないのか?」

 

「本当にそう思うか?」

 

 そう問われて改めて考えてみる。

 

 負けなくなるという事はつまり、勝ち続けるという事だ、完全無欠に、一切の敗北もない。それはオレという存在が、ホワイトルームを肯定するという事になる。

 

 ……確かにこれは、アイツを否定したい、しなければならないオレにとって面白くない。

 

「つまんないと思っただろ?」

 

 その問いかけに一瞬だけ驚いた、オレの思考を読んだのか?いや、今倉上はダーツのフォームをとってオレを見ていた訳じゃない、たまたまだろうか。

 

「遊びで勝ち続けてもつまんないんだよ、勝って負けて、その繰り返しで良いんだ、それが遊びだからな」

 

「……なるほどな、それで全力とどう違うんだ?」

 

 倉上がふっ、と投げた矢が18のダブルに当たる。続けて16、最後は大きくズレて黒縁に刺さった。

 

 

「遊びでも負けたくはないだろ?だからどんな結果になっても悔いを残さない様に、全力でやるんだ」

 

「……中々、難しいな」

 

「一度何も考えないで矢を放ってみろ、お前なら分かる」

 

 そう言われてオレの番になる、本気と全力の違い、中々面白い議題だ。

 

 この場合の本気、例えば何処を狙って、どれぐらいの力の強弱で、どう放って限りなく100%中心に刺せるか。

 

 そこまで考えた後に、その全てを放棄して矢を放った。

 

 一回、二回。そうして三回目に、オレは自分で投げたというのにも関わらず、その結果を一度咀嚼し切れなかった。

 

「ダブルブルにまたもダブルブル。そして最後に下にブレて3」

 

「これは___」

 

「無意識に力を弱めたとか、そういう話じゃないぞ綾小路」

 

「なら、これは」

 

「お前は最後に投げる時、今まで考えて投げていたその全てを完全に、本当に放棄した。だからブレた、それが答えだ」

 

 

 ……なるほど。ならこれが倉上の言う全力なのだろうか、確かにオレは最初と二回目こそはまだ思考に「勝つ」事を意識していたと言っていい。

 

 ただ、最後にその執着がブレた。負けたいと思ったわけじゃない、そんな筈が無い。だがこれは、事実としてオレは最後にフォームか、力加減か、何かが崩れたのは事実だ。

 

「見ろ綾小路、おまえがブレたから敗色濃厚だった俺に勝ちの目が見えてきたぞ」

 

 ボーダーに表示されている数字は180。

 

 20のトリプルを三回決めればオレは負ける、ホワイトルームの最高傑作と云われたオレが負ける。

 

「計算してたのか?」

 

「いや、全力でやった結果。こうなったんだ」

 

 倉上の投げた矢がトリプルの20に当たる、流れるようにもう一回、狙いを定めたそれは、またもトリプルの20を決めた。

 

「三回目の最後がトリプルの20に当たれば、俺の勝ちだな」

 

「……そうだな、オレの負けだ」

 

「悔しいか?」

 

「どうだろうな」

 

「仮にこれが当たっても外れても、次がある。俺が当てれば今度は綾小路が俺にリベンジ、外れたら俺が綾小路にリベンジだ」

 

 そう言う倉上は珍しく笑っているように見えた、心無しか目も穏やかで、今のこの状況を心から楽しんでいるように思える。

 

 その表情を見てオレは倉上が説いた問題の、本気と全力の違いの答えが出た。それと同時に、オレのこの思考は倉上の辿り着いたものなのか、はたまた違う結論なのだろうかという疑問も浮かんだ。

 

「これで人生の全てが決まるなら、俺は本気を出すだろう。だけどこれは遊びだ、生死を賭けたモノじゃない。勝っても負けても続くんだよ」

 

 そう言って倉上は最後の投擲をした、投げられた矢は弧を描いて飛ぶ。

 

「楽しいと思わないか綾小路、お前も俺も負けても良いし勝っても良いんだ」

 

「……どうだろうな、ただ____」

 

 

 答えの決まっている倉上に対して、オレはまだその答えを完全に肯定出来なかった、だけどもその日の倉上との会話、遊びは確実にオレの指標の一つを変えたと断言しよう。

 

 そして同時に、あの時あの瞬間、オレは倉上を「駒」として見ていなかった事も否定出来ない。勝つ為に備わったオレの価値観。

 

 最後にオレが『勝って』さえいればそれでいいという指標がブレたのは、事実だった。

 

 

 その日の勝敗の結果を語るのは無粋だろう。

 

 ただ、オレと倉上はその後も何度も遊んだ、5月になってからこそDクラスの問題で遊ぶ機会は4月と比べて減ったが、倉上との遊びは今の所終わる気配は無い。

 

 その終わりの見えないものに、オレは自分でもまだこの気持ちを明言出来ていないが。

 

 

 これが楽しむと言うことなのだろうか。

 

 

 だとしたら倉上、お前と出会えたのはやはり幸運だった。

 

 オレにとっての友人、初めての友達がお前で良かったと告げよう。

 

 

 

 だから倉上、お前が仮に本気になった時。

 

 オレを屠ることが出来ると確信した時。

 

 

 それがオレにとってどうなるか、それはオレにも解らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 姫野ユキの憂鬱

 

 

 

 本当に訳がわかんない。

 

 これから始まる高校生活に少しだけ憂鬱な気分になる中に、隣の席に座ったそいつは私に話しかけた。

 

 まるで色素が落ちたみたいに白い髪をした、無表情のへんなやつ。こんなのと会話なんてしたくないし適当にあしらってたら一目惚れとか何とか言って、つい叫んだ。

 

 叫んで後悔した、こいつのせいで目立った、最悪。もう完全に無視しようとしたのにそいつは話しかけてくるししつこいしうざい。

 

 もういい加減殴ってやろうかと思った時に担任が来たのは幸運だったのか不幸だったのか。

 

 とにかくそいつは、倉上直哉は私に話しかけてきた。ホームルームが終わった後も話しかけて心底うざったかった、何を言っても好意的に受け取って勝手に私を持ち上げるのも、腹が立った。

 

 一之瀬が教壇に立って話し合いを始めたのを良いことにこの男から離れられると、一之瀬には悪いけどその状況を利用して教室から出れた。

 

 教室に出た後に追ってきてるか背後を見ても居なかった事に心から安堵したと思う、なんであんなやつに目をつけられたのか今でもわからない。

 

 まさか本当に一目惚れなのかと思ったけど、そんな筈ない。一目惚れをするにしても一之瀬とか、他に可愛い女の子いたでしょ。

 

 とにかくその日は今日の事を忘れようとしてスーパーで自炊をしようと思った。

 

 そしたら何でかそいつに話しかけられた、さっさと会話を切り上げたかったのにそいつは勝手に話すし勝手についてくる。

 

 本当になんなの、仕舞いには口説いてるとしか思えない事まで言ってくるし、本当に理解が出来ない。

 

 

 ……でも、認めたくないし、認めないけど。悪い気はしなかった。

 

 

 好意だけがそこにあった、私だけに向けていると嫌でも感じられる感情が私をいらいらさせる、だからこれは気の迷いだ。

 

 奢ってくれるなら、ついでに何か買わせてやろうと、それで勝手に幻滅でもしろって思ってもあいつはそれに何も言わなかった、なんなの、本当に。料理はまあ、美味しかったけど。絶対に口には出さないけど!

 

 それからだ、あいつは私が何を言っても、どう拒もうとついてくる、本当にしつこいし、面倒臭くて一度許したらキリがないし、挙句には付き合ってるとか勘違いされるし本当に最悪!

 

 その話の流れで、一人のBクラスの女子生徒が思ってもいない事を私が思ってる事にされてあいつに大声で声をかけたし。

 

 しかもそれで今までと違って嘘みたいな結果で一位取るし、一部の女子はそのやりとりを見て変に持て囃すし本当にうざかった。

 

 本当に理解が出来ない、その後に私が気になっていたものを一緒に見に行こうとか言ってくるし、毎日毎日挨拶するのもうざいし、だるいし。

 

 

 なんでこいつは、私にこんなに関わってくるんだ。

 

 そしてなんで私はそんなサイアクな奴になんだかんだで関わってしまっているんだ、最終的にこっちが折れないとどこまでも誘って来るんだ、だからだ。

 

 私が本当に嫌そうにしている時は話しかけて来なかったが、あいつがそんな気遣い出来るわけない。

 

 ……きっとあの時、初日に心からキッパリと拒めばあいつは今頃関わってこなかったと思う、何であの日許してしまったのか今でも後悔している、その理由は自分でも分からないのもイライラする。

 

 Bクラスのお人好したちも変に誤解して私とあいつが話している時は会話に参加してこないし、その癖あいつが居ない時にこっちに来て「どうだった?」とか「進展どう?」とか聞いてくる。

 

 うざい!これが普通に話かけてくるなら私も軽く受け流せるのに、なんなんだ。

 

 それから暫くして、あいつが私のポイントを聞いた時。

 

 最初にあいつが話していた事を理解した時、本当になんで私に対してポイントを使ったのか理解出来なかった。

 

 だから聞いて、その答えが惚れてるからって……っ

 

 本当に、ほんとううざい。なんなの、それ。

 

 そんな理由で、それだけの理由で?

 

 

 だとしても、そうだとしてもおかしいよ。あいつにとって私がどう映っているのか、どう見ているのか理解できない、少し怖いぐらいだ。うざくてきもい以上に、不気味に見えた。

 

 不気味に見えてから所々の違和感を感じた、何か何処かで抜けているんだ、過去に何かありそうだったのもそれを感じさせた。別に……興味ないけど。

 

 食堂でご飯を食べていたらそいつが食堂に来て、私を見かけるといつものように絡まれて。

 

 そしたらそいつが、悪い意味で噂になってた龍園に絡まれた、嫌な予感がして私はその場から離れて、食堂に出た時、なぜかもやっとした。

 

 気にしないで教室に向かおうとしても、足が思うように進まない、そこで漸く私は自分が、あいつの事を心配しているのに気付いた。

 

 ありえない、私が?

 

 でも、事実だ。意味わかんない、あんなやつ別に何とも思ってない!好きなわけないし、うざったいだけ、なのにどうして私はあいつを待ってるんだ。

 

 自分の思考がぐるぐると回っているとそいつは食堂から出てきた、私がいる事にあの無表情が崩れたのを見て、少しだけしてやった気分になったのを思い出す。

 

 気まぐれだ、気まぐれ。怪我の心配もしたのも、全部気まぐれ。

 

 そしたらその日はあいつから誘いの連絡がなかった、あれだけ言っていたのに誘わないんだと思った、別に。それでいいけど。

 

 ただ、もやっとした。

 

 

 そしたら次の日の土曜日、学校が休みの日にめちゃくちゃ連絡きてうざったい気持ちになった、電話を切ってやったのにあいつは私の部屋が何処にあるのか覚えていたようでうざいぐらいノックするし。

 

 直ぐに扉を閉めた。どうせあいつの事だから、そのうち諦めてどっか行くでしょ。

 

 ……でも何故か、昨日のもやっとしてた気持ちが無くなってた。

 

 だからこれは気の迷いだ。

 

「……何してんの」

 

 こいつの事だから素直に帰ってないのはわかってたけど蹲ってるとは思わなかった、迷惑なんだけど。

 

 呆気に取られてるのを見て、心の中で少しだけ面白がった、私が出てくるとは思わなかったのか、私もこれは気の迷いだし。

 

 どこに行くのか聞くとそいつはきもいぐらいに舞い上がって、喫茶店に行こうと提案した。

 

 知らない場所だ、なんでそんな場所知ってるんだろう、普段こいつ何してんの?別に、興味ないけど。

 

 まぁ、今回だけだ。

 

 

 ……絶対に言わないけどその日は少しは楽しかった。

 

 

 もう休日に連絡しないでって言ったけど、多分あいつ聞いてない、また誘いそうだ、ほんとむかつく。

 

 次は行かないから。

 

 ……行かないから!




うい、てことで1、2週間雲隠れします。またねー
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