早くも七月になった。
他のBクラスの生徒も大小あれどCクラスへの嫌がらせや被害などはあった。そしてあの一件以来、俺個人の件で片付く話じゃなくなり、BクラスとCクラスの隔たりは大きく動いたと言っていい。
まあAクラスを目指すというならば、CクラスにとってBクラスは踏み倒すべき敵であるのは確かであるし、龍園がCクラスの王である以上は、CとBは互いに手を取り合う事は無いだろう。
学校側から指定されたら話は変わるけどな、例えば体育祭とか、わかんねーけど。AクラスとBクラスが共闘するって事は無いと思うんだよね、Aクラスを目指して競争してる訳だし。
まあ正直これはどうでもいい、あの一件以降Cクラスからの嫌がらせはピタリと不気味に感じる程止まったし、びびったのかな?それはないか、龍園の思考を読み解くなら、次はDクラスに何か仕掛けそうだ。
とはいえ俺の予測が当たっている訳とは限らないので、Dクラスの生徒に何か言う事はないが、まあ綾小路にはそれとなく「Cクラスは野蛮だから気をつけなー」とは言ったけど。
さて七月になって、特に何が変わったかというと、俺は特に変わった事はない、連絡先が少し増えた程度で、Bクラスだと白波ぐらいなもんだ、恋愛相談に乗ったのである。
正直俺は、若返って外見高校生とはいえ中身30年間誰とも付き合っていない歴とした魔法使いなので、まあまあ困ったのだが……それっぽいことを言ったら納得してくれたので良し。
告白しようとしている相手について聞きたかったのだが頑なに拒んだのでてんで検討もつかない、そもそも俺は白波というBクラスの女子高校生をよく知らないので、誰と仲が良いかもしらん。
しれっと姫野とお昼ご飯を一緒に過ごしている時に聞いてみたら「……まあ、心当たりはあるけど」と言っていたので、姫野はエスパー能力者である事が確定した。
いやもしかしたら心読魔法の使い手かもしれないけど、うーんでもやっぱり魔力的なアレは感じないので、エスパー能力者だな、心の中で姫野の好きな所を連発して言ってみても表情一つ変えなかったのでとんでもない表情筋だ。
……いやそもそもエスパー能力者ではない可能性が?
ま、まぁこれは置いておこう。
さて連絡先を交換したのは実を言うともう一人いる、というのも俺が社会人時代、一度だけであるがその家の人物に依頼を受けた事がある。
どうにも金持ちというのは大小様々に恨まれる、日本有数の資産家ともなれば身代金目的に資産家の子供や孫などを誘拐するのも、比較的平和な日本といえども起こる時はおきる。
本来の業務とはやや異なったが金額に糸目を付けないその大胆さ、尊敬する先輩からのGoサインで、資産家の子供を狙って誘拐を企てていたグループを壊滅させた。
ちなみに殺伐な事はしてない。同調伝達誘導魔法を使って誘拐グループを一箇所に集めて洗脳魔法で自首させただけだ、ただその際に誘拐を企てた事を一生後悔する魔法を使ったので、再犯の可能性ナシ!
とまあそんなことがあって、その人物がDクラスにいるという事を耳にした俺は、いや嘘だろと噂の審議を確かめに行った所。
Dクラスに居たよ、4、5年前ぐらいだったものだから、一眼見てもピンとこなかったけど。
お仕事モードに伴い、常時魔法を使ってたからその人物を一眼見た事があったのに気づいたよね、なんなら一言二言ぐらい話した気がする。
「今日も私の筋肉は素晴らしい……そうは思わないかいmr.倉上」
「そうだな、それよりラーメン伸びるぞ」
「ふゥ〜ん……伸びた麺というのも乙だろう?」
「いや味落ちるし冷めるしさっさ食べた方がいい絶対」
「おや失敬、確かに伸びすぎては美しくないねぇ」
日本有数の資産家である高円寺グループ、高円寺六助くんだ。
この六助くん、話してみると案外いい奴である、なんて言ったって無視しない、これがでかい。興味ないものはとことん興味がなさそうだが一度仕事で高円寺グループと関わった俺に比べれば、六助くんはその親より捻くれてない。
ようはつまり面白い話をすればいいのである、とても簡単だ、その証拠に今のところ友好な関係を保っている、「ナンパ勝負しようぜ」と言ったら連絡先を交換してくれたしこいついい奴。
でも俺、姫野一筋だったからナンパ勝負できねえって事でラーメン奢ったら「この麺は美しい」とか言い出した、いやわからん。まぁ気にしないことにした。
「高円寺はAとかDとか興味無いのか?」
「ナンセンスな質問だねぇmr.倉上、将来を約束されてる以上どこで卒業しても構わないのさ、Dクラスにいる事も学校側が私を測れなかっただけさ」
「それもそうか、高円寺は俺と同じような理由か」
「ふゥ〜む?興味があるねぇ、聞かせてくれても?」
「良いぞ、と言っても簡単だ。俺は此処に遊びに来た、高円寺もそうだと思ったが」
「なるほどなるほど、私の場合は一つ訂正しようじゃあないか」
「ふむ?」
「将来を見据えた人脈作りさ、といっても今の所私の眼鏡に合う者は居ないのだかねェ、一人を除いて」
麺をドカ啜りながらめっちゃキリッてして話すのシュールだな。
まぁ高円寺グループのトップになる事を見据えた上でその目線から合う人間なんてそれこそこの高等学校でも一人、二人いれば良いほうじゃないか。
俺としては綾小路をおすすめするよ、いやまあ言わないけど、なんとなく綾小路は医師を目指すべきだと思う、人体の生き死ににそんなに動揺しなそうだから良さそうなんだよな。
今度それとなく言ってみよう、必要とあったら俺も医師になるための手伝いをしてやらなくも無いな。うん青春。
「時にmr.倉上」
「なんだ」
「私はねぇ、人を見る目があると自負している。そこでこの言葉を贈ろうかmr.倉上」
「あーいや言わなくて良い、そんでもって断るぞ」
「ほう……断るとは思ったが理由を聞いても良いだろうかね?」
「単純に俺は金に困らない。それと三年間を高等学校で遊んだ後は海外に行く予定でもある」
「どこへ行くのだね?」
「詳細までは決めてないが行き先の予定はチェコだな、良い国だ、美しい街並みと、物価も欧州の中では低い方なのも良い」
「ほ〜う、その口振りからすると、海外での生活を何度かした事があるみたいだねぇ、興味深い、聞かせてくれないかね?」
「じゃあ後日で、俺はこの後姫野を探しに行かなければならない」
「ふぅむ、私との会話より女遊びを選ぶかね」
「は?何言ってんだ高円寺、遊びじゃないぞ、真剣なんだ、人生掛かってると言っていい」
そう言うと心底意外そうな顔で俺を見つめてた、というかちょっと引いてね?いやそれは気のせいか。
流石は高円寺グループの御曹司とだけあって中々面白い会話が出来るとは思う、だが最優先は姫野の事だけだ、そんでもって次は綾小路、優先順位としてはうーん、一之瀬との会話より一歩下です。
とはいえ似たような気持ちでここにいるのなら今後話が合う事は多いかもしれない、自分と思考が似ているやつとの会話……青春判定クリア!
ということで十分青春したので、七月の姫野初めしよう、いやまあ朝も会話したし昼も一方的に話しかけたけど、それはそれとして。
「じゃあな高円寺」
「ああmr.倉上、一つ聞かせてくれたまえ」
「いいぞ」
六助くんのいる席へ振り返ると、表情はそのままに、目だけが据わったように俺を覗いていた。
「何処かで会った事はないかね?」
「さあ、此処では初めましてだな」
「ふぅむ」
……へえ、いや本当に高円寺グループの御曹司らしい、何かしらの心理学かあるいは分析力か?その目は知ってるぞ、俺を測ってるな?魔法無しでどこまで俺に触れられる?
自分にとっての未知を既知に出来るか?六助くん。
「ああすまない、もう行っていいとも」
「ああ、じゃあまたな、高円寺」
「次回は豪華客船での会食としようじゃあないか、mr.倉上」
いやそんな機会学生にはねーだろ。
まぁいいや、さて姫野どーこだ〜〜〜???
☆
Aクラス1004、Bクラス673、Cクラス482、Dクラス87。
これが七月時点での全体のクラスポイントだ、1000ポイントを超えたAクラスも大概だが上がり幅を見ればDクラスも中々だ。
Dクラスの場合、元が低いというより、無いに等しい為学校側からの温情といった見方もできるが、これはAクラスには当てはまらない。
そして当てはまらないにも関わらず、先月より70ポイントほどクラスポイントを入手している。
授業態度や普段の行い以上の何かを感じるな、だとしたらなんだ……?正直言って、これは魔法を使わないと自分には解けなそうだ。
魔法で思考を強化していても一握りの天才の中の天才には出し抜かれた経験がある、金融関係の名のある人物だったが、それと同じ類の人物がAクラスにいると言うのだろうか?
だとしたら平均的な高校生の知力をしていないな、俺に出来るのはせいぜいプライベートポイントの入手法を考えられる程度で、クラス全体を上げる方法は見つけられていない。
ああいや、魔法を使わない前提で一つ方法はある、だがこれは現実味も無い上に、まず一之瀬では出来ない、俺もやりたくはない。
まあ、別にいいか。俺姫野さえいればいーし?姫野がAクラスで卒業したいって言うなら2000万pp稼げばいーし?三年の10月か11月に魔法でpp増やせばいーし?
俺の魔法が電子媒体に通用するのは10年も前に検証済みなのでまぁ問題は無いだろう、そのppを何処で入手したか学園側からしつこく聞かれたらちょっと困ることになるかもしれないけど。
さてAクラスとは300程度離れているがBクラスは元気です、仲が宜しいことで、俺もその輪に……は今はいいや、姫野とはーなそ。
「なあ姫野、聞くの忘れてたがダメにするソファーどうだった?」
「別に、普通」
「まじか、すごいな、俺はダメになったぞ。具体的に言うとダメになりすぎて昨日そこで寝た」
「あっそ」
「しかしそうか、あのソファーでは足りないか……ならどうすれば姫野をダメにできる?いっそ教えてくれ」
「何それ……なんかきもい」
「ということで放課後寝具を見に行こう、ソファーがダメならベッドだ」
「やだ、一人で行けば」
「俺が探して見ていいのか?わかったそうしよう」
「は?ばか、違うし!てか、いらない!」
「そうか布団派だったんだな」
「そうじゃない!」
え、ならどうやって寝るんだ、魔法を使えるなら空気に浮いて寝るあの感覚もそこそこ癖になるのだが、まさかそれを言っているのか?
或いは地中での睡眠か?いやそれは無いな、一度経験したが二度は良いやってなったし、いやそもそも姫野は魔法使いでは無いはずなので、布団かベッドのどっちかじゃないのか?
あいや、俺の常識が間違ってるかもしれない、そもそも俺は普通の高校生の生活を知らないんだ、それ以外での睡眠の取り方もあるかもしれない。
となるとうーん……ん?一之瀬が近づいてくるぞ。
「にゃはは、お話中にごめんね?二人ともちょっといいかな?」
「こいつ黙らせて一之瀬」
「えっ、わ、わかったっ。倉上くん、お話禁止っ」
「まじかよ」
「って、そうじゃなくって!えーっと……今日のホームルームでのお話なんだけど」
というとCクラスとDクラスの揉め事か。
なんでもCクラスの生徒三人とDクラスの生徒一人が殴り合いの喧嘩をしたらしい、Cクラスが一方的にやられたようだがはてさて。
目撃者を探してると星之宮先生は言っていたがBクラスには居なかった、龍園が命令してやったとするなら、目撃者を見つける事は困難だろうな、まさか上級生が見ているって事もないだろうし。
「その話なら、私は知らないし興味もない」
「うーんそっか……倉上くんは?」
「……」
「はにゃ?なんで黙ってるの?姫野さん私変なこと言っちゃったかな?」
「……はぁ。喋って」
「あ、そっか!もうお話していいよっ倉上くん」
許しを得た、やったぜ。
「結論として、俺も知らないな、興味があるかないかと言われると無い」
「意外、あんたならあるって言うかと思った」
「姫野と話す時間の方が大切だろ」
「……あっそ」
ぷいっとそっぽをむかれてしまった、むむっ。なぜなのか、今日はあまり喋る気分では無い?俺はめちゃくちゃ姫野と話したいぞ、このまま放課後まで話そうそうしよう。
しかし、この様子だと一之瀬は他クラス同士の問題にも関わっていきそうだな、実際Cクラスと敵対関係であるのは確かだし。
「でも倉上くん、私は少し気になるんだ、あの龍園くんが何か悪いことをして、Dクラスの生徒を陥れようとしたんじゃないかなって」
「その考えは正しい。Dクラスに丁度やり易いのがいたんだろうな」
「だったら、私としては放っておけないよ、同じ生徒としても、Cクラスに嫌がらせをされた身としても」
「そう思うならなんで俺と姫野に聞いてきたんだ?」
「んーっ……一番は倉上くんと姫野さんが協力してくれたら、とっても心強いなーって思ったからかな?」
「こいつはともかく、私は巻き込まないで」
「にゃはは、ごめんねっ。でも倉上くんに話すなら姫野さんにも話さないとなって」
……?
なんで?
「……別に、私に話さなくてもいい」
「いやしかし姫野、これはチャンスかもしれない」
「は?」
「何故なら姫野、俺は最近気付いたんだが、姫野は俺としか基本的に話してないだろ」
「あんたとも話したくないんだけど」
「はっはっは、ということで一之瀬、姫野が一之瀬と友達になりたいらしい」
「は?!」
「えっほんとっ?!うれしいよ姫野さんっ!あっ、姫野ちゃんって言った方がいいよねっ」
「良くないし抱きつかないでよ……!」
「今だっ、白波!」
「シャッターチャンス!」
俺と白波の即席チームプレイにより姫野と一之瀬の2ショットが完成した、いえーい!後で送って送ってー!
「な、ななにとってんの!」
「にへへー、やっと姫野ちゃんと友達になれたにゃ〜!」
☆
後から来た神崎によってその場は丸くなり一件落着した。
そんでもってその放課後、俺は一人の生徒を呼び出して、ボウリング場で待っている。
いやまあ隠す必要もないので言うと、綾小路なんだが。今回の騒動に関しては、興味があるかないかだと無いんだけどね。姫野と話す時間の方が大事だしおすし。
一之瀬がこの問題に関わりに行こうとするのは今日の感じを見ればわかった、その事を俺と姫野に相談したのは、同調や同意ではなく、自分の気持ちの再確認の方が強いだろう。
六月初旬の龍園とのいざこざで一之瀬には借りが出来ている、当の本人はそう思っていないだろうが。
当事者に一番近いのはDクラスの生徒だ、だから綾小路に聞くのが手っ取り早い。
まあ、俺が手伝うかどうかは内容にもよるんだが。
「悪い、遅れたか?」
「いや全然」
「そうか」
ちなみに綾小路とボウリングはこれで二回目だ、四月の半ばぐらいにやった初回は俺が勝った、その日は姫野と昼にご飯を食べた日だったからとても絶好調でした。
あと綾小路がボウリングボールの穴に入れた指が抜けなくなったのも面白かった、綾小路も自分に起きた現象に興味津々の様に思えた。
さてっと、遊びながら聞きますか。
「それで、結論から言ってどっちが悪いんだ?」
「単純な加害者と被害者で考えるなら、暴力を振るった須藤……Dクラスが悪いとなる」
「つまり単純じゃないって話だ」
「ああ、須藤は正当防衛、無実だと言う。方やCクラス側の生徒は一方的にやられたと言う」
綾小路の投げたボールがストレートを決める、ブレのない回転力、狙いも正確、一投目と二投目はスペアだが3、4と今回の5回目でストレート。
俺はというとスペアが四回、8点が一回。スコアに差がついてきたが、まだまだ勝負はここからだぜ綾小路。
「何方かが虚偽を吐いているな、綾小路」
「須藤は確かに暴力的な性格をしているが、言動に嘘を感じなかった」
「答えは出てるじゃあないか、どうするんだ?」
「遊びみたいに言うなよ……」
「今回は遊びだよ綾小路」
そう言うと綾小路はそれに反応したのか、単純に手元がブレたのかボールがガーターの方へ行く。
「プレイヤーになるかならないかは綾小路の好みだな」
「……場合によっては退学になるかもしれない問題だ」
「いや、有って停学だ。Cクラスの生徒が本当の事を言っている確証も無い上で、何方の証言も変わらないなら、決定的な証拠がない限り、問題は怪我の度合いになる」
「停学か……須藤には悪いが、それでも良いかも知れない。一度自分を省みる機会がなければ、変わらない者もいる」
「だがそれだとDクラスの負けだ」
「……そうか、倉上の言いたい事がわかった。確かにこれは遊びだ」
綾小路は俺のこの問題に対する捉え方の考えに辿り着いたようで、気付いたみたいだ。
「だとしたらオレは今回、負けても勝っても良いように動く。おまえはどうなんだ、倉上」
「綾小路がプレイヤーになるなら、俺は観戦者に徹しよう」
「手伝ってはくれないのか?」
「今回に限れば俺より最適な人物がBクラスにいる、その女子生徒に手伝って貰うといい」
「そうか。所で____オレの勝ちだな」
「……」
そうですね。
俺のスコアが165程度なのに対して綾小路のスコアは200前後ですか、今日は周りに店員以外の人も居ないからか、手抜きもしなかったな綾小路、少しぐらい手を抜いても良かったんだぞ綾小路。
魔法使えば勝てるけど負ける時もありそうだ、俺にそう思わせるんだからプロ目指せるぞ綾小路、いやいや本当にまじで。
これでボウリングは一勝一敗か、なんか次から勝てるイメージが湧かないんだけど、いっそ魔法使ってやろうかな、いやでもそれはちょっと大人気なさすぎるか。
「次は勝つぞ綾小路、それで何が欲しい?」
「前に見かけた飲み物を飲んでみたい、奢ってくれるか」
「わかった、それと俺の作ったカレー余ってるから食うだろ」
「食べさせてもらおう」
さて。
綾小路は勝っても負けても良いというが、案外負けず嫌いな面があると俺は感じている、負けても損はしない動きをしつつ、極力勝ちに動くだろう。
この場合、対抗の相手は龍園だが、はてさてあいつが綾小路の影を掴むか?俺の予想を超える可能性もある男だ、最後まで油断をさせない。
この問題に綾小路はどう導いて、落とし所を何処にするのか?七月の二番目の楽しみはこれだな。
一番?
まだ言ってないし聞いてもないけど姫野とデート!
この時期の綾小路くんかわいいよな(唐突の告白)