ようこそしないで魔法使い君   作:ゆう31

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本日にかいめだぜ


恋愛イベントだぞ

 

 綾小路と遊んでから二日経過した。

 

 その二日の間に綾小路は一之瀬と知り合えた様で何より、どうやら特別棟で偶然出逢ったみたいだが、なるほど特別棟が事件が起きた場所か。

 

 あの辺は暑いからデートスポットに向かないんだよな、姫野を連れて行く前に一人で行ってよかった、この時期にあそこは行きたくない。しかしあの場所となると……俺ならやや悪どいやり方でCクラスを追い詰めるが、はてさて。

 

 まあ事件の話は良いだろう、俺としてはそんなに興味が無いからな、綾小路がどう解決するのかは興味あるけど。まぁ一之瀬もいる事だし、その辺に不安はない。

 

 龍園の誤算はDクラスを舐め過ぎた事だな……いや?あいつなら、Dクラスの眠れる獅子、まだ表立って居ない人物を炙り出す目的もあるかも知れない、綾小路がそれに付き合うかはわからないが。

 

 ともあれ、そんな考えは今の状況に何一つ意味のなし得ない話である。

 

 

「……今日告白します」

 

「待つんだ白波。姫野、言ってやれ」

 

「うるさい」

 

 あっ、登校してしまった。

 

 呼び止める間も無くすたすたと行ってしまっては仕方ない……それよりである、白波がおかしくなってしまった。

 

 いやこの女子高校生の普段を何一つ知らないし対して興味もないのでこれが平常運転なのかもしれないが、登校早々俺の姿を見て邂逅一番こんな事を言われたら魔法使いでも困惑する。

 

 はてさてどんなロジックがあってこんな事になったか、魔法を使って知りたい意欲が少しだけ起きたが我慢しよう。

 

「とりあえず、そうだな。あのベンチで話そう」

 

「え、いや登校遅れますけど」

 

「まだ時間はあるはずだ」

 

「まあそうですけど」

 

 はてさて今日告白するらしい青春ポイント高めなこのイベントだが、なぜだろう。そんなに青春ポイントが高くない気がする。

 

 兎にも角にも、まず話を聞かなくては。

 

「なぜ今日なんだ?六月下旬に相談したよな、早すぎないか」

 

「他の人に告白されてでもしたらどうするんですか、あんなに素敵な人がされないはずないでしょ。今行かないと……うう」

 

「待て、恋は遊びじゃない。それはわかってるか」

 

「分かってます!」

 

「なら白波、お前は仮に告白が成功した後の10年先のビジョンまで見通せるか」

 

「うっ……それは」

 

「俺はできるぞ、まず卒業した最初の二年は互いを更に知る為に同棲から始めるとする、立地は駅から15分圏内の9万前後、その間に互いの両親の了承を得る、三年目の間に結婚式をする、日本でやるなら神前式だな。相手が嫌うならしなくても良い、四年目以降は海外生活だ、チェコが理想だがそこは互いに決めるとしよう、それから___」

 

「わ、わかりました、もうわかりましたから……この人絶対やばいよなんか頭のネジ的な、大丈夫かな姫野ちゃん……

 

「なんか言ったか」

 

「い、いえ何も」

 

 ふむ。何やら物凄い引かれている気がするが、気のせいにしよう、そうした方が俺が傷つかなくて済む。

 

 しかし実際、ある程度の未来に対する展望がなければいざ成功しても中途半端に終わってしまうと尊敬するバツ2先輩が言っていた、重みが違うだろ?なのでこれはちゃんと参考にしている。

 

 告白が失敗するなら別にそれでいい、何故ならもう一度告白すればいいからだ、それでダメなら三度目の正直、それすら通用しないなら四度目のなんちゃらだ。

 

 基本的に人間という種族は魔法使いである事を抜きにしても、好意に対して上下あれど無碍にする事が出来ない、何度も当たって砕けても魔法で再生していくべし。

 

「それで白波、告白した後はどうするんだ、まず何をする、どう向き合う、それを確定出来ないなら、付き合っても別れを切り出されるぞ」

 

「う、うう……正論だ……まるで歳上に諭されてるみたいです……」

 

 うんそれは気のせいじゃないです、君が相談しているのは若返りの魔法を使って青春をたのしー!してる30代のおっさん魔法使いです。

 

 と言えるわけがないので黙っておこう。

 

「でももう私は止められませんよ誰にも」

 

「なんでブレーキを忘れてしまったんだ」

 

「ラブレターを送ってしまいました」

 

「何処からそんな行動力が、お前は白波なのか?」

 

「失礼ですね!」

 

 まじかよ、こと恋愛に関して勢いは大事だと学んだがそれにしても猪突猛進が過ぎないか、気持ちが前のめりになり過ぎてないか。

 

 魔法で心やられてんのか?こいつ、いや確かに原初の魔法は恋であるといやいやおまえぜってー魔法のこと知らねーだろって名前も忘れた本に書いてあったが。

 

 え?まじなんですかアレ。

 

「でも、倉上くんの話を聞いてたら、何だか私……考え無しが過ぎましたね……」

 

「本当にな」

 

「うっ」

 

「だがこうなってはもう進むしかない、そのラブレターの相手はちゃんと来てくれるのか?」

 

「絶対来てくれると思いますっ、優しくて、可愛い人だから」

 

「なるほど……」

 

 可愛い人?ああうん、確かに女子は男に対してよく可愛いっていうもんな、そんな感じか?中性的な顔立ちの男子高校生なのだろうか、俺が記憶している限りは……んー当てはまらないな。

 

「それで何時の場所は何処だ」

 

「えっ何でいう必要あるんですか」

 

「不本意だが相談を受けた以上最後まで責任を持たなければならない」

 

「やだ、イケメン」

 

「……白波に言われてもなあ」

 

「何ですかそれ!」

 

「ということで教えろ」

 

「あー……えっとー、うーん……無理です」

 

 

 何言ってんだこいつ。

 

 無理って何だ無理って、俺が放課後に姫野と遊ぶ予定を蹴ってまで告白の手伝いをしてやるって言ってんだぞ、そんな我儘言う女子高校生には魔法使うぞ白波、魔法使えば簡単に分かるんだからな。

 

「……Bクラスなんです、告白相手」

 

「あっそう。それで場所と何時か教えろ」

 

「え、いや普通そこは引きませんか?」

 

「告白成功すれば嫌でも目立つだろ、隠す必要あるのか?」

 

「まあ確かに、いやでもちょっと……言いづらくて」

 

「は?なんだ?同性に告白でもするのか白波」

 

「え?!」

 

 え?

 

 まじか、図星かよ。

 

 ああいや、サンフランシスコのとある地区では珍しい話ではないから、いやいやそうじゃない、ここ日本です。いやまあ俺では同性婚を否定することも肯定することもできない。

 

 魔法使いでも困惑しています。

 

 てかちょっとまって?Bクラスの女の子?あんなに素敵な人で可愛くて優しくて可愛い……?

 

 

「おい姫野に告白するのなら全力で阻止するぞ」

 

「違います帆波ちゃんですっ!」

 

「え?一之瀬?まじかよ」

 

「あっ……言っちゃった」

 

「俺以外聞いてないから大丈夫だぞ」

 

「……あ、そういえば、その。学校……」

 

 ……。

 

 やべえ、後5分だ。

 

 俺と白波は互いに目を見合わせ、すぐさまベンチから立ち上がって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 危なかった、危うく魔法を使って時間を朝起きた時まで戻そうかと思ったぐらいだ。

 

しかし時間を巻き戻る時に記憶保持魔法、精神安定魔法を掛けないと万が一俺はドロドロに溶けたスライムみたいになってしまう時があるので、なんとか踏み止まった。

 

 姫野にも呆れられたしかなりショックだ、恋に悩む女に振り回される経験はなかったので青春ポイント的には高いのだが、これでは何も良くない。

 

 しかし。そうか、人の数だけ恋愛のあれこれはあるがまさか、女子高校生が女子高校生を好きになるのをこんな間近で見るとは。

 

 衝動的に動く程突き動かされるものがあるのなら、それがどんな形であれ恋であるだろう、いや俺恋について語れる魔法使いじゃないけど。

 

 はあ、俺の生きてきた30年間でも中々面倒くさい相談を受けてしまった、しかも相手が相手だ。

 

 俺の見立てでは一之瀬の恋愛観はノーマルだ、一般的な価値観を持つ相手……まず間違いなく振られると思うんだが。

 

 若返りの魔法使いでもそう思ってしまうのだから、これはどうするべきか。

 

 とりあえず白波と昼に作戦会議を開始する事になったのである。

 

 

「もう全部バレたので言いますけど今日の夕方4時、体育館裏です」

 

「潔くなったな白波」

 

「もう何も守るものがないですからね、えへ、えへへへ」

 

 こわいなこいつ、この俺が恐怖を感じただと。

 

 さて昼も限られた時間しかない、俺は白波に嫌われたところであんまり問題ではないと考えるからズバリ言ってやるか。

 

「先ず間違いなく振られる」

 

「そんなこと……」

 

「強く否定出来ない時点で薄々気付いているだろ」

 

「でも……っ、好き。だから、諦められない……」

 

「……?いや諦めろって言ってないが、あほだなお前」

 

「あほ?!」

 

「白波が考えないといけないのは二度目、三度目だ。ぶっちゃけお前の恋愛とかこの際言うと今起きてるCクラスとDクラスの問題と同じぐらいどうでも良いんだが」

 

「いくら何でも言い過ぎじゃないですか?」

 

 全然言い過ぎじゃない、というより魔法を使っても使わなくても俺には少し荷が重い相談だ。

 

 これが例えば依頼と言う形なら洗脳魔法でどうにでも出来るが、それをしたら俺はこいつと友達をやめる事になる。それは少し勿体無いからな。

 

「でも、そっか……そうですよね、何度も告白すれば!」

 

「いや三回ぐらいやって無理ならもう無理だと思え」

 

「何でさっきからそんな酷いこと言えるんですかっ」

 

「一般的な恋愛観を持っている人物に対して全く異なる恋愛観を押し付ける事になるんだぞ、俺じゃなくても姫野でも同じ事言うぞ現実見ろ」

 

「すいませんでした……」

 

 シュンっとする白波、側から見たら虐めてるみたいじゃねーかふざけんな。

 

 さて二度目三度目の事を考えろと言われても、今パッと思いつく事は中々出来ないだろう、だからこいつにはまず最初に失恋の味を知ってもらわないといけない。

 

 つまり振られてこいだ。

 

 いや俺失恋の味なんて知らないけど、味とかあるんですか?あるとしたらクソ苦そうだな、吐き気やばそう。

 

「それと白波、俺も見に行くぞ」

 

「えっ困ります」

 

「お前の相談を受けた者として見届ける義務がある」

 

「困ります」

 

「何かあったらどうするんだ、何かあったら」

 

「とか言ってその状況を楽しみたいとか思ってませんか」

 

「そう問われれば是と答えよう」

 

「最低っ!」

 

「その代わり可能な限り告白の手助けをしてやろう」

 

「素敵ですね倉上くん、あっ何か奢りましょうか?」

 

「じゃあ寿司」

 

「えっ嫌です」

 

 

 そんなこんなてんやわんやと白波の告白についての作戦会議は進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ということで体育館裏の隠れられそうな場所で隠れているのである、姫野も誘いたかったが、白波の「あまり他の人に伝えないでください、特にBクラスの皆には絶対」という言葉を苦渋の決断で守った。

 

 しかし、アレだな。人の告白を見る機会が来るとは、女の子同士であるから、一般的な告白シーンとは違うが。

 

 これは青春イベントと言えるのだろうか?なんか別のやつな気がする、いや魔法使いである俺でもわからんのだけども。

 

 さて、正直結果は分かるがはてさて、万が一億が一という事もある、可能性は0ではない、とはいえ四捨五入したら0なのは確かだ。

 

 俺は一之瀬が誰と付き合おうが白波が誰と付き合おうが、というか姫野以外の誰が誰と付き合おうが否定も肯定もしないとしている。

 

 今回は白波に相談されて俺はそれを受けたので、白波の味方ではあるが、今の気持ちは何で軽はずみに受けてしまったんだろうと言った気持ちが五割ぐらいある。

 

 残り四割はさっさと姫乃に会いてーなーって気持ちで残り一割が愉悦である。シチュエーションは青春イベントだからな、中身がちょっとアレなだけで。

 

 ……ん。そろそろ時間だ。

 

 

「これ、オレがいない方がいいんじゃないか?」

 

 

 ……ん??

 

 ちょっとまって何でいるんだ綾小路、え?付き合ってんの?いや、いやいやそれはない、だとしたら運命的な赤い糸で結ばれてるとしか思えない。

 

 それって俺と姫野の関係では?割とあるな、え、付き合ってんの?

 

 あ、なんか一瞬こっち見た気がする、気のせいとも思えない、いや違うんだよ俺じゃねーぞ綾小路、なんか引いてたけど。

 

 おいなんかこれもう魔法だろ、俺今どんな魔法的状況にあっているんだ?

 

 もしかして混沌魔法?それともこれはあれか?混乱魔法でも使われたのか?だとしたら一体誰が?もしかして俺が無意識に魔法使ってこの状況を作り出した可能性もあるのか?

 

 あっ白波来た。

 

「あの……その人は……?もしかして、彼氏……?」

 

「あ、え……と」

 

 え、まじで彼氏なのか?うそだろ綾小路、俺に黙って……まあそれはいいけど、いつ何処でどうやって何が起きてどうして付き合ったんだ?魔法使って調べていいか?

 

 やばい、まじで知りたくなってきた、使っちゃおうかな。

 

「ただの友達だ」

 

 おおおあっぶねー、今まじで魔法使いかけたぞ、そうかただの友達だったか、いやそれなら何でここにいるんだって話になるが冷静になってきたぞ。

 

 これ多分あれだな、一之瀬がどうしたらいいかわからなくて綾小路に彼氏のフリするよう頼んだな?まさかと思うが恋愛に疎いのか?うそだろ?今までモテてきただろ、絶対。

 

 ……えっいや、そうだよな?一之瀬の容姿で誰にも告白された事がないってそんなことあり得るのか?

 

 今日だけで俺は何回困惑しているのだろうか?

 

 俺が14歳の時に父親が十字架の如く吊るされて母親が金属バットを持ってフルスイングしようとしている中、近所の人が平然とそれを受け入れている光景を見た時だ。

 

 ……いや今思い出しても意味わからん、魔法で解明できないものもある。

 

「その必死の想いに、告白される側は答えなきゃならないんじゃないか?こんな状況を作って場を濁したら互いに後悔するだけだ」

 

 考え事で半分ぐらいしか聞いていないが、綾小路が良い事言ってこの場から去った。去り際に俺の方を一瞥してアイコンタクトをした気がする。

 

 ああうん、そうだな。ここは綾小路の意図を汲んで空気を読むか、俺は確かに相談を受けた者だが、この先の事は俺が聞くべきものではないからな。

 

 ……はあ。

 

 なんだか疲れたな。

 

 

 

 

 

 その日の夜、ふっーっとため息をついた後にソファーでダメになろうと寝そべる。

 

 結論から言うと、白波は振られた。

 

 鬼電してきて仕方なく電話したらめちゃくちゃ泣きながら色々言われる俺の身になってくれ、これは青春とは呼びたくないぞ俺は。

 

 だがまあ、思いの丈をぶつけると言う事は、そういうことなのだろう。白波は最後に「ぜっだいあぎらめま“せん”!」と言っていたし、あの出来事は必要な事だったのだ。

 

 今回の出来事で俺は白波千尋という人物を少しだけ尊敬した。あほだが、逃げなかった、そして振られても簡単に諦めなかった。

 

 何より、どれだけ勝算が低かろうと挑むその姿勢はそれこそ過去の、まだ魔法も満足に使えず、テレポートを間違えて森の中で過ごし生き抜いた時の自分を思い出した。

 

 

「起きてるか姫野」

 

『もう寝るから』

 

 そんな白波に当てられてか、無性に姫野の声を聞きたくなった俺は姫乃に電話した。

 

 綺麗な声だ、少し眠そうな声なのは、まあそれなりに時間の経っている今の時間なら当たり前か。

 

 電話が繋がった事は嬉しいのだが、何も話す事を決めていなかったからか、言葉が出てこない。

 

「……そうか」

 

『……何?』

 

「ああ、いや。なんでもない」

 

『なにそれ』

 

「ただ、声が聞きたくなった」

 

『切るから』

 

 斬られるらしい、明日は防刃ジョッキを身につけようと思う。いや好きな女の子に斬られる経験も中々ないので生身で体験するのも良いかもしれない。

 

 生命の危機に陥ったら自動再生魔法を使えば元通りになれるしな、うん。

 

 うーんだめだ。なんか、気恥ずかしい?いつにも増して言葉が出ないな、もっと話したいのだが、本当に言葉が出てこない、こんなにも出てこないとは。

 

 

『……おやすみ』

 

「え、ぁあ。おやすみ姫野」

 

『ん』

 

 

 電話の切れる音が響いた、心ここに在らずといった感じで黙っていたからか、少し気を遣わせてしまったかもしれない。

 

 …ああでも、良いな。今の。

 

 

 やっぱ好きだ、姫野。

 

 

 

 何年ぶりだろうか、今日は正しい意味で眠れる気がする。

 

 




二巻の内容はそこそこ端折るし直ぐ終わるかも〜
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