ようこそしないで魔法使い君   作:ゆう31

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三巻突入するおー


どうやらバカンスのようだ

 

 人生とは苦である。

 

 

 であるからこそ、苦である人生をどう楽しむかでその人生の価値が決まるのだ。

 

 過去、仏教を説く僧侶から言われた言葉だ、当時の魔法を十全に扱えず、また精神的にも未熟であった俺にとって天啓とも言えるべき言葉であったと今でも思う時がある。

 

 全く持ってその通り、人生とは基本的に苦の連続だ、いっそここが地獄だと言われれば俺は当たらずも遠からず、隣人であると言うだろう。朝起きるだけでも苦痛を感じる時があれば、特に理由も無いのにも関わらず、苛立ちを覚える時もある。

 

 こんな事を考えるのは知能、言語を習得した人間だけと言うが、最近の研究結果では地面に生えるキノコにも言語があると言うでは無いか、そもそもとして自分自身すら全て理解出来ている人間の方が少ないと言うにも関わらず、種全体を理解するなど不可能では無いだろうか。

 

 少し脱線したが、とにかく俺は、あの時から何事も楽しむ事を始めた、今では上手く楽しめるようにはなったと思う、割とはっちゃけてるし、だがそれでも、魔法の深淵を覗く時。その力を扱う時。

 

 

 どうしてもそれだけは素直に楽しめなくなる、30年生き、若返りという生命の引き伸ばしすらも可能としてしまったコレは、高等学校に入学して四ヶ月となった今、疑念から確信の変わった。

 

 

 コレは、理の外にある力だ。

 

 

 無から有を作り出し、人の命を左右し、時間すらも操れれば、この世に居てはいけない、ならないものすら呼び出せる。

 

 魔術に触れ、その深淵を深める度に世界の裏を知っていった、失うものは多かったが得るものは計り知れなかった。

 

 そして、それも俺の中では一息付けた、一息付けたからこそ、失ったものをまた得る機会を、この高等学校で得ようとしている。

 

 そしてそれは魔法で手に入れるべきではないのだ。

 

 魔法は万能で究極的に出来ない事は何一つない、そんな絶対で究極な、約束された“勝利”に何の価値もないのだ。

 

 確かにコレは俺の持っている力だ、だがそれでは楽しめない。

 

 人生は苦であり、だからこそどう楽しむのかで価値が決まるのなら。

 

 今のこの状況、三年間の高校生活は、如何に魔法を使わずに楽しめるかで価値が決まる。

 

 

 コレはある種の挑戦だ。

 

 俺からこの力を取った時、俺に残るものはあるのか?この疑問に、この学園はどう答えてくれるのか。

 

 

 理由はさておき既に何回か魔法を使ってしまっている現状に、そう簡単には捨てられない力であるとはっきり理解している。

 

 この学園での生活も四ヶ月になった、だからこそここで決めようと思う。

 

 

 結論から言おう、俺は巻き戻る魔法を禁止する事にした。

 

 

 過去14回時間を巻き戻し、その14回中3回失敗して異世界に飛ぶ事もあれば、致し方無い理由で5回並行世界へ移動し、そして今に至ったこの俺がいる世界だが、それらに干渉する魔法を今後使う事を止める。

 

 

 八月一日、朝に俺は時間に関わる魔法を禁止する魔法を使った。

 

 

 これで魔法の制約により、俺がこの魔法を解除する魔法を使わない限り、一生世界は巻き戻る事もなければ、俺と言う存在が並行世界に行く事もない、異世界という正史の世界から離れ、異界と化した世界に飛ぶ事も無いだろう。

 

 

 前々から思っていたんだ、如何に俺が魔法使いであっても、この魔法は魔法の深淵を理解した俺でも手に余る力であると。

 

 だから捨てよう、戻る事を止めよう。

 

 本来人生とは、戻る事の出来ない、たった一度のモノなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

常夏の海。広がる青空、澄み切った空気……そよぐ潮風は優しく体を包み込み、真夏の猛暑を感じさせない太平洋のど真ん中。そう、ここはまさにシーパラダイス。

 

 とか誰か思ってそうだなあ。俺は暑くてムカついてます、太陽うぜえ〜〜〜!太陽光俺にだけ適用しないような魔法使いてぇ〜〜〜!

 

 アニメとかでも魔法使いは日光に弱かったりしたけどソレは正解、俺は太陽に弱い、冬の方が好きです……ん?これ吸血鬼の方が当てはまるな?

 

 

「いやしかし、この年で豪華客船に乗るとはな……」

 

「わかるぞ神崎、過去何度も乗った事はあるが高校生になって乗る日が来るとは思わなかった」

 

「過去何度もって、すごいですね倉上くん」

 

「当たり前だ白波、俺はお前より凄い」

 

「なんでそんな言い方するんですか?!」

 

「はて?」

 

「むかっ!」

 

 何だこいつ、いかにも怒ってますみたいな表情でバカそうな言葉を放つ生物がこんな所にいるとは、写真でも取っておこうか。

 

 冷静に考えて写真を撮る価値も無かった、ちょっと離れてる所で黄昏ている姫野の方が絵になるわ。

 

 いやしかし本当に驚きです。まさか六助くんはこれを知っていたのだろうか?ありえそうだ。上級生と何度か食事をしているのを見かけた事がある、その上級生が口を滑らせてバカンスがあると言ったかもしれない。

 

 うーんしかし髪が風に揺れて靡いている姫野がなんと美しいことか、えっこれで魔法使ってない美貌ってマジすか?!悪い、俺心臓麻痺しそう……ってなってもおかしくない。

 

 正直言うと見惚れて言葉をかけるのもなんかあれなのである、あれとは?つまりはそう、あれだ。

 

 

「付き合いてえな……」

 

「えっ無理ですごめんなさい」

 

「お前じゃないが」

 

「おい、まさか……俺か……?!」

 

「嘘だろ神崎、マジかよ神崎。しっかりしてくれ神崎、お前がアホになったらBクラスはお終いだ」

 

「あ、あぁ……すまない、倉上の事だから、姫野の事だろうが」

 

「えっ、まだ付き合って無いんですか?嘘でしょ?」

 

 そう言うと白波は何やらバカにしたような心底驚いてるような面白がってるようなよくわからんバカ面を披露した、ムカついたので即座に端末を取り出して写真を撮った。

 

「一之瀬に送るか……」

 

「わー!わー!ごめんなさいごめんなさい!」

 

「1万ppで消してやろう」

 

「たかっ!え、高いですよ!安くして下さい」

 

「俺が姫野を彼女にする手伝いをしてくれるならタダで消すぞ」

 

「友達のお願いは聞きますよ!ねっ神崎くん?」

 

「え、いや、俺もか?すまないが何一つ手伝える気がしないのだが」

 

「いや神崎は別に良い」

 

「なんかごめん神崎くん」

 

「あ、あぁ……そろそろ部屋に戻る……」

 

 見るからに傷つけてしまった、が俺は謝らないぞ神崎、何故ならお前はそこそこ顔がいいからだ、つまりはイケメンである。

 

 俺の敵といっても過言では無い、性格が良いから敵視してないが恋愛感情に疎いこの男がいつ姫野に惚れるかわかったもんじゃ無い、よって俺は警戒しなければならないのだ。

 

 この論でいくと綾小路もイケメンだが、前にも言ったけどギャルっぽい子か佐倉か意外にも正統派の黒髪ロングの女子高校生と付き合いそうだから敵ではない。

 

 何なら腹黒そうな美少女かも知れないし文学少女かも知れない、あれ?あいつめちゃくちゃ恋愛運強くね?モテ期なの?いやまあ俺が勝手に妄想しているだけなのだが、なんだろう、近い内に現実になりそうな予感がする。

 

 確信に近い、魔法を使ってないのにこんなにセンサーが働くのは何故なんだ。

 

 

「あれ〜?なんだか面白い話してたかなぁ〜?」

 

「あっ、星之宮先生!」

 

 とかなんとか考えてたら変な女が現れた。我らがBクラスの担任、星之宮女史である。

 

 

「この前別れたばっかりの星之宮先生じゃないですか、哀れですね、なんですか?慰めませんよ」

 

「もうっ、失礼しちゃうわねっ自分で振ったのよ!」

 

「そんな事してる年ではないのでは?」

 

「白波さん?」

 

「所で星之宮先生32歳」

 

「もう少し若いわよ!」

 

「そうなんですか?」

 

「白波さん??」

 

「どうすれば俺は姫野と付き合えると思います?」

 

「星之宮先生に聞いても意味ないと思います倉上くん」

 

「白波さん???」

 

「あ、私そろそろ戻りますね、さようなら倉上くん、星之宮先生」

 

「ちょっと待って白波さん?あっ」

 

 星之宮先生の言葉は空に消えていった。

 

 言い過ぎだろ白波……いやそうでもないのか?俺とした事が、この先生に相談とか……魔法使ってない弊害かもしれない、思考力が落ちている気がする、絶対碌な事言わなそうだし。

 

「……こほんっ!しーかーたーないのでっ、教師らしくアドバイスをしてあげましょう」

 

「やっぱ良いですさようなら」

 

「ちょっと!」

 

「はぁ〜〜〜……じゃあ言ってみて下さいよ星之宮先生」

 

「ああもう……!はぁ、では心して聞くよーに!」

 

 そう言って星之宮先生は俺にごにょごにょと耳打ちしてきた。やめろ近え、なんだこいつ。

 

「夏は恋の季節。好きな子に告白するなら、こういう綺麗な海の前が効果的かも?」

 

「つまり?」

 

「この二週間でパパッと告ってささっと付き合っちゃえ!」

 

 

 こいつバカなのか?仮にも同じぐらい人生歩んでるとは思いたくない。

 

 ……いや待て。

 

 確かにこのバケーションは良い、海の上でのプロポーズ、割とありかも知れない、俺の尊敬するバツ2先輩も最初のプロポーズは海の上でやったと聞いた事がある。

 

 そしてそれは成功したとも聞いた事がある、夏は恋の季節というのも適当ではないのかもしれない、星之宮先生は独身だが異性と付き合った回数は多そうだ。

 

 星之宮先生なりの実体験を元にしたデータがあるのだとしたらバカに出来ない。

 

 

「……よし、偶には役に立つんだな星之宮先生」

 

「偶には余計よ!って、ありゃ?」

 

「プランを考えなければ……とりあえず部屋に戻って作戦を考えるぞ……!」

 

 

 ちきちき!プロポーズを成功させよう大作戦!必ずこの手で掴み取ろう……っ!青春をッ!

 

 俺はやるぞ!やるんだーーーッ!

 

 

 

 

「……うっそ〜〜?本気にしちゃった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ分かっていたがただの豪華客船バカンスで終わるはずが無く。

 

 

「ではこれより、本年度最初の特別試験を行いたいと思う」

 

 

 という事らしい、Aクラスの担任である真島先生の説明を要約するしようか。

 

 一週間の間、八月七日の正午に終了となるこの試験の内容は無人ている島での集団生活を行い過ごすという事だ。

 

 スタート時点で各クラスにテントが二つ、懐中電灯を二つ、マッチを一袋……生理用品は置いておくとして、この支給だけで一週間の生活はまぁ無理だな。

 

 まぁそれをどうにかするのが試験専用の300ポイントであり、そのためのマニュアルだ、マニュアルに載っている物はポイントで買える、基本的なものは全て揃っているようだ。

 

 だが試験後に残っているポイントは全てクラスポイントに変換される、使い過ぎたらクラスポイントが増えるのは微々たる物になるだろう。

 

 はてさてBクラス、いや他のクラスもだが……この試験、最終的にどこまでポイントが残るだろうか。

 

 兎にも角にもまだ説明不足だ、思考を一度止め、説明があるだろう星之宮先生の話を聞くとしよう。

 

 俺個人としてはBクラス、というより一之瀬がAクラスを目指そうが構わないし、頼るならやれる事はするつもりだ。

 

 

 だがそう簡単に行くかな。

 

 

 

 この試験が開始する前、俺は一つの相談を受け、それとは別にもう一つ相談を受けた。

 

 俺はその二つの相談に対して意見を言った後に、ある程度は協力すると約束した。

 

 約束した以上、それを反故にする事は俺は絶対にしない。

 

 約束とは契約、契約とはつまり、執行しなければならないモノだ。

 

 

 俺はBクラスの味方だが、だからといって他クラス、Bクラス以外の生徒の敵である訳ではない。

 

 この試験は諸々の思想が絡み合う試験になる。

 

 

 果たして勝者が誰になるのか、一週間後が楽しみだ。

 




二巻よりは流石に長くなりそう、みんな大好き無人島回ですしおすし
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