ようこそしないで魔法使い君   作:ゆう31

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GW終わるなもっと流行れ


どうやら俺より青春しているようだ

 

 森を抜け、そこから見える浜辺には大勢のCクラスの生徒がいた。

 

 仮設トイレやシャワー室、日光対策のターフやバーベキューセットにチェアーやパラソルなど、娯楽に必要なありとあらゆる設備が備えられていた。

 

 肉を焦がす煙と笑い声、沖合では水上バイクが駆け抜け、海を満喫する生徒が悲鳴を上げながら楽しんでいる。

 

 

 その様子を見て、俺は敗北感を味わった。

 

 

 こいつら誰よりも青春してんじゃねえか!!!!

 

 

 は?こんな青春過ぎるでしょ、おいマジかマジですか、龍園翔___きさまッ、やりやがったな!

 

 俺が相談事を受けてなかったらまず真っ先にBクラスに提案していたであろう思考を、きさま!

 

 ちくしょう、どうしようもなく悔しい、これが特別試験とかそう言うの抜きにしたらここにいたのは俺と姫野かもしれなかったのに……っ!

 

 その時、突然脳内に溢れ出した。俺と姫野がきゃっきゃうふふする存在しない記憶。

 

 

 龍園、今回の特別試験、俺はお前に青春ポイントの差ではっきりと負けたと断言しよう。

 

 俺はお前がここまでやるやつ(・・・・)だと思わなかった……!

 

 そんな感じで呆然と見ていたら、一人の生徒が俺に近づいてきた。

 

「あの、龍園さんがお呼びです」

 

「わかった」

 

 俺は二つ返事でその生徒について行く事にした、水着姿でチェアーに寝そべり肌を焼き、グラサンを付けた龍園がそこにはいた。

 

 龍園はグラサンを外し、俺を見てにやりとしたり顔で挑発するように見つめてきた。

 

「よう倉上、驚いたか?」

 

「正直に言って俺も混ざりたい」

 

「はっ、他の奴なら良いがてめぇは歓迎しねェな、何されるかわかったもんじゃねえ」

 

「……まあわかってはいたさ」

 

 

 かなり落ち込んだが、まぁ、まあいい、もう青春力では負け濃厚だが、俺は俺で青春ポイントを稼ぐ当てはあるのだ、いや。見方によってはこれは一大イベント、青春どころか人生にも左右する。

 

 そうだ、そう考えれば俺はまだ龍園に負けていない、いやむしろ勝ってすらいる、この男に恋愛イベントはまぁまずあり得ない……有り得ないよな?

 

 いや、特定の女の子はこういう男に弱い、しかも割とすぐそういう関係になりやがる、でも待て落ち着け、だからどうした、こいつが誰と付き合おうと、俺が付き合えば勝ちだ。

 

 ……なんだか混乱してる気がする、思考を一時中断しよう。

 

「それで?何故来た?偵察か?」

 

「そう言われれば、そうだな」

 

「で?何か得れたかよ、アホ面」

 

「羨ましいぐらいだな。そういえばCクラスの……金田だったか?随分手荒いじゃないか」

 

「あぁ?ああ、躾のなってなかったからな、なんだ?Bクラスにでも転がり込んだか?」

 

「案外一人で過ごすと聞かなくてな」

 

「ははっ、そりゃあザンネン(・・・・)だな」

 

 俺は龍園から視線を外して改めてCクラスの様子を見渡す。

 

 これだけのポイントの消費だ、今日か明日か、数日でこのバカンスは終わるだろう。好きなだけ楽しんで、後はなにかと理由をつけてリタイア。客船に戻って終了。

 

 そんなところか、だがそれで終わるほどCクラスの王を名乗る男は京楽に生きていないだろう、何かしら行動はするだろうな。

 

 さて、何をしてくるんだか____と考えていると、二人の男女が近づいて来た、片方はどこかで見たことがあるかもしれない、もう片方は何を隠そう、俺の友人だ。

 

 綾小路は俺の存在に少し目を見開いた、すると龍園が口を開く。

 

「よう。こそこそ嗅ぎまわってると思ったらお前だったか。俺に何か用か?」

 

「随分と羽振りが良いわね。相当楽しんでいるようだけど」

 

「見ての通りだ、俺たちは夏のバカンスって奴を楽しんでるのさ」

 

「倉上くん、あなたはBクラスの人ではなかったかしら、何故ここにいるの?」

 

「その前におまえは誰だ、名を名乗れ」

 

「……」

 

「あ?なんだ、知らねえのか倉上?意外だなぁ、俺から教えてやるよ、こいつは」

 

「堀北鈴音よ」

 

「ん?……ああ、思い出したぞ、反抗期の黒髪か」

 

「あぁ?ハハッ、なんだそりゃ、おいおい気になるじゃねえか」

 

「……不愉快ね、貴方も倉上くんも」

 

 

 いやいや仕方ないだろ、記憶にねーんだもん。

 

 しかし龍園、この堀北鈴音とやらが来てから随分テンション上がってんな、何?こう言うタイプが好みなん?いやまあそれにどうこうは言わないけど。

 

 もしかしてMなん?嘘だろ、その風貌で?俺のこと笑わせに来てる?だとしたら相当ギャグセンス高いな、こいつ。

 

 俺は今、龍園の新しい一面を垣間見たのかもしれない。

 

 

「……まさかとは思うけれど、BクラスとCクラスは協力し合っている、とは言わないわよね?」

 

「はっ、有り得ねぇな、それの何処にメリットがある?もう少し考えて発言することだな、鈴音」

 

「気安く私の名前を言わないで貰えないかしら、不快よ」

 

「そうだぞ龍園、距離の詰め方を間違えたら叶う恋も叶わないぞ」

 

「わかってねえな倉上、強気な女には強引に行く方が良いんだよ」

 

「ダメだな、よしんば付き合えたとして半年程度で解消されるのがオチだ」

 

「てめぇの技量がそこまでだって事だ、倉上」

 

「なるほどお前は俺を見くびっている、この試験が終わったらナンパ勝負でもするか?負けるつもりは無い」

 

「馬鹿かテメェ、どうして俺の勝ちが約束されてる戦いを挑んできやがる?」

 

「綾小路くん、今すぐこの二人の口を縫い合わせて貰えないかしら」

 

「無茶言うなよ……」

 

 そういって明らかに「オレ無害です」アピールする綾小路、おまえなら出来そうだけどな、まぁ俺はともかく、龍園にはあんまり目をつけられたくはなさそうだ。

 

 最も龍園は俺と堀北との会話に夢中で、綾小路は眼中に無さそうだが。

 

 

「いいわ、戻りましょう綾小路くん。ここに居ても気分が悪くなるだけよ」

 

「待て堀北とやら、そっちにCクラスの男子生徒が行かなかったか?」

 

「……いえ、ただ女子生徒は来たわ、あなた、伊吹さんは知ってるわね?」

 

 そう言って堀北は龍園を睨みつけて問いただす、なるほどな、DクラスにはDクラスでもう一人、別のCクラスの生徒が行ったか。

 

 BクラスにもCクラスにも一人ずつ、成程な、これは一之瀬の直感はほとんど正しかったと言って良いだろう、十中八九……ただ、それをDクラス、というより綾小路が気付かない筈がないが。

 

 まあ、綾小路には綾小路なりの思考があると言われればそうだろうから、俺から何か言う事もないか?

 

「伊吹がお前らのところにいるならさっさと追い出したほうがいいぜ。耐えられなくなればココに帰ってくる。土下座でもすれば許してやるさ。寛大な心で」

 

「短絡的な思考ね。今はポイントの恩恵を受けているだけ。豪遊しきった後はどうするつもり?その後で食料を集めようと思っても苦労するだけよ」

 

 

 ……?

 

 まさかと思うが、この堀北という女子高校生は気付いていないのか?

 

 どう考えてもこの豪遊が終わった後にこの無人島に止まっているわけが無いんだが?ちらっと綾小路の方を見てみるが、その無機質に近い瞳は俺の視線に反応を示さない。

 

 読めないな、しかしそうか。綾小路と一緒にいると言うことは、綾小路が共に行動する何かがこの堀北鈴音にはある筈だ。

 

 綾小路はこの少女に何を見出したのだろうか、はてさて。

 

 堀北が龍園に背を向けて去ろうとし、それを追って綾小路が去ろうとする。

 

 その前に一言伝えるために、綾小路が振り向いて桟橋に停泊した客船を見たタイミングで近づいて、綾小路に声をかける。

 

「四回目に客船で食べた林檎のフルーツは美味しかったな、綾小路」

 

「そうだな。夜には限定のメニューがあるらしいぞ」

 

「特別試験が終わったら食べに行くか」

 

「ああ、じゃあな倉上」

 

 綾小路は今度こそ少し小走りで堀北を追いかけてCクラスの拠点から去っていた。

 

 

 ____さて。

 

 

「なんだ?あの腰巾着とお友達ってか?」

 

「そうだな。それより龍園、おそらく。俺とお前で今回の試験に共通の認識がある筈だ」

 

「あ?んなもんねぇよ」

 

「お前がするなら俺はそれを邪魔しない、好きなだけするといい」

 

「何言ってっかわかんねぇな」

 

「ただ、お前が失敗するなら俺が掠め取るぞ」

 

「……くくっ、そうかよ。ならてめぇもせいぜい気を付けな、蛇は神出鬼没だからな」

 

「知ってるか龍園、蛇は天敵が多いんだ」

 

 大胆不敵に笑う龍園に背を向ける、確かにお前は神出鬼没だ、今回の特別試験で俺と争うのか、それとも争わないのか、少なくともその時が訪れるまで俺は断言する事が出来ない。

 

 気付いた時には既に毒の牙を立てている、そういうやり方を実に好みそうだ、ただどうやら、お前の矛先は既に定めているらしい。

 

 それを確認出来た事で俺は自らの行動にゆとりが出来る、そこを狙ってきそうなものだが、どう出る?良いぞ、その遊びには乗れる。

 

 まだ二日目、始まったばっかだ、言わばこれは準備期間、その間にどれだけ行動できるか。

 

 アクション。この試験でどれだけ有利に進められるかは、偏に行動力だろうか。

 

 まあ最も、誰よりも行動したものが勝てるかどうかは、最後までわからないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倉上くんっ!堀北さんに失礼な事言ったでしょ」

 

「誤解だ」

 

「今日一日重いもの運ぶ刑です!わかった?」

 

「嘘だろ」

 

 

 一之瀬に怒られた、これで二回目か三回目なんだが、このやりとりも慣れてきた。

 

 いや、慣れたくない、何が悲しくて実年齢13、4離れた女子高校生に怒られなければならないのか、確かに少しばかり非は認めても良いかもしれないが。

 

 嘘である、絶対俺のせいじゃない、どう考えても愛想の無い女子の方が悪い。どう考えてもデレが無さそうなあの黒髪の女子が悪い、俺は悪くない。

 

 ……いや特定の男子にはデレそうだが、その特定は俺では無さそう、別にそんなイベントは求めてないので良いのだが、姫野一筋なのでね☆

 

 まあ、甘んじて受けようではないか、こんな事もあろうかと入学前にそこそこ鍛え用意した筋肉をここで使わないでどうする……ッ!

 

 さぁ、俺に指示を寄越せ____一之瀬ッ!

 

 

「あ、じゃあ倉上くん、こっち手伝ってください」

 

「……はあ」

 

「ため息?!」

 

 

 何が悲しくて白波に顎で使われなければならないのか、魔法使いは悲しんだ。

 

 いっそ魔法で豪邸でも建てようか、俺は建築士ではないが一級建築士並みの豪邸を建てることが出来るぞ、具体的には再現魔法を使う、これは俺が見た事のある物体、現象を再現し、そこに存在させる魔法だ。

 

 過去俺はこの魔法を使って何かとケリたがるスイーツ系お姫様の豪邸を建てたことがある、いやあ思い出すとあのケリ技は魔法染みていた、いやもう魔法だろあれ。

 

 なんか知らんけどドラゴンみたいなのも現れたし、一瞬異世界に飛ばされてたのかと思ったぞ。

 

 まぁそんな話は良いだろう、今月魔法使えねーし。

 

「所で進捗どうですか?」

 

「この特別試験中は無理そうだ」

 

「ヘタレ?」

 

「は?」

 

「嘘です嘘です、その握り拳を収めましょう倉上くん」

 

「はて、なんのことやら」

 

 そういうと逃げるようにどっかに行った、まるで兎だな、まぁ実際の兎は凶暴だったが、そう考えると全然兎じゃねえな。あれはもうそういう一種の動物かもしれん。

 

 しかしまあ、気に入ってはいる。30年間、あのタイプとは関わることはなかった、意外にも話の相性がいい、星之宮先生と似た感じだ、より俺の、魔法使いとして歩んだ人生とは違う、“あったはず”の自意識を引き出してくれているように思える。

 

 そう考えれば、この高等学校で作ることの出来た友達(・・)は俺にプラスとして左右していると言っていい。

 

 Aクラス、Cクラス、おそらくDクラスにも無い、この独特の雰囲気は一之瀬による尽力が多いが、それを抜きにしても人格者の多い生徒が集まった結果、相乗効果として魔法使いである俺にも影響を与える程だ。

 

 この先次第だがこのBクラス______

 

 

 そこまで考えた後に軽く笑った。

 

 

「……何笑ってんの」

 

「おお姫野、何でもない。何かようか?」

 

「あれ、やって」

 

「任せろ」

 

 

 うおおぉぉぉお!俺は馬車馬魔法使いライダーだぜ!ヒュイGO!!!

 

「倉上くん!今です!」

 

「秘技____光魔法、かっこいいポーズ!」

 

 説明しよう!光魔法かっこいいポーズとは、光魔法の代表的な魔法で、少年誌の表紙を飾れる程かっこいい(?)ポーズを取りながら空中に浮かび、光を放ち、魔物の動きを封じる技である!

 

 なお魔法を使っていないのでただのかっこいいポーズである!

 

 

「きゃー!倉上くん、全然かっこよくないですね!」

 

「本当にかっこよくねえな!」

 

「ダサ過ぎて逆に……いや無いわ」

 

「倉上くん楽しんでるなあ〜かっこよく無いけど」

 

「ひどいポーズだね、Bクラスしか居なくてよかったね」

 

「にゃはは〜……ノーコメント」

 

 

 俺はべしっという効果音(?)と共に姫野がいた方へウィンクする。

 

 姫野はそこには居なかった。

 

 

 俺は泣いた。

 




GWもっとバズって馬車馬の如く続いて

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