ようこそしないで魔法使い君   作:ゆう31

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コンビニ前カップ麺食いは青春だぜ

 ここに10万円があるとしよう。

 

 

 ……いやまあ実際10万円となんら変わらないポイントを今さっきもらったのだが。

 

 プライベートポイントって言うらしいこれはどんなものでも何でも買えるらしい、断言はしてなかったけど多分合ってるだろ、如何にも怪しんでくださいって感じで話してたし。

 

 ただ疑問に思った人がクラスの半数ぐらいだったのが意外だったな、普通の高校生ならこういうイベントは好みなんじゃないのか?うーん、いまいち高校生がわからないな……魔法使い高校生の思考ならめちゃくちゃわかるのだが。

 

 まあそれはともかくとして、今日は10万ポイント振り込んだよーって話でホームルーム終了、確実各々好きにしてねとのことだ。

 

 さて何しよっかな?いやまあもう決めているのだが。

 

 

「姫野、この後一緒に学校を回らないか?」

 

「嫌」

 

「確かに歩くのは疲れるかもしれない、だから疲れたら俺の背中に乗ると良い」

 

「そこじゃない、あんたと居るのが嫌なの」

 

「なるほど、確かに俺は容姿に優れてない上に、思考回転もそう早くない、同性異性から見ても平均的な男子高校生だろう」

 

「あんたが平均的な男子な訳ないでしょ」

 

「褒めてくれたのか?ありがとう、良い子だな姫野」

 

「っ〜〜〜!なんなのこいつ……!」

 

「倉上直哉だが」

 

「知ってる!」

 

 

 おお、覚えていてくれたか、いやあ一向に名前を呼ばれないからてっきり嫌われたのか、忘れているのかなと悲しみそうになったがそうではないらしい、やったぜ。

 

 ……ん?姫野と話している視界の隅に、誰かが教卓に立ったのを目撃した、ストロベリーブロンドのたわわがハンパねぇ美少女だ、美少女過ぎてちょっと近づけない……。

 

 姫野も負けず劣らずだけどな、何というか姫野は話しやすいのである、相性の良さかな。

 

 まあそれは置いておくとして、あの高校生は何かするのだろうか?

 

「はいっちゅうもーく!ごめんみんな、少しだけ私の話を聞いてもらって良いかな?」

 

 ふむ、かわいい、異論を唱える人がいないのを確認した後にその高校生は話を切り出した。

 

「ありがとう、これから三年間一緒に過ごして行くから、自己紹介をしたいなって思うんだ!強制はしないけど、その方が仲良くなれると思うし、どうかな?」

 

 その言葉に大多数が賛成の意を示した、勿論俺も賛成する、なんて素晴らしい提案なのだろうか、この自己紹介を有効活用すれば友達が増えるのは明白だ。

 

「先ずは私から!私の名前は一之瀬帆波、呼び方はどっちでもいいよ〜!仲良くしてくれると嬉しいなっ、三年間よろしくねっ、みんな!」

 

 よ、よし、俺の番になったらやってやるぞっ……と俺が奮起しているとしれっと教室から逃げ出そうとしている姫野を見つけた、おおすごいな……意識を逸らす魔法でも使っているのか?誰も気付いてないぞ。

 

 もしかして姫野は魔法使いなのか?魔力的なアレは感じなかったが俺が感じてる魔力と姫野の魔力が違う可能性もあるしなあ。

 

 いやでも魔法にしてはお粗末だ、意識を逸らす魔法なら存在している認識すら逸らす事はしないのだろうか、もしくは透明になる事は出来ないのだろうか?

 

 うーん、やっぱ魔力的なアレは感じないし、気の迷いか……姫野が魔法使いなら共通点が見つかってもっと仲良くなれるんだけどなあ。

 

 あ、俺の番だ。いっちょやったるぜ。

 

 

「俺の名前は倉上直哉、得意な事はまほんんっととまぁ特にない、苦手なこともない、青春しに高校生になったから、俺と一緒に青春しよう、三年間よろしく!」

 

 

 ……?

 

 何故黙るのだ。

 

 

「そっか!よろしくね倉上くん!」

 

 おお、一之瀬からよろしくされたぞ、こんな可愛い美少女によろしくされるなんて高校生活はなんて最高なんだ……っ!

 

 自分の思考を陽キャにする魔法を使ってないから正直、失敗するかもしれないと思ったが別にそんな事はなかったな!

 

 そんなこんなでまばらな拍手と共に、俺のパーフェクト自己紹介は終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 自己紹介を終えた後俺は姫野か綾小路を探すついでにこの学校を見て回る事にした。

 

 なんか青春っぽいイベントが起きるかもしれないし、敷地を知る事は大事だ、例えば急にカラオケに現地集合で!と言われた時、カラオケの場所がわからなかったらどうしようもないし。

 

 学食以外にも喫茶店や、ゲームセンターなどを知るのも青春だろう。

 

 ……ちょっと冷静になって考えてみるが、この高等学校は普通の高校なのだろうか?多分違うと思う、なんか小説とか漫画でみた青春系のやつで勉強した知識と齟齬がある。

 

 まあ、それならそれでいっか、この学校で青春するって決めたの俺だし、俺におすすめって紹介された学校だし、なんか有れば最悪魔法使えば全部解決するし。

 

 時戻しの魔法はかなり複雑で難解だけど半年ぐらいアホほどアホになるぐらいしか支障ないしね。

 

 そんな事を考えながら歩いていたら、なぜかカップ麺を片付けている綾小路を発見した、おいおいまさかコンビニ前でカップ麺を食べたのか?

 

 

 こいつ……っ青春してるッ!

 

 ちょっと悪ぶってコンビニ前でカップ麺啜ってやったぜ、へへっって感じのちょい悪系イベントを消化したってのか!俺より先に!

 

 なんて奴だ、もしかしたら綾小路は魔法使いである俺より高次元に立つ存在なのかもしれない、こうしてはいられない……っ!俺もそのイベント、乗らせてもらう!

 

 

「倉上?奇遇だな、手伝ってくれるのか?」

 

「当たり前だ、友達だろ」

 

「友達……オレと、お前がか?」

 

「ちがうのか?」

 

「いや、嬉しいよ倉上」

 

 お、今ほんの少し僅かにマジで全然わからないぐらいにだけど口角が上がった気がするぞ、俺も嬉しいぜ綾小路、お前みたいな“わかってる”奴が最初の友達で。

 

「……倉上は無料の商品を見たか?」

 

「学食で見たぞついでに食べた」

 

 味はそこそこ、味噌汁が一番美味しかったな……正直あれが無料で食べられるなら全然それでいいけど、俺の場合魔力足りないで使った魔法の代償的なやつで口の中の感覚ぶっ壊しちゃったからなあ。

 

「ま、まじか」

 

「コンビニにもあるのか?無料商品」

 

「ああ、何でだろな」

 

「ポイント節約か無くなった時の救済措置だろ、来月10万ポイント貰えるとは限らないし」

 

「……そうなのか?」

 

「ん?来月も10万ポイントくれるってBクラスの担任は言っていなかった筈だけど、そっちは違うのか?」

 

「いや……言われてみれば、そう明言されてる訳じゃないな」

 

 やっぱDクラスもそうなんだ、じゃあ確定かな。まあ毎月全クラスの生徒一人一人に10万も国家のお膝元だとしても流石に無理だよな。

 

 電子機器に魔法使ってみたことあるしこのポイントの数値も変動出来そうだけどなんかそれやるとお金に困った男子高校生の青春!って感じのが出来そうにないし、やらんとこ。

 

 使い過ぎなければいいでしょ、流石に来月1ポイントも渡されないって事は無いだろうし。

 

「そう考えれば、もしかしたら何らかの行動でクラスに渡されるポイントが変動するかもな」

 

「おおすごいな綾小路、今すごい青春してるぞ俺たち」

 

「本当か?これが青春なのか?」

 

「そうだぞ、楽しくなってきたな」

 

「そうか、俺は楽しんでいるのか……?」

 

 うーんなんだろう、今まであんまり楽しい事がなかったのだろうか?俺は中身30代の非合法男子高校生だが、綾小路は中身10代の合法男子高校生の筈だから、それは少し悲しい話だ。

 

 よし、友達らしくそれでいて年上らしく、ここは年長として綾小路を楽しませてやろう、俺によく尊敬している上司がやってくれた事と同じことを今日はしてあげようではないか。

 

 それはつまり……娯楽である!

 

「この後暇ならカラオケで歌うぞ綾小路」

 

「おう、行こう倉上」

 

 いい返事だ!待ってろ青春!100点目指して頑張るぞ綾小路!

 

 

 

 

 

 

 綾小路とカラオケに行ってそこそこ楽しんだ後、綾小路とは別れて俺はスーパーに来ていた。

 

 それにしても綾小路、採点機の採点方法を熟知しているんじゃないかと思うぐらい完璧な音程とテクニックのバランスだったな、将来は歌手を目指して……るにしては棒読み感は拭えなかったし、それはないか。

 

 個人的に一番の収穫だが、歌う時は魔法で声帯を好きに変えて歌ってたのが影響したのか、魔法を使わなくてもそこそこに歌えた事は嬉しかったぜ。

 

 さて何故スーパーに来たかというとそれは勿論自炊の為である、俺が知る中でもごく僅か、魔法では代用の効かない物が料理なのだ。

 

 魔力で作った料理は食べられる事は食べられるし、その料理を食べた時と同じ味を再現出来るから美味い。

 

 だが魔力で作ってるからか、一切の栄養素が含まれていないし、腹も膨れる訳じゃ無い、これだけは俺も魔法と同等に妥協しなかった、そしたら立派に自炊が趣味になったのである。

 

 

 さーて今日は何を作ってやろうかなあ……おや?スーパーにも無料商品があるのか、今日が賞味期限なら全然保つんじゃ無いか?まあ俺の今の気分はビーフシチューだがはてさて。

 

 食品を物色しているとふと、見たことのあるツインテールがひらひらと前を歩いていた、背後から見てもわかる、これは記念すべき二人目の友達、姫野だろう。

 

「奇遇だな姫野」

 

「ひゃ!……あんたか、話しかけないでよ」

 

 

 何だ今の可愛いな、びっくりしたのか?今度も背後から声をかけようかな、でもちょっと罪悪感を感じたので次はやめようかな、どうしようか。

 

 いやいや、今はそうではない、話しかけた以上話さなければな。

 

「姫野は自炊をするのか?」

 

「何、しちゃだめなの」

 

「いや全然、何作るんだ?」

 

「言わない」

 

「食材のラインナップを見るに肉じゃが辺りか?なるほどな」

 

「うわきも……」

 

「ちなみに俺はビーフシチューを作ろうと思う」

 

「あっそ」

 

 むむ、食いつきが悪い気がする、もしかして姫野は俺との会話を楽しんでくれていないのだろうか、いやそんな事は無い。

 

 確かに見た目は兎も角中身はおっさんではあるが、若返りの魔法で精神も年相応になっているならば、今の俺は肉体精神共に高校生と言っても過言では無い。

 

 ……この年の俺の会話力の無さはまあ、否定できないが、いやしかし……。

 

「ところで姫野、これは提案なんだが、奢るから一緒に飯を食べてくれないだろうか」

 

「やだ」

 

「待て、俺の料理スキルは五つ星シェフにも負けないと自負しているぞ」

 

「あっそ」

 

「まあ今日が無理なら明日、明日が無理なら明後日でもいい」

 

「だから、そういうの嫌いなの!私以外を誘いなよ」

 

「今一番仲が良いのは姫野と綾小路しか居ない」

 

「じゃあその綾小路って人を誘えば良いでしょ」

 

「よしわかった本音を言おう、今一番気になっている女の子と仲良くなりたいから姫野を誘っているんだが」

 

「は、はあ?!」

 

 タイプです。

 

 女の子と一緒に夕飯を食べる、これは青春ポイントが非常に高い、プライベートポイントで例えるならそれこそ10万ポイントは下らないだろう。

 

 あわよくばという気持ちは否定出来ない、魔法で青春を送れなかった俺は拗れている側の人間だと自負している。近付きたい……っ!このツインテ美少女に……ッ!

 

「はあ……ナンパにしてもタチが悪いわよ、あんた」

 

「頼む」

 

「……奢るって言ったのはあんただからね」

 

「お、おお、良いのか……?」

 

「一回きりだから、わかった?」

 

 よっしゃああぁぁ!!!初めて魔法を使わないで上手く行ったぜ!シャア!俺もやれば出来るんじゃねーか!

 

 魔法ありなら会話誘導なり思考誘導なりギアスなりなんなり出来たがそれが一般的な高校生同士の会話では無い事は流石の俺でも理解できるし、魔法使うの原則禁止だし、よかった……ッ!

 

 いやあこれでだめならもう思いつかないから諦めようと思ったがこれは脈アリと思って良いか?良いな!やったぜ、絶対姫野の胃袋掴んでやるからな……!

 

「期待してくれ、俺の料理は父親曰く店を出せるとお墨付きだからな!」

 

「はいはい……はぁ、入学早々何でこんなやつに……」

 

「可愛かったから」

 

「黙って!」

 

 しゅん……ごめん姫野、黙ります。

 

 

 入学一日目、俺は友達を二人作って気になっている女友達にご飯を振る舞うという最高の青春の第一歩を達成したのであった……!

 

 これ両親に言ったらめちゃくちゃ驚くだろうな。

 

 あ、ちなみに姫野は俺の作ったビーフシチューを黙々と食べてくれたので多分気に入ってくれたと思う、やったぜ。ついでにプリンも奢った、何なら姫野の食材も奢った。

 

 そんなこんなしてたら一日で2万pp消えたが、まあ青春の為ならオールオッケー!

 

 高等学校、最高っす!




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