ようこそしないで魔法使い君   作:ゆう31

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かんそうありがとー!


4月ももう終わるぜ

 

 早いもので、入学してから三週間が経過した。

 

 四月も今週で終わるのかと思うと何となく寂しい気持ちになる、社会人時代に感じてた朝の気怠げな気持ちから始まる時も、その一日の終わりの夜には、もう一日が終わってしまったなと思ったものだ。

 

 特に魔法を研究していた時期など一月が一日より短いと感じた時もある、そう思えばここ高等学校での一日は、俺の人生の中で最も長い一日の過ごし方を更新していると言って良いだろう。

 

 さて入学から三週間、Bクラスで連絡先を知っているのは一之瀬と柴田と神崎、そして姫野と四人だ。姫野以外の連絡先を知っていなかった二週間前と比べればこれはとても快挙と言っていい!

 

 まあプライベートポイントを節約する為、姫野以外のBクラスの生徒とは未だに遊んだ事はないのだが、五月になればそれも解消する筈だ、楽しみだぜ、ボウリング大会。

 

 いや、ビリヤード大会でも良いな……カラオケでもいい、とにかく集団との遊びの予定がいつ来ても良いように空けとかないとな……!

 

 他クラスの友達?綾小路だけだが。

 

 Cクラスの生徒らしき人物とは出会いはあったのだが図書館の道案内程度だったし、Aクラスのスキンヘッドの男とぶつかった時は互いに軽く謝った程度だし。

 

 ああでも、杖を持った女の子とは少し会話はしたなあ、棚の上にある物を取ろうとしてたんだけど難しそうにしてたから手伝ったぐらいだ、その日は綾小路と遊ぶ予定があったから話もそこそこにしてしまった。

 

 チャンスを逃した気がするが、まあ五月にまた会う機会があるだろう、五月にないなら六月とか。

 

 しかし……ここに来て心底思った事がある。

 

 

 俺は今まで魔法を使った生活を過ごしていた、何か困る事は全部魔法を使えば大抵解決したし、自分の持っている手段を使わない理由もないし、俺自身は依存していたつもりはないが、こうして魔法を使わない生活をしてみて改めて気づく。

 

 俺、魔法にめちゃくちゃ依存してたわ。

 

 誰か探すときは探知魔法、水がない時は水魔法、歩き疲れたら肉体回復魔法、眠気を感じたら覚醒魔法と、言ってみればキリがない。

 

 改めて高校生活を過ごして漸く、俺は魔法の使えない人間の気持ちを少しだけわかった気がする、思った事が出来ない不便さは多々あるものの、だからこそその分達成した時の気持ちの上がりようは計り知れない。

 

 入学前から魔法を使う制限をした事は正解だった、そうでなければ人を探してる時のあの手探りの時間も、授業の答えを考える思考も、人と話す時、どう話そうか何を話そうか考える時の楽しさなども、味わえなかっただろうし。

 

 魔法は便利だが便利過ぎる事を心から理解出来た、そして本来、こんなものは人間に必要ないのかもしれない事も考え始めている。

 

 だからと言って俺の生まれ持ったこの、ある意味“力”と言えるコレを手放そうとは思わないけど、魔法ありきで物事を考える癖は抜け出した方が良いのかもしれないとは思い始めている。

 

 ふとした時の会話に「いやそれ魔法で解決しようよ」と考えてしまうぐらいには、魔法に頭をやられている事につい最近になって自覚したのだ。

 

 

「おはよう姫野」

 

 返事はない、三週間毎日欠かさず姫野におはようの挨拶をするが未だ返ってきたことはない、いつかおはようの挨拶を返してくれる時が来たらその日を記念日にするのも良いかもしれない。

 

「姫野、そろそろ5月だけど学校には慣れたか?」

 

「別に」

 

「俺はまだ慣れないな、学校自体が新鮮で毎日浮ついている」

 

「なにあんた、不登校だったの?」

 

「ん?ああ。あー、まあ、うん……興味あるか?」

 

「は?別に興味無いし」

 

 あぶねー、馬鹿正直に「若返りして高校生活送ってます」とか言えないし、高等学校に来る前は何してたの?とか聞かれても何も言えないんだよな。

 

 俺の中学時代とかもう全然覚えてないし、唯一覚えていることと言えば、空を飛べるようになったのを同級生に見られかけた時のあの瞬間ぐらいだ。

 

 あの時は焦って途中で魔法解除して地面に衝突して死にかけたのは良い思い出だ、全身の複雑骨折ぐらいだったから魔法で直ぐに治せたけど、うん。めちゃくちゃ痛かった。

 

「あ、そうだ姫野、ポイントどれぐらいある?」

 

「教えない」

 

「俺は3万ポイントぐらいなんだが、もし5月に1ポイントも振り込まれなかったら今後奢る事は出来ないかもしれない」

 

「別に奢って欲しいなんて一言も……って、え?何、その話」

 

「いや、そのまんまだが」

 

「5月になったらまた10万ポイント振り込まれるんじゃないの」

 

「ん?星之宮先生は10万ポイントを振り込むとは言ってなかっただろ?」

 

 そう言うと姫野が猜疑的な目を向け始めた、え?何かおかしな事言ったか?いやそんな筈ない。

 

 入学初日にSシステムの事やプライベートポイントの説明をしていた時、俺の記憶が正しいなら星之宮先生はポイントが振り込まれると言っていた、10万ポイントを振り込むとは言っていなかった筈。

 

 俺の記憶違いか?いやいや、そのあと綾小路とその事で話した時も、綾小路の所の教師も同じようなことを言っていたと言っていたし、間違ってない筈。

 

「おはよう姫野さん、倉上くんっ、今の話、私も混ぜてくれて良いかな」

 

 一之瀬がやってきた、あいも変わらず美しいプロポーションで大変俺の目の保養に貢献してくれている、それにしても今の話?ポイントのことか?まあ別に良いけど。

 

「おはよう一之瀬、別に大した話じゃない、5月にポイントが振り込まれなかったら奢れないから了承してくれって話してただけだ」

 

「んにゃ?1ポイントも振り込まれないなんてあるのかな?」

 

「多分流石に無い、でも10万ポイントが振り込まれるとは星之宮先生は言っていなかった筈だぞ」

 

「……ああ、そうか、確かにあんたの言う通りだ」

 

「あ、そっか!星之宮先生、ポイントが振り込まれるって言ってたけど、何ポイントかは言ってない!」

 

「でもそれに気付いたなら、何ポイント振り込まれるのか、あんたは聞いたりしなかったの?」

 

「……なるほど確かに」

 

 あー確かに、言われてみれば聞いてみれば良かったな、でも別に大したことじゃ無いだろうし良いかなって思ったのも事実だ。

 

 この学校には無料商品が存在する上に、寮などの家賃も無い、無料なのは食事に留まらず、無地のTシャツなんかもそうだった。

 

 衣食住のライフバランスが最低限保障されているなら、まず間違いなくこの三つの観点から苦しむ事は無いだろうし。

 

「まあ最低限3万ポイント前後は振り込まれる筈だ」

 

「にゃるほど、どうしてそう思うのかな?」

 

「社会人の平均的な娯楽に使う金額が3万程度だからだ、この学校は衣食住は無料で使えても娯楽はそうじゃない、だからまあそう予想した」

 

「なるほど、でも5月のポイントがどうであれ、この事みんなに伝えないとね、少し遅いかもしれないけど、無駄遣いしないようにって注意したほうが良いと思う!」

 

「ああそうだな、じゃあ任せた一之瀬」

 

「ふぇ?自分で言わないの?」

 

「え、なぜ。クラスの中心は一之瀬だろ、一之瀬が気付いた事にしてホームルームの後に話せば良いんじゃないか」

 

 それにちょっと俺、みんなの前に立つとか……恥ずかしいので……。

 

 それに俺が言うより一之瀬が言った方が「一之瀬が言うなら」って納得すると思うんだけど、それに俺は無駄遣い推奨派なので、もう既に7万ポイント使ってるし、いやまあ半分ぐらいは姫野に使ってる気がするけど。

 

 別にそれはいいんだ、俺が良かれと思って使ってるし、ただまあ5月からは流石に控えよう、使い過ぎてるのは事実だからな。

 

「あははー……クラスの中心って、思った事はないけど、わかった!私から言うねっ!それから倉山くんも、無駄遣いしないようにっ」

 

「善処しよう」

 

 ちょうどホームルームの時間もそろそろだ、一之瀬は俺と姫野との会話を終わらせて自分の席に戻った。

 

 さて、俺も一限の準備始めとくか……と思ったけど、何やら珍しく姫野がまだ俺の方に体を向けていたので、何か話があるのかもしれない。

 

 おぉ……朝にここまで姫野と会話が続けられるとは、ありがとう一之瀬、会話に参加してくれて。

 

「……あんたさ、ポイントの事気付いてて私に奢ってたの?」

 

「ん?ああまぁそうなる、それがどうした?」

 

「どうしたって、あんたの話が正しいなら、5月に1ポイントも振り込まれないかもしれなかったんでしょ」

 

「そうなる、だから5月が近づいてきている今、奢る事は難しいかもしれないので話したんだが」

 

「そこじゃない、自分に使えるポイントが減るのになんで私にポイントを使ったの」

 

「え、いや、惚れてるからかな……」

 

「は、はぁ……?!まだ言ってるのそれ」

 

「事実だし……冗談だと思われていたのか?」

 

 そう言うと姫野が呆れと羞恥が混じったようなちょっと俺の心のくらっとくるバカ可愛い表情で固まった。写真撮りてえ。

 

 好きでもないのに奢るわけないだろ、別にお人好しじゃないし、俺なりのアプローチのつもりだったんだけど全然響いていなかったと言うのか?まじかよ。

 

 それにポイントの入手方が月一の振込みだけとは限らないし、水泳の授業の時がそうだったように、期末テストとかで好成績を残せばポイント貰えるかもしれないしな。

 

 テスト以外にも何かありそうだから、5月からはその辺をトライアンドエラーしていこうと思ったのもある。

 

「大丈夫だ、姫野からポイントを借りる事は絶対に無い」

 

「そんな心配してない……はぁ、なんなのよもう……」

 

「……?どうした?」

 

「なんでもない!」

 

 少し大きめの声でぷいっとそっぽを向かれてしまった、何だったんだ?まあその動作も可愛いので目の保養になったのだが。

 

 さてさて、ホームルームだ。5月ももう少し、残りも4月も青春を過ごしていくぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 ホームルームの後、一之瀬は5月に振り込まれるポイントが10万ポイントとは限らない事、その理由と、何かあった時のためにポイントの節約はする事などなどを話した。

 

 その際にその事に気付いたのは俺だと一之瀬がバラしたが、ああうんまぁ……いいけどさ。

 

 話し合いの中でBクラスの一人が「私浪費癖酷いから、一之瀬さんに管理してほしーなー!」って言ったのをきっかけに、神崎がそれならいっその事一之瀬に個人のポイントを半分預けるのはどうだろうと提案が起きた。

 

 つまり倉庫役って訳だな、ここ三週間でBクラスの大多数は一之瀬の人望を認めて、一之瀬は謙遜したり遠慮するものの、クラスの中心として頑張っている。

 

 最近ではBクラス内で役職を決めようと話していたのもあり、ほぼ全てのBクラスの人物がそれに賛成したのである。

 

 俺はそのほぼ全てから外れた内の一人だ、一之瀬がBクラスの全体の金庫番、マンションの共益費のような形式で管理するのは別に構わないが、自分のポイントは自分で持ちたいのである。

 

 余裕が出来たら個人的に一之瀬にポイントを預ける事を告げた、俺がそう言うと姫野も俺の意見と全く同じ事を一之瀬に言ってた。

 

 気が合うな、姫野。

 

 そう言うと「合わない」と言われたがあれは照れ隠しだ、本当に嫌がってるようにも思えたが絶対にそんな事はあり得ない、俺の勘と魔力がそう告げている。

 

 その議題を皮切りに、5月以降に向けて放課後改めて色々話し合おうと言う事でその日の朝は終わった、俺も参加しようと思ったけど、いてもいなくても変わらない気がする。

 

 そう思って断ろうとしたけど一之瀬だけじゃなく他の生徒からも放課後残るように言われたので大人しく従った。

 

 そんなこんなで、5月に向けての話をしたり、放課後に渾身の出来のロールキャベツを俺以外に食べて欲しかったから綾小路を呼んで食べさせたり、やけに絡んでくるロン毛を無視し続けたりしてたら、あっという間に一週間が過ぎた。

 

 5月1日、春と夏の間の始まりである。

 

 

「……なるほど」

 

 

 朝起きて早速ポイントを確認してみると、俺が思っていた以上に振り込まれていた、ただ10万ポイント振り込まれていた訳じゃなかったので、俺の予想は大方正しかった事が証明された。

 

 まあ、同じBクラスでも振り込まれる金額は違うかも知れないから、それは後で確認しないと行けないけど。

 

 では他クラスが振り込まれた金額はどうだろうか?AクラスとCクラスはわからないが、Dクラスには綾小路がいるから早速電話して聞いてみよう。

 

「もしもし、綾小路?今良いか」

 

『構わないぞ、なんだ?』

 

「ポイント幾ら振り込まれた?Bクラス……かは確定してないが、俺は65000ポイント振り込まれたのを確認した』

 

『65000ポイント……そうか、オレは、振り込まれていないか、若しくは0ポイントだ』

 

「うそだろ、まじか、え?ポイント大丈夫か?」

 

『大丈夫だ、節約してたしな、学校側の不備であって欲しいが……望みは薄いだろうな』

 

「そうとも限らないだろ」

 

『いや、Bクラスは知らないが、Dクラスはお世辞にも授業態度が良いとは言えない、普段の行いもな、それを踏まえればポイントがクラスによって変わるなら、0ポイントになるのも不自然じゃない』

 

 

 え、そうなのか?授業態度とかでポイントが変わるかもしれないとかそんな事今初めて気付いたんだが、すごいな綾小路。

 

 でも確かに考えてみれば、その可能性は全然あり得たな、今思い出してみれば、歴史の時間でふと居眠りしてしまった生徒に何やらチェックのような事をしてた気もするし。

 

 もしかして頭良いのか?顔も整ってるし、身体能力も高そうだし、優秀なのか。

 

「他クラスのポイントの確認が出来てよかった、もしポイントが危なかったら言ってくれ、食事ぐらいは持つ」

 

『ああいや、俺もBクラスのポイントを知れたしな、ありがとう、それじゃあ』

 

 綾小路との電話を終わらせた、いやしかし……0ポイント、まじか、未だに信じられない、それ娯楽費無いよな?そんなにポイントが下回る事があるのか。

 

 CクラスやAクラスはどうなんだろうか?今日のホームルームで教えてくれたりするのだろうか、しかしまああれだな。

 

 65000ポイントもくれるなら5月の姫野に充てられるポイントは問題ないな、うん。

 

 まあポイントの話をした放課後に姫野本人から「奢らなくて良い、うざい」と言われたので、自重はしよう、何かあった時にポイントは取っておいた方が良いだろうしな。

 

 

 ……何やら青春が加速するような予感がする、5月も退屈しないで済みそうだ、今から楽しみだな。

 

 さてさて、行きますか。

 

 いざ登校!早速発見!

 

 

「姫野、一緒に登校しよう」

 

「やだ」

 

「まあそう言わないでくれ」

 

「隣歩かないで」

 

「ところで前から思ってたんだが綺麗な髪色だよな、美しい」

 

「っ〜〜〜!どっか行って!」

 

 うおっ、両手で押されて物理的に距離を離されてしまった、俺の硬直の隙に早歩きで姫野が俺を置いて行ってしまった。

 

 うーん何がいけなかったんだろう?5月になっても普通の高校生が喜びそうな会話が出来ていない気がする。

 

 

 会話の勉強しないとなあ。




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