ようこそしないで魔法使い君   作:ゆう31

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うぇーい


ギャンブルは魔法使いの嗜みだぜ

 

 五月も半月が経過した。

 

 夏を感じるという表現は違うだろうが、日本が温かくなっていくのを日々感じている、つまりはそう、暑くなってきた。

 

 俺が7歳の時、陽射しが鬱陶しい上にやたらと暑い日が続いたのを魔法で克服してから高等学校に入学するまで、体温の調整を魔法で行なっていたので、暑いと感じるこの感覚を実に23年ぶりに味わっている。

 

 はっきり言って魔法を使いたいぐらいに苛々するのだが、月に一回の制約を自分でしている為、体温を調整しても一日しかこの暑さを変えられないと考えると無駄だと悟る。

 

 この暑さに耐えられる普通の人間やばすぎだろ……どうなってんだ?しかも六月、七月は更に暑くなってくんだろ?俺に最低限の一般的な倫理観が無かったら素っ裸で学校に登校しているぞ、マジで。

 

 自分で決めた事とはいえ魔法を使えない弊害がしっかりと俺の体に伝わっている、自分自身に制約を掛けた魔法を解除する魔法を使うことは出来るが流石にそれでは色々と台無しなので、我慢するけど。

 

 そうそう、テスト範囲変わったんだよね。三日前ぐらい?ホームルームで神崎が「テスト範囲が変わる事はありますか」って質問に星之宮先生が答えてた。

 

 何らかの確証を持った質問の仕方だったから、期末テストの何かに気づいたんだろうけどなんだろうね、上級生とかに聞いたのだろうか、俺は上級生とは関わっていないから分からん。

 

 まあテスト範囲が変わったとはいえそこまで影響のある範囲変更では無かったし、授業の中の範囲内なので元々勉強しているBクラスなら大丈夫だろう。勿論俺も大丈夫である、授業態度良いんだぜ、俺。

 

 そんでもってこれは俺個人の問題なのだが、プライベートポイントを増やそうと思う、というのもこの前「人をダメにするソファー」なるものを発見し、座ってもOKだったので座ったのだが。

 

 あれは魔法より素晴らしいものだ、本当にダメになった。

 

 あまりにもダメになり過ぎたものだから、たまたま通りかかった一之瀬とBクラスの明るい奴筆頭網倉に声をかけられ、ソファーから引きずり出されるまで我を失っていた。

 

 あのダメになる感覚をまた味わいたい、のであるがとにかく人をダメにするソファーは50000ポイントとま〜〜〜高かった、嘘だろってぐらい高いが在庫も少なく仕入れも限られていると言われれば納得せざるをえない。

 

 今の俺のppは70000前後、一つなら買えなくはないが姫野にもこのダメになる感覚を是非とも味わって欲しいので二つ買う必要がある、なんならあの無表情が取り柄の綾小路が人をダメにするソファーに座った時、どんな化学反応を起こすのか知りたい。

 

 よって三つ買うとして、15万ppを至急手に入れなければならない、あれを狙っている輩は多い、今月中に買わないと無くなってしまうかもしれないのだ。

 

 さてここでプライベートポイントをどう増やすかといった話になるのだが。

 

 正攻法で行くならテストの結果や部活などの、学園側から用意された試験にクリアする事だろう。

 

 ただこれだと仮に15万ppを達成出来るとして時間がかかる、よって今回は除外。

 

 一之瀬が預かっているppを借りるのも一応あるがまぁ普通に考えて無理なので除外、上級生などに頼み込むのも手だが上級生に知り合いが居ないので除外。

 

 となるともう正攻法で打てる手はないと言って良い、まあこれらのやり方考え方はあくまで正攻法。やり口を変え、邪道で15万ppを増やすのなら話は変わってくる。

 

 パッと思いついただけでも何通りかはあるが、時間もかからず今日明日にでも集められるとするのならやはり、ギャンブルに限るだろう。

 

 競艇、競馬、競輪と魔法使いなら誰しもが嗜むギャンブルがこの高等学校で出来たなら良かったのだが生憎、そうした賭け事は認められていないようだ、かなしいかな。パチンコもスロットもないし一体どうなっているんだ。

 

 ……いやそもそも高校生がそういったのに手を出すのがあかんのか、俺のこの30代おっさん魔法使いの考え方が間違っているのか。

 

 ギャンブル以外ならAクラスの生徒5人ぐらいにあの手この手で脅したり何なりしてppを増やす手もあるが、個人的すぎる買い物の理由で脅しを決行するのはなあ。

 

 Bクラスの評判も悪くなると考えるとちょっと手が出しづらい、確実に一之瀬に怒られるし姫野の印象も悪くなるだろうし。

 

 これが海外のスクールライフならまだしも、ここ日本だしね、ほどほどにしようほどほどに。

 

 とまあそんな訳で話を戻してギャンブルである。

 

 

「ん、一年生か?どうしたこんなとこ来て、迷子か?」

 

「ここ、ボードゲーム部で合ってます?」

 

「合ってるぜ、もしかして部員希望者か?それなら俺から顧問の方に言って来ようか?」

 

「あーいやそういう訳じゃないですけど、所で先輩、部長だったりします?」

 

「お、わかっちゃう?溢れ出てるのかな、部長オーラって奴」

 

 いや全然そんな事ないしなんなら冴えない一般部員だと思ってたけど、いやまあ、言わんとこ。

 

 しかしまあ部長が居たのは運が良かったな、無駄に時間をかける必要も無くなった。

 

 ボードゲーム部なら基本的な勝負毎に使う競技性のある遊戯はあるだろう、まず間違いないだろうが、はてさてどうかな。

 

 

「それじゃ先輩、やりません?例えばチェスとか」

 

「……へー、でもチェスはこの前痛い目遭ったから別のにして良いか?」

 

「何でも良いっすよ、勝つんで」

 

「おおっ自信満々だねえ、そんじゃあクアルトとかどうかな、三戦勝負。ルール知ってる?」

 

「ああまあ、やった事あるんで」

 

「経験者か、珍しいね」

 

 スイスの数学者が考えたユニークな二人用のボードゲームだ、4×4の盤上に交互にコマを置き、共通の属性を持つコマを4つ一列に並べてクアルトと宣言したプレイヤーが勝者となる。

 

 白か黒か、高いか低いか丸か四角かあるいは、穴が有るか無いか、そのどれかでも四つ揃えれば良い。

 

 このゲームの面白い所は、対戦相手がプレイヤーの置くコマを選べるという所だ。

 

「一応聞いておくけど、普通にやる?」

 

「まさか、どれぐらい余裕あります?」

 

「30」

 

「ならそれで」

 

「おいおい、足りなかったら君の友達からも貰うよ?」

 

「負けないんで大丈夫ですよ」

 

「へえ、俺強いぜ?部長だし、特にこの手のゲーム得意だし」

 

「そんなに強い部長ならぽっと出の一年に負ける筈無いんで、更に毎月2万pp渡し続ける契約も結びますか?」

 

「……舐められたものだな、なら君が負けたらその逆だ」

 

 食い付いた、本当に自信があるらしい、賞でも取ったか?まあどれでも良いか、それより早く始めたい。

 

「それでやりましょう、あ。契約書類はありますか?」

 

「あー良いよめんどいし、その代わりに録音取ってそれを証拠にしよう」

 

「録音?なるほどね、それもありですね」

 

「それじゃあ、本当に良いんだね?」

 

「良いですよ」

 

 

 その言葉を皮切りに、先輩はニヤッと笑った後クアルトの準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 普通にやれば俺が負ける。

 

 相手のフィールドで、さらには言葉の節々に絶対の自信がある事を隠してもいない。まず自分が負ける筈が無いと思っている人間だ。

 

 一勝ぐらいなら何とか取れるかもしれないが二勝は無理だろう、俺自身はクアルトのプロって訳じゃない、何回かやっただけの素人に毛が生えた程度だ。

 

 

 だからまあ、使います。魔法。

 

 

「先ずは一勝ですね」

 

「ラッキーだな、次はどうかな」

 

 最初からこうするつもりだった訳ではないのだが、どう見積もっても魔法無しで勝てそうにない、経験や知識と行った点でもそうだが、何よりこれで負けた時の事を考えた時が恐ろしい。

 

 負けた時のリスクがあるからこそギャンブルなのだが、今回に限って俺は本気を出す事を決断した。

 

 これに勝てば30万ppに加えて月の2万ppが約束される、先程ボイスレコーダーで契約書代わりにしたのでまずこれは反故されることはない。

 

 それを差し引いても上級生が下級生に負けて、尚且つその際に契約した内容を破棄したという事実の方がこの先輩にとってまずい事になるだろう。

 

 人をダメにするソファーは俺に魔法を使ってでも欲しいと思わせてしまったのだ、悪く思うなよ先輩、人ダメにするアレが悪い。

 

 四角形の駒が四つに並ぶ。

 

「やりますね、先輩」

 

「余裕じゃん後輩、次負けるとわかってる?」

 

「それは先輩もですよ」

 

「おっと、そうだったね」

 

 駒の置かれる音が場を支配する。

 

 クアルトの性質上、自分が駒を選択出来る訳ではなく、相手が駒を選択する。場に置くのは自分だが、相手が選んだ駒をどこに置くかとなると中々考えないといけない。

 

 相手に渡した駒が四つの特徴のどれかでも並んでしまったら負けになる、自分で選んだ駒で勝たれると結構悔しいもので、それがまた楽しい所なのだが。

 

 今回は遊びに来た訳じゃ無いんだ。

 

 白の駒が四つ並ぶ。

 

 

「クアルト。対戦ありがとうございました」

 

「……あ、あ!まじかよ嘘だろ?!何で俺……っあ〜〜〜!!!」

 

「迂闊でしたね」

 

「いや、何でだ、普段ならこんなミス……ッ!」

 

 しないだろうな、俺が魔法を使っていなかったのなら。

 

 俺が扱える精神魔法の種類はそれこそ俺の生きて来た経験分種類があるが、その中でも違和感のなく、それでいて俺が確実に勝てるように出来る魔法がある。

 

 思考誘導魔法。

 

 相手の思考を誘導する魔法とまあそのまんまなのだが、今回のボードゲームのルールを踏まえた上で一番相性の良かった魔法であると言える。

 

 この三戦、接戦を演じて一対一の状況を作り、最後に致命的なミスをするように誘導させた。

 

 俺がそうした事に先輩が気付く事はない、後に何で俺はこう思ったんだ?という疑問だけが残る、俺の精神魔法はそういう魔法だ。

 

「払ってもらいますよ先輩」

 

「あーくそ、また一年に……わかった、わかったから少し待て」

 

 また?俺以外にも先輩に挑んだ挑戦者が居たのか、そういえばチェスで痛い目を見たと言っていたが、それか?

 

 まあそれは今は置いといて、これで人をダメにするソファーが買えるぜ!しかも三つ買ってもあと三つ買えるぐらいに余裕が出来た。

 

 前に気になっていたモデルガンでも買おうかな、うーんでも散財しまくってるのをBクラスの生徒に見られたら変に思われるかな。

 

「ポイント渡すから端末見せろ」

 

「はい、2万ppも忘れないでくださいよ」

 

「くっそ〜〜〜……納得いかねえ……」

 

 

 ……よし、しっかり反映されてある。それに先輩が卒業するまで月に2万ppの大きいお釣りも貰えた。

 

 これで五月は魔法を使えなくなったが、魔法を使ってこの結果なら上々だろう、姫野に魔法でオーロラを見せる計画は次の機会にしよう。

 

「あ、そうだ先輩、先輩が一年生の時の期末テストの写しとかあります?」

 

「は?あぁ、そういう事。あるけど5万pp寄越しな」

 

「高過ぎません?1万ppぐらいでしょ、普通」

 

「いーや高すぎないね!まぁ4万ppぐらいにまけといてやるよ」

 

「じゃあボドゲで決めますか、ついでに敗者は一つ何でも言う事を聞く条件をつけて」

 

「ああ言えばこう言うな君!?わかったよわかった、だけど1万5000ポイントだ、小テストも付けとくから」

 

「じゃあそれで」

 

 

 まあこれは有っても無くてもどっちでも良いんだけどね、Bクラスなら期末テストの範囲で退学者が出るとは思わないし。それに上級生が一年生の時の期末テストと、今の一年生の期末テストの範囲が合ってるかどうかは賭けだし。

 

 仮に合ってなくても去年はこういうのが試験として出たんだって事で傾向と対策が練れるから、まるっきり無駄になるかと言われればそうでは無いけど。

 

「ったく……お前Aクラス?」

 

「いやBクラスですけど」

 

「へー意外、南雲みたいになりそーだな」

 

「南雲?どういう意味ですか?」

 

「知らない?二年Aクラスの時期生徒会長候補、元々BクラスだったんだけどAクラスに上がった奴」

 

「へー……いやでも俺、金髪のイケメン嫌いなんで」

 

「なんだ知ってんじゃんかよ」

 

「たまたま見たんすよ、そんな人だとは知らなかったですけど」

 

 

 さて……得れるものは十分以上に得れた。

 

 今日はもうここに用は無いだろう、個人的にボードゲームをしにまた来る事はあるかもしれないが、今度は本気でやることはないな、純粋に遊びに行くかも。

 

 魔法を使わないでこの部長に勝てるように全力を出すのも面白そうだ。

 

「それじゃ、先輩。ありがとうございました」

 

「おう、そんでもってこれは忠告。南雲雅に気を付けな、付くなら学にしとけよ」

 

「学?生徒会長の事ですか?」

 

「そう。俺のダチ」

 

「へー……わかりました」

 

 対立構造が起こってるのを知れたのは思いがけない収益だな、いやあえて教えたのか?まぁ何にせよこの情報は今はいいだろう。

 

 今俺の頭の中にある思考は早くソファーでダメになりたいただ一つだ。

 

 さっ、ダメになりに行くか。うへへ〜〜〜ダメになるソファー、ゲットだぜ!

 




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