OMEN of STORM   作:あしゅけーね

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「にーんーむーかんりょー!!!」

 鋼の少女が医療室へと入って来る。大きな声を上げて。

「ってあれ?壊れてる?」

「ああ、昨日の試合でな」

「それは残念。直したい?」

「えっ、まあ、それは。直るのか?」

 機械の少女が頷く。

「あっ、あー。こちらララミア。目標と接触したよー!機械部分が壊れちゃってるけど」

『了解。直せそうか?』

 少女のものとは違う声が響く。長距離通信ができるのか。こちらの世界では珍しい。

「うーん、私でも大丈夫だとは思う」

『そうか。では修繕はそちらに任せた。一応我々もそちらに向かうから無理だと判断したらこちらに任せ給え。座標を送ってくれるかな』

「りょーかい。ポチッと!」

『届いた。ではまた合流した後に』

 通信が終わったのかこちらに振り向く少女。

「じゃ、材料取ってくるね」

 そういうやいなや凄まじい速度で窓から飛び出てゆく。色々なものを吹き飛ばして。
 白銀外装……は使えないから飛んできた瓦礫を残った左腕ではたき落とす。傷口が開きそうなのだが。

「たっだいまー!!」

 出ていった時同様凄まじい速度で駆け込んで来る少女。その手にはいっぱいの機械に覆われたアルマジロを抱えている。

「それは?」

「材料」

 嬉々としてアルマジロの体から機械を剥がしていく少女。殺しはしていないが中々に猟奇的だ。

「うーん、せっかくだし傷口のところも機械にしちゃおっか」

「任せる」

「オッケー、任されたよ。えーっと……あれ、コアが使われてない。オリジンコアどころか他のコアも。まぁいっか」

 何やら不穏な言葉が聞こえる。任せるとは行ったが本当に任せて大丈夫なのだろうか。

「あ、うんうん、そーいうことね完全に理解した」

 不安だ。

 *

「よし、出来たよー!!」

 不安ながら任せること数時間。目覚めた体は以前と比べ遜色なく、いやそれ以上に凄まじいものだった。
 白銀に黒鉄が混じり合う新たな外装。心機一転、ともに一から歩み直す新たな相棒だ。


幕間ー崇拝する者、隠れ潜む者ー

「推゛し゛か゛死゛ん゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

 隣のくすんだ翡翠色の髪をした女程ではないが僕も泣きわめいて叫びたい。リーシェナ様を知ってから間もない新参者ですらこうなのだ。隣で慟哭する少女の悲しみは測り取れない。

 

「推しの急死辛すぎる」

 

 天を仰ぎポツリと呟く。

 

そ゛れ゛な゛!!!

 

 最悪なのは僕らがリーシェナ様(推し)のライブに間に合わなかったこと。そして彼女の死に目にも立ち会えず、ファンとしての責務も果たせなかったこと。

 

 言い訳をするのなら世界の裏側から三日かけてここまで来たのだ。多少遅れてしまうのは仕方ないことだったのかもしれない。でも告知がライブの三日前なのは酷いではないですかリーシェナ様。

 それでも、あと少し試練の開始が遅ければ十分間に合っていただろう。

 

「う゛ぅ〜リーシェナ様ぁ〜」

 

 そして隣で泣き喚く女もまた、旅の途中で出会ったリーシェナ様のファンの一人である。それも僕のような新参者ではなく、かなりの年季の入ったファン。左の腰にぶら下がった限定リーシェナ様ぬいぐるみがそれを指し示している。

 僕もそれ欲しいのにもう手に入らないしなぁ。

 

「まあ、でも僕らファンがいる限りリーシェナ様はいつか必ず帰って来てくださる。それまで信じて規律を為そう」

 

「ぞうだよね、うん。じゃあまずはこの最高のライブ後の景色を拡散だ!!」

 

 手に持った小さな四角いアーティファクトを構え様々な角度から写真を取る彼女を横目に大地に広がる血溜まり(最高に幸せな同胞たち)その上に立つ白黒二つの巨像(推しが生きた証)を眺める。そして見つけた。巨像の合間を縫うように飛翔する小さな小さな少女の影。

 

 ああ。彼女を打ち破り、そして認められた貴女に僕が出来る精一杯の羨望(祝福)嫉妬(呪い)を。僕らの推し(リーシェナ様)推し(福音)を受けた新たな偶像に称賛を。

 

「規律を為そう。僕ら『チーム・破壊』の規律を。すなわち───」

 

「「壊せ、壊せ、壊せ。縛られることなかれ。従うことなかれ。信じよ。果てまで終え。破壊を為せ」」

 

 変わらぬ崇拝を誓い、僕らはその場を後にする。彼女が戻るその日を伏して待ち、彼女の良さを広めていこう。

 さぁて、

 

……推しなき世界、どう生きる

 

 消えた彼女に届くように、隣にいる彼女に聞こえないようにそっと小声で呟いた。

 

 *

 

 角の生えた青年の頬が歪む。同胞を切り裂き、その血を浴びることが快楽とでも言うように。

 

《おうコラどうしたテメェら!!手が止まってんぞ!!あそこでひん剥かれてる姐さんの胸にでも目が行ってんのか!!!》

 

《で、でも酒吞、ギンセツ様が押されて……》

 

《姐さんなら大丈夫だろうよ!!それより俺らが手ぇ抜いてるなんて思われたら後が怖えぞ!!!》

 

 ルルナイ様のお力で沈黙に包まれているというのに、妖怪たちの声が聞こえてくる。これはなんの悪夢だろうか。私たちはルルナイ様について行けば安泰ではなかったのか。

 

 そうしているうちにまた一人頭を潰された。私はただ逃げ回るのが精一杯で、彼を討ち倒そうなどと到底言えるはずがない。

 

《なぁ、あんたら人間は好きやろ?》

 

 ルルナイ様と戦う妖怪がくるりとこちらを振り向き問いかける。

 

《 《 《 《 《 大 好 き さ!!!》 》 》 》 》

 

 妖怪たちの答えに驚愕する。きっと彼らの言う好きとは愛とか情とかそういうものでは無いのだろう。それが分かる程度には今戦った。

 

 けれども彼らは私を迫害し、追放した国の連中のように人間を憎むこともないのだろう。

 それを理解した瞬間、私は駆け出した。

 

《あ、おいてめぇ!チッ、これ以上遅れると姐さんに怒られるな》

 

 幸い、鬼は追って来ないようだ。命からがら走って走って、そして見た。巨大な朧山が屹立し、ルルナイ様が討たれるのを。

 今『黙する者たち』の中で生き残っているのは逃げ出した私と、一際強かった男だけ。使徒ですら混戦の中で妖怪に討たれている。

 

黙すな!空隙を満たせ!!

 

 不利を悟りこちらに追い付いてきた彼は、気でも狂ったのかただ叫び続ける。

 あぁ、うるさいなぁ。

 

「静寂あれ……」

 

 漏れた呟きは彼の叫びに掻き消され、虚空へと溶けた。

 

 *

 

 敗走。分かりやすく言うのならこの一言に尽きる。

 我々は負けたのだ。マーウィン様が聖騎士ウィルバートに負け、『安息の教団』はあのアマゾネス共に負けた。

 

 今も共に撤退する仲間は一人、また一人と潰れていく。我々も生き残れることができるかどうか。

 特に私なんぞは怪我をして動けない女信徒を抱えているのだから尚更だ。

 

「ふふっ、ウィルバート様……うふふ、共に現世に落ちましょう」

 

 熱に浮かされたように顔を赤らめ、不気味に笑う腕の中の女。正直拾ったのは間違いだったかもしれない。

 一人、また一人と殺されていく音が遠くなっていく。どうやら逃げ延びられそうだ。我々と同様逃げ延びた者も何人かいれど、『安息の教団』の規模は大きく縮小した。

 

「現世には悪しかない」

 

 だというのに騎士は何故現世にしがみつき、この女は目覚めようとしているのか。

 

 *

 

 遅すぎた。否、速すぎた。

 私たち『侮蔑の兵団』が到着する頃にはすでに侮蔑の試練は終わっていて、ガルミーユ様も倒されていた。

 

 戦いの痕跡はガルミーユ様を模った空っぽの氷像と、それから氷漬けの炎、そして周りは晴れているのにここだけに降り積もる雪。

 その中央に佇む白銀の竜少女。こともなさげに佇むその姿(傲慢)を見て、どうしても一言言いたくなった。

 

「お、おおおい、無力を知らぬ無知!!」

 

 盾に隠れて震えながら、だけど。

 

「なに」

 

「ヒィイイイ!!!!む、無力でしたぁ!」

 

 ダメ、無理、怖い。だってそーじゃん。あのガルミーユ様を倒したやつだよ?私如きが立ち向かえるわけ無いじゃん。

 

「強きが強きを食ってこそ、だ。素直にあいつの強さ称えろ」

 

 赤毛の兵団員に諌められる。称えろ、って言われても私蔑まれることしか知らないし……。

 

「帰るぞ。俺らがここにいる意味はない」

 

 そうして『侮蔑の兵団』は一人も欠けることなくその場を後にした。各々の胸に無力感だけを抱いて。

 

 *

 

「苦しみが……消えた」

 

 体を蝕む毒が消えた。すなわちエズディア様が討たれたということ。

 

「ああ、()()()

 

 突拍子もない発言。それに次いで行われる数多の自殺。私は行動を起こす気にはなれなかったが、しかしその意味は理解出来た。

 

 今まで教えにより死ぬことは許されず、辛い毒に侵される日々。そんな中で死にたいという欲求が出るのも分かるし、毒と共にエズディア様がいなくなったことで耐えねばならないという強迫がなくなりただ「死にたい」という感情のみが残ったのだからただ縋り続け、唯一残ったそれに従っただけというのも分かる。

 

 すなわち『不殺の守り人』の彼らは体が耐えている間に心が死んだのだ。

 

「ああ、滅びるから美しいのですね」

 

 そんな様を見て目覚める女が一人。ダメだ。我々の意義はそうではなかっただろう。

 

「生かす。継続せねば」

 

 死のうとする者らの腕を縛り止め、力を削いで、出来る限りの治療を施す。

 少なくともこの女のようなのが蔓延ることを阻止するまでは生きねば。

 

 *

 

「交われば恐れも消える───」

 

 そのはずだ。だが目の前の悪魔は交わることすら出来そうにない。拒まれるのだ。ヴァーナレク様の愛すら拒んだのだから、私が愛し、愛される相手ではない。

 故に隠れ潜むに限る。いずれ時が来るまで。

 

 *

 

「へぇ、良さそうな刀持ってんじゃん。置いてけよ」

 

「着ている服も良さそうだね。アタシにはちょっとちっさいけどアンタなら着れんじゃない?」

 

「……着れなかったら捨てればいい。私は奪うだけ」

 

 カゲミツ殿と共に観戦していた客席を離れ、通路を通る私の前に立ちはだかるは三人の男女。簒奪に魅入られた盗賊たち。

 

「邪魔だ、退くがいい」

 

「やだね」

 

「ならば切って退かす!!」

 

 抜刀。カゲミツ殿や抜刀者殿に比べるとまだまだ遅いが、それでも常人の目では追えない速度。そこいらの盗賊程度では避けることはおろか受けることすら難しい!!!

 

「よし、もーらい!!これはアタシのモン!!」

 

 だから驚愕した。己の一閃を避けるだけに飽き足らず、将軍より下賜された羽織を盗まれたことに。

 

「『簒奪の賊』あまり舐めんなよ?」

 

 ギリッ、と奥歯を噛み締める。

 どちらがだ。果たしてどちらが舐めている。

 頭に血が登る。こいつらの首を断ち切って晒し上げてようやく治まる怒り。

 

「隙だらけ」

 

「ヘヘ、もーらい」

 

 だからだろう。残る二人の攻撃も受けてしまった。

 これまで鍛え上げられた技と勘で刀を奪われることは辛うじて避けられたものの、袴を奪われ小袖を奪われ、残るはサラシと褌。その屈辱的な姿が齎す恥辱が、煮え滾る頭に冷静さを取り戻す。

 

 そうだ。怒りではない。持つべきは覚悟だ。そう教わり続けた。

 着物が剝がれたからなんだ。素肌を下衆に晒したからなんだ。

 

「此の覚悟は鎧に勝る!!!」

 

 再び刀を構える。ここからは何も奪わせない。真っ直ぐ前を向き、最後に残った刀を奪おうと狙いを定めている賊共を見据える。

 

「よくぞ言った、ペインレス」

 

「その覚悟、見せてもらったよ!」

 

 光溢れる一閃、流れる二刀。賊の頭が二つ、転がり落ちる。

 

「秘伝の抜刀者殿!デュアルブレイダー殿!」

 

 立ち並ぶは腕利きの侍。カゲミツ殿には追いつかないけれども、私よりは絶対的に強い御二方。

 その姿を見て形勢不利を悟ったのか残った一人は速やかに逃走を選択した。

 

「……次は奪う」

 

 私の着物を持って、奪えなかった刀を恨めしそうに睨みながら。

 

「これ着なよ」

 

 デュアルブレイダー殿の気遣いにより渡された羽織を羽織る。

 

「では急ぐので!!失礼します!!!!」

 

 早く「閻魔安国」が置かれている控え室まで戻らねば。

 

 *

 

 真実は潰えた。虚飾に塗れたあの式神使いによって。

 であれば我々は偽か?否。否定されども常に真実はそこに。暗闇に押し込められようとも真の輝きをを持ち続ける。

 

「偽りを脱いで、(まこと)を晒すの」

 

 月明かりすらも差し込まない暗い暗い地下の中、書に埋もれながらも恍惚を晒す。

 ああ、陰陽の祖よ。貴方の偽りを剥いでゆけば、どんな真実が曝け出されるの?ただそれが愉しみで仕方がない。

 ライオ様が彼の偽りを暴くまで、我ら『真実の協会』何を晒そうか。

 

「解き放て!!」

 

「本能のままにィ」

 

 まずは己を飾る偽りを脱いで、真の我が身を暴こうか。

 知の雨は止んだ。ならば意義を脱ぎ捨て、本能を晒せ。

 

 *

 

 彼ら隠者は一度消えよう。けれど世界が再び災禍に呑まれるとき、彼ら彼女らは再び姿を表す。

 預言者に授けられた一対の石板、その右方に予言されるように。

 

「では、君に()言を」




シャドバ7周年おめでとう
前書きはララミアによるカルラ復活
入れるタイミングないし文字数的にも一話使うほどじゃないからここに入れた
簒奪の隠者は元々簒奪の試練で入れようと思ってた話をこっちに移したからペインレス視点

テトラ来たわね
まあエレノアスキン使うけど
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