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「因果も因縁も壊す歌。また聞きたくなったでしょ?」
カルラの「破邪のインドラ」の修繕を終え、残された黒白二つの巨大な像を調べていたララミアの聴覚センサーが声を拾う。つい先程打ち倒したはずの彼女の声。
「やっほー、来ちゃった」
「アンコールを望んだ覚えはないんだけれど?」
「ボクがやりたくなったから来たんだ。確かめたいこともあるしね」
パチンッ、とウインクをするリーシェナ。その視線の先にあるのは、彼女が遺していった髪飾り。機械の少女が何の疑問も抱かず、その危険性について考察することもせずに身に付けていたもの。
「うん、ちゃんと育ってる。まだまだこれからって感じだけど、きっとすぐに大きくなるよ」
「何の……っ!!!」
目線の先に有るものに気付いたのか、今まで何の疑問もなく無意識的につけていた髪飾りに手をかける。しかしそれは外れない。否、外すことが出来ない。その髪飾りを外すことを自分自身が拒んでいるように力が抜けていく。オリジン・コアによって出力が保証されているにも関わらずだ。
「…っ!ブースト・スターゲイザー起動!!」
《認証コードを入力してください》
『コード■■■■■■■■■■■■』
《承認できません》
「なんでぇ!?」
無機質なアナウンスが流れる。ララミアが
「ブースト・スターゲイザー起動!」
《認証コードを入力してください》
『コード■■■■■■■■■■■■』
《承認できません》
「起動!」
《起動する機能を指定してください》
何度声をかけど、その身は答えてはくれない。オリジン・コアは起動しているし、オメテクトルシステムも問題なく作動している。
全てにおいて異常なし。ただ一点、髪飾りを除いて。
「何したの!!」
「まあそう
そう言ってそっと空に腰掛ける。その高さに合わせるように、大地を割り、木々を飲み干し、白黒二つの巨像を貫くように現れるのは巨大な摩天楼郡。いつかの何処かで誰かが築き上げたような天突く威容の数々が隆起する。
『ララミア、聞こえるか?』
「オペレーター!!!聞いて!スターゲイザーが、スターゲイザーが起動出来ない!」
『わかってる。でもログを見る限りスターゲイザーの起動は全てララミア、君自身によって却下されている。オリジン・コアではない。もちろん、我々でもない。君自身だ』
そんなはずはない、と彼女は反論する。当然だ。自分自身が起動することを決定したのに、それを自分自身が拒むはずがない。機械として当たり前の、表か裏かどちらかしか決定出来ない一面性があるのだから相反する二つの決定を行うことはない。そう、機械としてなら。
「それが心だよ。相反する二つの事柄。やらなきゃいけない、やりたくない。そんな気持ちが今ぶつかってるんだ」
「心なんて───」
「あるよ。それが福音だもん。ボクも心がないから響かないなんて言われたの悔しかったんだ」
心がない機械だから、焦ることはなかった。
心がない機械だから、怒ることはなかった。
心がない機械だから、不安なことはなかった。
心が芽生えた今では、それらはあるから。湧き出てしまうから。だけどその付き合い方が分からないから。矛盾する、ということを抱えた上でそれでも進んでいく方法が分からず立ち止まる。
「試練を越えた。なら福音を得た。キミは福音を得るに相応しく、故に今の苦悩も越えられる。越えて大きくなれる。だって壊す卵は大きい方がいいもんね」
心を得たから。心があるから。だけどその苦悩を、苦痛を、苦難を超えることを奏絶は望む。
「育み壊す、破滅の第二楽章!奏でていいよ?」
破壊の奏では既に絶えた。であれば誰が歌うのか。
決まっている。この場には一人しかいない。
「うっ、ぁっ、あああああああ!!!!!!!!」
空気を震わせる波が目で確認できるほどの爆音。ララミアの小さな背を突き破り、摩天楼を打ち砕きながら空へと消えていく。
空気を震わす波の翼。ララミア自身も制御できないままひたすら破壊を繰り返す。その心の混迷を表すように。
「そうだ、何でスターゲイザーが起動しなかったかだけど、きっと怖かったんだよ。頼れる翼もないまま一人暗い星の海の果てをも越えてを飛んでくのが。一人ぼっちは寂しいし、きっと見つけてもらえないから」
「い、や…違う、こんなの知らない…!私じゃない!!」
「あ、聞こえてないのかな。うーん、もう壊れちゃった?まだ早かったかな。今はまだ小さいから、壊れちゃうのも壊しちゃうのもしたくないんだよね」
摩天楼の街並みの柵の上に、街灯の上に、赤色灯の上に、暴れる歌声を避けながら移動し、余裕を見せるように腰掛ける奏絶は呟く。耐えられないのかと。殻の厚みに耐えられず、雛になれずに死んでいくのかと。
失望がリーシェナの中でとぐろを巻き始めたとき、ララミアから聞こえてくる声にその顔が笑顔になる。見るもの全てを惹きつける太陽のような笑顔。あるいは、玩具を見つけた子供のような無邪気な笑顔。
『ギガスファクトリーに火を入れろ。アーティファクトの量産体制に入れ。それから、デウスエクスマキナを起こせ。運命の歯車を回すぞ』
「ひっ、ぐっ、オペ……レーター…?」
『聞こえるかララミア。ヴァーテクスコロニー、現着した。これより直接支援を開始する。加速装置点火、全機構の解放を許可。オペレーション∶インパルス発動!!!』
空よりも遥かに高く、星の海とも言える暗黒に浮かぶ、幾層にも折り重なる巨大な建造物。世界に点在する
アーティファクトを統べる超文明は滅びたわけではなく、ただその居場所を遥かな高みに移しただけなのだ。そして彼らは今しがた星の空へと帰ってきた。
『ああそうだララミア、懐かしい友人を用意した。それで思い出してくれると助かる。君は一人ではない』
白弾頭が着地する。立ち上がるは摩天楼に並ぶ巨大な武装した白熊。
仮想質量を持つ剛爪。星すら砕く稀代の兵装。それすらただの付属品と一笑に付す。真に恐るるべきは、剛爪を振るう生身の肉体である。
彼らによってそう評されたかつて最強の名を冠した極北の王。ヴァーテクスコロニーから離反した一派によって作られた自然と機械の融合体。名をターミネイトマシンベア。かつて
最強がその剛爪を振るえば、誰も逃れることは出来ない。摩天楼を切り崩し、あちらこちらに飛び移るリーシェナに迫っていく。
「あっぶなーい!……なんてね?」
崩れる側から生え変わる摩天楼。一瞬で数年経ったかのように街並みは変わり、白熊を取り囲み翻弄する。その在り方は夢幻の如くなり。
『こちらも忘れてもらっては困る』
姿を現したヴァーテクスコロニーより、豆の如く小さな粒が雨霰の如く降り注ぐ。否、ヴァーテクスコロニーが巨大なだけでそれらは人ほどはある古代の遺物とされていたものらである。
六種のアーティファクトが、群れをなして襲いかかる。
「わっ、大変だー!!……じゃああれ、言っちゃおうかな?───殲滅だ!!!」
小さな小さな卵と化した白黒二つのアーティファクト。種を守るべく並びたち、その破壊を響かせようとして───
「みんな、ごめんね」
「コードF・M・D!!」
Fragment Modularization Drive。打ち砕かれたアーティファクト達の残骸から再利用可能なパーツを集め、追加武装として組み立て、ララミアの自己進化に使う。常に最速で進歩し続けるララミアに対応するため大量の素材と、豊富な選択肢───六種類以上のアーティファクトのパーツが必要になるが、一度使えばララミアは文字通りの無限を進化を歩んでいく。
そうして作り上げられたのは黒き宇宙に己を示す純白の翼。
「
一人寂しい旅路にその背を預ける、暗い海でも見つけてもらえる純白の翼。機構の見出した心の依代。その役目は終えたとばかりに髪飾りは一人抜け落ち、代わりに翼に光が灯る。
『ようやく立ち直ったか。では我々も全力でサポートしよう』
再びの遺物の雨。先の六種に加え、さらにその数を増やしていく。
ヴァーテクスコロニーに眠る全てのアーティファクトを動員して、奏絶の試練を打ち砕かんとする。
「行くよ、みんな!!あと熊さんも!!!」
ララミアの翼が音色を響かせる。荒々しく全てを殴りつけていた破壊ではなく、たった一つの強い意志を持ってリーシェナのみを撃ち抜く歌声が。
摩天楼を打ち砕き、それでもアーティファクトは傷つけない音色の嵐が破壊を追う。音より速く、光より速く。
「うーん、またボクの負けかなぁ。もっともっと育てたいのに、キミを見てたらもう歌いたくなっちゃった!!!」
リーシェナを乗せた摩天楼が屹立する。今までのものより高く、高く、遠くの星に手を伸ばすように。
破壊の奏は絶えた。それが、彼女が歌わない理由になろうか。
〇〇アーティファクトで統一したかったのでクソ犬はドッグアーティファクトです
ええまあ、クソ犬なんてクソ犬でいいんですけどね
ヤク中と一緒になって私のジンジャーチャット開闢開闢開闢を顔もろとも削っていったクソ共なので
コードF・M・Dは調べてもわからんかったから捏造した
定時には上がります