OMEN of STORM   作:あしゅけーね

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奏絶の独唱

もう歌いたくなっちゃった!!!

 

 白と黒の卵が偶像の周りを飛び回り、彼女が一番輝けるように(スポットライト)を当てる。周囲を犇めくアーティファクトの駆動音も、白熊の剛爪が引き裂く風切音も彼女には聞こえない。

 

それじゃ、行くよ!

 

 今彼女の耳にあるのは機構(ララミア)が奏でる破壊(歌声)だけ。

 

掠れた声で何を叫ぶ♬届かぬ声で何を祈る♪縋れないまま駆け出したくせに♪

 

 歌声が響く。誰が聞くわけでもない。誰に望まれたわけでもない。

 だからこそ偶像(リーシェナ)は歌う。誰かに聞いて貰う為に。誰かに望まれる為に。

 

「こっちだって!!」

 

 空に響く歌声に、負けじと翼の音が上げらる。

 

ボクの靴の代わりに伸びた摩天楼♬精一杯伸ばした指先の合間を縫って♪

 

 白い光と黒い影。新約・白の章、新約・黒の章によって映し切り出される彼女は星空のよう。唯一彼女の立つ摩天楼(ステージ)が、彼女の舞台であること示すように、彼女こそが一番星であると主張するように、他の何者もを置いて高く高く育っていく。

 

(キミ)(そら)を昇っていく♬

 

 伴奏のない独唱(アカペラ)。命有るものはその心を、命持たぬ者はその鋼を、どちらも有るものはその両方を。最後から時が経つ(待望が育まれる)ほど強く打ち震わせ壊してくる。

 

「あっ、ぅぁ…!」

 

どれだけ光を灯しても♪(キミ)のその眩しさには敵わなくて♫

 

 彼女の歌の前では億の数は意味をなさない。弱く脆く小さき者からその姿を崩壊させていく。

 最早大半のアーティファクトは砕かれた。残っているのは砕けた主を守ろうとする二対の盾の片割れと、その巨体故崩壊が遅れている白翼、そして既にその剛爪が届かなくなる距離まで突き放されたというのに余裕を崩さぬ最強と、その遥かな高みで互いの音をぶつけ合う最速のみ。

 

地にも立てないボクらの夢は霞んで消えてしまう♬

 

「っ…もうダメぇ……」

 

 心を持った。鋼は迷った。一度震えた心は、鋼の体をも揺るがせた。故に壊れる。待ち望む気持ちが大きいほど、卵は厚く、大きくなる。厚く大きな卵は、壊れるときには派手に割れるのだ。

 

(ほし)はボクたちを見下ろしている♪

 

『ララミア!?待ってろ、今スキャンを───』

 

 焦るオペレーターの声。

 

遥か冷たい(ソラ)を駆け抜けて───

 

「オペレーター。スキャンするなら今の私の全部を。どんな些細な傷も、エラーもバグも、不合理も。一切合切全部引っ括めた、今の──」

 

 ───私を。

 

 そう言い切る前にプツリと糸が切れたように動かなくなり、彼女は落ちる。遥かな高みを、地に向けて。

 

───ただ、見上げるしかないの輝き……

 

 この場に残るものは遥か眼下、米粒のような白点と化した白熊のみ。されど彼は一切の余裕を崩さず、その態度に奏絶は確信する。

 必ず(そら)の翼は舞い戻ると。

 故に奏絶は歌を続ける。まだ伝えることはあるから。まだ超えられてはいないから。

 

狂える声で何を示す♬震える声で何を壊す♪歌う意味すら分からないくせに♪

 

『システム、オールグリーン。オリジン・コア起動。コード■■■■■■■■■■■■』

 

《承認。オリジン・コア起動並びに戦闘モード移行に伴い機能制限を解除》

 

 遥か空に浮かぶヴァーテクスコロニーのアーティファクト射出口。アーティファクトスキャンにより復元されたララミアには、破壊が育んだ待望はなく、その身も心も軽いものであった。しかし、その翼の輝きは衰えていない。むしろ、リーシェナのように歌う事が楽しみだとでも言いたげだ。

 

迷う鋼の代わりに心を表したその翼♬精一杯澄んだ虚勢の斉唱を掻き鳴らして♪

 

『加速装置点火、機構の解放を許可』

 

「アストロウィングララミア、出るよ!!!」

 

 打ち出されるは一条の流星。狙いはただ一つ。不遜にも彼らの空に近付こうという歌姫。

 

(キミ)はここに堕ちてきた♬

 

「『さぁ、お前(キミ)を排除する!!!』」

 

 殺意の伴奏、破壊の歌声。偶像(リーシェナ)歌詞(歌声)に合わせるように機構の翼(ララミア)伴奏(歌声)が鳴り響く。

 

束ねた光を吹き消して♪(キミ)のその眩しさだけ導べにして♫

 

 最早彼女達の歌声は別々の独唱(ソロ)がぶつかり合うのではなく、それぞれの歌声が折り重なり、響き合う二重唱(デュエット)。互いが互いを殺し合う(想い合う)、鋼鉄の舞台。

 

空を掴んだボクらの今は惨めに満ち足りていてる♬

 

 遥か上空で行われる合唱を聞いてか、あるいは単に雰囲気が変わったことを野生の勘で察知したのか、ただ最後に立っていた白熊は不敵に笑う。

 

(ほし)はボクたちを見上げてる♪

 

 ゆっくりと、白熊の腕が持ち上がる。ただ一匹地上においていかれても、自分こそが最強であると示すように。

 

GURURUAAAAA!!!!

 

 剛爪が振るわれる。ある鋼の男が目指した余裕の心、残心の極致とも言うべき一撃が。

 ある研究者がその全てを捧げて組み上げた仮想の質量がコンクリートの壁を、鉄の柱を貫き引き裂く。それだけで山のように高く、厚く、硬い摩天楼はその根を抉り取られ、倒れ込んだ。

 

暖かく包む土埃を巻き上げて───

 

 足元が倒れ、崩れ去り、ただ重力に任せて自由落下を行うしかないというのに偶像は歌を止めない。無論、最速も同じく。

 

「スターゲイザー起動!!」

 

 今から昇り、そして落ちている時間はない。ターミネイトマシンベアの作ったチャンスを逃さないためにも、一瞬で落ちていくリーシェナの下に回り込み、拳を上げてその腹を貫き縫い止める。

 

「一人ぼっちは寂しいって、キミが言ったんだ。着いてきてくれるよね?」

 

───ただ、見下ろすしかないの輝き……

 

 空の、宇宙(そら)の先へと昇っていく。音の伝わらない世界。されど彼女らの歌声は響き渡る。

 

 飛翔。

 

 着弾。

 

 銀河の果てまで飛び上がり、そして星へと戻ってくる。ヴァーテクスコロニーの用意した衝撃吸収材を加味しても辺り一帯が更地になる程度、されど目の前の破壊を確実に殺す威力で星の表層へと叩きつける。

 地面に倒れ伏す奏絶は、歌い終えて満足したのか笑顔を浮かべて目を閉じ───ぱっちりと見開いて、告げる。

 

それじゃあ二曲目、いっちゃおっか!

 

 生憎と、既に彼女は破壊ではない。星を堕とす一撃は、奏絶には届かなかった。




『コードF・M・Dを組んだのは我々だ。故に、こういう事もできる。ヴァーテクスコロニー砲門形成』

入れようと思ってたけどスカッと忘れて入れられなくなったシーン供養しておく
なんのために前話でアーティファクト羅列したんじゃボケが

楽曲使用の作品コードとかよくわからんから歌詞は自分で書いた
もっと良いの思いついたら言って



あなたはララ×シェナ?シェナ×ミア?
誰推しですか!?
捗るわぁ
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