OMEN of STORM   作:あしゅけーね

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悠久の絶望

安らぎの形とは定まらぬもの

 

「はっ!!」

 

 無限に湧き出る敵を切り続けたためか、騎士は湧き出たその影に剣を振るう。

 

「痩せたな」

 

夢想を終えた現実とはそれほど過酷だということだ

 

 再びウィルバートの前に現れたマーウィンは恐ろしく引き締まった体をしていた。でっぷりと太く、丸かったかつての姿はどこへかその身は細く、されど木の幹のようにがっしりと。その四肢は細い枝の如く、されど力強く。安息に身を委ねるだけの夢想を捨て去り、過酷な現実越えた絶望の体現。

 

「だからどうした」

 

 誰に聞かせるでもない鼓舞の声。語る者なき英雄の声。世界を守る彼の背には誰もいないのに。

 

「今まで現実が過酷でなかったことなど数える程しかない。残る全てを絶望が侵してきた。されど我々はここにいる。幾度も乗り越えて」

 

 逆理剣「リシャール」を天高く掲げ、聖騎兵を呼び出す。今までの比ではない程の数の白い騎兵の鎧が立ち上がる。

 背理盾「ゼノン」を地面に突き立てればそれらに反撃の加護が付与される。

 

永遠の罰を

 

 ただ一言。一振りの動作すらなく、夢から覚まさせる一言でその全てが掻き消される。

 

「なっ」

 

現実(過酷)を望んだのは貴様だろう。いつまでそうして夢に浸る。目覚め、抗え、瞼を開け

 

 騎士の瞳が見開かれる。その瞳孔は揺れ動き、その肢体からは力が抜けてゆく。その見るものが信じられないというように。信じなければならないというように。

 

「何を、何をした」

 

 震える喉からなんとか絞り出した声。虚空に消え入るようなその声はしかしその場に響き渡る。

 

ただ夢が覚めただけだ

 

 絶望が並び立つ。見間違えるはずもないエクリエル騎士団の徽章をつけた白い鎧。彼が単一の白鎧としか呼び出せない聖騎兵の死せる前の姿。

 そして、彼らを率いるように並び立つ六人。今度は一切の欠損はない。

 

『よお、団長』

 

「ヴェルナー………」

 

 一騎当千の無双の騎士が。

 

『さっきぶりだねウィル君!』

 

「ヴァージニア……」

 

 轟雷の怪力の少女騎士が。

 

『やぁウィルバート』

 

「モーリス…」

 

 疾風の如く駆る斥候が。

 

『団長…』

 

「カール」

 

 聡明なる青年術師が。

 

『言っただろう?私達は本物だって』

 

「テクラ…!」

 

 情に厚い弓兵少女が。

 

『エクリエル聖騎士団団長ウィルバート。貴方を救うべく私達はここに』

 

「エイダ!!!」

 

 誰より己の救済を願う祈り手が。

 かつて肩を並べ戦った戦友が。終わらぬ戦いの中で弔うことすらできず散っていった彼らが。神なき世界の全てが轡を並べ剣を掲げ彼を殺す(救う)べく立ち並ぶ。

 

「聖騎兵から魂が奪われた…?」

 

 否。そうではないと彼の直感が告げている。そして同時に知るべきではないとも、終わらぬ戦いで幾度となく彼を助けた直感が告げている。

 

我々は進化を望む世界意思に呼ばれ、その世界と同化し進化を促す機構(試練)となる

 

 ───では進化を望む世界とはどのような姿なのか。

 それがわからないほど騎士は愚かではなく、それ故絶望がその身を侵す。

 

明けぬ泰平が停滞を示すように、終わらぬ戦もまた停滞。勝つこともなければ、負けることもできない

 

『団長、貴方さえいれば』

 

『貴方がいれば進めた』

 

『貴方がいれば恐れるものはなかった』

 

『空を』

 

『海を』

 

『地を』

 

『取り戻した英雄がいれば恐れることはなかった』

 

 名も知らぬ槍使いの少女が。聖杖を握りしめる少女が。かつて自分を庇って散った男が。信頼し、その背を預け合った友が。

 神なき世界の全てが、その刃を一人に向ける。

 

貴様だウィルバート。貴様が他の世界に救済を求めたから滅びたのだ!!貴様がいれば民の心が折れることはなかった!貴様がいれば進み続けることができた!!!貴様がいれば停滞などあり得なかった!!!!!貴様だウィルバート!貴様が神なき世界に我らを呼んだのだ!!!

 

「ちがっ…」

 

違わない!貴様が希望という光を、燈火を掲げたのだ!!!貴様が消えれば種火を継ぐものはおらず、新たな火が灯ることはなかった!!!貴様の齎した希望が、絶望の闇をより濃く、深くしたのだ!!!!!

 

 希望の光に目が慣れて。燈火が隠れた闇に慣れなくて。だから世界は容易く崩れ去った。その責を光に押し付けて。

 

勝手に進んで、世界を滅ぼして。それから、やっと皆に会えたな、英雄よ

 

 折れた。友が死に絶えても、邪悪なる兵が消えずとも止まらなかった純白の裾に土がつく。

 

『立ってくださいウィルバート。貴方は膝を付くような人ではない』

 

「エイダ……しかし俺は、僕は君がっ、君たちが…!」

 

『ウィルバート。私は貴方に救われて欲しい。貴方は私達に救われて欲しい。そうでしょう?』

 

 一呼吸おき、彼女は告げる。

 

『抗いなさい、ウィルバート。貴方の救いが死ぬことなのはわかっていますが、私達の救いは貴方が生きること。抗え。私達に殺されないように。私達を憂うことのないように』

 

「………無理だ。屍の山を築いてなお城を建てられなかった俺が、君たちの救いを踏み躙る俺が、生きていていいはずがない。死を、俺の罰を受け入れよう」

 

 脱力し剣を手離し盾を倒す。項垂れ、差し出される首に戦意は感じられない。

 

『貴方は本当にっ…!いえ、なんでもありません。全軍、突撃。その憐れな男をすり潰しなさい』

 

 武器を構え騎士を囲む。本来の彼らであれば抵抗の意志のないものに振るう剣など持ち合わせてはいないが、今は剣の代わりに義を捨てた。

 

『悪いなウィルバート。これが僕らの総意だ。君には責任をとって死んでもらう』

 

「………ああ、もとよりそのつもりだ」

 

『君はっ…!!』

 

『えーつまんなーい。戦おうよウィル君』

 

 その戦意を呼び覚ますべく無防備な首筋に振り降ろされる戦斧。既に心を喪失した騎士にはその一撃を防ぐ手立ても、気力もない。断頭台に上げられた罪人はただ罰を待つばかり。だというのに、お節介な第三者の介入とは往々にしてあるものだ。

 

「貴方まだ寝ぼけてるのですか」

 

 その刃を黒の茨が受け止める。その胸に輝くのは決して彼が見紛うことのないエクリエル聖騎士団の徽章(守護の証)。今この世界にそれを着けているのが彼自身と絶望の下にいる戦友だけであるはずなのに。

 

昨日(ききょう)の敵は今日の友!!リマー…危ない!!!』

 

「すまないマーウィン、邪魔をした」

 

 唯我の一刀を避け、チャットが観客席へと駆けていく。彼女らの胸に残した守護の証はそのままに。

 

「強い者が弱い者を従える。それが密林の掟。勝ったのは貴方ですから私達は貴方の下に着きましょう」

 

「いらない」

 

「いいえ、要ります。彼女たちはあれによって縛り付けられているのでしょう。ならぶっ飛ばすのに数は多いほうが良いでしょうね」

 

 世界を相手にするのだから、その数の差は歴然。それでも女傑は立ち上がる。

 

そんな足掻きは無意味だ。だがそうだな、立ち上がられても面倒だ。……では、一つの世界の真実を話そう

 

「真実……?」

 

神なき世界の神はな、去ったのではない。死んだのだ。あの世界は輪廻のなき世界。死後の魂は神によって永遠に管理され、新たな命に神が魂を吹き込む。そうして神は無限に近かったリソースを使い切って死んだのだ。神の死後管理されていた魂は腐り、邪悪なる兵として湧き上がり、そして死ねば再び邪悪なる兵として蘇る。故にウィルバート、貴様らがどれだけ足掻けどあの世界に神は戻ることはなく、邪悪なる兵が消えることはない

 

 輪廻(浄化)の機構はなく、死せる魂は腐るまま。終わらぬ戦いの終わりは、終わらぬ現世の罰。湧き出る腐蝕の魂は、死してあの世でまた腐り現世に滲み出る。

 

「………密林には掟があります。終わりがなくとも強者は歩み続けねばならないという掟が」

 

「君に何がわかる。まだ共に戦える君に」

 

「………貴方の気持ちわかりません。ですが、これだけはわかります。貴方は立ち上がるべきだ。彼らはまだ思ってくれているのだから」

 

『そうだとも、最後の騎士』

 

 死した神の残した奇跡の残滓、その残光が蹄鉄の音を打ち鳴らす。白光の虹を駆け現れる蘇りの英雄。神亡き世界において彼の者の名を知らぬ騎士はおらず、彼の者の名を騙れる者もいない。

 

「エクリエル聖騎士団初代団長、聖騎士ヘクター……!?」

 

 百夜を駆け、百一の夜明けと共に蘇った伝説の英雄。邪悪なる兵として埋もれているはずのその魂が今ここに。




メリークリスマス
とか言ってられないほど情緒ぐちゃぐちゃだよ
待ち望んでたジンジャーリメイクはリサージェントカードだしシャドバは新作に合わせて本家のカードパック更新止まるっぽいから実質サ終っぽいし

曇らせって見るのも書くのも苦手なんですけどこんな感じでいいんですかね
もっとやったほうがいいのかな
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