OMEN of STORM   作:あしゅけーね

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幕間ー預言の時ー

 一.

 

 遥かなる高み。唯我の名で知られる山の頂き。

 そこに陽が冠する時、預言が始まる。

 

 ───汝は汝の神と知れ。

 

 二.

 

 ここは人形作りで有名な街。そこに住まう人々は今日も変わらぬ日々を過ごす…はずだった。

 突如として住民の頭の中に流れる歌。その歌声を聴いた住民の中で何かの枷を破壊する音がした。

 

「なんて素晴らしい歌声」

 

「素晴らしい…素晴らしいですよ」

 

 街中に賛美の声が響く中、これを仕掛けた一人の青年がボソリと呟く。

 

「僕だけが彼女を理解()っている」

 

 住民の集まる広場の片隅で、青年は腕を組み満足げに頷いた。

 

 ───ボクを崇めて信じて祈ってよ!

 

 三.

 

 人の寄り付かない古い古い墓地の中。親から、隣人から、街から、国からですら迫害された者たちがひっそりと暮らしていた。

 自身の境遇に不満を抱き、嘆き、怒る者たち。彼らの前に一人の男が現れる。

 

 黒い鎧の様なスーツを着こみ、髑髏を模した兜を被り、墓石に腰掛けるその男を見た瞬間、彼らは全く同じことを、何も聞くことなく理解した。

 

『言葉は不要。沈黙は平等。黙して秘めよ』

 

 皆々が押し黙り祈る中、ふと男を見上げれば兜で見えぬはずの顔がにやりと笑った様に見えた。

 

 ───音、言葉─────消えろ。

 

 四.

 

 休日。万人に広く開かれた門には多くの人が集まる。

 しかし今日は様子が違った。

 

 新たな修道女が来るということでいつもより大勢の人間が集まっている。そこまではいい。これまでも何度かそれなりの人数が集まることはあるのだ。問題はそれだけの人間が全て眠っているということ。

 

 ただ一人、新たにやって来たという修道女を除いて。

 

「ふあぁ。では私も」

 

 彼女も眠る。安息の休日にふさわしい様に。世界が停滞という平和に包まれる様に。

 

 ───眠れ世界よ。心のままに。

 

 五.

 

 己が無力を知るものが力なく頭を垂れる。まるで己の首を差し出す様に。

 

「そうだ。それで良い。汝らは無力、我もまた。地位、知恵、全て無駄。相貌、体躯、正しく無為。その意味を知る我らに使えるが良い。あの方は我ら全てを侮蔑してくださる」

 

 眼前の者を見下す昏い表情の中にかすかな恍惚を浮かべ、女は言う。

 武力は無意味。無力であれと。

 

 ───世界は私の下にある!!

 

 六.

 

 森を進む一団がいる。彼らが進む先から木々は腐り花は枯れ、動物たちは泡を吹いて倒れ込む。しかし彼らは死にはしない。その命を続かせなければならないのだから。

 

「た、助けてくれ」

 

 毒に犯された旅人が助けを求め手を伸ばす。リーダーの頬の痩けた男がその手をとり優しく微笑んだ。

 

「ええ、もちろん。我らは不殺。死んでしまう人間を見捨てたりしません。……ですので耐えてください。その命絶えぬ様に。簡単ですよ。我々もそうですから」

 

 生かして活かして往かす。命とは絶えぬ様に連綿と続き、増えて来たのだから。

 

 ───腐敗しろ、命、心、あらゆるものよ!

 

 七.

 

 賑わうは花の街。男と女の一夜限りの交わり。姦淫渦巻くこの地にて、一つ、火よりも速くある思想が広まっていた。すなわち……

 

「姦淫とは情である。人が争い、傷付け合うのは互いに理解が及ばぬからだ。さあ交わろう、ぶつかり合おう。相互の理解、心も、体も。なぜならそう、姦淫とは───高く燃えあがる炎なのだから」

 

 死人の様に真っ白な男は語る。

 愛とは、火よりも速く、熱く体を巡るものだと。

 

 ───愛とはパトス。テーゼは消える。

 

 八.

 

 彼らはごく一般的な小市民であった。ほんの少し天秤が傾けば、善悪どちらにも転ぶ様な、ごくありふれた存在。今の生活ごときで満足してしまうような、先を望みたい様な、そんなもの。

 

 だから奪われた。だから渇いた。だから奪った。

 簒奪は渇きを思い出させ、渇きは欲望を呼び、欲望は力となり、力は簒奪をもたらす。

 

「そうだ。奪い尽くせ、取り戻せ。さもなければ頂くぞ、何もかも」

 

 渦を生み出した男は今日も今日とて財宝を掴む。

 

 ───満ちた世界は今日で(かつ)える。

 

 九.

 

 カビと埃の匂いが立ち込める暗い地下。

 そこは、数多の魔術師が作り上げた魔術師のための街。皆与えられた役割を持って、日々研究を進める。

 そこに一人の女がやって来た。

 

「我が手に真実、汝に虚偽。其の名、地位、志すら捨てよ。さすれば真実が見えてくる」

 

「我らは魔術の極致を目指す者。名を、地位を、志すら捨てて、いかに最奥に辿り着けるか」

 

「汝、真実を晒せよ。真実とは汝の奥底に揺蕩うもの。自身の底すら晒せぬものが、いかに最奥を陽の下に晒すと言うのか」

 

 なるほど確かに、と年老いた魔術師は思う。事実、魔術の極致は未だ見えず、すでに打つ手はなく、残るは己を顧みるだけであった。

 

「汝らの真実、本能、本当、全て受け止めよう。さあ、白日の元に晒すが良い」

 

 こうして世界全てを真実に染め上げるための魔術協会が誕生した。

 

 ───これが世界のまことの姿!!

 

 十.

 

 狼は飢えていた。食っても食っても満たされない。人も、虫も、獣も、木も、土も、岩も、世界まるごと平らげてですら、満たされない。

 

 穢れを知らず、ただ純粋に飢餓を貪る。飢えたる狼が今動き出す。

 

 ───無垢な世界(純情)、貪り尽くす。

 

 ???

 

 代わり映えせぬ凪いだ水面。終わらぬ旅の途中。果てなく続く鏡の牢獄。手元には神の預言が記された石板が二枚。正直言って退屈だ。しかしそれももうすぐ終わる。

 

「君に()言を」




シャドバ6周年おめでとう(シャドバやってたら投稿間に合わなかった)
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