OMEN of STORM   作:あしゅけーね

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ー第四戦ー

『さあやってまいりました第一回戦最後の試合!!!では登場していただきましょう!!本日の主役はこの二人、ウィルバート選手とリマーガ選手だ!!!!お二人とも連携が得意と聞いているが出場できるのは一人のみ!!これまでのようにお供を呼ぶのでしょうか!!』

 

 両雄並び立つ。決して背は低くないはずの騎士服の男が小柄に見えるほど背の高い褐色の女性。その圧倒的な存在感を持って威圧を振りまく姿は密林の主として十分な風格を纏っていた。

 

「強い者だけが生き残る。密林の掟はそういうものです」

 

「それは、負けられない理由が出来てしまったな」

 

 滅びゆく世界に残る無数の民を背負う男も強い。威圧に対しても一切怯むことなく睨みつける。

 

『それでは第四戦!!両雄並んでいざ』

 

勝負!!!

 

 *

 

「まずは森を広げましょうか」

 

 リマーガがその手に握った小さな種を撒く。その種は地面についた瞬間大きく育ち種を散らし枯れて倒れ込む。その亡骸を踏み越えるように新たな大木が育ち、種を撒き、枯れていく。森の命は輪廻する。森の魂は回生する。幾度も繰り返しやがて巨象の背には小さな森が築かれた。草が広がり虫が湧き、獣が闊歩し妖精が踊る。草を喰む虫が獣に食われ、その獣を狩る人が現れる。森の廻りはここに現れる。

 

『な、なんだこれは!!!リマーガ選手が一粒の種を投げただけでスタジアムが森に変わってしまったぁー!!!』

 

「ええ、ここはすでに森。故に掟あり。食うか食われるか。弱き者よ、強くなれ。なれぬのならば……ここで死んでしまいますよ」

 

 木々が、虫が、獣が、人が、妖精が一斉に襲いかかる。

 もの言わぬ森の意志として、その手その足として。森の広がり、それを進めるために掟は襲い来る。

 

「「逆理剣リシャール」!!我が身を守れ」

 

 ウィルバートが剣を掲げる。穢れも、傷も、曇り一つもない純白の刀身。神去った世界にただ二つ残された残滓の片割れ。

 敵を討つ剣のその逆理。すなわち主を、民を、世界を守る防壁。

 その呼び声に答え、二体の兵が召喚される。白く透き通る体の馬に跨がる、中身のない青白い鎧「聖騎兵」。かつてその名を刻めず散って行った勇敢なる英霊達の魂を宿すそれはたった二騎でも迫りくる百の命を捌ききる。

 

『ウィルバート選手も負けじと召喚!!凄まじい強さだ!!数の差に押されることなくすべてさばききった!!!!!』

 

 しかし流石の騎士も百を切るのは骨が折れるらしい。その身を光と散らして消えていく。

 

「森の命は廻るゆえ、まだまだ行くぞ」

 

「生憎だな。この身擦り切れるまで何度だって呼び出せる。そして俺は負けられぬ故、何度だって立ち上がる」

 

「私だって負けられない」

 

 森が牙を剥く。その巨体(威容)をより強大なものへと至らせるため、その手足を伸ばす。幾百幾千にも至る廻りを一瞬のうちに繰り返しその軍勢は万に届こうかと言うほど。地表に、幹に、枝に、空に蠢く。

 

 対する男は小さかった。見上げる程の巨躯は持たず、薙ぎ払える程の怪力を持たない。呼び出した軍勢は百を超えられず、その在り方故森に不向きな馬を駆ることしかできない。それでも誰一人、一瞬たりとも諦めることはなかった。

 万の兵士?上等。地を覆い尽くす程の邪悪な兵士に比べればかわいいものだ。

 不慣れな足場?上等。昼夜問わず続く終わりのない戦いに比べればよっぽどましだ。

 たった百の戦力?全く持って問題無し。もとより水も食事も人材もない中戦い続けた。

 少し状況が悪い程度で膝を折るほどあの世界は甘くない。

 

「陣形構築五体一組!!二騎上空を警戒残りは地上の連携を切らすな!!行くぞ!「背理盾ゼノン」、我が敵を討て!!!」

 

 「聖騎兵」達が集まり、散開する。二人が剣を上空に向けて盾を構え、残った三人はその周回を守るように身を固め盾を構える。それがおよそ二十組。

 

「ただ籠もっているだけでは勝てませんよ」

 

「いいや、勝てるさ。負けなければ終わりじゃない」

 

 空を舞う羽虫が、地を駆る獣が、木々を渡る人が、襲い来る。激突が始まる。その猛攻は地に固まる「聖騎兵」に触れ────

 

「きゃっ!」

 

 主人を守る盾、その背理。その盾に触れた攻撃はすべて攻撃者の主……リマーガの方へと跳ね返る。威力は無視出来る程度だが、それでも万も受ければ死んでしまうだろう。

 

「っ、総員動くな!!」

 

 森の動きが止まる。羽虫が、獣が、人がその動きを止め、遠巻きに見守る。

 

「攻撃を与えないようにしつつその場から動かすな!!」

 

 そう命令すると、前へ進み出るリマーガ。何人かの妖精がその後に続き、主の進む邪魔をしようとする騎兵をその場に押し留める。

 

「結局、一騎討ちか。これだけ兵を呼び出した意味がないな」

 

「くっ、一騎討ちにしただけでも、十分でしょう。わっ、私はまだ出てくるつもりはありませんでしたから」

 

 「聖騎兵」もただ棒立ちなわけではない。攻撃をされないとわかっているのだから、攻め立てぬ理由もない。そして妖精もまた、攻められれば反撃もする。

 結果、リマーガはここにたどり着くまでに攻撃の跳ね返しにより無視の出来ぬ程にダメージを受けていた。

 

「そうか。では来い」

 

 漆黒の大剣「咎満ち返し」と純白の盾「ゼノン」がぶつかり合う。火花が散るほど力強い結び目からは茨が生え、ウィルバートの腕に絡みつこうとする。

 

「自由とは底なしの沼。その茨は自由を縛る掟の現れ、縛られれば抜け出せない」

 

「自由か。恋しいな。……打ち返せ「ゼノン」」

 

 茨が返る。すでに縛られた主を縛るために。

 

「本当に面倒ね!!」

 

 「咎満ち返し」が茨を落とす。新たに生えた茨が茨を呑み、混ざり合い地に落ちた。

 

 漆黒が襲い来る。純白が打ち返す。火花散り、甲高い音が鳴り響く度にその身を削られる女。しかしかつて戦った邪神に匹敵する程強力な一撃は確かに男の身を削っていく。

 

「良くも悪くも返せる量は固定、どれだけ弱い攻撃でも、どれだけ強い攻撃でも常に同じ一撃を返し続ける。違うかい?」

 

「だからどうした。耐えきれば俺の勝ちだ」

 

「いいや、削り切られるより早く殴ってしまえば私の勝ちだ」

 

 大剣が舞う。踊るようにというよりは吹雪くように、苛烈に、鮮烈に。剣閃は黒い嵐となって襲い来る。純白は木々の間を押されていく。互いに一度も直撃していないのにも関わらず既に満身創痍。しかしどちらも決め手に欠ける。

 

「大分わかってきた。攻撃を跳ね返す条件、盾に触れることだろう。だったら……」

 

「…っ!!」

 

 ウィルバートの後ろに小さな気配が現れる。思わず反応してしまったが、無視しても問題ない小粒。そう切り捨てるには悪寒が酷い。

 

「──リシャ……」

 

「遅い」

 

 眼の前にいたはずのリマーガが消え、背後に現れる。その漆黒の一撃はギリギリの所で召喚された聖騎兵に阻まれウィルバートの背を軽く斬りつける程度に留まった。

 

「どうした、そんな狸に化かされたような顔をして」

 

「いや、狸に化かされたなら俺は今頃羽虫だろう。それより、次はこちらが行こうか」

 

 純白の剣と盾を重ね合わせる。今なお高く高く成長を続ける密林に詠唱が響き渡る。

 

「────この世は涙、嗚咽の海。溺れ藻掻くが人の道」

 

 現れるは二体の「聖騎兵」。しかしこれまでの名もなき英霊とは違い、彼らはかつてウィルバートと肩を並べた存在。誰よりも彼を理解し、誰よりも彼に背負わせた者たち。

 

「ヴェルナー、ヴァージニア。俺と共に戦え」

 

 コクリと頷く二体の騎士。一心同体、即席で生まれた森の輪廻より強い結びつきは、リマーガ達より遥かに熟練された連携を見せる。息のつかせぬ猛攻。攻め入る隙のない防御。次第、優位は一変押されて行ったリマーガの喉元に「リシャール」の剣先が突きつけられる。

 

「……降参」

 

「また入れ替わればいいじゃないか」

 

「そうはさせてくれないでしょう?」

 

「ああ、させない」

 

 視界の通らない森の中、勝者が決まる。

 

『あ、えーと勝者、ウィルバート選手…で、あってるよね…うん、勝者ウィルバート選手!!!!正直よく見えませんでしたが、おめでとうございます!!!』

 

「少々、疲れ…た」

 

 男は崩れ落ち寝息を立てる。決して手に入らない安息に包まれるように静かに眠る。

 

 第四戦 決着

 勝者 ウィルバート

 

 *

 

 密林での戦いに決着がつくその直前に闘技場の遥か上空に黄金の門が現れた。

 扉が開き、現れるのは九人の男女。

 試練はもう始まっている。




犬に犬当てる作業の何処に実力が入って来るんですかね
なんで解放制限だけなんですかね超越骸ハンドレスはどうした
フラグラは冤罪じゃん絶対ケルヌンカシムレイダーユアンが悪いって
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