退学になりかけてたウマ娘のトレーナーをやることになった話   作:刹那 結城

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第2話

さて、セツナ君が案内してくれたお陰で無事にトレセン学園にたどり着けました。

私はセツナ君に軽くお礼を言って別れ、トレーナーとしての登録を済ませに行くことにしました。

 

一方のセツナ君は、野暮用があるとのことでどこかに行ってしまいました。

さて、私のトレーナー登録は……オッケー、手続きは思ったより簡単に終わりそうだ。

 

ーーー。

 

さて、手続き完了!これで私も晴れてトレセン学園で勤務することが出来るぞ!!

でも、どうやら今日から1週間は研修期間らしい、その間にパートナーとなるウマ娘見つけてくれ、とのこと。

 

……あ、そう言えば私、セツナ君が喧嘩中に落としたトレセン学園の学生証持ってたままだった。返しに行かないと。

とはいえ、どこに居るんだろう?

 

「あら?あなたはさっきトレーナー登録を済ませてくださった……確か、雪風トレーナーですね?

どうかされたんですか?」

 

学生証を持って学園内をウロウロしてると、偶然たづさんに出会った為、セツナ君の学生証を返したいが本人が見つからないことを説明する。

 

「成る程、恐らくセツナさんなら生徒会室に居ると思いますよ。よろしければ、案内しましょうか?」

 

断る理由もないため、はい、と了承する。

 

「……では、私はこの書類を少し理事長室に届けて来るので、2,3分お待ちいただけますか?」

 

分かりました、と言いながらここから理事長室って近いんだなあ、とボーッと考えていると、今そこに居たはずのたづなさんの姿が消えている。

テレポートか?と思ったが、どうやら走っていったようだ……え?早すぎない??

 

いや、私も確かに脚力には自信がある方ではある。自慢ではないが100mを11秒くらいで走れるからまあまあ早いと思う。でも、私が目を離した一瞬で視界から消え去れるほどに足は早くない。

 

と、思ったらたづなさんが戻ってきた、それも呼吸の1つ乱れていない。

もしかして、ウマ娘ですか?と、聞きたくなるが何か聞いてはいけない気がしたのでやめた。

 

すると表情に出ていたのかは分からないが、たづなさん自らがこう答えてくれた。

「そう言えば私をウマ娘ですか?って聞いてくる方がたまにいらっしゃるのですが、秘密です♪」

 

どうやら真実は闇の中らしい。まあ詮索するのも野暮なので聞かないことにして正解だったと思う。

 

さて、生徒会室についた。学生証を返さなきゃな……。と思いドアをノックする。

入ってくれと声が聞こえたので、私は中に入った。

 

ーーーー。

 

セツナ視点。

 

さて、何か道に迷ってたトレーナー送り届けて戻ってきてみれば、皇帝サマ……いや、生徒会がお出迎えか……。

 

「……セツナ君、今から生徒会室に来てくれるかい?」

 

断りたいが、断らせる気はハナから無さそうだ。

じゃないと皇帝に女帝、そして大体居ないはずのブライアンまでがここに居る理由がない。

 

「……一応聞くが、断ると言えば?」

 

「……強制連行になる、私としても手荒な真似はしたくない」

 

「……まあ、折角皇帝サマが呼んでくれてるんだ。ここは任意同行しようじゃないか」

 

「……話が早くて助かるよ、では行こうか」

 

ルドルフを先頭に、オレの左右にエアグルーヴ、ナリタブライアンが並んで生徒会室へ歩き始める。

ここで抵抗しても良いが、正直暴れて勝てる相手ではないしその力量すら図れないほどオレもバカではないため、大人しく連行されることにした。

 

さて、やって来ました生徒会室。

一体何を言われるのだろうか、正直心当たりがありすぎて困る。

 

「……エアグルーヴ、お茶を汲んでくれるかい?」

 

「分かりました……」

 

「……ブライアン、念のため扉の前に立っておいてくれ」

 

「了解」

 

まるでオレを囲う、いや逃げれないように陣営を組む、の方が適切か。と言わんばかりの位置にルドルフがそれぞれを配置する(まあ女帝はお茶汲んでるだけだが)

 

そしてほどなくして、女帝が汲んだお茶がオレとルドルフの前に運ばれる。

……良い茶葉使ってんなおい。

 

「……さて、話というのは他でもない。君の素行と、今日の大喧嘩についてだ」

 

あぁ、その事か。まあ正直咎められるだろうし、耳には入ってるだろうと思ってたから別に驚きはしない。

 

「……君の素行の悪さについては元々こちら側でも把握済みだし、君も何度か反省文などを書いたりしてるから今更どうこう言うつもりはない。

ただ……問題は今回の大喧嘩についてだ」

 

ほぅ。素行を注意されると思っていてからまさか素行についてはスルーなのはちょっと意外だった。

 

「……聞けばトレセン学園を辞めた物達の集まり、言わばアウトローの集団だそうだね。

確かに、彼、彼女達の対応に手を焼いていたのは生徒会の落ち度ではある。だけど学園を辞めてしまったのならただの一般のウマ娘と変わらない、そうだろう?」

 

「……何が言いてぇんだ?」

 

「……つまり、君は事情はあったとは言え、一般人に手を出したのと変わらないと言うわけだ。

私としても、この判断を下すのは正直心が痛む。

 

実際、シリウス、ナカヤマの2名は少しの間停学処分を下した」

 

「なら、オレも停学……「いや、退学だ」

 

「は?」

 

思わず間抜けな声が出た、退学だと?

 

「おい、理由を説明しろ。あの二人が停学でオレだけ退学なのはおかしいだろ」

 

「……理由については単純明確で、君の普段の素行の悪さと今回の件、そして過去にやった喧嘩等から、停学では罪が軽すぎる、と意見が出てな。

……私としても心苦しいし、理事長にも抗議はした。

でも理事長も、好きで決めた訳ではない顔をしていた」

 

「……それがテメエらの決断って訳か」

 

「……すまない、私の力量不足だ。本当にすまない」

 

「退学なんだろ?だったら辞めてやるよ。ただし……テメエのその顔を1発殴ってからな!!」

 

オレはルドルフの顔面目掛けて全力で殴りかかる、この距離なら避けれる訳もないし、クリーンヒットは間違いない。

ちょうど良かった、コイツのその余裕ぶってる顔を1度ぶん殴りたかったんだ。

 

……だが、現実はそう上手く行かなかった。

オレはルドルフを殴ろうとしたはず、だが壁に体を強く打ち付けられ、膝をついてるのはオレだった。

 

状況を理解するために何が起こったのか考える。

アイツ、あの僅かな間にカウンターぶちこんできやがった……。

 

「会長!?」

 

流石の自体に、さっきまで横に立っていたエアグルーヴも動揺している。

……まあブライアンはいつも通り見てるだけだが。

 

「……すまない、あまり私を怒らせないでほしい。

君が大人しく退学届けを書くのならこれ以上手を出さないことを約束しよう。

ただ、向かってくるのなら……私も全力で相手をするだけだ。とはいえ、今の1発で君なら理解できたと思う、君はどうするべきなのか、は」

 

「……クソッ!!書けば良いんだろ!!書けば!!」

 

「……物分かりが良くて助かる」

 

クソが……ふざけんな……この皇帝、さっきの1発で分かったが今まで殴りあった中の誰よりも腕立つじゃねえか……。

これ以上逆らったら最悪命が危ないまであるな……。

 

そしてオレが退学届けを書いていると、学生証の返却を求められたのでポケットの中を探るが、無い。

どうやらどこかで落としたらしい。それをルドルフに伝えると、まあ、それについてはやむ無し、という判断らしい。

 

そして退学届けもほぼ書き終わり、提出する直前、生徒会室のドアがノックされた。

入ってくれ、とルドルフが言うと扉が開く。そこに居たのはたづなと、見覚えのある女だった。

 

ーーーー。

 

雪風目線。

 

えぇ……何か重苦しい空気の中入っちゃったけど大丈夫かな?

しかもセツナ君反省文書いてるし……ってよく見たらあれ退学届けって書いてない!?

 

「……セツナ君、退学するの?」

 

私はセツナ君に問いかける。

 

「……テメエには関係ねえだろ。

ほい、完成だ、皇帝サマ」

 

退学届けをルドルフに渡そうとするセツナ君、私は反射的にそれを奪い取って、破り捨ててしまった。

 

「あ……」

 

やってしまった……。そもそも学生証返しに来ただけなのに、やってしまった……。

いや、確かに理由はどうであれ、助けてくれたから退学させたくないって想いから体が勝手に動いてしまった、っていうのが本音だけど……。

 

「……ふむ、退学届けが無くなってしまえば、退学手続きは取れないな。

所で、雪風トレーナー。恐らく反射的にやったとは思うが、何をしたか分かっているかい?」

 

「……はい、分かってます」

 

「……だけど、私も本音を言えば退学させたくない。

理事長も同じ想いだ、そこで妙案を思い付いた。たづなさんも居ることだ、このまま理事長へ向かおう」

 

ルドルフの妙案に乗る形で、理事長室へ行くことになった私たち。

そしてルドルフが扉を開く。

 

「突然の訪問ッ!!一体どうしたのだ?」

 

「セツナの退学届けがこのトレーナーの手によって破り捨てられました」

 

「ふむふむ、それは面白い……雪風トレーナー、破り捨てたからには責任をとってもらうぞ!!」

 

「クビ、ですか?」

 

「いや、元々私も退学には反対だった。だから君がセツナの専属トレーナーになって受け持ってくれるのならば、私の独断と偏見でセツナの退学を取り消すように働きかけることを約束させてもらう!!」

 

答えは迷うまでもなかった。

 

「分かりました!!私を、セツナ君のトレーナーにしてください!!」

 

「うむ!!これからよろしく頼むぞ、雪風トレーナー!」

 

「はい!!」

 

こうして、私は半ば強引にセツナ君のトレーナーになったのであった。

ちなみに、セツナ君自身は退学が消えてラッキー、くらいの認識らしいけど、それでも私を助けてくれたんだし、悪い子じゃないと思う。

それに私の直感が、この子は伸びるし戦えるって言ってる。だからトレーナーに志願したの。

 

「……まあ、退学消えたのならそれで良いわ。

んじゃ、オレを拘束する理由もなくなったな。理事長、世話になったな。

オレは一旦家に帰るわ」

 

「うむ!!夜道を歩くときは気を付けてな!!」

 

「……あー、後、トレーナー。話したいこと色々あるからオレについてこい。オレんちで話そう」

 

こうして、セツナの退学は取り消された。

ここから、トレーナーとセツナの二人三脚の物語がはじまるのだった……。

 

第2話 終

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