退学になりかけてたウマ娘のトレーナーをやることになった話   作:刹那 結城

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第4話

「……さて、トレーナー。朝だ、起きろ」

 

「うーん……後5分…………zzZ」

 

5分後

 

「トレーナー、起きろ」

 

「後5分……おかーさん……」

 

さらに5分後

 

「トレーナー、起きろ」

 

「うーん、後ごふ……キャッ!!

 

ったく、何分待たせる気だ、コイツは。

なんだよ、気持ち良さそうに寝やがって。

 

まあとにかく布団を強引に引き剥がし起こしたわけだが……。

 

「なに?何が起きたの!?まさか敵の襲来!?!」

 

……寝ぼけてんのか?わざとなのか?

て言うか敵の襲来ってなんだよ……。

 

「朝飯出来てるから、早く食うぞ」

 

「ふわぁい……」

 

朝食 米 味噌汁 鮭 海苔

作っておいてなんだが、我ながらシンプルだな。

 

「うわ!美味しい!! 昨日から思ってたけどセツナ君料理上手いよね!」

 

「……一人が長いからな」

 

「えー、でも私のお母さんの料理より美味しいよ?」

 

「お前の母親知らねえからなんとも言えねえけど、親には感謝しろよ、基本的には」

 

「……そう言えば、何で家に泊めてくれたの?」

 

「アンタの部屋になる予定だった部屋、実は偶然に偶然が重なった結果、しばらく使えないそうだ。

だから秋川理事長に頼まれて、しばらく保護観察も兼ねて、だとよ」

 

「なるほどねぇ……そう言えばセツナ君って理事長には素直だよね、わりと」

 

「……まあ、理事長に拾われたようなモンだからな。オレ」

 

「……え?」

 

「忘れろ、良いな?」

 

とてつもない圧を感じたのでこれ以上聞かないことにした。

そして朝食は本当に美味しかった。

 

そして私たちはミーティングなんて大層なこと言うつもりはない、ただの懇談会をすることにした。

 

「そう言えばセツナ君はもうじきメイクデビューだけど、どう考えてるの?」

 

「そうだな、正直に言うと出るつもりはない」

 

「……何で?」

 

「めんどい」

 

「めんどくさいのは分かるけどさあ……あ、そうだ!

メイクデビュー終わったら、美味しいスイーツのお店に行こうよ!!」

 

「はぁ!?何を言い出すかと思えば、そんなもんお前が食いたいだけだろ」

 

「……バレた?」

 

「当たり前だ」

 

「あ、そう言えばウマスタグラムってあるじゃん?」

 

……このトレーナー話題コロコロ変わるな、後急に女子力出してくるなよ。

 

「あれがどうかしたのか?」

 

「……カレンチャン、かわいいよね」

 

その言葉自体は普通の称賛である、だが、妙に重い、何か含みを持たせた言い方だった。

 

「かわいいのは分かるけど、だったらお前なんでソイツのトレーナーに志願しなかったんだよ?」

 

「セツナ君はさ、短距離とマイル走れるじゃん?

 

私はさ、最初はカレンチャンのトレーナーに志願したかったんだけど……何だろう、君があのキラキラした娘達を容赦なく食らいつくしていく絵が脳内に浮かんでね。

そんな世界の方が好きだなって」

 

……そんな理由かよ、と内心呆れる。

だが、オレの口角は上がっていた。

 

「……見てえか?」

 

「見たい、私は、君がレースに出てキラキラした娘や夢をもって挑んでる娘を容赦なく食らいつくして行く姿が見たい」

 

「……お前、トレーナーと言うよりそれはもう、悪魔か鬼だぞ」

 

「……鬼でも悪魔でも良い。私は、私の担当する娘を勝たせてあげたい」

 

瞳に映るその闘志は本物のそれである。

……ククク、嫌いじゃない。

 

「良いだろう、トレーナー。ますます気に入った。

……よぅし、まずはデビューだ。その後はお前がしっかり指示しろ。まとめて全員食らいつくして、絶望に歪む顔と、観客のブーイングの嵐と、お前のSNSの炎上を約束してやるよ」

 

「……SNSの炎上はやめて欲しいかなあ」

 

「お前はオレのトレーナーでもあり、悪魔と契約した罪な女でもある。

罪を償うには、贖罪をするには。犠牲が伴うよな?

 

……ククク、久々に気分良いぜ。まさかこんな狂ったトレーナーに出会えるとはよぉ」

 

……セツナ君が実に楽しそうに笑っている。

そう、その眼、その瞳なんだ。私が求めているのは……可愛さでもなく、賢さでもなく、ただ貪欲に勝利を貪り、食らいつくし、なお飽きの来ない怪物……いや、悪魔のような、そんな狂気に満ちた存在。

これこそ、私が探していたウマ娘。

 

……あの娘のような、そんな存在。それがセツナ君なんだ。

改めて私は確信する。この娘は、強い。なら私も答えなければいけない。あの時、あの娘の夢を叶えてあげれなかった事への償いとして……。

 

「……トレーナー。オレはハッキリ言うとデビューであろうと何だろうと、負ける気がしない。

だが、慢心はしない。手も抜かない。

 

ついてこれるか?」

 

セツナ君が悪魔のような笑みを浮かべながら聞いてくる。

私の答えは、私を助けてくれたあの時から決まっている。

 

「……一緒に逝こう、地獄の果てまで」

 

「それでこそ、オレのトレーナーだ。

ならまだ登校までに時間はあるから、少しデビュー戦への打ち合わせでも作戦とか兼ねてやるか」

 

「そうだね、そこは任せてよ。勝たせてあげるから」

 

「任せろ、勝ってやるから」

 

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