退学になりかけてたウマ娘のトレーナーをやることになった話 作:刹那 結城
「……驚いたな、まさか君がグラウンドに居るとは」
登校して早々、セツナは朝練を始める。すると偶然視察に来ていたルドルフに声をかけられる。
「……よぉ、カイチョー様。
昨日はよくもぶん殴ってくれたな、ってのは置いといて、だ。
オレ、今年のメイクデビュー出なければどっちせよ退学なんだろ?」
「……一応、トレセンの規則でそうなっている。
ただ、君が勉学の方で成績を残した、となると別だ」
「オレが勉強できると思うか?
そんなことより、カイチョーさんよ。1つ頼まれちゃくれないかな?」
「ふむ、可能な範囲なら。だがまずは話してみてくれ」
「女帝と模擬レースがしたい。頼めないか?」
ルドルフは少し考え、言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開く。
「……あまりウチの副会長を甘く見ないでほしい。
だが、1つ気になったことがあるから答えてほしい。その自信、どこから来てる?」
「全てを喰らい尽くす。それだけだ」
「……面白いことを言うな、君は。
実力を把握せずに勝負するのは愚者のやることだ、そしてエアグルーヴは強い。
君に問おう、君は愚者かい?それとも勇者かい?」
「ンなの聞かなくともテメエは分かってるだろ?愚者だよ」
「……だ、そうだ。エアグルーヴ。どうする?」
「……私がそんな安い挑発に乗ると思うか?セツナよ」
「あン?」
「そもそもなんの成果もあげてない、いや、あげれたかもしれないがあげなかった貴様を相手にするほど私も暇じゃない、ということだ」
「……それはつまり、まだ今のオレじゃアンタに挑む資格は無いってことだな?」
「その含みのある言い方は気に食わんが、そういうことだ」
「分かった、ならお前の方から勝負したくなるような成績を残してやる。その時まで頭洗って待ってろ」
「……随分と大きな口を叩く。だが、良いだろう(それと、頭ではなくて首だぞ、セツナよ)」
「んじゃ、オレは人も増えてきたし、そろそろお暇しますわ」
ーーー。
「お帰り、セツナ君」
「おぅ、ただいま。
っても、今から授業なんだけどな」
「授業には出るの?」
「いや、フケる。ちょうどシリウスにビリヤード誘われてるし」
「……そこはいつも通りなのね、ある意味安心したよ。
一応伝えておくと、3日後にメイクデビューだからこれだけは出てね」
「当たり前だ、それは守るさ。ンじゃな」
セツナはトレーナーに別れを告げ、サボるために準備をしに行くのであった。
?「いやー、若いねえ。エネルギーに溢れてるねえ。あの子。
アタシがもうちょっと若かったらなあ、あの子のトレーナー志願してたねえ」
双眼鏡から視線をずらし、独り言を口にする。
どうやらこの女性は一連の流れを遠くから見ていたらしい。
「……覗き見は感心しねえなあ」
その女性に声をかけるセツナ。
「あらら、バレてた?かなり距離離れてたし、なんならバレないと思ってたんだけどなぁ。腕が鈍ったかね」
「……双眼鏡の光の反射で位置を見つけただけだ。
んで、なんの用だよ?」
「ん~?用って言う用事はないかなあ。
ただ、君と雪風トレはすごく良いコンビだね、とね。
初々しくて、私も元気貰っちゃえるから得した気分」
「……所で、そのバッチ。トレーナーだな」
「うーん、なんでもお見通しって訳かあ。
ままっ、訳あって今年はフリーだからねえ。このバッチも飾りよ、飾り」
「……まあ飾りでも何でも良いわ。それよりよ」
セツナは軽く女性の全身を見る。
「……アンタとは一戦交えてみたかったもんだ」
セツナは吐き捨てるように小声でそういう。
「……時の流れってのは残酷だよね。アタシも、今でこそ走らないけどさ。君みたいなそのギラギラした狂気的な目を見たらさ、疼くじゃん」
「まあ、アンタはトレーナーの方が向いてると正直思わんこともないけどな。実際にあの二人はトンデモお化けな訳だし」
「……ままっ、ゆるーく行こうよ、争う理由もないし。
あ、これアタシの名刺ね。雪風ちゃんに渡してあげて」
セツナは 酒臭い名刺をゲットした! ∇
「まあ、渡しとくわ。
っと、そろそろ時間か。んじゃな、遊び行ってくるわ」
「いってらっしゃーい」
(面白いウマ娘だねえ……)
(おもしれー女だったな、ウマ娘だけど)
メイクデビューまで、あと3日!
終わり