因子継承!?あの娘とあの娘をレッツ・ラ・まぜまぜ! 作:アマノジャック
「これで…俺も『ウマ人』に…」
元トレーナーにして、アグネスタキオン、アグネスフライトの祖父であるチヒロの左手にはとある『合成因子』が握られていた。
「…最悪死ぬ、だったよな…だが、試す他に無い。まだまだ俺が救うべきウマ娘たちがいる筈だ!」
ゴクン
「がっ…!あ、ああぁぁ!!」
室内に苦悶の声が辺りに響き…チヒロの身体は…『ウマ人』へと変化した。
………
翌日のアグネスタキオンの研究室…ダイイチルビーがアグネスタキオンとソウジの元を訪れていた。ソウジは紅茶を入れてアグネスタキオンとダイイチルビーへとカップを置き、話を聞き始めた。
「チヒロさんが行方不明?」
「…はい。アグネス家、メジロ家、華麗なる一族はもちろんのこと、URAまでもが捜索を始めています。貴方たちにもご協力していただきたく…」
「協力って…いや、その前にチヒロさんって…」
「事故で入院してたよね?」
ーーー
ーーー
それは数日前のこと、顔を真っ青にしたアグネスフライトがソウジのところへとやってきた。
「ソウジさん!すみません、しばらく私の担当ウマ娘たちを預かってもらえますか?」
「おい、随分と急な話だな?何かあったのか?」
「じいちゃんがオペに向かうためにタクシーに乗ってたら衝突事故で重態に…」
「分かった、俺に任せろ。すぐに病院に行ってこい。」
「はい!シックスちゃんから連絡が来ますので…詳しくは彼女に。」
そう言うとアグネスフライトは慌てて部屋を後にした。
「タキオンは行かなくていいのか?」
「…今は手が離せないんだ。」
「手、震えているぞ。それって試行回数のだろ?俺が代わりに記録してやるから…お前も行ってこい。」
「し、しかし…」
「俺のクローンを使う。それなら問題ないだろ?」
「…あぁ、頼んだよソウジ。」
アグネスタキオンも部屋を後にし、残されたソウジは冷凍庫からCソウジを2体取り出して、解凍を始めた。
………
「クールダウンが終わったな…それじゃあ、今日はここまでだ!」
『お疲れ様です!』
16人のウマ娘たちの背中を見送ると、シックスセンスがソウジへと頭を下げた。
「今日はありがとうございましたソウジ先輩。本来ならわたしが1人ですることを…」
「この人数となれば流石にな…それに俺だけじゃないよ。」
「へ?あ、そうですよね!同じクローンとはいえ、この人もソウジ先輩ですよね?えーと、『ジンソニック』さん?」
先ほどまで16人のウマ娘に指導していたのはソウジとシックスセンス、そして『ジンソニック』の『ウマ人』となったCソウジの3人。シックスセンスが『ジンソニック』へと顔を向けると、『ジンソニック』はニヤニヤとした顔をしていた。
『バーカ!俺だよ俺!』
「え?ま、まさかサンデー…『いただき!』きゃっ!?」ガクッ
「おいおいおい!」
『ジンソニック』…否、サンデーサイレンスはそのままシックスセンスへと憑依すると同時に、着ていたスーツの胸元を崩した。
『はー、久々に憑依したけど…堅苦しい服だなオイ。んー、身体が軽ぃ…シックスセンスお前、ちゃんと飯食ってるのか?プイの方が重い…いや、それは腹にもう1人いるからか。』
「サンデーサイレンス、何してんのお前?何俺以外に憑依してんの?」
『細けぇことはいいだろ別に。んー、この身体の"アレ"はまだ来そうにねぇが…前みたいにこのままヤるか?』
シックスセンスの身体で色っぽいポーズをとりながらソウジを誘うサンデーサイレンス。ソウジはため息をつきつつ返事をする。
「バカ言うな。俺はこれから病院に行かないと…事故でチヒロさんが入院し…」
『ハァ!?本当かソレ!?ったく…俺も向かう。
「ダメだ。その身体の寿命は後1時間くらいだから…処理しておかないと…」
『…チッ。しゃーねぇ、俺の身体で直接向かう。ラバーとブラックはウララにでも預ける。』
「…状況が状況だ。そうしてくれ。」
サンデーサイレンスはそのままシックスセンスから抜けて、自身の身体へと帰った。ソウジも混乱するシックスセンスに後片付けを任せ、Cソウジを片手に練習場を後にした。
………
ソウジがチヒロの運ばれた病院へと入るとそこには多くの人で埋まっていた。そして、アグネスフライトに連れられて病室へと入る。
「…。ソウジか。」
「ー!?」
意識はあるものの、全身が包帯で巻かれ、右腕と右足が短くなったチヒロの姿がそこにはあった。
ーーー
ーーー
「あの時…俺は何て言えば良かっただろう…」
「私は…おじいちゃんを直視することが出来なかったよ。」
「お2人の反応はごく自然かと。」
「しかし、最初に気にすることが手術とはチヒロさんらしいよな。」
「入っていた予約は全て弟のユウト様が執刀し、無事に完遂なさいましたのでご心配なく。」
「…外科医としてあの欠損は…致命的か。」
「何十年もの慣れたものが突然に失くなってしまったので。その間に何百のウマ娘たちが救われたことか…」
「サンデーサイレンスにケイエスミラクル…まだまだいるよな。しかし、どうやって行方不明になったのだろう?」
「此方をご覧ください。」
ダイイチルビーがタブレットにある映像を再生する。すると、チヒロの病室から出てきた謎のウマ娘が右腕と右足を剥き出したまま何処かへと向かっていく様子があった。
「タキオン、これって…」
「おそらく『ウマ人』となったおじいちゃんだろう。『合成因子』を持っていたのか?それに…身体の欠損が回復した理由が不明だ。」
「…やはり、そうでしたか。」
ここでダイイチルビーが自身の頭に手を当てる。
「ダイイチルビー?」
「ソウジさん、タキオンさんの『因子』についての論文を参考に私たちの一族で腕輪を作成したことを覚えていますでしょうか?」
「あぁ、ウララが阪神で走った時のことか。腕輪ごとお前の『因子』を渡してきたよな…」
「少しではありますが『合成因子』も作成も行われようとしていました。」
「「えぇ!?」」
驚愕の事実にアグネスタキオンとソウジの口から同時に声が出る。
「そうだったのかい?」
「はい。結果、上手く作成出来た『合成因子』は1例だけ…しかし、それはタキオンさんへ渡ることはありませんでした。」
「と、言うと?」
「彼へプレゼントしたお守りの中に入れておきました。常に私を感じて欲しかったので。」
「真顔でとんでもないことを言うなよ…。で、お前と誰の『合成因子』?ケイエスミラクルか?」
「それはすでに84番目にあるのだが…」
「私と…ヘリオスさんです。」
「よし。話は分かった…まずはチヒロさんの行方を…」
「それは既に『華麗なる一族』が把握し、周りには立ち入り禁止の処理済みです。ソウジさん、貴方にしていただきたいのは…チヒロ様の無力化です。お願いできますか?」
「…確かに
「同じ『ウマ人』である貴方にしていただくのが立場上、1番都合がいいのです。」
結局、ソウジは引き受けることにした。
ーーー
場所はとある公園…『ウマ人』となったチヒロは本能のままに叫び、ベンチや柵を蹴り、破壊していた。それにソウジはこっそりと近づいていく。
「あ!があぁ!!あぁ!!」
「…」
そして…
「チヒロさん!!」
大声を出し、自身へと意識を向かせた。するとチヒロはそのままソウジを拳で殴りにかかる。拳が目の前に来ると…ソウジはとある『合成因子』を飲み込んだ。
ゴクン…ファサッ!!
「…!?」
辺りは一瞬で白い糸の様なもので覆われ…『ウマ人』の拳は飲み込まれ、動けなくなってた。その正体は『ピンクバナナ』による超ロングな体毛…そしてチヒロは『華麗なる一族』の関係者たちに捕えられ…病院へと連れていかれた。
………
「ーーはっ!?俺は…?」
「正気に戻りましたか…チヒロ様。」
「ルビー…」
「レディさんもラモーヌさんも…いえ、それどころの話ではありませんね。多くの人があなたのことを心配しております。」
「…」
「なぜそのようなことを?」
「俺は元トレーナーであり…医者だ。レースへ走る多くのウマ娘を幸せにしたい、それは今も変わらない。また医者として過ごすためには…腕を生やす必要がある…『ウマ人』なら出来るだろうと掛けた訳だ。」
「…そのようなデータはありませんでしたが?」
「アメリカで『ウマ人』状態のソウジから銃で撃たれたことがあったろ?傷が再生していたから…可能性はあった。」
「そうでしたか。ですが…命を失うかもしれなかったのですよ?」
「俺は死なねえよ。だって、レディが…ラモーヌが…何よりルビーがいるんだ。絶対に死なない自信があった。」
「…」
チヒロの真っ直ぐな顔にダイイチルビーが言葉を失う。
「…で?これって本当に腕と足が生えてきたのか?『ウマ人』って凄いな。なってみて良かったわコレ。」
「チヒロ様…タキオンさんが言うにはその再生の理由は不明とのことです。」
「…確かに思い通りには動かないな。慣れてないだけどいいが…おお?尻尾があるってこんな感じか…ルビー、ちょっと近くに。」ブンブンッ
「は、はい?分かりました…」
グルッ
チヒロは尻尾をダイイチルビーの尻尾へと巻きつけた。所謂尻尾ハグを行ったのだ。
「ーー!?チヒロ様?」
「いつも巻かれてたばかりだからな…たまには逆も…」
「…」
「ルビー?」
「…」ハァハァ
「ルビー!?まさか"アレ"に…」
「もう1人…産みますよ…♡」
「…好きにしろ…俺は抵抗出来ん。」
「はい♡」
………
……
…
ーーー
数ヶ月の時が流れる…チヒロは動けるようになったが姿は『ウマ人』のままであった。医者としてまだ診察や執刀こそ出来ないものの、生活には支障がないことが分かったためアグネス家の本家で妻や子供たちを過ごしていたある日、アグネスタキオンに呼ばれ、トレセン学園へと足を運んでいた。
「レースだと?」
「折角2人目の『ウマ人』が出てきたんだ…やらない手はないだろおじいちゃん?」
「『合成因子』の回収のためにチヒロさんの身体の現状をもっと知る必要があるのですよ。」
「いや、俺はもうかなりの歳だし…」
「目的はデータ収集だ。ちょっとした運動程度に捉えてくれたらいい。分かったなら早く着替えたまえ。」
「俺の孫、冷たいなぁ…」
チヒロはジャージへと着替え、練習場へと向かう。
「しかし…本当に走れるのか?」
「まずは軽く1周してみてください。」
「あぁ、分かった。」ダッ
チヒロは走り出すと自身のスピードに困惑しながらも、何とか完走した。
「どうかなおじいちゃん?」
「凄い…まだまだ走れそう!」
「では、距離適性を確認後に調整を行いましょう…レースに向けて。といっても基本的にはこのメニューをこなしてもらえれば。タイム測定に
「ふむ…軽めのトレーニングばっかりだ。まぁ、成長はしないだろしな。」
「メンバーは私が集めておこう…頼んだよおじいちゃん。」