因子継承!?あの娘とあの娘をレッツ・ラ・まぜまぜ! 作:アマノジャック
今日は中山大障害ですね…『オジュウチョウサン』のラストランです。『ニシノデイジー』も出走です!また中山の新馬戦にグラスワンダーのラストクロップの『ファイナルワンダー』が出走…勝って欲しい!
勝ったのはニシノデイジー!!!!
セイウンスカイ、ニシノフラワー、アグネスタキオンの血統を持った競走馬が勝った!!!!
ファイナルワンダーは勝てませんでしたが…次を期待します!
あ、急ですが過去編です。
時は2年前の夏へと戻る。ソウジにとっては唯一の担当ウマ娘であったタイキブリザードがドリームでも活躍した後にトレセン学園を卒業した。そのためソウジは新たな担当を持つべく他のトレーナーと共にウマ娘の練習をみていたのだが…
「…」ダッダッダッ
この時点でポテンシャルが高い娘もいた。自分の指導で大きく伸ばせる娘もいた。しかし…この日もソウジが誰かをスカウトする動きを見せない。
「先輩?スカウトしないんすか?」
「うーん…いい娘はたくさんいるんだけど…」
「タイキブリザードが忘れられないんすね?」ニヤニヤ
「その顔やめろ。…お前はどうなんだハヤト?」
「いや~、面白い娘がスカウト出来ましたよ。ウマドルなるものを目指していて…ほら!あのツインテールの娘っす!」
ソウジが見てみるとダートコースの先頭で走っているウマ娘がいた。
「…ハヤト。あの娘だが…」
「何すか?ファン2号になってくれるんすか?」
「『本格化』の傾向が全く見えない。おそらくだが…デビューするのはかなり先だな。」
「…え?マジすか?」
ーーー
数日後、ソウジは1人のウマ娘へアドバイスをしていた。
「コーナー時に足首に力が入り過ぎだな。捻挫の原因にもなるから気をつけてくれ。」
「はい!ありがとうございました!…このまま私の担当になってもらえませんか?」
「嬉しいことを言ってくれる。だがお前の『本格化』はまだ先だ。故に今はお前の担当にはなる気はない。だからと言って焦らずにマイペースにケガだけはしないよう練習をして欲しい。もし、俺以外にいいトレーナーがいたらソイツを選べるし…結局は自身の道を決めるのはお前だ。」
「はい!もしその時にまた、私の担当がいなければ…なってもらえるか考えていただけますか?」
「勿論だ。…今日はここまでにしておけ。」
「はい、失礼します!」
「ふぅー…これで2人目か。」
ソウジは一息つく。トレセン学園においてトレーナーがスカウトするのは基本的に『本格化』の兆候があるウマ娘で多い。早めに担当を持つに越したことはないが、それはそのウマ娘の専属になることを意味する。しかし『本格化』が来ないまま卒業となるウマ娘も過去にいたのでそれを嫌うトレーナーも多い。そのため、目をつけたもののまだその兆候がないウマ娘にトレーナーが青田買いを行うことも珍しくはないのだ。1人のウマ娘に複数のトレーナーから声がかかることもあるが、その場合はウマ娘が誰をトレーナーにするかを選ぶため、問題はないとのこと。
「ブリザード…」
それは現在のソウジにとってはありがたい風習だった。スカウトしてこそトレーナーだがタイキブリザードが卒業した今、どうしても次の担当を持つ気になれないのだ。
「さて…遅くなったし後は見回りをして…ん?」
辺りは暗くなり学内の消灯されていく中、ソウジは練習場の方へと目を向けた。
ダッダッダッ
「誰かが走っている?」
練習場は既に暗く、誰も走ることは出来ないはずだ。そう思いながら近づくと同時にソウジは目の前の光景に息を飲む。誰かの下半身が練習場を走っていたのだ。もう一度言おう…下半身が走っていたのだ。恐怖を感じたソウジはその場で慌てて身を隠す。
「…動きが悪いねぇ。想定の10%もいかないとは…やはり、尻尾も付けておくべきだったかな?」ポチポチ
こっそりと様子を見てみると、近くにはタブレットを片手に下半身の動きを観察するウマ娘がそこにいた。
「(あれは…今年の皐月賞を勝ったアグネスタキオンか?)」
アグネスタキオン…4戦4勝(内重賞3勝)を記録しつつも皐月賞直後のケガにより引退となったウマ娘。彼女が下したウマ娘の中には後にNHKマイルを勝ったクロフネ、日本ダービーを勝ったジャングルポケットがおり、今後の活躍が期待されたウマ娘だ。
「(…そんな彼女がなぜ練習場で?いや、そもそもあの下半身は何だ?)」
「機械は苦手だ。やはり、ここは人体実験といこう…そこの君でね。」
「ー!?(バレてる!)」
「隠れる必要はないさ。何…ちょっと実験に協力して欲しいだけだよ。」
「おいおい…人体実験と聞いて『はい、そうですか』と答えるトレーナーがいるとでも?」
「ウマ娘の希望を聞くのが君たちトレーナーの仕事だろ?」
「あぁ、レースを控えた真面目なウマ娘ならそうなるな。少なくともケガで引退し、授業をサボるようになったお前は含まない。姉や母に申し訳ないとか思わないのか?」
「やれやれ…私の悪名もここまで有名になったものだ。しかし、これは私にも譲れないこと…力ずくでもやってもらおうじゃないか。」
「バカか。やらないと言っただろ…じゃあな。」
そう言いソウジはその場を去ろうとするが…
ガシッ
「があっ!」
背中を向けた瞬間、アグネスタキオンに取り抑えられた。
「バカはどっちかな?人間がウマ娘に敵う訳ないじゃないか?」
「お前!ケガしてるはずなのに…おい、離せ!こんなことしてただで…」
「黙りたまえ。君は大人しくモルモットになればいいんだよ。」
ガチャ
そのままソウジの足に何かを付けて、アグネスタキオンはタブレットを操作する。
「さてプログラム完了だ。20分でいい…筋肉と骨の動きのサンプルをもらおう。」ポチポチ
「おい、これどうなって…くそ!外れない…おわっ!」
「あまり喋らない方がいい。20分は走り続けるからねぇ…それじゃあ、よろしく頼むよ。」
ポチッ
アグネスタキオンの言葉と共にソウジの足が勝手に動き出す。
ダッダッダッ
「は、速…痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
「おや?ウマ娘の速度で設定してしまったようだ。しかし20分は止まれないから我慢したまえ。」
「これが…後…20分だと…!?痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」
痛みを訴えながらも、人の力を越えたスピードで走り続けるソウジ。その様子を光のない瞳で観察し続けるアグネスタキオン。20分が経つ頃には走りながらもソウジの意識は既に無くなっていた。
ーーー
「…知らない天井だ。」
ソウジが目を覚ますとそこはどこかのベッドだった。
「…悪い夢でも見ていたのか?まぁ、そうだよ…な?」
体を起こすと見えてきたのはギプスで固定されていた自身の下半身。
「…」
現状の理解。現実逃避。自身の今後…様々な思考が出てきたソウジがまず行ったのはナースコールのボタンを押すことだった。
………
「完治まで…1年ですか?」
「えぇ。筋肉の炎症、肉離れ、複雑骨折、剥離骨折、など数えればキリがないくらいですね。」
「そう…ですか…はぁー。」
ソウジから溜め息が出る。昨日まで出来ていたことが急に出来なくなってしまったのだ。すると、誰かが訪ねてきた。
「失礼します。」
入ってきたのはアグネスタキオン…ではなくその姉のアグネスフライトだった。
「…何の用だ?」
「私の妹がごめんなさい。」
「…アイツは?」
「1ヵ月の停学です。学園から出られず、生徒やトレーナーとの接触が禁じられました。」
「…そうか。」
「…怒りはないのですか?」
「あるに決まってんだろ!…だが、お前にぶつけるつもりはない。治ったら本人に言うだけだ。」
「…」
「お前からの謝罪は聞いた。悪いがアイツと顔が似てるお前を見たくない…もう帰ってくれるか?」
「…」
「何?まだ何かある?」
「タキオンちゃんを…妹を…どうか許してくれませんか?」
「許す訳ねぇだろ?帰れ。」
「私が何でもします!だから…あの娘の希望を…未来を…どうか…」
「なら今すぐ帰ってくれる?そんなことも出来ないか?」
「最後にこれだけ…タキオンちゃんのレースを1度でいいから見てください。…失礼しました。」
アグネスフライトは病室を去る。
「はぁ…たづなさんに連絡しよう。」
………
数時間後、届いたパソコンでソウジはアグネスタキオンのレースを見ていた。ドリームでのレースが中心となっていたソウジがトゥインクルのレースを見るのは久々だったのだが…
『ジャングルポケットを離す離す!
アグネスタキオン、まず1冠!』
「…何だよコレ。こんな…こんな悔しいことがあるかよ!」
圧倒的強者の速さ…言葉はそれだけに尽きない。数多くのウマ娘を見てきたはずのソウジだが、それでもこれほどの逸材をみたことはなかった。それほどに…怒りを忘れるほどにアグネスタキオンの走りに魅了されたのだ。そんなソウジにまた誰かが訪ねてきた。
「入るぞ。」
「あ…お疲れ様ですチヒロトレーナー…??」
ソウジの先輩であるチヒロは『アグネスレディ』を始め、メジロラモーヌ、ダイイチルビーなどG1ウマ娘を育ててきた大ベテランであり、かつてサブトレーナーとしてソウジもチームに所属していた。現在もニシノフラワーやメジロブライトらを担当しておりトレセン学園で彼に頭が上がるトレーナーはいない。そんな彼がいきなり自分へと頭を下げたのだ。当然ソウジは混乱する。
「…俺の孫がすまなかった。」
「孫?」
「アグネスタキオンのことだ。」
「…はい?」
「俺が無理やり引退させたばかりに…あんな奇妙なことをするようになった。」
「謎の下半身に走らせていたことですか?」
「元々頭が良かったんだ。それに加えて速いスピードを活かした走りでレースにも勝ってきた。まさか、引退後にこんな形で使われていたとは思っていなかったがな。」
「そう…ですか…」
「で肝心の話の内容だが…俺はもうすぐトレーナーを辞める。」
「え?そうなのですか?」
「お前…あのタイキブリザードを担当していただろ?お前になら、うちのルビーやブライトたちを任せていいと思っている。…これで許して欲しいとは思っていないが、お前にとって悪い話ではないだろ?」
「…」
大ベテランが育てたウマ娘を担当出来る。最初の1勝を勝ち取れるのが一握りとなるこの界隈で重賞レースを勝ってきたウマ娘を担当出来る。これほど美味しい話はないだろう。
「これが今のチームメンバーのリストだ。1人…いや、最悪全員でもいい。選んでくれ。」
そう言われてチヒロから受け取ったリストをソウジはみる。メジロラモーヌを始め、ダイイチルビー、メジロブライトとG1を勝ってきた強力なウマ娘たちの名前がそこにはあった。そしてソウジが選んだのは…
「アグネスタキオンを担当させてくれませんか?」
「…お前、正気か?」
リストには無い名前だった。
「…彼女のレースをみて思いました。彼女なら
「…」
「チヒロトレーナー、お孫さんを俺にください。」
「…それで満足するなら。」
「ありがとうございます。」
こうして、アグネスタキオンの担当トレーナーになったソウジだが…
「あのー、タキオンさんからはトゥインクルシリーズの除名届をもう受け取りました。よって復帰する場合には復帰届やタキオンさんのケガの完治証明書など色々と手続きが…」
「はい?」
「指令。アグネスタキオンの元トレーナーとして彼女の行動を監視するように。」
「はい?」
「君が私のモルモットに志願したトレーナーかね?物好きなことだ…では、早速このクスリを飲んで貰おうか。」
「もがっ!」
ゴクン
「これで下半身のケガは1月後には歩けるくらいに治るだろう。さっさと次の実験までに治してたまえ。」
「お前…ん?」
ピカーン
「どうやらこのクスリには発光する副作用があったようだ。実に面白い。」
「…もしかしてこれが完成すればお前のケガは治り、レースに復帰してくれるのか?」
「ん?私がいつ完治後に復帰するとか言ったかね?君はこれから私の研究の実験動物になるんだ…満足するで壊れないでくれよ。」
「…」
そこから約1年…ソウジはアグネスタキオンのモルモット兼監視役となるのだった。その間、アグネスタキオンと共にソウジはケガを負ったり、絆を深めたり、ケガを負ったり、胃袋を掴んだり、ケガを負ったりするのだが…それはまた別の話。
アグネスレディ…1976年生まれの鹿毛の牝馬。主な勝利は当時のOPクラスの優駿牝馬(オークス)。引退後は繁殖牝馬として桜花賞を勝ったアグネスフローラを出した。さらにそこからアグネスフライト、アグネスタキオンが生まれた。この作品でもアグネスフライトとアグネスタキオンの祖母であるが…チヒロとの関係は不明(次回分かる)。