因子継承!?あの娘とあの娘をレッツ・ラ・まぜまぜ! 作:アマノジャック
今回の話に彼は出てきませんが…彼への敬意として投稿させていただきます。
『元・未勝利の星』ハルウララ。彼女は地方レースの未勝利戦での勝利を皮切りに6連勝したのち、中央レースである『プロキオンS』に出走。4着というかなりの好成績を叩き出した。そして…
『1着はハルウララ!
もうこの高知で彼女を止めれる者はいないのか!』
パチパチパチパチパチ
「ウララちゃん、おめでとう!」
「ずっと応援するからね!!」
「みんなありがとう!!」
地方、高知のレースにて7勝目を勝ち取った。
………
「トレーナー!トレーナー!勝ったよ!すごいでしょ?すごいでしょ?」
「うん、すごいよ…本当に。」
「ねぇねぇ。次のレースはなぁに?」
「次は…重賞レースよ。」
「ジューショー?またチューオーに行くの?」
「ううん。高知で行われる『建依別賞』よ。」
「たけよりわけしょう?…うーん、よく分かんないけどジューショーなんだよね?今度こそ勝つから…みててねトレーナー!」
「そうね、頑張ってね。」
「うん!!」
そして、夏合宿の始まる直前…その日は来た。
ーーー
『さぁ、始まりました今日のメインレースの重賞『建依別賞』。
注目が集まるのはこの2人。
1ヶ月前に中央でありました『プロキオンS』で掲示板内に入った『ハルウララ』!
前回のレースでも1着を取っています。』
パチパチパチパチ
「ウララちゃん!頑張ってー!」
「初重賞期待してるよー!」
「うん、頑張るね♪」
『そしてもう1人は中央での成績を含め重賞を5勝。
その中には『プロキオンS』の勝利もあります。
ケガに何度も泣かされつつもその度に復活。
そして現在5連勝中の大ベテラン『ナムラコクオー』!』
ワアァァーーーッ!
「コクオー!」
「お前ならまだいける!」
「ケガには気をつけてくれよ!」
「…」
ナムラコクオー…怪物ナリタブライアンと同期の黒鹿毛のウマ娘。重賞を2勝した後、ダービートライアルにも勝利。そして、『打倒ナリタブライアン』を胸に挑んだ日本ダービーは6着と敗れた。その後はケガにより2年近くの休養…復帰後に『プロキオンS』を勝利するも再びケガにより休養。その間に『本格化』も終わり、この高知へと移籍した。その後も何度もケガでの休養があったものの今まで現役を続けており、最近も勝っているのだ。
そんな彼女を含め、各ウマ娘たちはゲートへと向かっていく。
『12人がゲートに収まって…スタートしました!
さぁ、広がりまして…真ん中の2人が前へと出てきました。
マチカネジュウベエ、その斜め後ろにナムラコクオー、さらに…マッケンリーダーが続いています。
ハルウララは中団で様子を伺っているか残り1000、第2コーナーへと迎います。』
「いいぞコクオー!!」
「ウララちゃん、頑張れー!」
見事なスタートを切ったハルウララは内側の位置を取り、6番辺りをキープしていた。
『前の2人はそのままペースを上げ、3番との間が開きます。
4番にオースミレパードとジョイフライト。
その後ろにハルウララ、ペースを上げてきたか、第3コーナーに入ります。』
「コクオー!押し切れー!!」
「ハルウララ!!いけるぞ!!」
『ここでジョイフライト後退か、オースミレパードがかわす。
先頭はナムラコクオー。
さらに後ろからゼンノスピリットも上がってきた!
ハルウララは外へとくる!
そのまま第4コーナーへと入ります!』
「よしっ!」
ダンッ
各ウマ娘が仕掛けていく中、ハルウララもここでスパートを切る。
『さぁ、第4コーナーを越えて残るは200mの直線!
先頭はナムラコクオー、後続を突き放しにいったか!
しかし、ここでハルウララ!
ハルウララが外から迫る!
完全にこの2人のマッチレースとなりました!』
「ナムラコクオー!!」
「ハルウララ!!」
「はあぁぁぁ!!」
「ー!おらあぁぁぁ!!」
『残り100!
先頭は僅かにナムラコクオー!
しかし、ハルウララがその差を詰めてくる!
ナムラコクオーが逃げ切るか、ハルウララが差し切るか!
…ハルウララだ!
ハルウララが差しきりました!!
1着はハルウララ!
ついに重賞を手に入れました!』
ワアアァァーーーッ!!
「や…やったーー!!」ピョン
「はぁ…はぁ…!くっ!」
『ウララ!ウララ!ウララ!!』
先程までナムラコクオーを応援していたファンの方が多かった。しかしその場には今、ハルウララの名前が響いている。こうして建依別賞はハルウララの勝利で終わったのだ。
ーーー
「トレーナー!勝ったよ!ジューショーレースに勝ったよ!」ダキッ
「…うん。ぐすっ…本当によく頑張ったねウララ。」
「トレーナー?何で泣いてるの?…あ!そうだね!チューオーのジューショーも勝たないとだね!明日からもぉーと練習頑張るから!それで勝てたら笑顔になる?」
「ううん、泣いてるけど私は笑顔よ。次また中央に行けるまで勝っていこうね!」
「うん!あ、今からこっちの友達に会ってきていい?」
「いいよ。…2時間後にここに集合ね。」
「はーい!」
………
「うらら♪うっらら~♪うっ♪うらら♪うっらら~♪う…?」
地元の友達の会話を終え、上機嫌に歩いてハルウララの足が止まる。どこからか声が聞こえてきたからだ。
「……も…限…か…」
「???」
そして、声が聞こえてきた方へと足を進めると…1人のウマ娘が泣いていた。そのウマ娘はナムラコクオー…先程のレースで競った相手だ。
「コクオーさん?」
「ー!ハルウララか。私を笑いに来たのか?」ゴシゴシ
慌てて涙を拭うものの、真っ赤なその顔は誰が見ても泣いていたのは明らかだった。
「違うよ!えーと…」
「…すまないな。君がそんな娘ではないのは分かっている。…君はケガをしたことはあるか?」
「ううん、無いよ。とれーなーやみんなにも言われたけど私ってガンジョーな体らしいの!」
「…羨ましいよ。『無事これ名ウマ娘』って言葉は知っている?」
「あぅ…ごめんなさい。知らないから後でキングちゃんに聞いてみる…」
「…ハルウララ。私は…悔しかった。目標にしていたレース中にケガをして、復帰してもケガをして…そして『本格化』が終わってしまった。」
「…あれ?『ほんかくか』が終わったらレースって出れないんじゃ…」
「中央だとそうだ、だが私は諦めることができなかった。だからトレセン学園を退学して…地方へと移籍した。…そしてまたケガをして、どんどん周りが成長していった。」
「…ごめんね。コクオーさんの辛さはウララには分からないよ。」
「それでいい…これからも頑張ってくれハルウララ。」
「でも!今日コクオーさんと走ったことは忘れないよ!キングちゃんが言ってたの!『しょーしゃにははいしゃのおもいを背負う責任がある!』って!だから…えーと…うーん…」
「…フッ、フフフフ!」
「コクオーさん?ごめんね、いい言葉が出てこなくて…」
「大丈夫、君の想いは伝わってるよ。」
「うん!やっと笑顔になったね!」
「…あ。」
ナムラコクオーは自身が笑ったことに気づく。そして、立ち上がりそのまま歩きだした。
「ありがとうハルウララ。」
「ウララって呼んでよ!またレースした時はよろしくねコクオーちゃん!」
「ーー!!あぁ、ウララ。またね。」
「うん、バイバイ!!…あ、私も早く行かないと!」ダッダッダッ
ハルウララもその場から走りだした。
ーーー
「…ハハハ、まさか退学した学園の娘から元気を貰うとは複雑だな。」
「…おい。」
「ーーーナリタブライアン!?なぜ君が…」
「重賞レースだ。学園の関係者くらいいる。」
「…そうなんだ。初めまして、私は…」
「学園にいて、レースをした相手くらい覚えているぞ…ナムラコクオー。」
「…え?」
「トゥインクルで…今も走っていたのか。」
「…うん。でも、次にケガをしたら完全に引退だ。重賞ウマ娘とはいえ、退学して地方にまで移籍した私が今さらドリームになんて…」
「…そうか。その後はどうするつもりだ?」
「ここで過ごすよ。中央の時と比べれば少ないけど…応援してくれるファンがいる。だから…」
「…それはお前の本心か?」
「…」
「私はもう行く。…じゃあな。」
ナリタブライアンはそう言うとさっさと去ってしまった。そしてナムラコクオーは、その場でまた長時間立ち続けた。
ーーー
ハルウララは数分の遅れはありながらもコハルと合流し、トレセン学園へと戻るバスに乗っていた。そして、疲労のためかハルウララはそのまま眠ってしまった。
「キングちゃん…Zzz…ちゃんと…Zzz…歯は磨いたよ…Zzz…」すーすー
「本当によく頑張ったねウララ…!?」
プル…ピッ
コハルの携帯が鳴る。ハルウララを起こさないよう、ワンコールでその電話へと出て席を離れる。
「はい、中央トレセン学園の…え?ウララをまた中央のレースへ?しかもまた重賞?」
ハルウララ、中央出走決定。
ナムラコクオー…1991年生まれの黒鹿毛の牡馬。主な勝利はNHK杯(当時のG2。後のNHKマイル)、ラジオたんぱ杯(当時のG3。後のホープフルS)、シンザン記念(G3)、プロキオンS(G3)、黒潮スプリンターズC(地方重賞)、建依別賞(地方重賞)。名前の元ネタは冠名+北斗の拳の『黒王号』から。ナリタブライアンと同期で特に東京優駿では2番人気に推されるも途中のケガにより6着、2年もの休養を挟むことになった。その後も復帰とケガを繰り返し、高知へと移籍。さらに6年間、現役を続けた。引退後は種牡馬にはなれず、余生を高知で過ごした。
ーーー
▼登場人物にナムラコクオーが追記されました。