レズはヤダ!レズはヤダ!レズとドSは嫌だぁぁぁぁぁ 作:空色
ギルドに戻ってきたケネシーは信じられないことを聞き、マスターに問いかけなおした。
「聞き間違いだよな?ウェンディとシャルルだけで六魔の討伐に行かせたって聞こえたんだけど」
「なぶら聞き間違いではない」
その言葉を聞き、ケネシーはマスターの襟元を掴み上げる。そして至近距離で覗き込むようにして怒気を辺りに振りまいた。
ケネシーの周囲から魔力が吹き荒れ暴風となって辺りを揺らす。魔力だけでマスターの持っていたジョッキ内の酒を激しく波立たせた。酒場だったこともあり中にいたギルドメンバーは固唾をのんで見守っていた。
「なぶらこれはウェンディが望んだことじゃ!もしかしたら自分と同じ滅竜魔導士がいるかもしれないからと!」
「………チッ!マスター、場所を教えてくれ。今から俺も行く」
マスターを開放したケネシーは旅支度を始めた。
同時刻、とある館で三つのギルドが顔を合わせていた。
「これで3つのギルドが揃った。残るは化猫の宿の連中のみだ」
「
リオンの問いかけにジュラが頷いた。
「ああ、正式な情報ではないが闇ギルドをたった一人で潰したとされている魔導士が在籍している」
「一人で!?」
「マジかよ…」
「俄かには信じがたいが今回は味方である。心強い限りだ」
「早く会ってみてえな!」
周囲がざわつき始めるとそれを遮るように一夜が声を上げた。
「あの~、連中というか、一人だけだと聞いてまぁす」
鼻血を流しながらそう語った一夜に、グレイたちが驚いて喋り出す。
「一人だと!?こんな危ねー作戦にたった一人だけをよこすってのか!?」
「ちょっとぉ~、どんだけヤバイ奴が来るのよぉ~!」
「それだけ自信があるのではないか?件の魔導士が来るのであれば納得だ」
「きゃあっ」
動揺が広がる中、そんな悲鳴と共に盛大に転んだ人物がいた。
「痛ぁ………あ、あの………遅れてごめんなさい」
その人物は服を叩くと起き上がる。
「
そこには緊張した面持ちで自己紹介する、可愛らしい少女がいた。
「子供!?」
「女!?」
「————ウェンディ?」
全員が意外な人物に驚いた声を上げる中、ナツはその名前を反芻した。
ウェンディは珍しいものを見るかのように周りをキョロキョロと見回した。他の人たちはまだ、衝撃から立ち直れないでいる。そんな中でジュラが口を開いた。
「これで全てのギルドがそろった」
「話進めるのかよっ!」
グレイのツッコミがその場に響く。
「この大掛かりな討伐作戦にお子様一人をよこすなんて何を考えてますの?」
「それだけ自信があるのだろう」
シェリーが不満そうに言えば、その場にまた新たな声が響いた。
「あら、一人じゃないわよ。ケバいお姉さん」
それはウェンディよりもさらに小さい影だった。
「シャルル、ついてきたの!?」
その小さい影、白いネコが偉そうに胸を張った。
「当然よ。あなた一人じゃ不安でしょうがないもの。今回はケネシーもいないし」
シャルルはため息を吐きながらウェンディを見る。
「あ、あの………私、戦闘は全然できませんけど………そ、それでも、皆さんの役に立つサポートの魔法いっぱい使えます………だ、だから仲間はずれにしないでください〜!」
ウェンディはここ数年で気弱さに拍車がかかっており、ここまで言うのにもう泣きそうになっていた。前情報とのギャップに、この場にいるものは完全に毒気を抜かれていた。
「そんな弱気だからなめられるの!アンタは!ここにはケネシーは居ないんだからねッ!」
「うぅ………ごめん」
「謝らないの!」
「ごめん………」
一同はだんだんとウェンディとシャルル、両者の関係性を察してきている。
「すまないな。驚かせるつもりはなかったんだ」
エルザが優し気に話しかけるとウェンディは目を輝かせた。そして興奮気味にシャルルに話しかける。
「うわぁ、エルザさんだ!?本物だよぉシャルル!」
「思ってたよりいい女ね」
そこにハッピーが近づく。
「オ、オイラのこと知ってる?ネコマンダーのハッピー!」
シャルルは鼻で笑ってプイッとそっぽを向いた。
「照れてる………かわいい〜」
パッピーは名前の通りハッピーな思考でそれを独自解釈した。
「あの娘、将来美人になるぞ」
「いまでも十分かわいいよ」
「さあ、お嬢さん。こちらへ」
ペガサス三人衆がウェンディに声をかける。
「えっ、あの…」
それに対してオロオロとするウェンディを見ながら、一夜たちが話し込む。
「あの娘・・・なんて香りパルファムだ。ただ者ではないな………」
「一夜殿も気づいたか………あれはワシらとは違う魔力だ。エルザ殿も気づいているようだが」
「さ、流石」
ペガサス三人衆がウェンディに接待をしている。
「オレンジジュースでいいかな」
「おしぼりをどうぞ」
ひたすら困惑して慌てているウェンディを見ながらシャルルは憤慨する。
「あの、えーと………」
「何なのこのオスども!」
ソファに座らされもてなされるウェンディ。仮にこの場にケネシーがいれば死人が出ていただろう。しかし、今まで困惑していたウェンディの豹変によって事態が動いた。
「あ、あの!」
「うん?」
「何かな?お嬢さん」
「どうして男の人はよく知らない女性に思わせぶりな態度をとるんですか?よく知りもしない女の人を誑かすのが好きなんですか?」
ドストレートな疑問に三人衆の表情が凍った。ついでに様子を見ていたグレイやルシーも硬直した。
「あまりにも不誠実じゃないですか?」
「あ、いや、ウェンディちゃん。僕たちはね………」
「言い訳なんて聞きたくありません!」
先ほどまでオロオロしていた少女とは思えない強気さと謎の怒気に天馬の三人衆は困惑した。
「スイッチは入ちゃったみたいね………」
シャルルは頭を押さえながら零す。しばらくウェンディのお説教と尋問が続き、三人衆が正座させられていた。
「なんか急にキャラ変わったな」
「ウェンディ………どっかで…」
ウェンディを見て何かを思い出そうとしているナツ、彼に向かってウェンディはニッコリと微笑んだ。
「あんまり他のオスに色目を使うとケネシーが妬くわよ」
「そ、そんなつもりじゃ!?」
「遊びに来たんじゃない。片付けろ」
慌てるウェンディ、一夜の一喝で慌てて片づけを始める三人衆。状況は混沌としたままだった。
ケネシーは全速力で集合場所である屋敷に向かって走っていた。ローバウルから集合地点と目的を聞き、急いでウェンディ達の元に走っていた。
掲示板ではちょっとしたお祭り騒ぎになっている。『下手をするとタルタロスに生存がバレるからやめておけ』だの『原作の主要キャラのウェンディは死なないから放っておけ』だの好き勝手に言うスレ民に青筋を立てながら、ケネシーは走っていた。
スレ民の意見は間違いではない。バラム同盟の一角である六魔の動きは他の闇ギルドも注目していた。原作が存在する以上ウェンディが死ぬことはないのかもしれない。
だが、ケネシーがいることで蝶が羽ばたいているとしたら?少なくとも化猫の宿には2人の魔導士が在籍しているし、ウェンディはケネシーが過保護にしたせいで原作以上に気が弱いかもしれない。
結果的にウェンディが死んでしまったら?そんなことを考えるとケネシーは動かずにはいられなかった。
樹海に入ってしばらくたった時、巨大な爆発音とともに飛行艇らしきものが墜落していくのが目に入った。
ケネシーは目的地を変えてそこに向かって走り出した。確実に何かが起こっていると確信して。