レズはヤダ!レズはヤダ!レズとドSは嫌だぁぁぁぁぁ 作:空色
敵を一か所に集め爆撃することで撃破するという作戦は、エンジェルという敵魔導士によって暴かれ、爆撃艇は墜落してしまった。そして、連合達は後手に回った状態で六魔と正面衝突することとなった。
最大戦力であったジュラと天馬の支柱である一夜の不在を加味しても、完全敗北と言わざる得ない惨状がそこには広がっていた。
「もうよい、ゴミどもめ、まとめて消え去るがよい」
ブレインの持っていた杖に禍々しい魔力が集まり始めた。
「な、なんですの?この魔力………」
「大気が震えてる」
魔力が集まり、ブレインが杖を掲げた。
「『常闇回旋曲』」
魔法を放とうとした瞬間、ブレインは岩陰に隠れているウェンディに気付いた。瞬間、凄まじい魔力が弱まり完全に消え去った。
「どうしたブレイン!なぜ魔法を止める!?」
「ウェンディ」
ブレインは、ウェンディを見て彼女の名を口にした。
「え?」
ウェンディは急に自分の名を呼ばれて、混乱と恐怖で固まってしまった。
「何だ、知り合いか?」
「間違いない。ウェンディ………天空の巫女」
ブレインは薄く笑った。
「こんな所で天空の巫女に会えるとはな。丁度いい、来い!」
ブレインの杖から緑色の魔力が出て手を形作り、ウェンディの方に伸びる。
「え?きゃああ!!」
「ウェンディ!!」
その手はウェンディを掴むとブレインの方に引き寄せた。そうはさせまいとナツたちが向かおうとするが、ホットアイに邪魔されてしまう。
「金こそがすべて、デスネ!」
「うわああああ!!?」
必死にシャルルがウェンディに手を伸ばし、ウェンディも手を伸ばすが。
「あれ?」
「ちょ、ちょっとアンタ!」
ウェンディが掴んだのはハッピーの手だった。
「きゃあああ!」
「ナツゥゥゥゥゥ!」
「ウェンディ!ハッピー!」
シャルルとナツが叫んだ途端、魔力の手は1人と1匹を連れ謎の空間の中に吸いこまれようとして————
「————————『天魔の風弓』!」
吹き荒れた風がそれを阻んだ。
暴風と共にその地に降り立った少年が辺りを睥睨する。少年はウェンディを抱きかかえ、ハッピーの尻尾を持った状態で立っていた。
「—————ギリギリ間に合った」
「ケネシー………どうして」
ケネシーは不安げに瞳を揺らしどこがすがりついたような様子で手を握ってくるウェンディに笑いかける。
「大丈夫だ。もう怯えないでいい」
ギュッとウェンディを強く抱きしめ、そしてゆっくりと地面に下した。
「少し下がっていろウェンディ。すぐに終わらせる」
ケネシーは六魔の方へ視線を向けて魔力を漲らせた。そして同時に振りまかれる尋常ではない殺意に鳥肌が立った。
「誰だあれ!?」
「ケネシー!?」
「何という異質な魔力………」
ナツは困惑を露にし、シャルルは驚愕で思わず大声を上げる。リオンはその魔力にひたすら恐怖を抱いていた。
「何だあのガキ!」
レーサーがその魔力の異質さに警戒心をあらわにする。そしてブレインはただその双眸を大きく見開き、ケネシーを見つめていた。
「バカな………まさか。いや、だが………銀髪に白銀色の瞳。そしてこの魔力。もし仮にあの者が冥府の———」
「知り合いか?」
コブラの問いかけにブレインは答えない。否、正確に言えば答えられなかった。なぜなら、ケネシーの膝蹴りがブレインを吹き飛ばしたからだ。
「なッ!?」
コブラの驚愕を置き去りにして、ケネシーは追撃をかける。
「無益な殺生は好まないが今回は別だぜ。俺の
風を纏った拳の連打を受け、相手は悲鳴もなく悶絶し吹き飛んでいった。
「ブレイン!!!!!」
「金が人を強くする!デスネ!」
ホットアイは地面を軟化させてケネシーを攻撃する。土の津波がケネシーを飲み込まんと襲いかかる。
「『天魔の連風』」
それに対して、ケネシーは右手を掲げその攻撃を無操作に振り払いのけて見せた。風と土の激突の余波にホットアイが呻いた。
「中々強ぇーが、遅ぇぞ!!!!!」
レーサーの蹴りが何度もケネシーに叩き込まれる。スピードにものを言わせた連打は、苛烈の一言に尽きる。だが、それだけの攻撃を身に浴びてなお、ケネシーはまるで効いていないかのように自身を踏みつけているレーサーの足を掴んだ。
「なん、だと」
「悪いな。痛みには慣れているんだ。この程度は俺の痛みに入らない」
ケネシーは瞳孔を見開き魔法は放つ。レーサーは顔を引きつらせた。まるで深淵を除きこでしまった哀れな罪人のように。
「『天魔の激昂』」
「ガァァァァァァァ!!!!!?」
レーサーは風のブレスによって吹き飛ばされた。立ち上がったケネシーに今度はコブラが向かっていく。
「『天魔の鉄拳』!!!!!」
風を纏った拳がコブラに向かう。だが、その拳は空を切った。ここで初めてケネシーは眉を顰める。
「当たらねえな。聴こえているからな!」
コブラのカウンターをケネシーは最低限の動きで躱す。再度、ケネシーが拳を振るうがコブラに届くことはなく、回避される。
「不思議か?オレはな聴こえるんだよ、テメェの思考も、息遣いも、筋肉の収縮から全て」
獰猛な笑みを向けて余裕を表すコブラに、ケネシーはハイキックを放つが、それを彼は目を瞑って回避する。間髪入れずにケネシーは拳を振るった。
「だから聴こえてるっての」
「なるほど、俺の思考と行動を読んでいるのか。便利な耳だな」
ケネシーはコブラからバックステップで距離を取った。
「だが、わかっていても対処できなければ同じだろ?」
「何?まさか!!!!!テメェ!」
ニヤリと笑ったケネシーは魔力を体中に巡らせる。ケネシーの前に風が渦を巻いて球体を作っていく。そして————
「そう大声を出すなよ?動揺が聞こえるぞ?『天魔の———逆鱗』!!!!!」
瞬間、球体は弾け岩や砂塵が風に流され激しい大爆発が引き起こされる。風の爆発の衝撃で大地が削れ、地震の如く地が揺れる。あまりの攻撃範囲に他の六魔を含め、その場にいる全員が身動きを封じられる。
粉塵に視界が覆われる中、ケネシーは上手く身動きの取れないコブラに接近した。拳に風が収束していく。
「悪魔の拳、受けたことあるか?『天魔の撃槌』!」
そして、その拳をケネシーはコブラの腹部に叩き込んだ。風が止むと同時に凄まじい速度で殴り飛ばされたコブラが地面に転がった。辛うじて意識はあるものの大ダメージであった。
「つ、強ぇ………」
「マジで何者なんだあいつ」
「何という魔力」
「オレたちが手も足も出なかった怪物をこうもあっさり」
ケネシーの戦いに戦慄する連合の意識を切り裂くように一つの魔法が放たれた。
「『
ケネシーはそれを紙一重で躱した。その動きを見て体勢を立て直したブレインは狙いを変えた。
「ヌシは強いが弱点を晒したままでは脅威ではない『
「チッ、さっきので気絶しなかったのか」
ブレインは、クロドアの杖から回転するレーザーを放った。ケネシーではなくウェンディに向けて。
「なッ!?クソ!!!!!」
ケネシーは回避と防御を後回しにしてウェンディの元まで走った。ウェンディを抱きかかえ横に飛んだケネシーの肩をブレインの魔法が掠める。鮮血が散るがケネシーはこれをダメージとはカウントしなかった。痛みを気にしないのは彼の歪みの一つだろう。
「ケネシー!?」
「問題ないッ!」
素早く体勢を立て直したケネシーにボロボロのコブラが迫る。しかし、コブラの眼には確かな殺気が宿っていた。
「頑丈だな!」
「聴こえるぜ、お前の焦りが!クソガキ!」
「『天魔の鉄拳』!」
大胆な踏み込みでコブラの一撃を掻い潜り、ケネシーの拳が彼の胴体に届く。その瞬間—————
藍色の影が両者の間に割ってい入った。
「!?」
ケネシーは強引に体を傾け、拳を無理やり打ち上げて少女から遠ざけた。何故ウェンディが飛び込んできたのか?そんな疑問は自身の後ろにいるウェンディ本人の驚愕の表情で解決した。その正体はエンジェルが使役する星霊、ジェミニが能力を使って変身した姿だった。
「偽物かッ!」
「正解だが遅ぇ!キュベリオス!」
コブラの号令と共にキュベリオスが素早くケネシーに近づき、彼の脇腹に噛みついた。牙が深々と抉りこまれ流石のケネシーも苦悶の声を上げた。
「グッ………なめん、なッ!!!!!」
ケネシーは右腕を突き出し魔法陣を展開する。
「天魔の———ガッ」
だがその魔法は猛威を振るうことなく不発となった。レーサーが追い打ちをかけたからだ。
「大して効かないんだろうが魔法発動の邪魔くらいにはなるだろ?」
「クソッ!」
「きゃああああ!」
ケネシーが悲鳴を捉えて振り返ると魔力の腕がウェンディを捉えて異空間に引きずり込もうとしていた。
「ウェンディ!!!!!」
「ケネシー後ろ!」
シャルルの悲鳴は彼に対する警鐘だった。ケネシーがウェンディに気を取られ後ろを向いた瞬間キュベリオスが再度噛みついたのだ。
「邪魔だァ!」
風が吹き荒れキュベリオスとコブラを吹き飛ばすが、ケネシーにできたのはそれが限界だった。休息を取らずにここまで来た体力不足と急激な魔力消費、蓄積したダメージでケネシーは限界を迎えていた。視界が揺れだし耳鳴りが始まる。
「天空の巫女を害されたくなければ動くな」
ブレインはケネシーに杖を向ける。そして
「『
「ケネシー逃げてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
ウェンディの悲鳴が大気を揺らしケネシーの鼓膜に届くが、それは何の意味もなかった。
放たれた魔法は彼に直撃し、その意識を奪った。
「フン、ゴミどもよ今度こそ消えよ!!『
再び巨大な禍々しい魔力が集まり、今度こそ放たれた。
連合の人間はもうダメかと思い臍を噛んだ瞬間、声が響いた。
「岩鉄壁!」