レズはヤダ!レズはヤダ!レズとドSは嫌だぁぁぁぁぁ   作:空色

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第8話

「岩鉄壁!」

 

ブレインが放った魔法を地面から岩の柱が防いだ。

 

「………間一髪」

 

「ジュラ様!」

 

それを行ったのはエンジェルにやられたと思われたジュラだ。

 

「すごいやジュラさん!」

 

「ありがとう、助かったよ」

 

「あいつらは…!?くそ!」

 

ナツたちが慌てて六魔将軍を探すが、既にその場から消えていた。 

 

「消えちまったか………」

 

「んだとコラァー!」

 

「ウェンディ………」

 

「完全にやられた………」

 

「あいつら強すぎるよ………手も足も出なかった」

 

完全敗北ともいえる結果だった。先手を打つつもりがそれを読まれて逆に強襲されてしまった。

 

「六魔将軍………集めた情報以上の魔力だった」

 

「それに頼りのクリスティーナまで………」

 

イブが悲しげにボロボロになったクリスティーナを見る。天馬としても使われることなく撃墜されるとは思わなかった。不幸中の幸いだったのがクリスティーナが無人飛行だったことだ。人が乗っていればただでは済まなかっただろうことは想像に難くなかった。

 

「ジュラさん、無事だったのか」

 

「いや、今は一夜殿の痛み止めの香りで一時的に抑えられているが………」

 

ジュラもまた浅いものの至る所に怪我があった。その一夜はというと。

 

「六魔将軍め。我々が到着した途端に逃げ出すとは………さては恐れをなしたな」

 

「あんたボロボロじゃねーか!」

 

トイレで強襲されたままのため、ボロボロだった。

 

「ケネシー!目を覚ましなさい!」

 

シャルルのそんな声に一同は振り返る。ケネシーの怪我を見ていたヒビキは冷や汗を流しながら、零す。

 

「ダメージが大きい。それに毒も………先生!」

 

「まかせなさーい!!!!!痛み止めの香り(パルファム)でーす」

 

ヒビキの懇願に答え、一夜は痛み止めの香りをその場に充満させ、皆の痛みを和らげた。

 

「あいつら………!よくもウェンディとハッピーを!どこ行ったコラァァァァァ!」

 

「落ち着きなさいよ!」

 

「ぐえっ」

 

早速どこかに駆けだそうとするナツをシャルルがマフラーを引っ張ることで止めた。

 

「羽?」

「羽ですわ」

「猫が飛んでる」

「すごいや!」

 

「これは『(エーラ)』っていう魔法。ま、初めて見たなら驚くのも無理ないですけど」

 

「ハッピーと被ってる」

 

「なんですって!?」

 

シャルルがショックを受けた。自分のアイデンティティが侵されている気分だ。

 

「………とにかく、あの子たちの事は心配ですけど………闇雲に突っ込んでも勝てる相手じゃないってわかったでしょう」

 

「シャルル殿の言う通りだ。敵は予想以上に強い」

 

ジュラも同意するように頷いた。

 

「それに………」

 

シャルルが視線だけ別の方向に向ける。そこには腕を押えて苦しんでいるエルザと息を荒げながら痛みに耐えるケネシーの姿があった。

 

「私の香り(パルファム)が効いていないのか!?」

 

「しっかりしろ、エルザ!」

 

ルーシィたちは苦しむエルザ達に近づいた。

 

「すまない…ベルトを借りるぞ、ルーシィ」

 

「へ?」

 

エルザはルーシィのベルトに手をかけると一気に引き抜いた。結果何が起こるか?必然的にスカートが地面に落ちる。重力に従ってスカートが落ちる道理がある様に、欲望に従って視線が吸い寄せられる道理が天馬の男たちにはあった。

 

「きゃああああああ!?」

 

「「「おおおおっ!」」」

 

「見るなああああああ!!!」

 

結末は説明するまでもないだろう。エルザはベルトを毒に侵された腕に巻きつけ、強く締め上げた。全身に毒がまわらないようにするためだ。

 

「な、何するのエルザ………」

 

「斬り落とせ」

 

エルザが剣を地面に投げ出し、腕を差し出した。確かに、このままではエルザは戦力にならないどころか、最悪死に至ってしまう。しかし、これからずっと隻腕というハンデを背負うことになる。

 

「馬鹿なこと言ってんじゃねえ!!」

 

思い切ったことを言ったエルザにグレイが怒鳴りつける。

 

「分かった。俺がやろう」

 

リオンは躊躇いなく引き受けると剣を持ち上げた。

 

「リオン!てめぇ!!」

 

「今、この女に死んでもらうわけにはいかん」

 

「やめろリオン!!」

 

リオンは剣をエルザの腕に振り下ろし、グレイが造り出した氷に止められた。

 

「貴様はこの女の命より腕の方が大事か?」

 

「他に方法があるかもしれないだろ?短絡的に考えるなよ」

 

グレイとリオンが静かに睨み合っていると、とうとうエルザが力尽きて倒れてしまった。

 

「エルザ!」

 

エルザの腕を見るとやはりどんどん毒が広がっている。このままでは全身に毒が広がってしまうは火を見るよりも明らかである。

 

「ウェンディなら助けられる」

 

そう声を上げたのは意識をなくしているはずのケネシーだった。

 

「あんた大丈夫なの!?」

 

シャルルの問いかけには答えず、ケネシーは連合の面々に語り掛けた。

 

「その女の毒はウェンディなら解毒できる」

 

「………結局お前は誰なんだ?」

 

「確かに只者じゃあねえよな?六魔相手にあんだけやれるんだ」

 

「ウェンディの仲間だっていうのはわかったけど」

 

「今更!?」

 

ナツ達の疑問はもっともだったが、今更過ぎる質問だった。思わず突っ込みを入れたシャルルを見ながら、ケネシーは名乗りを上げる。他の連合の面々も似たような感じだったからだ。

 

「俺の名前はケネシー。化猫の宿(ケットシェルター)に所属している魔導士だ。よろしく」

 

「銀髪に白銀色の瞳。もしや最近噂になっている闇ギルド潰しはケネシー殿のことか?」

 

「噂になっているのか………」

 

「詳しい話はいい!エルザは治るのか」

 

「ちょっ!ナツ!相手は怪我人よ!?」

 

ナツがケネシーに凄むとケネシーは冷静に答えを返す。

 

「ああ、ウェンディには解毒を可能にする魔法がある。加えて、解熱や痛み止め、傷の治療もできる」

 

「そんなことまでできるのか!」

 

「すごいや」

 

「また、私のアイデンティティが………」

 

天馬の面々が驚愕を露にしている。シャルルはその様子を見て何とも言えない顔をしていた。

 

「ウェンディは六魔将軍(オラシオンセイス)が言ってた『天空の巫女』っていうのに何か関係があるの?」

 

「彼女は天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)、天竜のウェンディ」

 

「「「「滅竜魔導士!??」」」

 

衝撃の事実が発覚した。ウェンディもナツと同じ、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だったのだ。話が長引きそうだと思ったシャルルが口をはさむ。

 

「詳しい話は後。今私たちに必要なのはウェンディよ。さっきの戦いでわかったと思うけど、ケネシーが復活すればかなり有利になる。そして目的は分からないけれど、あいつらもウェンディを必要としてる」

 

真剣な顔つきのシャルルの言葉に皆も気を引き締めた。とにかく、これで目的も決まった。

 

「やることは一つ。奴らからウェンディを救いだす!」

 

皆の心が一つになった。全員で拳を突き合わせた。

 

「行くぞォ!」

 

「「「「「おおー!!!!!」」」」」

 

連合軍の反撃はここから始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺も探索に参加する…」

 

ヒビキたちが探索ルートを説明している最中、ケネシーがそう提案した。

 

「なッ!?無茶だ!君の怪我はエルザさんよりもひどい。毒だって体が小さい分回るのは早いんだぞ!?」

 

ヒビキの言うことはもっともであったし、この場にいるものの代表意見でもあった。しかし、ケネシーはそんなことは関係ないとばかりに首を振った。

 

「ヒビキさん、あんたの言うことはもっともだけど一つ間違いがある。俺の身体はそこの女のよりも頑丈だ。今こうして動けているのがその証明だろ?大丈夫だ、多少の戦闘なら問題なくこなせる」

 

そうは言いつつも彼の状態は立っているのが不思議なほどだった。傷もさることながら、毒とそれに由来する顔色の悪さが尋常ではない。焦点の合っていない瞳と鬼気迫った表情が合わさって正直人間とは思えない顔色だった。ゾンビと言われた方が納得できるものである。

 

「あんたは残りなさい」

 

這ってでも必ず探しに行くっとそんな覚悟を見せるケネシーを止めたのはシャルルだった。

 

「却下だ」

 

「残りなさい」

 

「嫌だ」

 

「残りなさい!」

 

「ッ!このメンバーで探しに行っても返り討ちに遭うだけだって言ってんだよ!!!!!わかんねえのか!?」

 

それはある種の侮辱でありナツを始めとして、己に自信のある強者たちは文句を言おうとしたが、ケネシーのあまりの必死さと鬼気迫る形相に一瞬怯んでしまった。

 

「俺が到着するまで一方的にやられてた連中にすべてを託すってか?バカが!そんなことできるわけないだろ!?俺の見立てじゃ、まともに戦闘になるのはそこにいる聖天のジュラとここで倒れているエルザ・スカーレットくらいだ!そんな簡単なことも理解できないのか、シャルル!!!!!」

 

「あんたこそ、その怪我で戦えると思ってるわけ!?わざわざ殺されに行くようなものよ!あんたまたウェンディを泣かせたいわけ!?」

 

そのシャルルの言葉にケネシーは唇を噛んで、下を向いた。ケネシーの状態的にシャルルの言っていることは否定できなかった。しかし、ケネシーは誰かを利用することはあっても頼ることはしない。そういう生き方をしてきたし、そういう考えがあの場所で染みついている。ここで、自分は残って「後はよろしくお願いします」はできないのである。

 

「コブラはダメージが深いだろう。レーサーもそれなりに手ごたえがあった。だけど、エンジェル、ミッドナイトはほぼ無傷でブレインも健在。見つけて奪還することが目的だとしても、戦闘は避けられないはずだ。勝率は決して高くない。そうでしょう、ヒビキさん」

 

ケネシーはそう問いかける。それに対してヒビキはしばらく目を瞑り、そして答えを出した。

 

「確かに勝率が高いとは言えない。だけど僕は、ここにいるみんなを信じている。団結すれば道はあるよ!」

 

その言葉を聞き、さらに反論しようしたケネシーだったが平衡感覚がなくなったかのようにふらついて、その場に座り込み木の幹に背中を預けた。そのまま再度意識を落とした。

 

「………ケネシー」

 

ケネシーのウェンディに対する執着は異常と呼べるものだった。大切にしているのはわかる。好意を抱いていることもわかる。その行為が自分に向けられているようなベクトルでないことも理解できる。しかし、それは親愛の情などでは表現できない。もっと深く歪で恐ろしい何かだった。

 

シャルルは何がケネシーにそこまでさせるのか未だに理解することができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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