ポケモンレゾナンス   作:ポケモントレーナー

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ポケモン熱が再開したので。


00 イッシュ地方にて

 イッシュ地方にある中心都市ヒウンシティ。

 そんな巨大な都市の隅っこにある小さな喫茶店に一人の青年がいた。

 彼の名前はトウヤ。

 六年前、イッシュ地方を旅をしたポケモントレーナーだ。

 

「……ちょっと早すぎたかな」

 

 かつての事件が終わった後、とある目的の為、イッシュ地方を離れており戻ってくるのは本当に久しぶりの事である。

 そして今日は幼馴染二人と再会する為に、こうして喫茶店で待ち合わせをしているのだが、少し到着が速すぎたようだ。おかげで約束の時間まではまだ大分ある。

 彼は手持ち無沙汰になりながら店に置かれた雑誌を手に取り読み始めた。

 内容はポケモンリーグに関して。

 イッシュ地方のチャンピオンが変わった事は勿論だが、他地方の事も書かれている。

 

(ガラル地方……か)

 

 無敵のチャンピオンと呼ばれる人物がいる地方だ。

 イッシュからはだいぶ離れている為、この六年間でもまだ足を踏み入れた事がない地方である。

 

「……ん?」

 

 パラパラとガラル地方のトレーナー達の特集ページを眺めているとガラルのチャンピオンがリザードンを相棒にしているという記事を見て、カントー地方で出会ったとあるトレーナーを思い出した。

 バトルをしたが、その強さはトウヤが出会ったトレーナーの中でもトップレベルの相手であった。

 もしこのガラルのチャンピオンが彼と同じぐらいの強さをもっているのなら是非とも戦いたいものである。

 そんな事を雑誌を流し読みしながら考えていると喫茶店の扉が開かれる音が聞こえてきた。

 どうやら新しい客が来たらしい。

 その人物は店内を見渡し、入り口から近い位置に座るトウヤを見かけるとゆっくりと寄ってきた。

 

「久しぶりトウヤ」

「ああ、久しぶりだなチェレン」

 

 共にカノコタウンで育った幼馴染にして、ヒオウギシティのジムリーダーを務める青年チェレン。

 たまに連絡を取っていたとは言えこうして直接再会するのは本当に久しぶりであった。

 トウヤの前の席に座ると、近くにいたウェイトレスに声をかけ飲み物を注文する。

 

「紅茶を一つ」

 

 注文を受けたウェイトレスが下がると、チェレンはトウヤに視線を向ける。

 

「本当に久しぶり。彼と旅をしてたのは知ってるけど、どうしてイッシュに?」

 

 チェレンの疑問は当然だ。

 この六年間、様々な地方で旅をしていたがイッシュにはほとんど戻ってきていなかった上に、連絡も殆どしていない始末。

 トウヤの母親が寂しそうにしているのをよく知っていた。

 

「あいつが別行動をしようって話になったから、なんとなくかな」

 

 そう答えるトウヤ。

 嘘は言っていない。だが全てを話している訳ではないようだ。

 

「でもこうして戻ってきたんだろ? 何か用でもあったのか?」

「まあね……っと、来たみたいだ」

 

 チェレンの言葉を聞き、店の出入り口を見ると一人の客が入ってくるのが見える。

 幼馴染の女性ベル。現在はアララギ博士の助手を務めている。

 

「あー!いたー!」

「そんなに大きな声を出さなくても……」

 

 大きな声と共に駆け寄ってくるベル。

 共に旅をしていた頃よりも成長していた彼女だが、内面はそれ程変わっていないようだ。

 そのまま二人はテーブルを挟んで向かい合うように腰かけた。

 ちなみに彼女の服装であるが動きやすそうな格好となっている。

 髪の色に合わせたような赤を基調とした服であり、フィールドワーク中心の活動をしている為かスカートではなくズボンを履いているのだ。

 

「おまたせしました~」

 

 数分後、チェレンが頼んだ紅茶やベルが注文したジュースなどが届くとトウヤとの再会の乾杯をする。

 

「なんか懐かしいね」

「本当だよ。僕達が三人揃うのもだいたい四年振りだ」

「もうそんなに経ってたか……」

 

 アララギ博士からポケモン図鑑を受け取り、図鑑を完成させる旅に出た彼等は決して無視できない大きな事件に巻き込まれていった。

 その中心人物の一人がトウヤであり、最後までチェレンもベルも形は違えど事件の中心に首を突っ込んでいった二人である。

 今思い出しても本当に楽しく、辛く、悲しい旅だったような気がする。

 そんな思い出話に花を咲かせていたが、ベルが本題を口にする。

 

「で、トウヤの用事ってなんなの?」

 

 単純に自分達に会いに来た訳ではないのだろう。

 何か別の目的があるに違いないと察すると、チェレンもその言葉に同意した。

 

「確かに気になるね。君程の男がわざわざ戻ってくるなんてただ事では無いはずだよ」

「そうだよね。私達に会うだけならライブキャスターとか形態端末でメールとか電話すればいいだけだもん」

 

 二人がそう思うのも無理はない。

 それだけではない事を理解しているがあれだけイッシュ地方に寄り付かなかったトウヤがわざわざ戻ってくる理由としては薄いと思っていたからだ。

 

「いや、二人に久しぶりに会いたかったのは本当。母さんや父さんにもね。後は……」

「後は?」

「チェレンに頼みがあって」

「僕に?」

 

 名指しで呼ばれてチェレンが驚きの声を漏らす。

 直接会ってまで頼まれる話なんてないと思っていたからだ。

 

「これなんだけど」

「ん……?」

「これって……」

 

 テーブルの上に置かれたのは時間つぶしの為にトウヤが読んでいた雑誌、その一ページだ。

 ガラル地方の特集。

 即ちジムチャレンジ。

 

「まさか……」

「うん、ガラル地方のジムチャレンジに挑戦してみたいんだ」

「えぇ!?」

「トウヤ……本気で言ってるのか?」

 

 チェレンは驚くしかなかった。

 トウヤはかつての旅の中でイッシュ地方のチャンピオンになれる立場であった。

 しかしチャンピオンになる事なくイッシュ地方を去った事から、その地位に興味はないと思っていたのだ。

 

「チャンピオンの座は興味ないけどジムリーダーとかと戦ってみたいんだ。けど」

「けど?」

「いや、だってガラル地方のジムに挑戦するってなると推薦状が必要になるって聞いたし……」

「ああ、そういう事か」

 

 ガラル地方は他地方とは大きく違いジムへの挑戦は推薦状が必要となる。

 イッシュ地方ならば好きなように参加できるジムチャレンジもガラルではそうはいかないからだ。

 

「チャンピオンになる気はないんだけど、ガラル地方のポケモンやバトルトレーナーには興味があるから」

「つまりトウヤはチェレンに……」

「うん。推薦状を用意して欲しい」

「ああ、なるほどね。それなら直接会う必要があるか」

 

 トウヤの言葉にようやく納得の表情を見せるチェレンとベル。

 結局の所、トウヤもまたあまり変わっていない。

 ポケモンが好きで、バトルが好きなトレーナーなのだ。

 

「分かった。確かにジムリーダーの僕なら用意できるね。用意しておこう」

「ありがとう!」

「だけどいいのか?」

「ん?」

「トウコの事だよ」

「……」

 

 チェレンの言葉に先ほどまで軽かったトウヤの口が閉ざされる。

 

「君のバトルのパートナー。もう一度、君と堂々と戦う為にチャンピオンになった彼女だ」

「……」

「彼女をほっといてガラル地方に行くのか、君は」

「……」

 

 チェレンの詰問するような問いにベルがハラハラとした様子で二人を見る。

 トウコはかつてバトルサブウェイで出会ったバトルの相棒的存在だ。

 

(そして恋人みたいな、相手かな)

 

 トウコの片想いのように見えて、両想いにも見える複雑な二人。

 トウヤがイッシュから去って、失意に飲まれたが再び彼と出会う為にチャンピオンに上り詰めた人。

 だけど二人の間に何かあったのかトウヤがトウコを避けているように見えるのだ。

 逆にトウコは今もイッシュの頂でトウヤの帰還を待っているのだ。

 

「……そうだな。俺もいつまでも逃げてる訳にも行かないか」

「それはつまり……」

「元からガラル地方へは武者修行の旅だ。それが終わったら帰ってくる。そしてポケモンリーグへ行くよ」

「……!」

 

 トウヤの言葉にチェレンも、ベルもついに来たと確信する。

 イッシュ最強のトレーナーと言われていたトウヤが遂に名実共にその頂点に立つ時が。

 

「だからガラル地方のジムチャレンジへの挑戦は今しかない」

 

 トウヤがもしイッシュ地方のチャンピオンになれば、ガラル地方のジムチャレンジへの挑戦はやりにくくなるだろう。

 勿論、様々な手段はあるだろうがトウヤとしてはただのトレーナーとして挑みたいのだろう。

 

「分かった。ならいいさ。だけど君が帰ってくる前にトウコが負けるとは思わないのか?」

「まぁ、その可能性はあるけど……」

 

 それでも彼女を信じている。

 バトルサブウェイで共に戦ったトウコを。

 だからこそ、自分も万全な状態で彼女の前に立ちたいのだ。

 

「それでもトウコを信じるだけさ」

「……ならいいさ」

 

 そこまで言うのなら二人もまた信じるしかない。

 自分の幼馴染が信じる彼女を、だ。

 その日は久しぶりの再会を祝ってどんちゃん騒いだ後、カノコタウンに戻って親達やアララギ博士達も交えて更にどんちゃん騒ぎをする事になった。

 それから数日、のんびりと休息を取っていたトウヤの元にチェレンとベルがやってくる。

 チェレンのその手には大きな封筒が握られていた。

 

「はい、トウヤ。これが推薦状」

「ありがとうチェレン」

 

 受け取った推薦状をバッグへしまうトウヤ。

 これで準備は万全ではあるが、ベルが首を傾げ疑問符を浮かべている。

 

「それでいつ旅立つんの?」

「明日かな。今日出てもいいけど、さすがに母さんがね」

「ああ、それがいい。それじゃあ明日、ヒウンシティかフキヨセシティに行くのかい?」

 

 イッシュ地方からガラル地方へ行く手段は飛行機か船を使うのだろう。

 時間的に考えれば飛行機が一番確実だ。

 だがトウヤは首を横に振った。

 どうやらどちらも違うらしい。

 

「……ん?じゃあどうやって行くつも……り……!」

 

 船でも飛行機でもなければどうやって行くつもりだというのか。

 そんな疑問の声を上げると同時にチェレンはすぐに答えに気づく事になる。

 そうだ。トウヤのあるポケモンならば飛行機や船以上に優れた移動手段があるのだ。

 

「……え、まさか」

 

 チェレンに遅れてベルもようやく気付いたらしい。

 その答え合わせをするかのようにトウヤが取り出した一つのモンスターボール。

 それ見た二人は確信する。間違いなくこのポケモンを使ってガラル地方まで行くつもりなのだ、トウヤは。

 そしてその日はトウヤの壮行式が開かれ、数日前と同じようにどんちゃん騒ぎをする事になった。

 

「そんなにやらなくてもいいのに」

「普段帰ってこない貴方が悪いわ」

「はい」

 

 母親とそんなやり取りを得た次の日。

 トウヤはポケモンの背に乗りガラル地方へと旅立っていくのであった。

 チェレンとベルは大空へ飛び去って行ったトウヤを暫く見上げていた。

 そんな二人の横にアララギ博士がやってくる。

 

「行ったのねトウヤ」

「ええ。行ってきますだそうです」

「今度は早く帰ってきて欲しいなぁ」

 

 彼がイッシュから去った後、やはり何処か寂しさを感じてしまった二人。

 ガラル地方からの旅が終われば帰ってくると分かっていてもやはりそんな事を思ってしまう。

 

「後、何か変な事件に巻き込まれないか心配だ」

「分かる」

「あの子は巻き込まれるというか自分から突撃するタイプよね……」

 

 それだけ言うと三人は笑いあった。

 今回は連絡しなかったが、トウヤを知る者達に連絡を取ろう。

 ガラル地方のジムチャレンジはテレビ放送もするから、放送日時も確認しておかなければならない。

 そんな事を考えながら三人はあーだこーだ言いんがら立ち去っていくのであった。




次回 4月3日予定。
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