ポケモンレゾナンス   作:ポケモントレーナー

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03 出会いとバウタウン

ユウリがマサルと出会ったのはダンデがチャンピオンになったあたりの頃、今から十年も前の話だ。

父親の仕事の都合で引っ越してきたという彼は何処にでもいそうな優しそうで大人しい子、と言った印象だろうか。

幼馴染であったホップがとても活発かつ騒がしい性格だった為、ちょうど対比みたいな存在だった。

初めて会った頃は大人しい子だな、ぐらいの事しか思わなかった。

ただガラル地方の田舎街。同年代の子供もそれ程、多くはなかったし家が近かった事からよく一緒に遊ぶような仲にはなっていった。

とは言え当時のユウリとマサルの関係はそんなものだったし、ユウリ自身もまたマサルには一緒に遊ぶ友人ぐらいの気持ちしか抱いていなかった筈だ。

それが変わったのは初めて出会ったから二年ぐらい経った日。

街の外周部を散歩していたユウリの元に野生のココガラがやってきたのだ。

野生のポケモンは街中には入ってこない。

これはポケモン側が人の手が入った街中に入るのを避けている為だ。

だからこそ、ユウリの目の前に野生のポケモンが現れるなんて驚愕と困惑したのをユウリは覚えていた。

逃げなければならない。そう思ったが幼いユウリの足は動かず、近づいてくるココガラを見ているだけしかできなかった。

そんなユウリを救ったのは母親のポケモンであるスボミーと共にやってきたマサルであったのだ。

マサルは自分が親ではない上に相性が悪い筈のスボミーに指示を出してココガラを追い返していったのだ。

その時なのだろう。

マサルが見せた戦う者としての顔。

それを見たユウリが一目惚れした瞬間は。

 

 

 

 

「いいんですか?」

「ええ。この子もチャレンジャーさんと一緒に旅をできるなら是非」

 

ターフタウンを出発して数日。

マサルとユウリは5番道路にある預け屋にやってきていた。

初めて見る施設だったし、預け屋の人に寄ってみないかと誘われたのもある。

こうして旅の途中に道寄りして、預け屋を見学していたのだがマサルが声をかけられた結果、預け屋から一体のポケモンを受け取る事になった。

あかごポケモン、エレズン。

悪タイプのジムリーダーであるネズが相棒にしているポケモンであるストリンダーの進化前ポケモンだ。

預け屋の話によればポケモンバトルに非常に強い興味を持った子であった為、ジムチャレンジ中のマサルに託して一緒に旅をしてもらいたいという事だ。

それを聞いたマサルは少し考えたが、笑顔で受け取る事にした。

エレズンからも強い意志で旅をさせろとせがまれたというのもあるのだが。

 

「マサル。エレズンを受け取ったのは次のルリナさん対策じゃなくて、あのトウヤという人に対する対策ですよね」

「あー、うん。ユウリには分かっちゃうか」

「ええ。ルリナさん対策という点ではロゼリアがいますからね」

 

預け屋の隅でもポケモン達を遊ばせていたマサルにユウリはそう切り出した。

マサルが最初に受け取ったのは炎タイプのヒバニー故に、水タイプのルリナとの相性は悪いがもう一体の手持ちである草タイプのロゼリアは非常に相性がいい。

対策、という点ではロゼリアで十分だろう。

だからこそユウリはすぐに思いついた。

毒タイプが被る、という点を考えても電気タイプであるエレズンを受け取った理由を。

 

「ウォーグルは飛行タイプですからね。ラビフットはともかくロゼリアは相性が悪い」

「……うん。だから電気タイプのエレズンはちょうど良かったし、ルリナさん対策の補強もできるしね」

 

マサルが意識していたのはルリナではなく、先日ターフタウンで見たイッシュ地方からやってきたトレーナー、トウヤ。

彼のポケモンであるウォーグルを意識しての事だった。

勿論、今すぐにトウヤと戦う事はないだろう。

だがバッチを全て集めればセミファイナルトーナメントでぶつかるのは間違いない。

マサルもユウリもトウヤが途中脱落する事はないと考えていた。

 

「それは分かりますけど、まずはバウタウンジムの攻略を考えた方がいいと思いますよ。目の前の問題から目を向けないで後の事を考えすぎても後が大変でしょうし」

「うん、ありがとうユウリ」

「っ!え、ええ。感謝してくださいよ……もう狡い顔」

 

段々小さくなっていった声に加えて、顔を逸らした事で後半部分が聞き取れなかったマサルだが、気にする事なく近くに寄ってきたエレズン達に木の実を渡していく。

それを見てやっぱり狡い人だ、とユウリが一人納得していると今度はマサルから声をかけてきた。

 

「そう言えばソニアさんからの話ってなんだったの?」

「ああ、それはですね……」

 

マサルの疑問に答えようとユウリが手元のモンスターボールを取り出そうとした時。

 

「ごめんくださーい」

「あ」

「あ」

「ん?」

 

預け屋に先程まで話をしていた相手、トウヤが入ってきたのであった。

 

 

 

 

 

「預け屋か。育て屋とは違うのかな」

 

ターフタウンのジムチャレンジが終わり、ある人物に連絡を取った後、トウヤはバウタウンに向かうべく5番道路をゆっくりと歩いていた。

見慣れないポケモンと出会ったり、違う地方でも見た事があるポケモンを見てここにもいるんだ、とか思いながら足を進めていたのだが、大きな橋の手前にとある大きな建物があった。

それこそが預け屋。

イッシュにあった育て屋とは違い、ポケモンを預かりお世話するだけの施設らしい。

その証拠に看板には『ポケモンのおあずかりもしています』と書かれているのが見える。

トウヤは気になって中に入ってみる事にしたのだ。

するとそこには預け屋と書かれたカウンターと数人の職員がいた。

だがトウヤがそちらに意識を完全に向ける前に横から聞こえてきたあ、という言葉が耳に入りそちらに目を向けてしまう。

そこにいたのは二人の少年少女。

ポケモンと遊んでいる様子だが、トウヤが目についたのは二体のポケモン。

一体は知らないポケモンであったが、もう一体はいばらポケモンであるロゼリア。

トウヤの印象としてはホウエン地方によくいるポケモンだろうか。ガラル地方にもいるものだと思った。

しかし物珍しさでその二体を見た訳ではない。

周りにいるポケモン達と比較して、一番育て上げられたポケモンだと思ったからだ。

このポケモンならば、トレーナー次第ではあるがターフタウンのジムチャレンジは突破できるだろうな、と判断できる。

それに加えて何より二人とも笑顔で楽しそうにポケモンと触れ合っているのが一番の理由かもしれない。

そして最後になるほど、と納得する。

そのポケモン達のトレーナー。

少女の方は分からないが、少年の方には見覚えがあったのだ。

ジムチャレンジの開会式の時に感じた二人の内の一人だ。

どうやら自身の勘は外していないようである。

 

「トウヤ選手、ですか?」

「ああ、うん。そうだけど」

 

少女の声にそう反応する。

選手、と呼ばれるのはどうも慣れないものだと思いつつ返事をするトウヤ。

「良かった。あの私、ユウリと言います」

「ああ」

「マサルです、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

差し出された手を握り返す。

預け屋の職員にも断りを入れた後、隅のスペースで三人は話し始めた。

 

「それで何の用だい。お互いジムチャレンジ中のチャレンジャーだけど」

「あ、マサルの事を知ってるんですね」

「まぁね」

 

どうして知っているかは話さない。

第六感で気にしていました、と言われても困るだろう。

ユウリは首を少し傾げていたが追及するつもりはないようだ。

逆にマサルは何処か納得した様子にも見受けられる。

(彼も俺に気づいたのかな?)

トウヤが気づいたようにマサルもまたトウヤに気づいたのかもしれない。

やはり彼は同類なのかもしれない。

そんな事を思っているとユウリが話を進めてくる。

 

「えっと、トウヤ選手の事を知りたくて」

「俺の?」

「ターフタウンの試合を見ていたんですけど、その後のインタビューも出てませんでしたしSNSもやってないみたいですから……」

「あー」

 

トウヤが呻く。

ヤローとの試合後、色々とヤローと話したがインタビューもあると聞いてトウヤはこっそりと脱出していたのだ。

正直、インタビューと言われても何を話せばいいか分からないし個人的な事情もあってインタビューは受けたくなかったのである。

勿論、ガラル地方に来た時点で目立っている事は分かっているが必要以上に目立つ必要はない。

ヤローからも無理に出る必要はないと言ってくれた事もあるのだが。

 

「俺はやらないよ」

「そうなんですか……」

 

トウヤの言葉にユウリは残念がる様子もなく呟く。

どうやらなんとなく、ぐらいの気持ちで誘っただけらしい。

 

「それに俺になんて興味ないでしょ」

「いえ、トウヤさんの事は気になりましたよ。ターフタウンの試合を見た人はみんなそうだと思います」

「そうなの?」

「はい」

 

ユウリがロトムを呼ぶと、スマホ画面が開かれる。

そこにはガラル地方のSNSで先日行われたターフタウンのバトルについて様々な話題で盛り上がっている様子が見れた。

 

「うぇ、こんなにあるのか」

 

頭を抱えたくなるトウヤ。

必要以上に目立たないという方針にしたのはいいが、どうやら何もしなくても目立ってしまうようだ。

 

「ガラル地方で他地方のトレーナーがジムチャレンジに挑むのは珍しいですからね」

「ホウエン地方のトレーナーがいるって聞いてたんだけど」

「カブさんは主催から招待された選手ですし、長年ガラルでバトルしてますからね。それ以外だとどうしても……」

「はー、なるほど」

 

トウヤは納得する。

確かに他地方から来た選手が他にいないのであれば、必然的に注目度も上がるというものであろう。

 

「そういえば君はチャレンジャーじゃないんだ」

「はい。私はマサルの……彼と一緒に旅をしてますがチャレンジャーではないんです」

「ふぅん」

 

つまり彼女はマサルのサポーターといったところだろうか。

何となくであるが、彼女の雰囲気からマサルに対して強い想いを抱いているような気がした。

それはライバルとしてなのか、それとも異性としての感情であるのか。

 

(何となく後者のような)

 

二人の雰囲気からはそんな気もしたが、さすがに初対面の相手にそこまで踏み込むつもりはない。

なので話題を逸らす事にするが、その前にユウリが口を開いた。

矛先は今まで黙っていたマサルに対してだ。

 

「それにしてもマサル、どうしたんですか?」

「あー、うん……」

 

何処か上の空の様子のマサル。

いや、その視線はトウヤ……が持つモンスターボールの一つに向けられているような気がする。

 

(へぇ……勘のいい子だと思ったけど気づいているのか)

 

トウヤもマサルに意識を向けた事で彼の視線の先にあるものに気が付いた。

そのモンスターボールには特別なポケモンが眠っている。

この特別なポケモンの気配をモンスターボール越しになんとなくでも気づける人は少ない。

 

(彼にも資格あり、って事かな)

 

このポケモン達は自分達の意思でパートナーを選ぶ。

気配に気づけるという事はその資格があるという事なのだろう。

とは言え、それをトウヤが説明する事はない。

どうしてそんな事を知っているのか、と聞かれるのは間違いないだろうがこのポケモンの事を黙ったままにしているトウヤとしては説明はできない。

そして余計な情報を与えるべきではないだろう。

二人とも悪い子には見えないが、それを知った人達がマサルの身を狙って襲ってくるという事もありえるのだから。

だがそれでも、彼ならばいつかは辿り着くかもしれない。

伝説のポケモンの領域に。

その後はトウヤはガラル地方のポケモンについて聞いたり、逆にマサルとユウリがイッシュ地方のポケモンについて聞いたりと話が盛り上がった。

 

「あ、そろそろ時間ですね」

 

ユウリの声で我に返る二人。

随分と話で盛り上がりすぎてしまったようだ。

預け屋の人達にも迷惑をかけてしまったかと思ったが、預け屋の人達も。

 

「面白い話を沢山聞けました」

 

という事だった。

もう遅い時間だったので預け屋の人達が泊っていけと言ってくれたので三人で一泊する事に。

預け屋の手伝いをして一泊させてもらった次の日。

マサルとユウリはそのまま真っすぐにバウタウンに向かうという事なので、寄り道をする予定のトウヤは別れる事に。

 

「おーい!マサル!ユウリ!」

 

どこかで聞いた事があるような気がする声を聞きながら、トウヤは後ろを振り返る事なく歩き出す。

彼等とはすぐに再会できると、どこかで確信をしていたが故に。

 

 

 

 

 

それから数日かけて、バウタウンに到着したトウヤはターフタウンの時と同じように、スタジアムでジムチャレンジ戦の予約を終え、次の日に挑戦する事になった。

普段は覗かないSNSを見ると、マサルは昨日の時点でバウタウンを突破しているようだった。

バウタウンはガラル地方に来た日に見て回ったので、ジムチャレンジでメインとなるポケモン達の調整だけ行ってから挑む事にした。

ゆっくり休んだ次の日。

ジムミッションの水の迷路を楽々に突破し、ターフタウンと同じく巨大なスタジアムに入場。

今、目の前にバウタウンのジムリーダー、ルリナが佇んでいる。

 

「きたわね、チャレンジャー。ヤローから話は聞いてるし、聞いてるわよね」

「ええ」

 

ターフタウンでヤローとバトルを終えた後、聞いた話。

それはトウヤに対しては普通のジムチャレンジ用のポケモンではなく、彼等が本気で戦う時用のポケモン達を使うという話だ。

これは確かに、と頷いた。

トウヤは既にイッシュ地方でバッチを八個所有しているし、この数年各地方を旅して周り各地のジムリーダー達ともバトルを行ってきた。

そんな相手に他の新人チャンジャーと同じ扱いにしても意味はないだろうという判断なのだろう。

勿論、トウヤとしては是非お願いしたいと頷いた。

消化試合のようなバトルはこっちとしても願い下げだったからだ。

手持ちの数は通常のジムチャレンジャーと同じだが、使ってくるポケモンは本気に近いポケモン達。

トウヤの武者修行の相手とはぴったりである。

 

「なら他に言う事はありません。バウタウンのジムリーダーとしてゼンリョクで戦うだけです」

「勿論。俺はそれを望んでここにいます」

 

トウヤとルリナが定位置につく。

ボールを投げ合い、ポケモンを繰り出していく。

 

「行くぞヤナッキー!」

「行きなさいペリッパー!」

 

とげざるポケモン、ヤナッキーとみずどりポケモン、ペリッパーが向かい合う。

トウヤは失敗したな、と内心で愚痴る。

水タイプに強い草タイプのポケモンであるヤナッキーを出したのはいいが、こちらが苦手な飛行タイプと複合したペリッパー相手では分が悪い。

とは言え、ここですぐに後続に引かせるのもなんとなくかっこ悪い。

ならばこの状況で勝てばいいだけである。

ペリッパーの特性である雨が降り出すが、トウヤは迷わず指示を出す。

 

「飛べ!アクロバットだ!」

「っ!?ペリッパー!ぼうふう!」

 

雨の勢いがつく直前に一気にペリッパーへ飛び込んでいくヤナッキー。

その素早い行動に一瞬、目を見開くもルリナも負けじと指示を出す。

突っ込んでくるヤナッキーを迎撃すべく、その両羽で暴風を巻き起こそうとする。

 

「キイィィィ!」

 

だがその直前にヤナッキーの蹴りがペリッパの頭に直撃する。

頭を揺さぶって技の発動を阻止するのが目的か。

だがルリナの鍛えられたペリッパーはその程度で怯む事はない。

 

「ペリッパー!」

「っっっ!」

 

ルリナの指示を受けて、ペリッパーがヤナッキーに向かって暴風を放つ。

飛行タイプの技であるぼうふうはその高い威力の反面、狙いがつけにくい為、命中率が低い技とされる。

だが雨が降り注ぐ中ならば、どんな位置だろうが命中させる事が可能。

それを利用した一撃ではあったが、トウヤのヤナッキーはルリナの想定を超えた動きをしていたのだ。

 

(っ!命中はしたものの、思ったよりダメージが入っていない!ぼうふうが放たれる位置より高く飛んだせいね……!)

 

ぼうふう食らったヤナッキーだったが、吹き飛ばされる事はなくアクロバットの勢いのままペリッパーよりも高く飛び上がっていた。

そのおかげで翼から放たれたぼうふうの直撃を避ける事ができたのだろう。

 

「だけど空に浮かび上がったならペリッパーの方が……っ!?」

 

この雨と風が吹き荒ぶこの環境ならばペリッパーが有利な上、空を飛ぶ事が出来ないヤナッキーが空に浮かび上がったまま。

この状況ならばペリッパーが押し切れるのだとルリナは判断したのだが、その目に映ったのは一本の綱。

 

「綱……?いや、つるのむち!?」

「ヤナッキー!いわなだれだ!」

「なっ!?」

 

ヤナッキーの腕から伸びていたのは蔓の鞭。

それは空に浮かぶヤナッキーと地上を繋げるように、伸びていたのだ。

そしてトウヤの声と共にヤナッキーが腕を振るいあげると、蔓の鞭がなんとスタジアムの地面の一部を浮かび上がらせたのだ。

いや、浮かび上がらせるなんて表現は生ぬるい。

飛ぶように発射された地面の一部は巨大な岩となってペリッパーの方へと向かっていくではないか。

 

「無茶苦茶ないわなだれね!ぼうふうで迎撃しなさい!」

「遅い!ヤナッキー!」

「キイィィ!!」

 

迫り来る巨大岩石に対し、ペリッパーはぼうふうで迎え撃たんと翼を広げるがその行動は遅すぎた。

ヤナッキーがペリッパーの上へと落下してきたのだ

 

「ペリッパー!?」

「0距離だ!リーフストーム!」

「ああっ!?」

 

既にヤナッキーの蔓の鞭から岩の塊は離されており、あらぬ方向へすっ飛んでいる。

トウヤとヤナッキーは岩そのものを囮にしていたのだ。

そして至近距離から放たれた草の嵐による一撃。避ける事も防ぐことも出来ず、ペリッパーはそのまま戦闘不能となってしまった。

 

「お疲れ様ペリッパー」

 

ルリナはペリッパーをボールに戻すと労りの声をかける。

 

「ヤナッキー、よくやった」

 

着地したヤナッキーに声をかけるトウヤ。

ヤナッキーもそんなトウヤに腕をあげて応えるが、疲労が見て取れる。

最後に放ったリーフストームは一度撃つと、莫大なエネルギーを使う為、ボールに戻して一度休ませない限りリーフストームなどの技の威力が落ちてしまう。

とは言え肉体から放たれる物理の技はある程度、問題なく使えるので急な戦力低下にはならないだろうが。

 

(相手次第か)

 

ヤナッキーで十分行けそうな相手ならば問題なし。

きつい相手なら戻して後続に託す選択は十分ありだ。

 

「行くわよ!ルンパッパ!」

「ルンパッパか!」

 

雨の状況下でもっとも有利に生かせるエースポケモンが来るのは分かっていた。

水技の威力を更に高められるし、雨の中なら素早さが上昇する特性であるすいすいを利用する事も分かっていた。

そんな中でトウヤは幾つかの候補を考えていたのだがルンパッパとは。

しかしなるほど、と納得せざるを得ない。

ルンパッパは草タイプも持つ複合タイプ。

苦手な電気や草に対してもある程度の耐性を持っている。

水タイプ対策に用意されるであろう二タイプに対して他の水タイプより強気に出れるポケモンに間違いない。

 

「だけど手は……っ!」

 

トウヤが技の指示を出すその前にルリナがルンパッパをボールへと戻していく。

それを見て目を見開く。

ここはイッシュではなくガラル。

ならばガラルにはガラルの戦い方がある。

 

「スタジアムを海に変えましょう!ルンパッパ、ダイマックスなさい!」

 

巨大なボールから現れたキョダイマックスしたルンパッパ。

だがこれぐらいでトウヤもヤナッキーも怯む事はない。

 

「ダストシュート!」

「遅い!ダイストリーム!」

 

ヤナッキーが毒技であるダストシュートを放つが、ルリナは自信あふれる声でルンパッパに迎撃を命ずる。

巨大な水の嵐がヤナッキーが放ったゴミの塊ごと全て押し流さんと遅いかかる。

 

「くそ!ヤナッキー!」

「キイッ!!」

 

ヤナッキーは咄嵯の判断で防御態勢に入る。

そして降り注ぐ水の塊が全てヤナッキーを押し潰さんと襲い掛かった。

 

「これで……っ!」

「ヤナッキーはこの程度じゃ負けやしない!もう一度ダストシュートだ!」

「何ですって!?」

「キイィィ!!」

 

ダイストリームの中から飛び出してきたヤナッキーは先のぼうふうのダメージもあり、ボロボロな姿であった。

しかしその目から闘志は失われておらずトウヤの声に反応して、再びダストシュートをルンパッパに放ったのであった。

 

「っっっ!?」

「ルンパッパ!負けるな!」

 

ダイストリームを放った反動に加えて、ダストシュートの一撃が諸に直撃してしまったルンパッパが態勢を崩してしまう。

そしてその隙を見逃す程、トウヤもヤナッキーも甘くはない。

相手の視線に入らないように隠れるように動いて、腕を伸ばした状態で後ろを取るヤナッキー。

 

「後ろよ!」

「遅いと言った!ダストシュートをもう一発だ!」

 

ルリナの声に反応してルンパッパが後ろを向こうとするが、その巨体故に中々、動けないのを後目にヤナッキーが背中に再びゴミの塊を叩き込む。

直撃だ。

トウヤもヤナッキーもこの一撃でほぼ確信をしていた。

だが。

 

「ルンパッパ!最後までゼンリョクよ!」

「耐えた!?」

 

巨体をふらつかせながら、ルンパッパがヤナッキーの方へ向き直った。

放たれる一撃は間違いなくダイストリーム。

既に複数の攻撃を受けたヤナッキーの体力も限界に近い。

ルンパッパの巨大な眼光とヤナッキーの目が合う。

 

「これで最後よ!」

 

ルリナは確信している。

ルンパッパはこの一撃を放ったとしても敗北は間違いない。

だが相打ちにはもっていけるのだと。

しかしトウヤもまたそれでも確信していた。

それでも勝つのは俺達なのだと。

 

「ヤナッキー」

 

次の瞬間。

 

「キィッ!」

「えっ……!?」

 

ダイストリームを放たんと素早い動きで攻撃態勢を取ったルンパッパに。

 

「がれ……き……?」

「いわなだれだ」

 

ヤナッキーが伸ばした腕を戻した瞬間、ルンパッパに岩の塊が直撃したのであった。

 

「あ……あの時の……」

 

ルンパッパがダイマックス粒子を爆発のように放出して元の姿に戻っていくのを見ながらルリナが呆然と呟く。

ヤナッキーがペリッパー戦で囮に使った岩の塊。

あれを先程、伸ばした腕から放った鞭で掴みそれをぶつけてきたのだ。

 

「……はぁ、押し流されちゃったか」

 

ルリナがルンパッパをボールに戻しつつ呟く。

 

「お疲れヤナッキー」

 

トウヤもヤナッキーをボールに戻して労りの言葉をかける。

それを終えると再びスタジアムの中心でトウヤとルリナが握手を交わす。

 

「さすがと言っておきます。あなた達のチームはジムチャレンジで勝ち進みチャンピオンに挑むに足る素晴らしいスピリットがあります」

「ありがとうございます」

 

トウヤの手にガラル地方二つ目のみずバッチが握られていた。

 

 

 

 

 

「よし、休憩もしたし次はエンジンシティか」

 

またジムチャレンジ後のインタビューをスルーして街に戻ったトウヤは一泊した後、ポケモン達の体調が戻った事を確認してタウンマップを開きながら呟いた。

ジムチャレンジ開会式で滞在していた街に戻る事になる。

楽な方法で戻る事も可能だがあまりそういう楽な方法は取りたくない。

となるとバウタウンから第二鉱山を通って行くのがいいだろう。

ルートを決めて、歩き出そうとした時。

 

「っ!」

 

嫌な気配がした。

それはターフタウンで感じ取った気配によく似ていた気がする。

 

「……もしかして」

 

建物の脇に姿を隠しながら覗き見した先にいたのはやはり様々な姿をした人々。

一見普通の人にも見えるがどうにもトウヤの勘というものに引っかかる。

何かを喋っているようだが、今度はもっと詳しく聞こうと身体を動かそうとしたが連中は全員で第二鉱山の方へ歩き出したではないか。

一瞬、どうしたものかと思ったその時。

 

「……まさか」

 

チラリと見えた一人の背中。

そこにはガラル地方にある筈もない一つのロゴが刻まれていた。

そんな訳ない、という思考がよぎるが現実としてそこにあるものを否定する訳にはいかない。

 

「……本格的に調べなきゃ駄目みたいだな」

 

トウヤは小さく呟くと彼等を追って第二鉱山へと足を進める。

彼の目に留まった一つのロゴ。

それにはPが刻まれた見慣れた紋章であったのだから。




次回、4月9日予定
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