ソードアート・オンライン 贖罪の道   作:桑茶1980

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第五話 攻略会議

デスゲーム開始から一ヶ月が経過した。この間に、約二千人ほどの死者が出たらしい。現在俺はレベル13の両手剣使いで《トールバーナの街》を補給地にしてボスの部屋があるとされる《迷宮区》に日々潜っている。だが、数日を《迷宮区》の安全部屋で過ごすこともあるというのにボス討伐どころかボス部屋を発見することすら出来ていなかった。

 

「問題はモンスターの数と入り組んだ道……か。」

 

モンスターの強さは今の俺からすれば何の問題もないのだが、pop数と迷路のような道、そして、多くのトラップだ。特に、モンスターが大量にpopするのは経験値こそ稼げるものの時間もかかる上に面倒極まりない。

 

「ん?」

 

しかしそんな停滞していた状況にも転機が訪れる。

 

「人影?」

 

長く先が見えない巨大な上り階段の前に二人の人影がある。しかも、その一人はアインクラッドの中ではそこそこの付き合いである彼女だ。

 

「ミト!また会ったな」

 

俺がそう話しかけると二人が俺の方を向く。

 

「ハルキ!!無事だったのね、よかったわ。」

 

「ふん、誰に言ってる?」

 

俺が少し強気に返すと彼女は軽く笑った。

 

「君もソロでここまで来たのか。凄いな」

 

そう喋りかけてきたのは青い髪に胴体をしっかりと銀色の鎧で武装した男だった。

 

「あんたは?」

 

俺がそう聞くと、

 

「ああ、自己紹介が遅れたね。俺はディアベルだ。」

 

「よろしく。あんたもソロで攻略か?」

 

「いや、そこの彼女にも話したんだが、下見と噂を確かめにね。」

 

「下見?噂?」

俺がそう聞くと何故かミトが笑う。

 

「どうしたんだ?」

 

俺がミトに尋ねると、

 

「ふふ、ごめん、私と全く同じ質問を繰り返してたからつい。」

 

ミトは笑いながら答える。

 

「君たちは仲間なのか?」

 

ディアベルが俺たちを見てそう質問をする。

 

「…知り合いだ。」

 

「……ええ…そうね。知り合いね。」

 

何故かミトが少し落ち込んでいる様に見えるのは気のせいだろう。

 

「そうか…まず、下見ってのは、ボス部屋のことさ。」

 

彼は笑みを浮かべながら言う。

 

「ボス部屋?見つけたのか?」

 

「ああ、先日うちのパーティーが発見してね。」

 

「……そうか」

 

ボス部屋が見つかりようやく状況が動き出すことに喜びを感じながら、自分が見つけたかったという少しの悔しさが相まって変な間を作ってしまった。

 

「それで、噂の方だけど……」

 

彼は一瞬目を瞑って、

 

「ソロで強いプレイヤーがいるらしい。」

 

俺たちの方を見ながら言ってくる。

 

「一人は貴重な女性プレイヤーで鎌の使い手、もう一人はとても早い両手剣使い。

どちらも噂に違わない人物だったようだね。」

 

俺とミトは顔を見合わせる。

 

「そう。俺は君たちに会いに来たんだ。」

 

ディアベルは俺たちに向かって言う。

 

「ハルキはともかく、私なんてそんな…………もっと強い人がいるでしょう?」

 

その質問にディアベルの表情が悲しそうになったあと険しくなる。

 

「…………確かに、桁違いに強いプレイヤーが一人いた……でも彼は別格だからね。」

 

ディアベルはそう言い切る。

 

「すまない、話しが逸れたね。…それよりボス攻略会議に参加しないか?」

 

「ボス攻略会議?」

 

ミトがディアベルの誘いを聞き返す。

 

「ああ、攻略の進んでる連中を集めて第一層のボスを撃破する。その会議さ。」

 

「……なるほどね。確かに、βテストの時とは状況が違うものね…」

 

ミトが納得したように言う。

 

「……やっぱり君もβテスターか。」

 

「ええ…」

 

ミトは少し顔が険しくなる。

 

「君は………」

 

ディアベルは俺の方を見る。

 

「βテスターって訳じゃ無さそうだな。」

 

「……なんでそう思うんだ?」

 

「噂だから明確な根拠はないけど、君の噂はだいぶ前からあったからね。デスゲームが始まってそこそこ経ってるのに初期装備で突き進んでる両手剣使いっていう。今は装備も更新されてるみたいだけど……それは、その時はまだゲームのシステムに慣れていなかったからって考えれば辻褄が合う。そして、ゲームのシステムに慣れてないって事はニュービーの可能性が高い。どうかな?」

 

「……なかなか鋭いな。」

 

「ありがとう。それで…どうする?皆んなをリアルワールドに返したい。協力してくれないか?」

 

ディアベルは俺たちに真剣に問う。

 

「…………」

「俺は構わないぞ。」

 

ミトが考えている横で俺は答えを返す。

 

「もともと、ボスと戦うつもりだったしな。」

 

「そうか!ありがとう!……君はどうする?」

 

「私は………」

 

ミトは言葉を発しようとしたが、途中で止まる。

おそらく、ミトはパーティーを組むことによってのミスを懸念しているのだろう。ミトの友人のことや、この前のフィールドボス戦でのイレギュラーな事態を考えてしまうと答えが出すに出せないのかもしれない。

 

「ハルキ?」

 

俺は気づくと、ミトの肩に手を当てていた。

 

「別に、無理する事はないぞ……迷いがあるならやめた方がいい。」

 

ボス戦は前にアルゴも言っていたように普段の攻略よりもさらに危険度が増す。そしてそれは、自分だけではなくミトの懸念事項であろう仲間の命もだ。少しの迷いが自分も含めて仲間の命も危険に晒してしまうことだってある。

 

「そうね…………

でも、やっぱり私……出てみるわ。攻略会議。」

 

ミトは決意を決めた顔でそう言い放った。

 

 

 

 

ーーー攻略会議当日ーーー

 

俺はミトと一緒に攻略会議に行く約束をしていたので、二人で攻略会議が行われる広場に向かっていた。

 

四十四人。それが攻略会議に参加した総数だ。SAOは最高で四十八人のレイドパーティーを組めるらしいので最高人数より四人足りないという事だ。

しかし、俺は正直驚いていた。何故なら、ここに来たという事は少なくとも命の危険が高まることを覚悟をしてきたという事だ。俺は「二十人くれば御の字」っと思っていたのでその光景を見て固まってしまった。

 

「どうしたの?早く行きましょ」

 

ミトが少し固まっている俺に話しかける。

 

「……ああ、そうだな。」

 

俺たちは広場の石段に腰をかけ、会議が始まるまで話しながら待っていると、

「久しいな。」

 

聞き覚えのある低い声が聞こえてくる。

 

「ゴルスタさん!シルマーさんも!」

 

気づけば俺たちの後ろに立っていて、それにミトが反応する。

 

「こんにちは。二人もボス戦に?」

 

ミトが尋ねると、

 

「ええ、もちろん。今回も参加するわ。」

 

微笑みながらシルマーさんが答える。

 

「それにしても、今回はフィールドボスとは違ってかなり大掛かりだな。」

 

ゴルスタさんが辺りを見渡しながら言う。

 

「フロアボスはかなり手強いらしいからな」

 

俺がそう言うと、皆んなの顔が真剣になる。

 

「まあ、とにかく今回も頑張りましょ!クリア出来れば二層に進めるはずなんだから。」

 

シルマーさんがそう励ますように言う。

 

「うむ。」

 

その言葉俺たち全員が頷く。

 

「あと、キリトが来れば揃うだけどな。」

 

「アルゴさんもでしょ」

 

俺がそう言うと、ミトにすかさず突っ込まれる。

 

「そうだったな」

 

俺がしみじみ言うと、

 

「忘れてたの?あとで怒られるわよ、オイラを忘れるなんていい度胸だナって」

 

ミトがそう言うと俺は顔を逸らす。その行動に皆んな笑っていた。

それから、石段に座り談笑していると、

 

「はーーーーーい!それじゃあ、予定より五分遅れたけど、そろそろ始めさせてもらいまーす!皆んなもう少し前に来てくれるかな?」

 

パン、パンと手を叩き、ディアベルは注目を集める。

 

「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな。俺の名前はディアベル、職業は……気持ち的にナイトやってます!」

 

すると、広場にいる周りの人達がどっと沸き、口笛や拍手に混じって、「ほんとは勇者って言いてーんだろ!」という声も飛んだ。

それを、聞いてからディアベルは笑いながら手の仕草で場を沈める。

 

「……今日、俺たちのパーティーがボス部屋を発見した。」

 

ディアベルは真剣な表情でそう言い、騒いでいた人達にも緊張が走る。

 

「一ヶ月。………此処まで一ヶ月もかかったけど、それでも俺たちは示さなきゃいけない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームもいつかきっとクリア出来るんだってことを、始まりの街で待ってる皆んなに伝えなきゃいけない。それが、今この場にいる俺たちトッププレイヤーの義務なんだ。そうだろ?皆んな!!」

 

その演説に多くの拍手が巻き起こった。さっき騒いでいなかった人も多くが拍手をしている。

 

「それじゃあ、まずは六人で一つのパーティーを組んでみてくれ、フロアボスには普通のパーティーじゃ対抗出来ない。パーティーを束ねたレイドを作るんだ。」

 

そのディアベルの発言に、どんどんパーティーが作られていく。俺は、ミト、ゴルスタさん、シルマーさんと組んでキリトを探そうとしたのだが、二人組だったプレイヤーから話しかけられて断れずパーティーを組んでしまった。

 

その後キリトを見つけ目があった。キリトはこっちに念を送ってきたが、俺は片手で謝る。

結局キリトは、フードを深く被ったプレイヤーとのコンビでいくようだ。

 

「そろそろ、組み終わったかな?それじゃあ……」

 

「ちょお待たんかい!!」

 

その声が広場に響き渡る。

その声を発したのは、小柄ながらがっちりとした体格の男で、サボテンの様に尖ったスタイルの茶色の髪が特徴だ。

 

「こいつだけは先に言わせて貰うで。」

 

「こいつっていうのは何かな?まあ何にせよ、意見は大歓迎さ。でも、発言するなら一応名乗って貰いたいな」

 

「…………フン」

 

そいつは盛大に鼻を鳴らすと広場の中央に向かい、俺たちの方に振り向いた。

 

「わいは、キバオウってもんや」

 

そう簡単に名乗った後、彼はこちらを睨めつけ、

 

「こん中に、五人か十人、ワビィ入れなあかん奴らがおるはずや。」

 

っとドスの利いた声で言った。

 

「詫び?誰にだい?」

 

ディアベルが尋ねる。

 

「はっ、決まっとるやろ。今までに死んでった二千人にや!奴らが何もかんも独り占めしたから、一ヶ月で二千人も死んでしもたんや!せやろが!!」

 

「……キバオウさん。君の言う、奴らって言うのは元βテスターのことかい?」

 

「決まっとるやろ。β上がりの奴らは、こんクソゲーが始まったその日にダッシュで始まりの街から消えよった。右も左も判らん九千何百人のビギナーを見捨ててな。奴らはうまい狩場やらボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや。…………こん中にもちょっとはおるはずやで、β上がりっちゅうことを隠して、ボス攻略の仲間に入れてもらお考えてる小狡い奴らが。そいつらに土下座さして、貯め込んだ金やアイテムをこん作戦のために軒並み吐き出してもらうな、パーティーメンバーとして命は預けられんし預かれんと、わいはそう言うとるんや!」

 

っと彼は叫んだ。

 

「なら、参加しなければ良い。」

 

「ああ?誰や?」

 

俺の呟きに彼は反応する。

 

「ちょっと?!」

 

ミトは今はダメだと俺を止めようとしていたらしいが、俺が先に声を出してしまったためもう遅い。

 

「俺はハルキだ。そんなにβテスターと一緒に戦うのが無理なら参加しなければ良いって言ったんだ。」

 

俺はその場で立ち上がる。

 

「何やと?」

 

「βテスターが金やアイテムを貯め込んでるなら、その戦力は尚更ボス戦に必要なんじゃないのか?βテスター抜きで戦うのはリスクが高い。だから、どうしても協力出来ないならあんたは参加しなくても良い。ボス戦は命の危険がより近いんだ。不確定要素は無い方が良い。」

 

俺の言葉にキバオウはただじっと俺を睨む。

 

「それにそもそも、βテスターとビギナーを見分ける方法なんて無いしな。しかも、あんたみたいな人がいるこの状況で自分からβテスターだと名乗る人が何人いる?」

 

「っく!」

 

キバオウは表情を歪ませる。

 

「そんな意味もない炙り出しは時間の無駄だ。そもそも此処はボス攻略会議でβテスターへの八つ当たり会じゃない。そうじゃないのか?」

 

俺がディアベルに尋ねると、

 

「そうだな。キバオウさんの気持ちもわからない事はないけど、βテスターの力はボス戦には不可欠だ。それに此処はボス攻略会議だからね。」

 

「俺も発言いいか?」

 

その時、低めの渋みのある声が広場に響き渡る。

身長は百九十ほどはあるだろう、頭は完全スキンヘッド、肌もチョコレート色で体格は完全に日本人離れしている。背負っている斧がとても軽そうだ。

 

その迫力にキバオウは気圧されたように一歩下がった。

 

「俺はエギルだ。………キバオウさん。つまりあんたが言いたいのは、βテスター達がビギナーの面倒を見なかったからたくさん死者が出た。だから、その責任をとって謝罪・賠償しろ。そうでないとボス戦に参加出来ない。そういう事だな?」

 

「そ、そうや!!」

 

キバオウはエギルさんに気圧されていた状態から強気な状態に戻り、

 

「あいつらが見捨てんかったら死なずに済んだ二千人や!しかもただの二千ちゃうで、ほとんどが、他のMMOじゃトップ張ってたベテランやったんやぞ!アホテスター連中が、ちゃんと情報やらアイテムやら金やら分け合うとったら、今頃此処にはこの十倍の人数が……ちゃう、今頃は二層やら三層まで突破できとったに違いないんや!!」

 

俺がその言葉に呆れていると、

 

「あんたはそう言うが、金やアイテムはともかく、情報はあったぞ。」

 

そう言うと、エギルさんはポーチから本を取り出す。

 

「このガイドブック、あんただって貰っただろう。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布してるんだからな」

 

エギルさんが言っているのは、アルゴの攻略本の話だ。

「……貰たで。それが何や!」

 

キバオウは刺々しく言う。

 

「このガイドブックは、俺が新しい村や街に着くと、必ず道具屋に置いてあった。情報が早すぎる、とは思わなかったのかい」

 

「せやから、早かったら何やっちゅうんや!」

 

「こいつに載ってるモンスターやマップデータを情報屋に提供したのはβテスター達以外にありえないって事だ」

 

その言葉に、キバオウは黙り、憎々しく巨漢を睨めつけることしか出来なかった。

 

「いいか?情報は誰にでも手に入れることができたんだ。なのに沢山のプレイヤーが死んだ。その理由は彼らがベテランのMMOプレイヤーだったからだと俺は考えている。このSAOを他のタイトルと同じ物差しで計り、引くべきポイントを見誤った。だが今はその責任を追求してる場合じゃないだろ。その少年の言う通り此処はボス攻略のための場だ。そして、俺たち自身がそうなるかどうか、それがこの会議で左右されると俺は思っているんだがな。」

 

そこにディアベルがキバオウに、

 

「キバオウさん、さっきも言った通り君の気持ちも理解できるよ。でも、エギルさんとハルキくんの言う通り今は前を見る時だろ?ボス攻略にはβテスターの人達の力が必要なんだ。」

 

そうキバオウに言った後、ディアベルは全体を見渡しながら、

 

「みんな、それぞれに思うところはあるだろうけど、今だけはこの第一層を突破するために力を合わせて欲しい。どうしても元テスターとは一緒に戦えない、って人は、残念だけど抜けてくれて構わないよ。ボス戦ではチームワークが重要だからさ。」

 

そう言った後、キバオウをじっと見つめた。キバオウはしばらくその視線を受けていたが、

 

「………ええわ、今はあんたに従ったる。けど、ボス戦が終わったら白黒付けさして貰うで」

 

そう言いキバオウは席に戻り、ドスッと座る。

俺とエギルさんも席に戻る。

 

するとミトが複雑な表情で俺を見ていた。

 

「それじゃあ、再開するね。ボス情報は俺たちのパーティーが実際に見た情報と、この攻略本を使わせて貰う。」

 

ディアベルは全体をもう一度見渡してそう言った。

 

「攻略本の情報によると、ボスは身の丈が二メートルに達する巨大なコボルトで、ボスの名前は《イルファング・ザ・コボルトロード》、武器はボスの武器は斧とバックラー。四本あるHPゲージが残り一本になると武器をタルワールに持ち替え、《曲刀カテゴリ》に属する攻撃をする。そしてその取り巻きに、金属鎧を着込みハルバードを携えた《ルイン・コボルトセンチネル》がHPゲージ一本消滅するにつれ三体popするようだ。」

 

ディアベルは攻略本の情報を読み上げた後、顔を上げ、

 

「俺たちパーティーがボスを視認した情報と一致しているからこのまま進めるけど……異論ないかな?」

 

その後は、パーティーにそれぞれ、A隊、B隊と名付けていき、それぞれに役割を分担した。俺はC隊でボスへのアタック・ディレイ担当。キリトはE隊と協力して、取り巻きを潰す役目のようだ。正直キリトの実力的にはボスへのアタックを担当した方が良いと思うのだが、

 

(まあ、二人なら仕方ないか……)

 

っと自己完結していると、

 

「最後に、ドロップ分配についてだが……金は全員で自動均等割り、経験値はモンスターを倒したパーティーのもの、アイテムはゲットした人のものっとする。明日は、十時に出発する。では、解散!」

 

会議終了後、集団はパーティーごとに散り散りとなっていった。

 

「ハルキ、今から明日のパーティーで動きの確認するから行きましょ」

 

俺はミトの言葉に頷き広場を出た。

 

 

 

 

 

 

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