ソードアート・オンライン 贖罪の道   作:桑茶1980

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お久しぶりです。


第八話 ビーターの誕生

コボルトのボスがキリトによって倒されて、Congratulationっという文字が浮かび上がる。

場は静寂に包まれていた。あれだけのアクシデントが重なったのだ。無理もない。俺やキリトでさえ固まっていたのだから。

 

「お疲れ様」

 

アスナがキリトにそう言ったことで時が動き出したかのように、硬直が解ける。

 

「ミト、平気か?」

 

「ええ、一応」

 

それでも疲労からか顔色は良くは無かった。

 

「大丈夫か!?」「二人とも大丈夫!?」

 

ゴルスタさんとシルマーさんが駆け寄ってくる。

 

 

「ああ、大丈夫」「ええ、平気よ」

 

「前回といい、危険な時に助けに行けず本当にすまなかった。」

 

ゴルスタさんとシルマーさんはそう言って俺たちに謝ってくる。

 

「謝る必要はない、二人だって充分危険だったんだから。」

 

二人はスタンで動けなかったのだからある意味二人の方が危険だったかもしれない。

 

 

「なんでだよっ!」

 

怒鳴り声が部屋に響く。叫び主はディアベルと同じパーティーでシミター使いの男だった。そしてその声はキリトに向けられているようだった。

 

「なんでディアベルさんを見殺しにしたんだ!」

 

「見殺し?」

 

俺は彼の言ってる意味が分からなかった。キリトも同じようだ。

 

「そうだろ!!だって…だってあんたは、ボスの使う技を知っていたじゃないか!!あんたが最初からあの情報を伝えてれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!!」

 

違う。確かにキリトは技の動きや効果を知っていたが、それはおそらくβテストでの経験からの知識であって、当然、今日のコボルトのボスがそれを使ってくるとは夢にも思わなかっただろう。だから見当違いも甚だしいのだが…

 

「俺……俺知ってる!!こいつは、元βテスターだ!だから、ボスの攻撃パターンとか旨いクエとか狩場とか全部知ってるんだ!知ってて隠してるんだ。」

 

今度は別の男が人差し指をキリトに向けながら頭にキンキンと響くような甲高い声で叫ぶ。

周りはザワザワとし始める。

 

「でもさ、昨日配布された攻略本にはβ時代の情報だって書いてあっただろ?彼がβテスターなら知識は攻略本と同じはずじゃないのか?」

 

「そ、それは……」

 

エギルさんのパーティーメンバーの人がそう言い、甲高い声の人はその反論に押し黙る。しかし、

 

「あの、攻略本の情報が嘘だったんだ。攻略本を作ってる奴もβテスターなんだからただで情報を教えたりするはずがなかったんだ。」

 

今度はシミター使いの方がそう叫ぶ。

まずい。このままでは新規プレイヤーとβテスターで近いうちに争いになるだろう。最悪の場合、殺し合いになることも……

しかし、俺はそんなことより、みんなを守るために命をかけて戦ったキリトが責められることが耐えられなかった。

俺は遂に我慢できずシミター使いに反論しようと一歩前に出た時、

 

「元βテスターだって?」

 

キリトの嘲笑う様な声が部屋中に響き渡る。

 

「あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

 

(キリト…)

 

そうキリトはこの状況を使って一人で収めようとしているのだ。

 

「いいか?SAOのβテストはとんでもない倍率だったんだ。元βテスターと言ってもそのほとんどがレベリングの仕方すら知らない素人だったよ。今のアンタらの方がまだマシさ」

 

「な、なに…」

 

「でも、俺は違う。俺はβテスト中に誰も到達できなかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知っていたのはずっと上の層でカタナスキルを使うMobと散々戦ったからさ。他にもいろいろ知ってるぜ。情報屋なんて問題にならないくらいな。」

 

「そ、そんなのβテスターとか、そう言うレベルじゃねーだろ。チート、チーターじゃねえか!」

 

周りからも似たような声があがり、その中にビーターという単語が出てきた。

 

「ビーターか、いい呼び名だな。そう、俺はビーターだ。これからは他のβテスターなんかと一緒にしないでくれ」

 

そう言うとキリトは螺旋階段に向かって歩いていく。

 

「二層の転移門は俺が有効化(アクティベート)しといてやる。主街区までフィールドを歩くから、ついてくるなら初見mobに殺される覚悟をしろよ。」

 

そう言いキリトは階段を登って行った。

キリトがいなくなった後のボス部屋は再び沈黙に包まれていた。数分後、キバオウやキリトを糾弾した奴はパーティーメンバーを引き連れて去っていき、他の人もボス部屋を後にして行き、ボス部屋に残ったのは俺とミト、そしてアスナという少女だけだ。

 

「ミト、俺行くよ。」

 

「キリトを追うの?」

 

「ああ、ゴルスタさんとシルマーさんにもそのために先に戻って貰ったからな。」

 

「私は……」

 

「わかってる。重要な話が彼女とあるんだろ?」

 

俺がアスナの方を向いて、そう言うと、ミトは小さく頷く。

 

「頑張れよ。」

 

そう一言残し、俺は螺旋階段を駆け上った。

 

 

 

 

 

《sideミト》

 

私とアスナの二人になったボス部屋に私は果てしない広さ感じていた。その時、

 

「久しぶりね、ミト」

 

アスナは少し微笑みながら話しかけてくる。

 

「アスナ…あの時は…本当に……ごめんなさい。」

 

私の掠れた声がそう静まり返った部屋に小さく響く。

 

「うん、もういいの。あの時のことは」

 

「え、」

 

「もちろん、当時は困惑したわ。なんで?って、その後には怒りも沸いてきた。」

 

その言葉に私は地面に目を向けてしまい、アスナの顔が見えなくなってしまった。

 

(わかっていた。覚悟もしていた。なのに…)

 

再び自分の弱さに打ちひしがれていると、

いつの間にか目の前まで来ていたアスナが私の頭を優しく持ち上げ、顔を上げさせる。

 

「でもね、あの人が教えてくれたの、一瞬の行動だけがその人の全てじゃないって。ミトだって辛かったよね。ミトだって私と同じ、ただの中学生なんだから。怖くて当然だよね。私の方こそごめん。気づいてあげられなくて。βテスターのミトは、本当なら開始してすぐにもっとしたいことがあったはずなのにそれでも初心者の私と一緒にいてくれた。私はそんな優しいミトが本当のあなただと思うから……だから、もういいの。」

 

「アスナ……」

 

アスナの言葉に涙が流れる。

 

「それに、さっき見たでしょ?私の突き。もう守られるだけの私じゃない。だから、今度は一歩的じゃなくて対等に行きましょ。」

 

アスナの言葉に何か返さなければならない。だが、声を抑えるのが精一杯だった。口を開いてしまったら大声で泣いてしまいそうだったから。

 

「私、彼を追うわ。」

 

「え?」

 

そこではじめて声が出せた。

 

「見つけたの。この世界で追いかけたいもの。ミトはどうする?」

 

「……私は」

 

 

 

《sideキリト》

 

大勢のプレイヤーの前で大見得を切ったのは良いものの心の中では不安でいっぱいだった。

ついさっき、βテストとの変更点が露出し、犠牲者がでたばかりだ。目の前にある、巨大な扉を開ければ、2層が広がっているが、2層の構造自体がβテストと全く違う風景に変更されているということもあり得る。そうなれば、命の危険は計り知れない。扉を開けようと、手を前に出しては、戻すという動作を繰り返していると、

 

「何してるんだ?」

 

「うおおぁ」

 

後ろから急に声をかけられ、我ながら変な裏声を出してしまった。

 

「ハルキか。びっくりさせないでくれ。」

 

「別にびっくりさせるつもりはなかったんだが。まぁ良い。」

 

ハルキは俺の横に立つと、扉に手を伸ばす。

 

「お、おい」

 

「この扉の先が第二層なんだろ?早く行こうぜ。」

 

「いや、でも…俺は来るなって…」

 

「来るなら、覚悟しろって言ったんだろ?俺はフィールドにいる時はいつでも覚悟してるから問題ないな。」

 

ハルキはきっぱりとそう言い切った。

 

「まあ、ここで手を出したり、引いたりすることはないから安心しろ。」

 

「見てたのかよ…」

 

俺が呆れたような声を出すと、ハルキは苦笑しながら扉の左側を持った。

さっきまで俺の中にあった心配はいつの間にか消え去っていて俺は右側の扉を持つ。

 

「せーので開けるぞ。」

 

「ああ」

 

俺がそう言うと、ハルキはうなずく。

 

「「せーの」」

 

その時、扉を押す手が増えた。

 

「え?」

 

俺の間抜けな声が出てしまったが、扉はそのまま勢いよく開いた。

俺が後ろを振り返ると、

 

「アスナ!?」

 

そこには、アスナとミトがいた。

 

「ミト?」

 

ハルキも不思議そうにしている。

 

「私たちも行くわ。あなた達と一緒に。」

 

「いや、だから俺は…」

 

俺が言葉を発しようとすると、

 

「来るなら、覚悟しろって言ったんじゃない。私はいつでも覚悟してるから問題ないわよ」

 

アスナがそう言いミトが頷く。

 

「はぁ、ハルキと全く同じこと言わないでくれ。」

 

俺がそう言うと皆んなは笑いながら俺を見ていた。

 

「わかった。じゃあ、行くか。」

 

俺はそう言い、迷宮区から出て2層のフィールドに足を踏み入れた。

3人は俺に続きフィールドに足を踏み入れた。これから、色んな事件が起こるかもしれない。そんな不安が完全に消え去ることは無かったが、このメンバーなら乗り越えられるという根拠のない自信が何故か胸の中にあった

 




次回から原作のように少し時間が飛びます。
プログレッシブをやるかどうかは現在検討中です。
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