迷い人よ、ようこそ。   作:みなたか

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2022年 11月13日 加筆と修正


第十一話

「白上さん」

「…はい」

「助けに来たよ」

「っ、はい!!」

 

俺は白上さんに駆け寄りたかった、でも。

 

「巫女を連れて行かせるわけにはいかないよ」

 

現れたのは白髪で神職の恰好をした男の人、頭に獣の耳がある。

昨日の作戦会議でみた写真と同じ顔。

 

「白上家当主」

「ああ、そしてそこにいるフブキの父親でもある」

「…俺は」

「荒川 虎太郎君だね、知っているよ、迷い人でもあることも」

「自己紹介はいらないっぽいですね」

 

ふと周囲を見渡す、白上さんを連れて逃げるには…

 

「よそ見とは随分と余裕だね」

 

その声は後ろから聞こえたと同時に悪寒が全身を駆け巡る。

 

「荒川さん!!」

 

白上さんの悲鳴のような声が聞こえたと同時に俺は前転でその場を回避し後ろを振り向く。するとそこには刀を振り下ろした白上当主がいた。

恐らくあの場にそのままいたら斬られていただろう。

 

「不意打ちしてくるとか卑怯すぎませんか」

「油断している君が悪いんだよ?」

 

まあ、それはそうだ。気を引き締めろ、今の一瞬で分かっただろう、この人は格上の人だ。

俺は木刀を構えた。

 

「白上さんを神にするなんてことやめにしませんか?」

「それは出来ない」

「アンタの娘だろ」

「ああ、だが私は白上家当主だ、白上家とそして大神家を導く選択をする義務がある」

「…そうですか」

 

やはり交渉は不可能、であるなら。

 

「アンタを倒して白上さんを助ける」

「では、私は君を倒してフブキを神にしよう」

 

 最後の闘いが始まった。

 

 

 

 

 

 

さっきの攻撃を見て分かった。あれは本当に格上の相手、手を抜いたらその時点で負ける!!

 

「憑依、経験ッ!!」

 

だからこそのこの選択、既に大神さん相手に使った時のインターバルは既に終わっているはずだが。

 

「うぎぎぎッ!!」

 

やはり先ほど無理に使った影響だろうか、正直体の内側から爆発するような痛みが走る。

 

「既に満身創痍じゃないか」

「あ、アンタが下の階に一族のやつらとか桐生ココを置いたからだろ…」

「それもそうだ」

 

すると白上当主はまた俺の背後に回り込むが。

 

「流石に見えてるぞ!!」

 

俺はその背後に木刀を振りかざす。

まあ、当然の如くそれは白上当主の刀によって受け止められる。

 

「ほう、先ほどはほぼ直感で回避してたのに対して今回は見えている。成程、憑依経験か」

 

白上当主は木刀に視線をやる。

バレたのは仕方ないが関係なし、

制限時間のこともある。速攻を掛けよう。

 

俺はそのまま木刀を一旦引き、右上から斬り下げ、左上に斬り上げるが、それも刀に弾かれる。

 

「ちっ」

「その剣筋、そして赤色の魔力。成程、百鬼一族の剣術か」

 

しかも冷静に分析される。

あまりにも余裕がありそうだ。

 

「では、今度はこちらから」

 

そう言うと白上当主は攻撃に転じてきた、右に左に、数多な斬撃を放ってきた。

俺はなんとかその斬撃、全てを木刀で弾き返す、が。

その一つ一つ全てが重い!! 一つ弾くたびに腕が痺れてくる。

 

「セァ!!」

 

最後に放たれた一撃、まともに受けたらまずい。

俺はその攻撃に自分の木刀を添わせ、刀を受け流す。

が、相手の速度が速すぎる、全部は受け流せない。

木刀が僅かに受け流した刀はそのまま俺の左肩に刺さった。

 

「…いってええ!!」

 

だが、これで相手はがら空き、行ける。

痛みを無視してそのまま木刀を叩きつける。

 

木刀が当たったその瞬間、白上当主の姿は煙を出し掻き消えた。

 

「は?」

 

すると俺の後ろから物凄い圧を感じた。

避けようとするが刺された左肩の痛みで判断が遅れる。

それでも何とか前に転がり受け身を取ろうとしたが。

それよりも先に背中が斬られた感覚、コンマ数秒遅れて痛みが走る。

 

「ぐああああ!!!」

 

何でお前が後ろに居るんだ、さっき攻撃が当たったはず…

 

「狐はね、化かすのが得意なんだ、覚えておくといい」

 

その手には長方形の紙、あれは呪符だ。そうか変わり身ってやつか、クソっ!!

 

「だが今のは悪くない攻撃だった、だが左腕を捨てるという選択はあまりにも総計で浅はかな選択だ。その結果君は背中を取られるという致命的なミスを犯した。」

 

俺は一旦距離を取ろうと背中と右肩の痛みに耐え、後ろに大きくジャンプするが。

 

「それは悪手だ」

 

その距離を一瞬で詰めて刀を振りかぶられ。

 

「あっ」

 

木刀を弾き飛ばされた。

そしてそのまま白上当主は体当たりを繰り出し、俺を吹き飛ばした。

 

「がッフッ!!」

「憑依経験は武器に宿った経験を元に自身を強化する魔法。元々その武器を使っていた使用者が強ければ強いほどその効果は増す、手っ取り早く強くなるのにはうってつけの方法だ。だがこれには致命的すぎる弱点がある」

 

何とか急いで起き上がろうとするが。

 

「━ああああああッ!!!!」

 

体中に刺すような激痛が走る。

 

「それは起点となっている武器を手放せば憑依経験は解けるということ、それに加えて本来武器に戻るはずだった憑依経験の魔力は行き場を失い、自身を蝕む」

 

そう、今白上当主が言ったことは全て本当だ。

あやめさんから言われていたことだ。

あの人が修行中、一度も木刀を手放さないように指示していたのは憑依経験を使えるようにするのと、こういった事態を避けるためだった、と言うのに。

俺はその木刀を手放してしまった。

思わず膝を付き、倒れた。

 

「荒川さん!!」

 

白上さんは俺を心配するように叫んだ。

当主は倒れる俺の前に立ちその刃を俺に向けた。

 

「それが君の限界だよ」

 

俺は痛みで口を開くことも出来ない。

 

 

 

 

 

 

だが、刃と俺の間に入る人物がいた。

 

「…危ないのでそこを退きなさい、フブキ」

「……」

 

白上さんが間に立ち、俺を守るように両手を広げていた。

 

「しら、かみさん」

 

振り絞るように俺は口を開く。

白上さんはこちらに一瞬振り向くと一瞬笑いかけると当主に向き直った。

 

「神になります、だから荒川さんをこれ以上、傷つけないで」

「な、何言って…」

「…良いんだな?」

「はい」

「待て、待ってよ、白上さん!! そんなの!!」

 

俺は力を入れて立ち上がろうとするが力が入らず、おまけに左肩と背中から流れた血で足が滑る始末。

 

「立て、立てよ、頼むから…っ!!」

 

今、立ち上がらないと、本当に行っちまう。

 

「荒川さん」

 

彼女はまた振り返り、俺の目線に合わせるように膝立ちになった。

 

「もう、十分です」

 

俺が、一番して欲しくない表情があった。

 

「ありがとうございます、私の為にここまでしてくれて」

「ダメだ、ダメだよ白上さん!!」

「そしてごめんなさい、こんなにも傷つけて」

 

そう言うと白上さんは立ち上がり、当主の元に行く。

本堂全体が月の光に照らされ青白く輝き始めた。

 

「ああ、ああああ!!!」

 

それと同時に本堂全体に窓ガラスが割れるような破砕音が鳴った、恐らくこの本堂に張り巡らされていた多重の防御魔法陣が消えた音だろう。

 

白上さんは本堂の中央に立った、すると白上さんを中心に陣を敷くように紋様が描かれる。

その紋様から照らされた白上さんはいやに綺麗に見えてしまった。

更に紋様は光を増す。

 

それと当時に白上さんの体にも変化が起きた。

腰から見える尻尾、そこに二本目の尻尾が生えてくる。

 

それと同時に白上さんを中心に巻き上がった魔力が風を生んだ。

それは、三本、四本と尻尾が増えるたびにその勢いを増す。

 

五本目が生えた時点で発生した突風により俺はこの天守閣から転がり落ちてしまった。

 

 

 

落ちている感覚があった。

ごめん、皆。

失敗した…。

 

落下する俺は視界に黒い影のようなものを見た。

何だ、あれ…

それを確認すること無く俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

「ちっ、まだ来やがる」

 

オペレータの護衛として残ったアルさんは両手に銃を撃ちながらそう答えた。

 

「アルさん大丈夫?」

 

ロベルさんがアルさんに大丈夫かと気にかけていた。

 

「おう、大丈夫だけど、まあよく持った方だよ、ここで突撃組をサポートするの」

 

丁度虎太郎が天守閣に入った辺りでまつりたちは敵に見つかった、だがその為のアルさん、彼は二丁の拳銃を用いて敵たちを打ち倒していた。

 

「もうすぐ0時だからなぁ、どうや? 虎太郎に何か動きはあったか?」

「ううん、まだないけど…」

 

タブレットには本堂で虎太郎がいることを表す信号が出続けている。

すると、不意に頭上が青くなった。

 

見上げると本堂が青白く輝いていた。

 

「おいおいおい、あれってもしかして儀式の!?」

 

すぐさまタブレットを確認した。

 

「え、虎太郎!?」

 

そこには虎太郎が天守閣から落ちる反応を示していた。

 

 

「な!?」

「ちょ、まつりさん!?」

 

気が付いたら思わず駆け出していた。

 

 

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