声がする。
『起きろ』
親父?
『起きなさい』
おかん?
「起きて!!」
誰だ?
「お願い、目を覚まして!!」
体を揺らされる。
眼を開ける。
「虎太郎!!」
「うちが分かる!?」
そこにいたのは。
「まつり? 大神さん?」
二人が俺の顔を覗き込むように見ていた。
「良かった…」
「あれ、俺…」
「天守閣から落ちたんだよ、虎太郎」
まつりのその一言で俺は全てを思い出した。
「そうだ、白上さん!! っう!!」
体を起こしたら体が痛みを発した。
「あんまり動いちゃ駄目!! 左肩と背中は縛るぐらいの簡単な治療しかしていないから」
「大、丈夫。つばでも付けときゃ多分何とかなる」
でも、そうか、俺本堂から落ちたのか。
よく生きてたな、俺。
「本堂の下には水が張り巡らされているからね、何とか空中でキャッチして飛び込んだよ」
あ、そうか、あの時視界に映った黒い影は大神さんだったのか。着ている服と大神さんをよく見ると水で濡れていた。
「ありがとうございます、大神さん」
「本当にびっくりしたよ、本堂に行ったら落ちてるんだし」
「あははー、…いつつ」
そう言いながら俺は痛みに耐えつつゆっくり立ち上がる。
さて、と。
「……」
白上さんの言葉を思い出す。
『ごめんなさい、こんなにも傷つけて』
俺は…また…。
「ほい!!」
まつりが急に俺の頬を両手で挟み込んできた。
「ふぁにふんだ」
「また怖い顔してる」
「……」
「大丈夫、あんなに頑張ってきたのまつりは知ってるから、だから絶対に大丈夫、フブキにも届くはずだよ」
ほんと、まつりは…。
俺はまつりの手をどかす。
「ありがとう、まつり」
「どういたしまして」
まつりはにへらと笑う。
「あの、うちはお邪魔?」
「いやいや、そんなことないですって」
「そうそう、ミオも必要だし」
「本当かなぁ… ま、うちにあんなことして今更ヘタレるなんてありえないからね、こ・た・ろ・う」
今更ながら大神さんの顔面に二発も拳を叩き込んだことを思い出した。
あれ? 俺、土下座したほうが良いか?
「あー! いた、ようやく見つけたで!!」
「お、虎太郎もいるじゃん」
するとアルさんとマスターがやってきた。
「ほんま、急にいなくならんといてや」
「ごめんごめん」
「って、虎太郎そのケガ!!」
アルさんが俺のケガに気付いて治療を行ってくれた。
「あ、ちょ、もうちょい優しく…」
「ちょっと黙ってな、全くこんな無理して!!」
「ぬあああああ、痛い痛い!!」
「えー、まつりの前ではつば付けとけば直るって言ってたじゃん」
「いや、ほら、あれはその、女の子の前ではカッコつけたがる男の子の性みたいなもので」
「つんつん」
「ちょ、やめ、そこはああ!!」
のたうち回りながら俺はアルさんの治療を受けた。
まあ、3分ぐらいで終わらしてくれたので時間はそんなに経っていない。
「で、問題のあれだけどさ」
マスターは上の指さす、そこには青白く光る本堂があった。
「あれってさ、儀式が始まったってことで良いんか?」
「恐らく、話でしかうちは聞いたことがないんですけど」
「ってことは作戦失敗!?」
まつりが危惧してたことを言うが、大神さんが否定する。
「いや、儀式が完全に終わるのはあの光が収まってから、でも後10分ぐらいのはず」
「つまり、まだ間に合う」
「まあ、そういうことだけど…」
大神さんは皆を見る。
まあ、俺は大神さんとアルさんに治療された身ではあるがそれでもかなりのケガ人。
そしてマスターとまつりは戦う術を持たず、実質の戦力は大神さんとアルさん、そしてケガ人の俺。
…やばくね?
その時、白上神社の大体3階の位置の壁が派手な音を立てて崩れた。
「え?」
思わず間抜けな声を上げる大神さん。
すると崩れた壁からとても大きな影が飛び出してきた。
それは大きな羽を広げて空を飛んだ。
「ココちゃん!?」
まつりはそう声を上げた。
え?、ココ? 桐生ココ?
するとそのドラゴンは地上にいる俺たちを見つけると傍に降り立ってきた。
凄まじい風を受けながらなんとか俺たちはそのドラゴンを見ると、その背中には。
「おーい、皆―!!」
手を振るあやめさんが乗っていた。
いや、あやめさんだけじゃない、あの時別れた、ノエルさん、フレアさん、天真さん、オウガさん、皆いた。
「全員乗れー!!」
オウガさんはそう言う。俺たちはその言葉に従い全員そのドラゴンの背中に飛び乗った。
「え、このドラゴンって…」
「うん、ココちゃんだよ」
『ワタシですよ、コタロー』
すると頭の中に桐生ココの声が響いた。
く、こいつ直接脳内に!? ふぁみちきください。
『アホなこと考えれるぐらいにはまだ余裕そうですネ』
「ま、大丈夫ですよ」
『なら良いでス、今から本堂にまで一気にいきますからね』
「え、良いんですか、確か借りがなんとか…」
『ワタシが白上当主から頼まれたのは儀式が始まるまで守ってくレと言われただけですヨ、始まった後は好きにやらして貰います、まあワタシがやるのは皆を上に運ぶまでですけどね』
「十分すぎますよ」
と左肩を叩かれた。
「いっつ!?!?」
振り向くと笑顔のあやめさんがいた。
「余が上げた木刀は?」
「あっ」
そう言えば上で弾き飛ばされてからどかにいったはず…。
「あのー、すみません、無くしました…」
「はぁ、まあコタローが木刀を手放すってことはそれなりのことがあったんだなって余は分かってるから」
「すみません」
「だから次からは無くさないように」
するとあやめさんは木刀を俺に手渡した。
「え、これって」
「外に引っかかってたから拾ってきた」
「ありがとうございます!!」
「ふん、次はないからね」
そう言うとあやめさんは俺に顔をそむけた。
「ふふ、素直じゃないですねあやめ先輩」
「え?」
そう言うのはノエルさん。
「実はその木刀を見つけた時あやめ先輩、凄い取り乱してたんですよ『コ、コタローは大丈夫なのか!?』って」
「え、マジですか? そんな心配してくれるなんて…」
「あーあー、余何も知らなーい」
『そろそろ、出発してもいいですカ?』
桐生さんがそう言う、俺たちは話を一旦やめる。
すると皆俺を見た。
まあ、もう慣れたもんですよ。
「ええ、大丈夫です、向かってください!!」