迷い人よ、ようこそ。   作:みなたか

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2022年 11月13日 修正と加筆


第十三話

天守閣のその中央、そこには陣に書かれた紋様に照らされて立つ白上さん、さっき見た時より尻尾の数が増え、8本になっていた。

そしてその傍らには白上当主。

 

俺たちは天守閣に飛び降りる。

すると桐生さんが人間形態に戻り、俺に何かを投げてきた。

俺はそれをキャッチする。

 

「え、何ですか、これ」

 

それは小さな小瓶、中身は赤色の液体で満たされていた。

 

「ワタシの血を薄めたモノですヨ」

「…え? 血、ナンデ?」

「龍の血には傷と魔力を回復させる力があるんだよ、虎太郎」

 

オウガさんが横から説明を入れてくれた。

つまりこれを飲めば俺の今の傷とほぼ空っぽの魔力が回復すると…

 

「薄めたヤツですから完全に回復するわけじゃないですよ、魔力も例のあの魔法を一回使えるか使えないかぐらいしか回復しないノデ。マ、嫌なら捨ててモ良いんですけど」

「飲む、飲みます!!」

 

俺は小瓶を開けその赤い液体、血を飲んだ。

鉄の味がするが、それ以上に。

 

「…本当だ、さっきよりも体が動く、それに魔力も回復した」

「ま、ワタシが手伝うのはココまで、ここから先はオマエたち次第、サア、やけに熱いヤツがコッチを睨めつけてまスヨ」

 

そう言い桐生さんは一歩下がった。

俺たちは天守閣の中央に振り向く。

 

「さて、待たせたっすね、当主さん、白上さん」

 

白上当主はこちらを睨んでいるが、白上さんは顔を俯かせていてその表情は伺い知れないが意識がある様には見えない。

 

「…随分と人数が増えたね」

「卑怯とは言うなよ?」

「まさか、フブキを助けるためにこれだけの人たちを集めた、これも君の力の一つですよ。ココさんはこうなるだろうなと予想していましたが、ミオもそちらに付いたのですね」

 

当主はそう言うと大神さんが一歩前に出た。

 

「私、いや、ウチはフブキと友達でいられる未来を望みます、だから」

 

大神さんはそう言うと拳を構えて当主を睨めつける。

 

「フブキを助けます、ここにいる皆と一緒に」

 

俺たちも武器を構え、戦えないまつりとマスターは一歩下がる。

 

それを見た当主は先程とは比べ物にないぐらいの魔力を解放した。

解放した魔力が当主の周りの空間を歪ませる程だ。

 

「…それを成し遂げたいのなら」

 

当主は刀を構えた。

 

「私を倒して証明してみせろ、その未来を…!!」

 

 

 

正真正銘、最後の戦いが始まった。

 

 

 

戦いの始まりは二つの銃声、アルさんがその両手に持っている銃が火花を散らす。

だがそれは当主が体を逸らすことで避けられた。

 

「おいおい、銃弾だぞ、見えてるのかよ」

「ああ、見えてるとも」

 

そう言うと当主は地面を蹴る。

凄まじいスピードで迫ってきた。

 

あやめさんが前に立ち二振りの刀で当主の攻撃を止める、が。

 

「重…ッ!?」

「ふむ、思った以上に力が入っていない、下の階で相当絞られましたか」

「ちっ!!」

 

あやめさんが舌打ちをする。

桐生さんと戦った時の分がまだ回復していない様だ。

 

「オウガさん!!」

「おう!!」

 

オウガさんに呼びかけ、俺とオウガさんで左右から挟む形であやめさんを援護する。

 

「うぉらぁ!!」

「せああ!!」

 

だが、木刀と拳が当たるその直前で当主は大きく空中に飛びあがることで回避を行った。

 

「これなら、どうだ!!」

 

その声は当主の更に上にジャンプしていた大神さん。

大神さんは体を回転させ、踵落としを放つ。

 

「…この程度ですか」

 

だがそれは当主が片手で受け止める。

 

「な…っ!?」

 

そのまま空中で掴んだ大神さんの足を振り下ろすようにして地面に振り下ろした。

 

「きゃああ!!」

「ミオ先輩!!」

 

ミオさんが地面に接触する寸前、ノエルさんがスライディングで間に入り受け止める。

 

「ありがとうッ!!」

 

大神さんは無事だったようだ。

当主は地面に着地する。

 

「そこッ!!」

 

着地の瞬間を狙ったのだろうフレアさんの銃から光線に似た銃弾が掃射された。

だがそれは横に転がるようにして避けられる。

 

「更に追い打ちだ!!」

 

今度はアルさんが避けたところを狙い二丁の銃を放つ。

しかし、それは左右にステップするように避けられる。

そのまま避けながらアルさんに接近、刀を振り下ろした。

 

「守るのは僕の役目だからね」

 

それを許さないのが天真さん。

天真さんはアルさんの間に入りその刀を受け止めた。

 

「アランさん!!」

「はいよ!!」

 

アルさんは受け止めた剣の間から刺すように銃を放つ。

 

「ちっ」

 

だがそれでも当主には当たらない。

当主は刀で銃弾を弾くと大きく後ろにジャンプし、下がった。

 

「…さすがにこの人数相手には少し面倒ですね」

 

当主がそう言う。

それでも俺たちの攻撃を全て冷静に捌いている。

この人こんなにも強かったのか…!?

 

「あやめさん、例の式神とかは」

「駄目、もうほぼ魔力残ってないから出せない」

「ちっ、ここで桐生ココと戦った反動が来るか」

 

オウガさんが苦しそうに言う。

この感じ、皆も似たようなものだろう、相当消耗している。

 

「にしても白上家当主ってのはこんなにも強かったのか?」

 

アルさんが疑問を口にした。

 

「…いえ、こんなにも膨大な魔力、ウチも今まで見たことが無いです」

 

大神さんがそう言う。

今まで見てきた大神さんがそう言うってことは…

 

「何かカラクリがあるな」

「ええ、間違いなく」

 

大神さんは当主から目を離さずにそう返す。

だが、カラクリ…、カラクリか…。

俺も当主をもう一度観察する。

刀を構える当主はその周りの空間は自ら放つ魔力で歪んでいる。

いくら見ても気になるところは見当たらない…

 

するとあやめさんが俺たちの横を走り抜け当主に急接近、刀を振るい、鍔競り合う。

 

「余、頭使うの苦手だからー!!」

 

だからって一人で突っ込む人がいるかよ!!

 

「な!? 魔力も残り少ないのに、しょうがねえ、俺も行く。頼んだぞ虎太郎!!」

「オウガさん!?」

 

言うは易しとオウガさんは飛び出し、あやめさんと一緒に当主の足止めを始めた。

 

いや、この時間を無駄にするな。

白上当主のこの謎の力のカラクリを見つけろ、何か、何かあるはずだ。

 

『狐はね、化かすのが得意なんだ』

 

ふと、当主が放った言葉を思い出した。

 

「…化かす、何かに騙されている?」

 

俺は何かに騙されていることを意識しつつ改めて白上当主を見た。

そこにはあやめさんの刀とオウガさんの拳と打ち合う白上当主。

 

「…あ」

 

そうか、そういうことか。

 

「何か分かったの虎太郎?」

「恐らく」

 

俺はミオさんにそう返した。

 

 

 

 

 

「あやめさん、オウガさん!! そのまま足止めをお願いします!!」

 

俺は分かったことを当主を押しとどめてくれているあやめさんとオウガさん以外に共有する。

そして共有したところ一つの案が出た。

 

「大神さん!!」

「おっけー!!」

 

まずは第一段階、当主の動きを完全に止める。

俺と大神さんで足止めされている当主をさらに後ろから挟み込む。

四方向からの攻撃、普通の避け方では避けれない。

だからこそ、唯一の安全地帯である空中に当主は回避を行おうとするが。

 

「それは、さっき見た!!」

 

そうは許さないのがノエルさん。

完全に来ると分かってそこで準備を行っていた。

 

「落ちろ!!」

 

その最大の魔力が籠ったメイスが振り下ろされる。

避けれないと悟ったのだろう、当主は刀を間に挟むことで直撃だけは避けようとした。

 

かかった!!

 

「おりゃああああ!!」

 

そのままノエルさんはメイスを振り下ろし、当主を地面にたたき落とした。

天守閣が揺れる。

その凄まじい勢いは当主を床にめり込ませた。

ダメージを与える必要はない。

ただ一瞬の隙が出来れば良い、その隙が出来れば。

 

「拘束!!」

 

天真さんが床に刺した剣に魔力を通し魔法を発動。

騎士団御用達の手足を縛る拘束の魔法。

当主が今いる床の一部が変形、その足をがっちりと掴み、拘束した。

 

「今だ!!」

 

俺は準備を行っていた二人に叫ぶ。

 

フレアさんはそのスナイパーライフルのような銃を。

アルさんは両手に持つ二丁の銃を。

狙いは拘束されて動けない白上当主。

 

「ジャック!!」

「ポット!!」

 

二人が放った弾丸は白上当主の体を貫く。

 

いや、キメ台詞なんていつ決めたんですか、俺の厨二心がくすぐられる。

 

それはともかく撃たれた当主を見る。

 

「…当たったと思ったのだが」

 

だがそこに居たのは全くダメージを受けていない当主。

ま、それもそうだ、だって今撃った弾は。

 

「いや、違う!! 解呪の弾か!!」

「そう、解呪、浄化、そんな効果を持った弾だよ」

 

フレアさんがそういう。

 

「さて、何を隠してたのか、見せてもらいますよ」

 

当主が自ら放つ魔力で歪んでいた周囲の空間、いや、幻術でまるで空間が歪んでいるように見せかけていたものを消し去る。

 

そう、当主は周囲の空間を歪ませるように見せることで何かを隠していた。

当主の魔力があまりに強大だった為、それが空間を歪ませていたんだと思い込まされていた。

俺がそのことに気付いたのはさっきのあやめさんとオウガさんの足止め時、空間の歪みがあやめさんとオウガさんまでにも及んでいたからだ。

だが見て分かったのはほんの少しだけ、「騙されている」という先入観を持たないと間違いなく見抜けなかった。

 

空間の歪みが消えた当主。

そこにあったのは。

 

「…成程、それがそのバカみたいな力の源ですか」

「ふむ、バレたか…」

 

それは肉眼でも見えるぐらいだった。

 

「まさか…儀式中のフブキさんの魔力を吸い上げていたとは」

 

天真さんが戦慄したように言う。

白上さんを中心とした陣、その魔力を吸い上げるように魔力で出来た管がその当主には付いていた。

 

「だけどそれは諸刃の剣、そんな膨大な魔力を一気に受けたら…」

「ああ、今にも体が爆発しそうだよ」

「何で、そんなこと…」

 

あやめさんが驚いた声を上げる。

 

「そうでもしないと君たちには勝てないからさ」

 

さも当然の様に当主は言う。

 

「白上家、大神家を存続させる為ならこの程度の痛み、どうということはない」

 

その目はどこか狂気を映していた。

 

「今は私が儀式の途中のフブキから魔力を吸い上げている状態だ、本来なら尻尾が9本になった時点で神になる」

 

今は8本、白上当主が白上さんの魔力を吸い上げている限り9本目の尻尾が生えることは無いということか。

でもそれなら

 

「…俺たちが勝つこともできないってことですか」

 

なんちゅーマッチポンプ。

 

「虎太郎」

 

するといつの間にか横に並んでいたオウガさんが白上当主からは目を離さずに俺に喋りかけてきた。

 

「お前は先に白上のお嬢さんを助けろ、コイツは俺が足止めする」

「え?」

 

確かにこのまま白上当主を倒せないのならそれより先に白上さんを助け出した方が良い。

だが、一人だと…

 

「オウガだけに良い恰好はさせれないなぁ」

「うんうん、一人じゃ無理でしょ、余もいないと今の白上当主を止めることは出来ないでしょ?」

 

足止めにあやめさんとアルさんが加わろうとしているのだが、それでもあの強大な魔力を持った白上当主、絶対に一筋縄ではいけないはず。

それをたった三人で…

 

「コタロー」

 

あやめさんが俺と目を合わせた。

 

「任せて」

 

そんな目されたら任せる以外の選択肢なんて無くなってしまうじゃないですか。

あやめさんのその目は大丈夫だと、そう言わせるだけの説得力が感じ取れた。

 

「……お願いしますッ!!」

「お前らも虎太郎に付け!!」

 

白上当主はあやめさん、オウガさん、アルさんに任せて残りの人たちは白上さんのところに向かった。

 

 

 

 

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